げっ歯類を用いた毒性試験用統計解析ツールの 決定樹に組み込まれているノンパラメトリックの Dunnett型順位和検定の変遷 小林克己 NITE Qsar DB構築・福田合宿資料/2011-11-4&5
試験責任者は低用量群をNOELとしたい 本試験の前に,2週間程度の小規模試験を実施し用量を設定する. 中には急性毒性値(LD50)を参考に本試験を設定する場合もある. 低毒性が予想できる場合は,0, 100, 300, 1000 mg/kgが一般的である. 一般的:対照群,低用量群,中用量群,高用量群 + (最高用量群)の4または5群を設定する. NOELとLOELを設定したい. Qsar DB構築・福田合宿資料/2011-11-4&5
DB構築に使用した毒性試験報告書数 出典 試験数 国立衛研 265 NITE 27 経産省 23 NTP短期試験 57 124 学術論文 30 計 526 Qsar DB構築・福田合宿資料/2011-11-4&5
NOELとNOAEL/日本トキシコロジー学会(JTS) 生物学的なすべての影響が対照群に対して統計学的に有意な変化を示さなかった最高投与量. NOAEL 毒性学的なすべての有害影響が認められない最高用量. 有害影響があるかどうかの判断は, 毒性専門家によるとされているが, 国際機関を含めて多くの機関では基質的変化を伴わない血清生化学値あるいは器官重量の増減, または代償的な変化は有害性と見なさないとしている. Qsar DB構築・福田合宿資料/2011-11-4&5
化審法とOECD毒性ガイドラインの評価 化審法 OECD 「最低用量は試験期間を通じて被験物質による毒性影響が発現しない量とする」(慢性毒性試験の「用量」の項の記載).「NOEL (mg/kg)」「NOEL の推定根拠とした変化」を記載する(試験結果報告書様式の欄). NOAEL Qsar DB構築・福田合宿資料/2011-11-4&5
化審法の評価 収集した毒性試験報告書の多くは,統計学的有意差を根拠にNOELを採用している. 最近の収集データは,NOELとNOAELの併記およびNOAELの表記の傾向にある. Qsar DB構築・福田合宿資料/2011-11-4&5
Dunnett型ノンパラメトリック検定は,使用できない 決定樹を用いている毒性試験では,80%程度の頻度で現在も使用されている. 検出力は,極めて悪い. 低用量群は,絶対有意差(P=5%)が認められない. 日本のみで使用されている. 最近では,これに代わって検出力の高いSteelの検定.これは,別名ノンパラダネットセパレートタイプともいう. Qsar DB構築・福田合宿資料/2011-11-4&5
28日間反復投与毒性試験に 使用された決定樹/悪い例 use rate;23/122 Bartlett’s test P>0.05 P<0.05 Kruskal-Wallis’s H test ANOVA P<0.05 P>0.05 P<0.05 P>0.05 End End Group size Group size Same Diff. Diff. Same Dunnett’s test Scheffé’s test Non-para type Dunnett’s test Non-para type Scheffé’s test P<0.05, 0.01 Qsar DB構築・福田合宿資料/2011-11-4&5
バートレットの検定で不等分散・ 有意差アリ(P < 0.05)とは マウスの飲水量(g/week) Qsar DB構築・福田合宿資料/2011-11-4&5
しかし,救いは Bartlettの検定によって等分散が悪くノンパラメトリック のダネット型検定に流れる定量値は,全体の N = 4, 5程度では(化審法),8%程度, N = 20程度では,16%程度, N = 50程度では,35%程度, である. この決定樹の経路を示している試験機関は,安評の みである. Qsar DB構築・福田合宿資料/2011-11-4&5
定量値に対するBartlettの等分散検定(5%水準)で有意差が検出される割合 試験期間(週) 動物種 試験数 有意差検出率(%) 12, 52 イヌ 3 164/2004 (8.0%) 13 ラット 7 198/1126 (18%) マウス 129/ 904 (14%) 平均 14 327/2030 (16%) 104 5 1198/3278 (37%) 882/2626 (34%) 10 2089/5904 (35%) 体重,飼料摂取量,飼料効率,血液および生化学的検査値,尿検査値,器官重量およびその体重比などを示す.Bartlettの検定は,N数10以上に使用と正書に述べられている. Qsar DB構築・福田合宿資料/2011-11-4&5
ノンパラメトリックDunnettの多重比較検定の呼び方 同一検定法 使用状況 出典 ノンパラダネット ノンパラダネット(ジョンイト型) ダネットの順位和検定 ダネット型順位和検定 日本のみ 佐久間(1981), 山崎(1981), 吉村(1996) ノンパラダネット(セパレート型) Steelの検定 日本と 外国 Steel (1959) Qsar DB構築・福田合宿資料/2011-11-4&5
順位和検定による低用量群で有意差を 検出できる1群内の最低標本数 ・・・最高の用量相関性を示した場合・・・ 検定法 4群設定 5群設定 Scheffé type 22 40 Dunn's test 19 30 Tukey type 18 32 Dunnett type 15 26 Williams-Wilcoxon 8 12 Steel 4 6 Mann-Whitney U 3 (2群間検定/参考値) Qsar DB構築・福田合宿資料/2011-11-4&5
Dunnett 型順位和検定による低用量群で有意差を検出できる1群内の最低標本数 最高の用量相関性を示した場合 個体の順位 1→15 16→30 31→45 46→60 対 ●●●●●●●●●●●●●●● 低 中 高 Dunnett 型順位和検定は1982から長期にわたり使用されている. 化審法の28日間反復投与には使用できない. 最近では,代わってSteelの検定が常用されている.化審法では? Qsar DB構築・福田合宿資料/2011-11-4&5
Dunnett 型順位和検定による検出力 ---有意差が検出できない例--- 群 個体の順位 1→15 16→30 31→45 46→60 対 ●●●●●●●●●●●●●●● 低 中 高 Dunnett 型順位和検定は1982から長期にわたり使用されている. 化審法の28日間反復投与には使用できない. 最近では,代わってSteelの検定が常用されている.化審法では? Qsar DB構築・福田合宿資料/2011-11-4&5
Non-parametric Dunnett とSteelの検出力 (小林ら, 2000) Qsar DB構築・福田合宿資料/2011-11-4&5
Steelの順位和検定による低用量群で有意差を 検出できる1群内の最低標本数 最高の用量相関性を示した場合 個体の順位 1→4 5→8 9→12 13→14 対 照 ●●●● 低用量 中用量 高用量 Steelの検定は,別名セパレート型ダンネットの多重比較検定と呼ばれている. 最近では,一般毒性試験にSteelの検定が常用されている. Qsar DB構築・福田合宿資料/2011-11-4&5
28日間反復投与毒性試験に 使用された最新の適した決定樹 use rate;20/122 Bartlett’s test P<0.05 P>0.05 Dunnett’s test Steel’s test One-sided, P<0.05, 0.01 Qsar DB構築・福田合宿資料/2011-11-4&5
まとめ 毒性試験では,ノンパラメトリックDunnett型検定の使用ができない. 毒性試験では,低用量群に有意差の検出差ができない. 有意差が検出できる1群内動物数は15匹. 使用できる検定は,ノンパラメトリックDunnettのセパレート型 = Steelの検定 有意差が検出できる1群内動物数は4匹. Steelの検定の欠点は高用量群に検出力が低い. Qsar DB構築・福田合宿資料/2011-11-4&5