疫学概論 間接調整法 Lesson 5. 率の調整 §C. 間接調整法 S.Harano,MD,PhD,MPH.

Slides:



Advertisements
Similar presentations
橋本. 階級値が棒の中央! 階級値 図での値 階級下限階級上限
Advertisements

Lesson 7. 生命表 §C. 臨床生命表. 臨床生命表 ある研究対象集団における、観察期間 内でのある事象(出来事;死亡、再燃、 不全、など)が起こる時間を記述した もの 個人個人が参入したり集団から脱落す る変動的な時間を扱う その事象が起こらない累積確率を計算 する.
5 章 標本と統計量の分布 湯浅 直弘. 5-1 母集団と標本 ■ 母集合 今までは確率的なこと これからは,確率や割合がわかっていないとき に, 推定することが目標. 個体:実験や観測を行う 1 つの対象 母集団:個体全部の集合  ・有限な場合:有限母集合 → 1つの箱に入っているねじ.  ・無限な場合:無限母集合.
Lesson 9. 頻度と分布 §D. 正規分布. 正規分布 Normal Distribution 最もよく使われる連続確率分布 釣り鐘形の曲線 -∽から+ ∽までの値を取る 平均 mean =中央値 median =最頻値 mode 曲線より下の面積は1に等しい.
保健統計 橋本.
疫学概論 二項分布 Lesson 9.頻度と分布 §B. 二項分布 S.Harano,MD,PhD,MPH.
非正規雇用が心理的ストレス反応に及ぼす影響: 全国規模のコホート研究
Lesson 21. 健康政策と疫学 §B. 集団データを用いた 疫学研究 疫学概論 集団データを用いた疫学研究
疫学概論 臨床生命表 Lesson 7. 生命表 §C. 臨床生命表 S.Harano,MD,PhD,MPH.
保健統計 橋本.
社会調査とは何か(3) 調査対象者の選定方法
疫学概論 時系列研究 Lesson 11. 記述疫学 §B. 時系列研究 S.Harano,MD,PhD,MPH.
将来人口推計の方法と検証 ー 平成14年推計の仕組みと評価 ー 平成18年8月7日 国立社会保障・人口問題研究所
第3章 人口に関する統計 ー 経済統計 ー.
公衆衛生学 疫学デザインと健康指標
母子保健の現状及び取り巻く環境の 変遷について 厚生労働省.
疫学概論 現代生命表 Lesson 7. 生命表 §B. 現代生命表 S.Harano,MD,PhD,MPH.
第3章 人口に関する統計 ー 経済統計 ー.
疫学概論 コウホート生命表 Lesson 7. 生命表 §A. コゥホート生命表 S.Harano,MD,PhD,MPH.
疫学概論 母集団と標本集団 Lesson 10. 標本抽出 §A. 母集団と標本集団 S.Harano,MD,PhD,MPH.
2 二次分析の実例 日本透析医学会統計調査の公開データを用いた 目 的 結 論 二次分析とは? 二次分析の利点1) 方 法2) 結 果2)
新潟県の自殺の概要 (平成23年) 新潟県精神保健福祉センター 【人口動態統計と警察統計の違い】
一般住民の大腿骨近位部骨折発症率で 認められる地域差は、 血液透析患者でも認められる
保健統計演習 橋本.
疫学概論 無作為化比較対照試験 Lesson 14. 無作為化臨床試験 §A. 無作為化比較対照試験 S.Harano,MD,PhD,MPH.
A 「喫煙率が下がっても肺ガン死亡率が減っていないじゃないか」 B 「喫煙を減らしてもガン減るかどうか疑問だ」
国試対策 橋本 .
図1 年齢調整の効果 がんおよび脳卒中死亡率(男)の年次推移
計算値が表の値より小さいので「異なるとは言えない」。
疫学概論 異なった集団での率の比較 Lesson 5. 率の調整 §A. 異なった集団での率の比較 S.Harano,MD,PhD,MPH.
松橋ゼミ          B E S T   年金制度の今とこれから                     薬師川 裕真                       金子 直広                       三又 結実.
低い 高い 人口1人当たり税収額の偏在度の変化 全 体 平成元年度 全 体 平成17年度 固定資産税 5.7兆円 個人住民税 (所得割)
疫学概論 患者対照研究 Lesson 13. 患者対照研究 §A. 患者対照研究 S.Harano,MD,PhD,MPH.
