平成22年6月6日 修士課程入試ガイダンス 大きなゆらぎと相転移現象 宮下精二.

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計算物理2013年度 磁気相転移の臨界指数を求める. 今回の授業の目的 磁石が温度によって磁化をもったり,もたなかっ たりする様を計算機シミュレーションで調べる これは本当に数値実験。これを発展させて,脳の ニューロンの発火具合などのシミュレーションも 可能となる。
無機化学 I 後期 木曜日 2 限目 10 時半〜 12 時 化学専攻 固体物性化学分科 北川 宏 301 号室.
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課題演習B1 「相転移」 相転移とは? 相転移の例 担当 不規則系物理学研究室 松田和博 (准教授) 永谷清信 (助教)
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冷却原子系を用いた 量子シミュレーション: 格子場の理論に対する 新奇シミュレーション技術の 現状と未来
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担当: 松田 祐司 教授, 寺嶋 孝仁 教授, 笠原 裕一 准教授, 笠原 成 助教
2重井戸型ポテンシャルに捕捉された 冷却原子気体の非平衡初期分布緩和過程に対する非平衡Thermo Field Dynamics
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第一原理計算でひも解く合金が示す長周期積層欠陥構造の形成メカニズム
有限クォークおよび有限アイソスピン化学ポテンシャル
課題演習B1 「相転移」 相転移とは? 相転移の例 担当 不規則系物理学研究室 八尾 誠 (教授) 松田和博 (准教授) 永谷清信 (助教)
タンパク質-リガンド複合体への共溶媒効果の系統的解析
インフレーション宇宙における 大域的磁場の生成
これらの原稿は、原子物理学の講義を受講している
水素の室温大量貯蔵・輸送を実現する多孔性材料の分子ダイナミクスに基づく解明と先導的デザイン
Marco Ruggieri 、大西 明(京大基研)
スピンを冷やす 磁気秩序状態 (スピンは静止) エントロピ S =log(2I +1) 絶対零度 T =0 で消滅するはず
統計力学と情報処理 ---自由エネルギーの生み出す新しい情報処理技術--- 2003年8月14日前半
課題演習B1 「相転移」 相転移とは? 相転移の例 担当 不規則系物理学研究室 松田和博 (准教授) 永谷清信 (助教)
固体中の多体電子系に現れる量子凝縮現象と対称性 「複数の対称性の破れを伴う超伝導」
第3回応用物理学科セミナー 日時: 7月10日(木) 16:10 – 17:40 場所:葛飾キャンパス研究棟8F第2セミナー室
相の安定性と相転移 ◎ 相図の特徴を熱力学的考察から説明 ◎ 以下の考察
媒質中でのカイラル摂動論を用いた カイラル凝縮の解析
実数および純虚数化学ポテンシャル領域における 2+1フレーバーPNJL模型を用いた QCD相構造の研究
物性 ~ 電子の集団が描く多彩な風景 物性研究所 瀧川 仁 物性物理(Condensed Matter Physics)とは
? リー・ヤンの零点 これまでの格子QCD計算の結果 今年度の計画 リー・ヤンの零点分布から探る有限密度QCDにおける相構造の研究
複合アニオンに起因した多軌道性と低次元性からうまれる 強相関電子物性の研究
シミュレーション物理8 磁性.
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平成22年6月6日 修士課程入試ガイダンス 大きなゆらぎと相転移現象 宮下精二

相転移現象 相転移現象 特異な変化 特異性をもたない相互作用 ミクロな世界の相互作用 マクロな現象 統計力学 このミクロな和が 気相・液相相転移 このミクロな和が 相転移を記述できるか? (van der Waals 会議 1937) レナード・ジョーンズ相互作用 磁化の出現 ハイゼンベルグ、イジング模型 電子ガスモデル 超伝導、超流動 熱力学的極限

マクロな現象の特異性と対称性の破れ ミクロな和が相転移を記述できるか? L. Onsager (1944) 2次元イジング模型 分配関数の特異性 C. N. Yang(1952) 2次元イジング模型 自発的対称性の破れ BEC 超伝導(非対角秩序) 熱ゆらぎ(エントロピー)       臨界点          秩序(エネルギー)

マクロな現象の特異性と対称性の破れ ドメイン構造 渦構造 ミクロな和が相転移を記述できるか? L. Onsager (1944) 2次元イジング模型 分配関数の特異性 C. N. Yang(1952) 2次元イジング模型 自発的対称性の破れ BEC 超伝導(非対角秩序) 熱ゆらぎ(エントロピー)        vs.              秩序(エネルギー)

ゆらぎの普遍性 普遍性: universality class 2次相転移 熱ゆらぎ(エントロピー) vs. 秩序(エネルギー) ゆらぎの発散 臨界指数 系の次元、秩序変数の構造、相互作用のレンジ 2次元 (1次元量子系) 共形場理論 無限のuniversality class 熱ゆらぎ(エントロピー) vs. 秩序(エネルギー) いろいろなゆらぎの源泉 相互作用の競合、量子効果、長距離相互作用、高次元性 etc. 新しいタイプの秩序化現象

相互作用の競合(フラストレーション) 非単調な秩序化(リエントラント相転移) 基底状態のマクロな縮退 秩序変数の構造 XY-like H. Kitatani, SM and M. Suzuki: JPSJ 55 (1986) 865. XY-like カイラリティ Ising-like SM and H. Shiba, JPSJ 53 (1984) 1145. S. Miyashita, JPSJ 55 (1986) 3605. S. Miyashita, JPSJ 55 (1986) 3605.

