②Plastid チラコイド膜のトランスロコン Oxa1 homolog TIC, translocon of the inner chloroplast envelope; TOC, translocon of the outer chloroplast envelope. Figure 1 | Protein-import pathways into chloroplasts. (左) 葉緑体(プラスチド)前駆体タンパク質の一部は細胞質でリン酸化されて、HSP70 (heat shock protein-70) や14-3-3 タンパク質ダイマーと結合したcytosolic guidance complex を作る。リン酸化されない前駆体タンパク質は、TOC159あるいはHSP70と結合する。これらは、GTP-依存的にTOC複合体トランスロコンに結合する。リセプタのTOC159 は可溶性型と膜結合型の間を行き来して、前駆体タンパク質をTOC膜トランスコロンへと送り込む(一番下の図参照)。TOCとTIC両複合体の共同で、前駆体タンパク質は、ヌクレオチド(GTPおよびATP[ストロマのchaperone])依存的に内外両包膜を一時に通り抜ける。通過したタンパク質は、ストロマのstromal processing peptidase (SPP)で、シグナル部分が切り取られる。成熟タンパク質は、ストロマでそのままフォールドするか、さらにチラコイド膜へ送られる(下の説明および一番下右の図)。切り取られるべきtransit sequence を持たない外包膜タンパク質(OEP)は、多くの場合、HSP70 と結合して、外膜の組込み系へ直接送られる。in vitro の実験では特に他のファクターは不要だが、in vivoではこれに関与する成分(TOC成分などの場合:図の?印)があるかもしれない。ALB3, albino3; IE, inner envelope; IES, inter-envelope space; OE, outer envelope; OEP, outer-envelope protein; SEC, 細菌のsecretory (SecYEG) pathwayと類似のもの; プラスチドにもER/Bacteriaと同様のSRP:signal-recognition particleが存在し、これと共に働くTranslocon ALB3がある; TAT, twin-arginine translocase (Folded proteinを運ぶという点で特殊:Bacteria, Mitochondriaにもある)。Nature Reviews Molecular Cell Biology 5, 198-208 (2004) Figure 2 | The chloroplast translocon complexes. 葉緑体内外包膜のトランスロコン (下図) エンドウの葉緑体内外包膜トランスロコン(Translocon of outer chloroplast membrane: TOC) と (Translocon of inner chloroplast membrane: TIC) はサブユニット組成がまったく異なる。 TOC複合体は、GTP-依存の(GTPase) リセプタ TOC34, 輸送チャネル TOC75 とGTP-駆動モーターTOC159(一番下の図参照)から成っている。GTPaseであるTOC34 と TOC159 は、自身がリン酸化されることで調節を受ける。右図挿入図は、エンドウの精製TOC複合体をネガティブ染色した電子顕微鏡写真から再構成したTOC複合体の3次元構造モデルである。 TOC64は、HSP-70 (heat shock protein-70) と結合するプレタンパク質専用のリセプターかもしれないが、TOC複合体に緩く結合している。TOC複合体はホモダイマーを作って機能するようだ。 内膜のトランスロコンTIC複合体中で、TIC110は実際の輸送チャネルを構成する。TIC20もこのチャネルの一部であるようだ。TIC40 はTIC110に緩く結合しており、シャペロン結合サイトchaperone-recruiting site として働いている可能性がある。TIC22は、内外膜間腔に存在して、TICとTOC複合体の相互作用に関わっている。TIC55 と TIC62は酸化還元される部分を持ち、フェレドキシンを介して電子を受容することで、電子伝達系によるタンパク質輸送の調節を担っていると提唱されている。ferredoxin NAD(P) reductase (FNR)(光化学系Iの還元側) は TIC62 に結合して、適当な還元状態の時にTIC複合体が働くようにしているのかもしれない。TIC62 は、その中に、NAD(P)-結合サイトをも持っている。TIC55 は、鉄-硫黄センターiron–sulphur centreとmononuclear iron-binding siteを持っている。この図は、これまで分かっている成分サブユニット組成を示すのみで、各サブユニットの構造・機能やサブユニットのstoichiometryを示すものではない。 最新の結果によると、TOCからTICへの基質移動の際、TIC110以外のTIC複合体成分が、TIC20を中心として、基質と共に分子量100万を超える大きな複合体を作っているそうだ。Plant Cell 21:1781-1797 (2009) によれば,Tic20, 214, 56, 100の4者からなる複合体(右図下)。 ②Plastid もう少し最近のモデルTOC, TIC複合体それぞれにつき、サブユニットが多少異なるホモログ遺伝子産物から成るトランスロコンが複数存在し、光・代謝状態や輸送基質(光合成に関係するものとそれ以外の葉緑体維持に関わるもの)別に使い分けられているようだ。蛋白質核酸酵素Vol. 53 No.8(2008)1092 & 1094の図を合成 TICトランスロコンの構成 (中井らのモデル) 生物の科学 遺伝 70: 105, 2015 TIC214/TIC20がチャンネル、その他TIC56, TIC100からなる分子量1 MDaの巨大複合体。TIC40がストロマ側のchaperone receptor、TIC22はTOC/TIC相互作用に関与する。TIC62/TIC55はストロマNADPHの還元状態を感知する調節サブユニット。 どちらが正しいのでしょう? Glaucophyte/Rhodophyte Gramineae(イネ科)は,Ycf1遺伝子(coded in plastome)を欠く! チラコイド膜のトランスロコンには、細菌トランスロコンのホモログが揃っている。即ち、SecY-SecA系相当のもの、twin-arginine motif translocase (TAT:ある程度foldしたタンパク質を輸送する), SRP (Signal-recognition particle)依存でALB3が関与するトランスロコンの少なくとも三種がありそうだ。 Figure 4 | Working hypothesis for the action of TOC159. 前駆体タンパク質は、外包膜のTOC34–GTP にまず結合し、GTP加水分解と共に、TOC159–GTPへと送られる。 TOC34 の方は、GDPを離して、GTPを再結合する。TPC159は、GTP加水分解を伴って、前駆体をTOC75 チャネルに押し込む。この動きは、ミシンを思わせるもので、細菌のSecYEGトランスロコンでのSecAの働きと類似・相似の機構なのかもしれない。(SecAはATPaseだが。) これらの中で必須の成分は TOC75とTOC159である。TOC75チャネルの詳しい輸送機構は不明である。IES, inter-envelope space; OE, outer envelope; Pi, inorganic phosphate. Oxa1 homolog チラコイド膜のトランスロコン 蛋白質核酸酵素Vol. 49 No.7(2004)922