死亡統計 参考資料1-1 人口動態調査の死亡・死産統計 市区町村長が,死亡については戸籍 法による届書等から,死産について は死産の届出に関する規程による 届書等から,人口動態調査票を作成。 厚労省が集計する。 死因統計は公衆衛生の基本統計。
Lesson 22. 健康政策への応用 §C. リスク・マネージメント 疫学概論 リスク・マネージメント
疫学概論 患者対照研究 Lesson 13. 患者対照研究 §A. 患者対照研究 S.Harano,MD,PhD,MPH.
わが国の透析患者における感染症死亡率~一般住民との比較~
中山間僻地としての松原区の概要 人口340人 高齢化率60% 町の中心部 から車で40分 【経済的問題】
人口以外の保健統計 甲田.
離婚が出生数に与える影響 -都道府県データを用いた計量分析
一般住民と比較した米国透析患者の標準化自殺率比(SIR) 表.一般住民と透析患者の年齢階級別死亡者数
日本の水道水フロリデーションの歴史・現状と至適濃度*
市区町村別標準化該当比マップ (2013年度版) 岡山県保険者協議会 岡山県国民健康保険団体連合会.
三島市の結果について 企画戦略部政策企画課
がん患者の期待に応えるがん対策推進基本計画の策定のために 参考資料 (死亡率試算図表)
疫学概論 標本抽出法 Lesson 10. 標本抽出 §B. 標本抽出法 S.Harano,MD,PhD,MPH.
人口統計 人口静態統計:人口の規模、構成 人口動態統計:出生・死亡などの人口再生産 人口移動統計:人口の移動 人口の推計:コーホート変動.
疫学概論 交絡 Lesson 17. バイアスと交絡 §A. 交絡 S.Harano, MD,PhD,MPH.
* 07/16/96 人口分析ワークシートの見方・使い方 兵庫県企画県民部統計課      芦谷 恒憲 *
疫学概論 疾病の自然史と予後の測定 Lesson 6. 疾病の自然史と 予後の測定 S.Harano,MD,PhD,MPH.
疫学概論 バイアス Lesson 17. バイアスと交絡 §A. バイアス S.Harano, MD,PhD,MPH.
三大生活習慣病の死亡率の推移 宮崎県では昭和57(1982)年以降、がんが死亡原因の第1位となっています。
疫学概論 直接法と間接法の相違 Lesson 5. 率の調整 §D. 直接法と間接法の相違 S.Harano,MD,PhD,MPH.
疫学概論 情報の要約 Lesson 3. 情報の要約 (率、比、割合) S.Harano,MD,PhD,MPH.
疫学概論 死亡データの情報源 Lesson 4. 罹患と死亡の指標 §F. 死亡データの情報源 S.Harano,MD,PhD,MPH.
第3章 人口に関する統計 ー 経済統計 ー.
疫学概論 死亡の指標 Lesson 4. 罹患と死亡の指標 §D. 死亡の指標 S.Harano,MD,PhD,MPH.
Good Start ! Great Future !
疫学概論 カプラン・マイヤー法 Lesson 8. その他の生存分析 §A. カプラン・マイヤー法 S.Harano,MD,PhD,MPH.
疫学概論 方法論的問題点(患者対照研究) Lesson 13. 患者対照研究 §B. 方法論的問題点 S.Harano,MD,PhD,MPH.
「カテゴリ変数2つの解析」 中澤 港 統計学第7回 「カテゴリ変数2つの解析」 中澤 港
疫学概論 罹患の指標 Lesson 4. 罹患と死亡の指標 §A. 罹患の指標 S.Harano,MD,PhD,MPH.
Lesson 4. 罹患と死亡の指標 §G. YPLLとQOLの測定 疫学概論 YPLLとQOLの測定
疫学概論 寄与危険度 Lesson 15. 関連性の測定 §D. 寄与危険度 S.Harano,MD,PhD,MPH.
疫学概論 疫学研究の目的 Lesson 1. 疫学研究 §A. 疫学研究の目的 S.Harano,Md.PhD,MPH.
人類集団の歴史的変遷 出典:Mascie-Tailor CGN (1993) The Anthropology of Disease, Oxford Univ. Press.
疫学保健統計 ~テスト対策~ 群馬医療福祉大学 看護学部 2年 ○○○優衣.
疫学概論 時系列研究 Lesson 11. 記述疫学 §B. 時系列研究 S.Harano,MD,PhD,MPH.
疫学概論 §C. スクリーニングのバイアスと 要件
疫学概論 臨床試験の種類 Lesson 14. 無作為化臨床試験 §B. 臨床試験の種類 S.Harano,MD,PhD,MPH.
Presentation transcript:

