2020年代の光赤外線天文学 「恒星物理・超新星・晩期型星」 サイエンス

Slides:



Advertisements
Similar presentations
初期に複数のピークを示す古典新星 のスペクトルの変化 1 田中淳平、野上大作 ( 京都大学 ) 藤井貢 ( 藤井美星観測所 ) 、綾仁一哉 ( 美星天文台 ) 大島修 ( 水島工業高校 ) 、川端哲也 ( 名古屋大学 )
Advertisements

COBE/DIRBE による近赤外線 宇宙背景放射の再測定 東京大学, JAXA/ISAS D1 佐野 圭 コービー ダービー.
2020 年代の光赤外線天文学 「恒星物理・超新星・晩期型 星」 サイエンス(分科会報告) 「恒星物理・超新星・晩期型星」検討 班 発表者: 野沢 貴也( NAOJ ) 2014/09/10.
TAO で紐解くダスト形成過程 2016/03/16 Targets in this talk: 1. Core-collapse supernovae in MW/LMC/SMC 2. Type IIn supernovae in nearby galaxies 3. Galactic luminous.
日本学術会議マスタープランへの提案 ガンマ線バーストを用いた初期宇宙探査計画 HiZ-GUNDAM 主査: 米徳 大輔(金沢大学) HiZ-GUNDAM WG 光赤天連シンポジウム「光赤外将来計画:将来計画のとりまとめ」( 2016/02/09 – 10 国立天文台.
スケジュール 火曜日4限( 14:45-16:15 ),A棟1333号室
X線による超新星残骸の観測の現状 平賀純子(ISAS) SN1006 CasA Tycho RXJ1713 子Vela Vela SNR.
中小口径望遠鏡を用いた超新星を はじめとする突発天体観測とその未来
第6回 制動放射 東京大学教養学部前期課程 2012年冬学期 宇宙科学II 松原英雄(JAXA宇宙研)
第11回 星・惑星系の誕生の現場 東京大学教養学部前期課程 2012年冬学期 宇宙科学II 松原英雄(JAXA宇宙研)
DECIGO ワークショップ (2007年4月18日) 始原星の質量、形成率、連星度 大向一行  (国立天文台 理論研究部)
第5章 参考資料 星間塵 Interstellar dust
プロポーザル準備/観測準備 ダストをたくさん持つ銀河 の赤外線分光観測の例 国立天文台 今西昌俊.
AOによる 重力レンズクェーサー吸収線系の観測 濱野 哲史(東京大学) 共同研究者 小林尚人(東大)、近藤荘平(京産大)、他
「Constraining the neutron star equation of state using XMM-Newton」
Report from Tsukuba Group (From Galaxies to LSS)
突発現象のToO観測 野上大作 (京大 花山天文台) 2011/09/07(Wed)
ダストの形成・破壊素過程の 観測から探る星の進化
超新星(超新星残骸)の 中間赤外線サイエンス
電離領域の遠赤外輻射 (物理的取り扱い)      Hiroyuki Hirashita    (Nagoya University, Japan)
Damped Lya Clouds ダスト・水素分子
トランジット法による低温度星まわりの地球型惑星探索と大気調査
S3: 恒星とブラックホール (上田、野上、加藤)
スケジュール 水曜3限( 13:00-14:30 ),A棟1333号室 10月 11月 12月 1月 2月 10/08 11/5 や②
銀河物理学特論 I: 講義1-1:近傍宇宙の銀河の 統計的性質 Kauffmann et al
すばる望遠鏡を用いた 太陽系外惑星系の観測的研究
神戸大大学院集中講義 銀河天文学:講義6 特別編 観測装置の将来計画
第5章 参考資料 星間塵 Interstellar dust
土野恭輔 08s1-024 明星大学理工学部物理学科天文学研究室
銀河物理学特論 I: 講義3-4:銀河の化学進化 Erb et al. 2006, ApJ, 644, 813
SFN 282 No 担当 内山.
銀河風による矮小銀河からの質量流出とダークマターハロー中心質量密度分布