相互作用の競合(フラストレーション) 非単調な秩序化(リエントラント相転移) 基底状態のマクロな縮退 秩序変数の構造 XY-like H. Kitatani, SM and M. Suzuki: JPSJ 55 (1986) 865. XY-like カイラリティ Ising-like SM and H. Shiba, JPSJ 53 (1984) 1145. S. Miyashita, JPSJ 55 (1986) 3605. S. Miyashita, JPSJ 55 (1986) 3605.

相互作用の競合(フラストレーション) 非単調な秩序化(リエントラント相転移) 基底状態のマクロな縮退 秩序変数の構造 XY-like H. Kitatani, SM and M. Suzuki: JPSJ 55 (1986) 865. XY-like カイラリティ Ising-like SM and H. Shiba, JPSJ 53 (1984) 1145. S. Miyashita, JPSJ 55 (1986) 3605. S. Miyashita, JPSJ 55 (1986) 3605.

相互作用の競合(フラストレーション) 非単調な秩序化(リエントラント相転移) 基底状態のマクロな縮退 秩序変数の構造 XY-like H. Kitatani, SM and M. Suzuki: JPSJ 55 (1986) 865. XY-like カイラリティ Ising-like SM and H. Shiba, JPSJ 53 (1984) 1145. S. Miyashita, JPSJ 55 (1986) 3605. S. Miyashita, JPSJ 55 (1986) 3605.

相互作用の競合(フラストレーション) 非単調な秩序化(リエントラント相転移) 基底状態のマクロな縮退 秩序変数の構造 XY-like H. Kitatani, SM and M. Suzuki: JPSJ 55 (1986) 865. XY-like カイラリティ Ising-like SM and H. Shiba, JPSJ 53 (1984) 1145. S. Miyashita, JPSJ 55 (1986) 3605. S. Miyashita, JPSJ 55 (1986) 3605.

Macroscopic degeneracy in corner-sharing lattices Macroscopic degenerate ground state with global 2-fold degeneracy 3D corner sharing lattice Spin ice Order by disorder (entropy induced order) Dy2Ti2O7 T. Sakakibara,T. Yayama, Z. Hiroi, K. Matsuhira and S. Takagi: PRL 90 (2003) 207205. A. Kuroda and SM, JPSJ 64 (1995) 3688. S. Tanaka and SM: JPSJ 76 (2007) 103001. 12

量子スピン系の相転移 磁性相転移 量子ゆらぎ スピンの縮み 磁気秩序抑制(矢印) 量子無秩序状態 Haldane状態 マクロな秩序状態では量子効果は重要でない? 量子ゆらぎ スピンの縮み 磁気秩序抑制(矢印) 量子無秩序状態 Haldane状態 反強磁性ハイセンベルグ模型 エネルギーギャップ スピン相関の指数的崩壊 F. D. M. Haldane, Phys. Lett. 93A (1983) 464.              Phys. Rev. Lett. 50(1983) 1153 VBS状態 零点振動に相当する量子共鳴現象 I. Affleck, T. Kennedy, E. H. Lieb & H. Tasaki, Phys. Rev. Lett. 59 (1987) 799. 古典系に対応状態がない磁性状態

量子相転移 小さな δ 大きな δ M. Yamanaka, M. Oshikawa, SM, JPSJ (1996) 1562 小さな δ 大きな δ M. Yamanaka, M. Oshikawa, SM, JPSJ (1996) 1562 Y. Kato & A. Tanaka,JPSJ (1994) 1277.

磁化過程(強磁場) singlet triplet TlCuCl3 Magnon BEC W.Shiramura,et al. JPSJ 67 (1998) 1548. T. Tonegawa,et al. JPSJ 69 (2000) Supple.A 332. Magnon BEC M. Oshikawa et al: PRL 84(2000) 5868

量子効果の検索 (NMR) SrCuBO3 K. Kodama, M. Takigawa, H. Horvatic, C. Berthier, K. Kagenyama, Y. Ueda, S. Miyahara, F. Becca, and F. Mila, Science 298 (2002) 395.

量子効果(非対角秩序) 超伝導 高温超伝導 Cu系 電子間相互作用の重要性 強相関物質 相互作用の機構 電子対のタイプ 電子間相互作用の重要性     強相関物質 相互作用の機構 電子対のタイプ    (d波、時間反転非称性,etc.) Fe系

Supersolid state in soft-core Bose-Hubbard model Coexistence of solid order and superfluidity E. Kim and M. H. W. Chan. Science, 305 (2004) 1941 K. Yamamoto, S. Todo, SM: Phys. Rev. B79 (2009) 094503. 19

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長距離相互作用 スピンクロスオーバー相転移 構成ユニット(分子)の体積の状態依存性 実効的長距離相互作用 示量性の破れと境界条件 構成ユニット(分子)の体積の状態依存性   実効的長距離相互作用 示量性の破れと境界条件 M. Nishino, K. Boukheddaden, Y. Konishi and SM: PRL 98 (2007), 247203. Y Konishi, H. Tokoro, M. Nishino and SM: PRL. 100, (2008)067206. SM, Y. Konishi, M. Nishino, H. Tokoro and P.A. Rikvold . PRB 77, (2008) 0144105. SM, P. A. Rikvold , T. Mori, Y. Konishi, M. Nishino and H. Tokoro: PRB 80, (2009) 064414. 金属表面への 吸着 S. Furuya, S. Tsuneyuki, Y. Yoshimoto

まとめ 森羅万象の起源としての相転移現象 熱ゆらぎ(エントロピー) vs. 秩序(エネルギー) いろいろなゆらぎのもとでの秩序形態、秩序化過程     相互作用の競合(フラストレーション)     量子ゆらぎ     長距離力     高次元性