疫学概論 間接調整法 Lesson 5. 率の調整 §C. 間接調整法 S.Harano,MD,PhD,MPH

率の調整方法 (間接法 Indirect method)  知りたい対象となるグループ(人口集団)で期待される死亡数を得るために、層別参照率 reference rates を対象となる観察集団に適用する方法

間接法による調整率 観察集団において期待される事象数を得るために参照人口集団の率を観察集団に適応する。 調整率は観察された事象数を期待される事象数で割ったもの(O/E)に参照人口集団の粗率をかけたものである。

間接法による調整率(続き) 求める率 =

間接法算出に必要な基礎資料 観察集団の層別人口 観察集団の総事象数 参照人口集団の層別率 参照人口集団の粗率 年齢調整死亡率の場合 観察集団の年齢階級別人口 観察集団の総死亡数 基準人口集団の年齢別死亡率 基準人口集団の粗死亡率

例:米国1980年死亡率 独身ならびに既婚男性 n1j n2j Pj j 年齢 階級 独身 人口(千人) 既婚 参照死亡率/1000 1 15–24 17,724 3,427 0.959 2 25–44 5,390 23,083 1.599 3 45–64 1,210 18,088 8.138 4 65–74 364 5,500 28.386 5 75 + 199 2,331 99.886 合計 24,887 52,429 (C)10.79

例:米国1980年死亡率 独身ならびに既婚男性(続き) ここでの参照率(または基準率)は1980年米国における男女合わせた年齢別死亡率である。 年齢階級毎の期待死亡数は同じ年齢階級の参照率に観察集団の人数をかけて求める。

期待死亡数 期待死亡数 (観察集団の年齢階級別人口  ×参照人口集団の年齢別死亡率)

例:米国1980年死亡率 期待死亡数:独身男性 n1j Pj n1j× Pj j 年齢 階級 独身 人口(千人) 参照死亡率/1000 独身(千人) 1 15–24 17,724 0.959 16,997 2 25–44 5,390 1.599 8,619 3 45–64 1,210 8.138 9,847 4 65–74 364 28.386 10,332 5 75 + 199 99.886 19,877 合計 24,887 65,672

例:米国1980年死亡率 期待死亡数:既婚男性 n2j Pj n2j × Pj j 年齢 階級 既婚 人口(千人) 参照死亡率/1000 既婚(千人) 1 15–24 3,427 0.959 3,286 2 25–44 23,083 1.599 36,910 3 45–64 18,088 8.138 147,200 4 65–74 5,500 28.386 156,123 5 75 + 2,331 99.886 232,834 合計 52,429 576,353

年齢調整死亡率 間接法 独身男性 1,000人当たりの年齢調整死亡率 独身男性の全観察死亡数 = 独身男性の全期待死亡数 年齢調整死亡率 間接法 独身男性 1,000人当たりの年齢調整死亡率 独身男性の全観察死亡数 = 独身男性の全期待死亡数 ×参照人口集団の粗死亡率(C) 201,307 = ×10.79 = 33.08 65,672

年齢調整死亡率 間接法 既婚男性 1,000人当たりの年齢調整死亡率 既婚男性の全観察死亡数 = 既婚男性の全期待死亡数 年齢調整死亡率 間接法 既婚男性 1,000人当たりの年齢調整死亡率 既婚男性の全観察死亡数 = 既婚男性の全期待死亡数 ×参照人口集団の粗死亡率(C) 905,152 = ×10.79 = 16.95 576,353

例:米国1980年死亡率 独身ならびに既婚男性(続き)  間接法による1,000人当たりの年齢調整死亡率は、 独身 : 33.08 既婚 : 16.95

間接法による調整率の比較 間接法による調整死亡率は参照人口集団の粗率との比較であるといえる。 間接法による調整死亡率では、あるひとつの人口集団を参照人口集団として選ばないかぎり、お互いに比較すべきではない。(選んだ参照人口集団により結果がことなる。)

例:米国1980年死亡率 独身ならびに既婚男性(続き) 参照人口集団(米国1980年男女)の粗死亡率 10.79 と比較すると、 独身男性の死亡リスクは 3.06 倍( =33.08/10.79) 既婚男性の死亡リスクは 1.57 倍(=16.95/10.79)

標準化死亡比(SMR) Standardized Mortality Ratio 観察死亡数 SMR = 期待死亡数 よく使われる統計量 間接法調整死亡率(または標準化死亡率 Standardized death rate)は SMR×C に等しい。 100 を乗じて表されることが多い。

標準化死亡比(続き) xkj = 集団 k の層 j での死亡数 Pj = 層 j での参照(基準)死亡率 nkj = 集団 k の層 j での人口数

標準化死亡比(続き) SMR > 1 : 観察集団でリスクが増加している。

標準化死亡比 独身男性 SMR1 観察死亡数 = 3.06 = = 期待死亡数 = = 3.06 = 201,307 65,572 間接法年齢調整死亡率 33.08 = = = 3.06 参照人口粗死亡率 10.79

標準化死亡比 既婚男性 SMR2 観察死亡数 = 1.57 = = 期待死亡数 = = 1.57 = 905,152 576,353 間接法年齢調整死亡率 16.95 = = = 1.57 参照人口粗死亡率 10.79

標準化死亡比の解釈 SMR2 は直接的に SMR1 と比較すべきでない。