COSMOSプロジェクト: z ~ 1.2 における星生成の環境依存性 急激な変化が起こっていると考えられる z ~1 に着目し、
村岡和幸 (大阪府立大学) & ASTE 近傍銀河 プロジェクトチーム
坂本強(日本スペースガード協会)松永典之(東大)、 長谷川隆(ぐんま天文台)、 三戸洋之(東大木曽観測所)、 中田好一(東大木曽観測所)
銀河・銀河系天文学 星間物理学 鹿児島大学宇宙コース 祖父江義明 .
アーカイブデータを用いた超新星の再調査 ―精測位置と天体の真偽― 九州大学大学院 理学府物理学専攻宇宙物理理論
地上 8-10m 望遠鏡の将来装置計画のまとめ 国際協力・時間交換の議論のベースとして 次世代装置開発の議論のベースとして
S3: 恒星とブラックホール (上田、野上、加藤)
水素核融合炉 7MeV/n.
棒渦巻銀河の分子ガス観測 45m+干渉計の成果から 久野成夫(NRO).
実習課題B 金属欠乏星の視線速度・組成の推定
星形成時間の観測的測定 東大天文センター M2 江草芙実 第4回 銀河shop 2004/10/19.
COSMOS天域における ライマンブレーク銀河の形態
論文紹介 Type IIn supernovae at redshift Z ≒ 2 from archival data (Cooke et al. 2009) 九州大学  坂根 悠介.
松原英雄、中川貴雄(ISAS/JAXA)、山田 亨、今西昌俊、児玉忠恭、中西康一郎(国立天文台) 他SPICAサイエンスワーキンググループ
2018/09/13 分子雲: 星間ダスト進化と 惑星形成を架ける雲 (Molecular clouds: connecting between evolution of interstellar dust and formation of planets) 野沢 貴也 (国立天文台 理論研究部)   
星間物理学 講義4資料: 星間ダストによる散乱・吸収と放射 2 銀河スケールのダスト、ダストの温度、PAH ほか
塵に埋もれたAGN/銀河との相互作用 今西昌俊(国立天文台) Subaru AKARI Spitzer SPICA.
S5(理論宇宙物理学) 教 授 嶺重 慎 (ブラックホール)-4号館409 准教授 前田 啓一(超新星/物質循環)-4号館501
miniTAO望遠鏡による Be型星の Paschen α観測
銀河物理学特論 I: 講義3-5:銀河の力学構造の進化 Vogt et al
セイファート銀河中心核におけるAGNとスターバーストの結び付き
シミュレーションサマースクール課題 降着円盤とジェット
COE外国出張報告会 C0167 宇宙物理学教室 D2 木内 学 ascps
The Baryonic Tully-Fisher Relation
講義ガイダンス 「宇宙の物質循環を理解するために使われる物理・化学・数学」
3.8m新技術望遠鏡を用いた 超新星爆発の観測提案 -1-2mクラス望遠鏡による成果を受けて-
星間ダストの起源と量 (On the origin and amount of interstellar dust)
銀河系内・星形成・系外惑星 系内天体の観点から
天文・宇宙分野1 梅村雅之 「次世代スーパーコンピュータでせまる物質と宇宙の起源と構造」
COSMOS天域における赤方偏移0.24のHα輝線銀河の性質
観測的宇宙論ジャーナルクラブ 2006年5月22日 成田 憲保 1
超高角度分解能X線望遠鏡 Xmas Project
星間物理学 講義7資料: 物質の輪廻と銀河の進化 銀河の化学進化についての定式化
形成期の楕円銀河 (サブミリ銀河) Arp220.
S5(理論宇宙物理学) 教 授 嶺重 慎 (ブラックホール)-4号館409 准教授 前田 啓一(超新星/物質循環)-4号館501
(Pop I+II連星起源と) 初代星連星起源 ロングガンマ線バースト
星間ダストは主にどこで 形成されるか? 野沢 貴也 (Takaya Nozawa) (国立天文台 理論研究部) 共同研究者
どんな天体がX線を出すか? MAXIのデータを1年半に わたり集積した全天X線画像
Presentation transcript:

