全球の海霧の将来変化 気象研究所気候研究部 川合秀明、 神代剛、 遠藤洋和、 荒川理 第12回ヤマセ研究会 2016年3月10日

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全球の海霧の将来変化 気象研究所気候研究部 川合秀明、 神代剛、 遠藤洋和、 荒川理 第12回ヤマセ研究会 2016年3月10日 第12回ヤマセ研究会  2016年3月10日 全球の海霧の将来変化 Kawai et al. (2016, submitted) 気象研究所気候研究部 川合秀明、 神代剛、 遠藤洋和、 荒川理

目的 明らかにしたいこと 海霧の将来変化 何が海霧の変化を決めているのか? 海霧の特性の変化はあるか? 海霧の変化による、雲フィードバックへの寄与

MRI-CGCM3によるAMIP, AMIP+4K, AMIP_future 実験 31年間分のデータ (1979−2009) モデル面データ (L48) 月平均 & 日平均 データ CMIP5 マルチモデルデータ 海面気圧など CFMIP data 作成: 神代さん 処理ツールなど:遠藤さんより

MRI-CGCM3 (Cloud Fraction at z=1 ) 霧の発生頻度 (7月) 船舶観測気候値 九州大学 CALIPSO 雲マスク 0-240m (2007-2009) (EECRA) MRI-CGCM3 (Cloud Fraction at z=1 ) [%] * Around Kamchatka Peninsula * Near Newfoundland * North of Iceland * Arctic Ocean along Eurasia * Southern Ocean MRI-CGCM3 は、霧分布を比較的よく表現している。 (cf. Teixeira (1999), Kawai et al. (2015, J. Meteor. Soc. Japan, 93))

MRI-CGCM3 (Cloud Fraction at z=1 ) 霧の発生頻度 (1月) 船舶観測気候値 九州大学 CALIPSO 雲マスク 0-240m (2007-2009) (EECRA) MRI-CGCM3 (Cloud Fraction at z=1 ) [%] * North Eastern Pacific * Southern Ocean * Arctic Ocean MRI-CGCM3 は、霧分布を比較的よく表現している。

モデルにおける雲の鉛直構造 北太平洋 (7月, 平均: 170E-170W) 雲量 相対湿度 南よりの風 V > 2m/s 北よりの風 [hPa] 海面に接した移流霧 海面近くから安定層 南よりの風 V > 2m/s 海面から離れた下層雲 よくかき混ざった混合層 (ヤマセの雲はこのタイプ) 北よりの風 V < -2m/s [%] [%] 色 : 雲量 or 相対湿度 等値線 : 温位 日平均データ使用

南風と北風の発生頻度 南よりの風 北よりの風 V > 2m/s V < -2m/s 7月 1月 [%] ( 一年前の約束の図です... )

海霧の将来変化 7月 1月 AMIP AMIP+4K − AMIP AMIP_future − AMIP モデル第1層の雲量 [%] AMIP+4K − AMIP AMIP_future − AMIP [%] 減少: 北太平洋中部、北西大西洋 増加: 北太平洋東部 北太平洋東部: 増加と減少の対

気象場の将来変化 7月 AMIP AMIP+4K − AMIP 海面気圧 & 10m 風 海面付近の温度移流 2m気温 - SST [hPa] 海面付近の温度移流 [K/day] [K/day] 2m気温 - SST [K] [K]

気象場の将来変化 1月 AMIP AMIP+4K − AMIP 海面気圧 & 10m 風 海面付近の温度移流 2m気温 - SST [hPa] 海面付近の温度移流 [K/day] [K/day] 2m気温 - SST [K] [K]

海霧と気象場の将来変化 AMIP+4K − AMIP 7月 1月 モデル第1層の雲量 海面気圧 & 10m 風 北太平洋高気圧の弱まり [%] 海面気圧 & 10m 風 [hPa] 北太平洋高気圧の弱まり 北アメリカ大陸上の低圧部の弱まり アリューシャン低気圧のカナダ沿岸での深まり 霧減少: 北太平洋中部、北西大西洋 霧増加: 北太平洋東部 北太平洋東部: 霧の増加と減少の対

海霧と気象場の将来変化 (南半球) AMIP+4K − AMIP 7月 1月 モデル第1層の雲量 海面気圧 & 10m 風 非軸対称の変化 海霧と気象場の将来変化 (南半球) AMIP+4K − AMIP 7月 1月 モデル第1層の雲量 [%] 海面気圧 & 10m 風 非軸対称の変化 軸対称の変化 [hPa]

気象場の将来変化 – CMIP5 モデル – July January 海面気圧 AMIP+4K − AMIP AMIP+4K − AMIP MRI-CGCM3 AMIP+4K − AMIP CMIP5の10個のモデル平均 AMIP+4K − AMIP CMIP5 モデルの海面気圧の変化も、MRI-CGCM3と似た特徴 CMIP5の10個のモデル平均 AMIP_future − AMIP AMIP+4K と AMIP_future の海面気圧の変化は、似ている [hPa]

南北風と霧(第1層の雲)の関係 日平均データ使用 北太平洋 (7月) 南大洋 (1月) 高い相関 : 南北風と霧(第1層の雲) 160E-200E, 40N-50N 南大洋 (1月) 60S-45S, Zonal 高い相関 : 南北風と霧(第1層の雲) 南北風と雲中の雲水量 雲中の雲水量は、AMIP+4Kでは増加 飽和比湿の増加

まとめ 海霧の将来変化 海霧の変化は、海面気圧パターンの変化によく対応 (北半球) 7月: 霧減少: 北太平洋中部、北西大西洋 Kawai et al. (2016, submitted) 海霧の将来変化   (北半球) 7月: 霧減少: 北太平洋中部、北西大西洋 霧増加: 北太平洋東部 1月: 霧の増加と減少の対    (南半球) 7月:  非軸対称の変化 1月:  軸対称の変化 海霧の変化は、海面気圧パターンの変化によく対応 7月: 北太平洋高気圧の弱まり       北アメリカ大陸上の低圧部の弱まり 1月: アリューシャン低気圧のカナダ沿岸での深まり

まとめ CMIP5モデルの海面気圧もMRI-CGCM3と同様の変化のパターン → MRI-CGCM3の海霧の変化の議論は一般性がありそう Kawai et al. (2016, submitted) CMIP5モデルの海面気圧もMRI-CGCM3と同様の変化のパターン → MRI-CGCM3の海霧の変化の議論は一般性がありそう 将来気候では、雲中の雲水量は増加する。 これらの全ての結果は、AMIP+4K, AMIP_future実験でほぼ同様 海霧の将来変化の雲フィードバックへのインパクトはあまり大きくない(無視はできないが)。

参考文献 Kawai, H., S. Yabu, Y. Hagihara, T. Koshiro, and H. Okamoto, 2015: Characteristics of the Cloud Top Heights of Marine Boundary Layer Clouds and the Frequency of Marine Fog over Mid-Latitudes. J. Meteor. Soc. Japan, 93, 613-628. Kawai, H., T. Koshiro, H. Endo, O. Arakawa and Y. Hagihara, 2016: Changes in Marine Fog in a Warmer Climate. submitted.