2020年代の光赤外線天文学 「恒星物理・超新星・晩期型星」 サイエンス 2014/09/08 2020年代の光赤外線天文学 「恒星物理・超新星・晩期型星」 サイエンス 「恒星物理・超新星・晩期型星」検討班      発表者: 野沢 貴也(NAOJ)            松永 典之(東大・本郷)       班長: 田中 雅臣(NAOJ)

メンバー (15名) 青木 和光 (銀河系・局所銀河:星(星団)班 班長) 板 由房 植田 稔也 大仲 圭一 青木 和光 (銀河系・局所銀河:星(星団)班 班長) 板  由房 植田 稔也  大仲 圭一 左近 樹  (銀河系・局所銀河:星間物質班 班長) 須田 拓馬 田中 雅臣 (班長) 冨永 望 野沢 貴也 (銀河系・局所銀河:星間物質班 兼任) 橋本 修  (編集委員) 松永 典之 (銀河系・局所銀河:星(星団)班 兼任) 森谷 友由希 守屋 尭  諸隈 智貴 (クエーサー AGN班 兼任) 山口 正輝 2014年3月以降に 加わったメンバー

活動の報告 2014/3/18: 第1回 face-to-faceミーティング 8名参加 各分野の「未解決問題」の同定 2014/3/21: 光赤天連総会 2014/4: プロジェクトのサマリースライド 2014/6/16-18: 第2回 face-to-faceミーティング(検討会) 12名参加 (+周辺分野より5名) # うち海外から3名 実際のサイエンスケースの提案、恒星分野を貫く問題の議論 2014/9/8-10: 光赤天連シンポジウム(今日)

「恒星物理」の三本柱 恒星の各進化段階はどう繋がっていて 宇宙に何をもたらすのか 質量放出の理解 元素の起源の理解 連星進化の理解 (*ダスト形成を含む) 元素の起源の理解 連星進化の理解 (*ダストの起源を含む)

TZO? (Thorne-Zyktow obj.) 具体的な観測提案(一部)  AGB星の高空間分解分光  RSGの直接撮像 超新星親星のモニタリング 質量放出の理解 元素の起源の理解 連星進化の理解 金属欠乏星を見つける NS mergerを見つける 超新星ダストの観測  X線連星、Be星ガス円盤  TZO? (Thorne-Zyktow obj.) Ia型超新星の起源

1-1. Summary of observed dust mass in CCSNe missing-dust problem Indebetouw+2014 Far-IR to sub-mm observations revealed that ~0.1 Msun of dust grains can be produced in the ejecta of SNe

1-2. Dust mass and size ejected from SNe II Nozawa+2003, 2007 ‐ 形成されるダストの組成・サイズは?  (形成されたダストがリバースショック  によってどれだけ破壊されるかに重要) SNe II 超新星で形成されるダストのサイズは 比較的大きい (>0.1 μm) だろう

1-3. Dust formation in Type IIn SN 2010jl ➜ ejectaで形成されるダストの話ではない Power-law size distribution ・ α : ~3.5 ・ maximum radius : ~3-4 µm (>0.5 μm) Gall+2014, Nature

1-4. Dust properties in Type IIn SN 2010jl SN 2010jlで形成されるダストのサイズは小さい (< 0.1 μm) Maeda, TN et al. (2013)

1-5. Caveats on Gall et al. (2014) paper Dust formed in the ejecta Gall+2014, Nature Dust formed in cool dense shell Pre-existing circumstellar dust II型超新星でこの時期にダスト量がどうなっているか知りたい 超新星ejectaで形成される ダストとcool dense shellで形成されるダストを一緒くた にして、ダスト質量の進化を 議論すべきではない

2-1. Why stellar mass-loss is important? 質量放出はなぜ重要か?  ‐星の進化(特に後期段階)を決める、元素合成にも影響  ‐ダストの主要な形成場所  ‐星間空間中での(特に重元素)ガスとダストの循環 長年の問題 ➜ 質量放出の駆動機構がわかっていない  ‐pulsation? ➜ pulsationがない星もmass lossしている  ‐line-driven? ➜ LBVsやWR starsでは重要でありそう  ‐回転、磁場、表面対流、連星相互作用、、、  ‐dust-driven? ➜ C-rich星(carbon dust)ではうまく説明できる        ➜ O-rich星(silicate dust)ではうまく作用しない   ➜ 鶏卵問題(質量放出が先かダスト形成が先か?)

2-2. Chicken and egg argument on mass loss Dust-driven windについての鶏卵問題 ダストが形成されれば、ダストが うける輻射圧によりガスは加速 される(質量放出率は高くなる) ガスが星表面から放出されな ければ(質量放出率が高くな ければ)ダストは形成されない Mauron & Josselin (2011) x-axis: 60 µm-flux based dust-to-gas mass ratio=200

2-3. Resolving chicken and egg argument ダストは星からどれくらいの距離で形成され始めるか? ダストに働く輻射圧によって本当にガスは加速されるのか? 最終的にどのようにガスとダストは星間空間に放出されるか? ➜ 可視光/赤外線の高分散分光・高空間分解能の観測が必要不可欠 mid-infrared (17.7 µm) image of a red supergiant Antares with the VLT (VISIR, spatial resolution of ~0.5 arcsec) Ohnaka 2014

3-1. Variety of core-collapse supernovae 観測された超新星のタイプの割合 重力崩壊型超新星の多様性は、爆発時の外層の有無に起因する ➜ 爆発直前の質量放出史に依存する 大質量星の(古典的)進化理論では、 - Type II-P: MZAMS = 8-25 Msun - Type IIL/IIb: MZAMS = 25-35 Msun - Type Ib/Ic SNe : MZAMS > 35 Msun Smith+2011 35 Msun 守屋尭さんのスライドより 25 Msun

3-2. Red-supergiant problem 爆発前の画像から同定されたII-P型超新星の親星は、その質量の上限が~18Msun(25 Msunより小さい)と見積もられる ➜ ~18 Msunより重い星は、水素外層を     まとった赤色超巨星として爆発しない 理論は質量放出率を過少評価している? ‐従来よりも一桁程度高い質量放出率を  適用しても、超新星の多様性(親星質量  との関係)を説明することはできなさそう                   (Chieffi & Limongi 2012) ‐厚い外層を持たないType IIL/IIb/Ib/Ic    SNeは、連星の相互作用によって外層  を失うのではないか? Smartt (2009) Mauron & Josselin 2011

3-3. Progenitor(s) of Type IIb SN 2011dh ○ SN 2011dh (Type IIb) - 爆発時の質量 : ~15±3 Msun (Bersten+2012) - 親星はYSG(爆発前の画像) (Maund+2011, van Dyl+2011) - モデル計算 ➜ progenitor(s) は16Msun+10Msunの連星系     (Benvenuto+2013) - 爆発の1160日後にHST(UV)で    観測したところ、SN 2011dhの   位置に、B型星と思しき天体を   発見 (Folatelli+2014) ➜ SN 2011dhは、連星系であっ    たことがほぼ確定 Folatelli+2014 SN 2011dhは、連星系のcompanionが発見されたType IIb SNeの2例目 (1例目はSN 1993J) ➜ Type IIbが連星系である確率 : 2/2

3-4. Resolving red-supergiant problem 爆発しそうな大質量星のモニター観測  ‐系内だけでなく多くの銀河中のRSGs、LBVs、WRsを    できるだけ頻繁に(月1?年1?)  ‐4m(8m)望遠鏡もモニター観測で使用することになるかも その他の課題(重力崩壊型超新星の多様性について)  ‐電子捕獲超新星(MZAMS = 8-10 Msun)     暗い?厚いダストをまとっている(super-AGB stars)?  ‐Type IIn SNe (全重力崩壊型超新星の10%)    爆発の直前に大規模な質量放出  ‐LBVs, WRからの超新星爆発  ‐超高輝度超新星(super-luminous SNe)の起源

TZO? (Thorne-Zyktow obj.) 具体的な観測提案(一部)  AGB星の高空間分解分光  RSGの直接撮像 超新星親星のモニタリング Dust-driven windsの 鶏卵問題 質量放出の理解 missing-dust problem in Type II supernovae 赤色超巨星問題 元素の起源の理解 連星進化の理解 metal-poor starを見つける NS mergerを見つける 超新星ダストの観測  X線連星、Be星ガス円盤  TZO? (Thorne-Zyktow obj.) Ia型超新星の起源

将来プロジェクトへの要請 30m級望遠鏡を使った高分散分光観測 R > 10000? (~1 km/sのガスの運動を分解したい) 空間情報も一緒に 高分散分光+偏光 (ダストの運動) 中小口径望遠鏡を使ったモニター観測(撮像も分光も) 2020年代には8m望遠鏡も「中口径」(4mも) 明るい天体(の周辺環境)を見たい コロナグラフ (WFIRST)、極小口径望遠鏡 赤外線高分散分光 R ~ 2000 (10”) 地上で一番長い波長にも期待(TAO ~40 um)