血液透析患者の足病変がQOLに与える影響の調査 ~SF-36v2を使用して~

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血液透析患者の足病変がQOLに与える影響の調査 ~SF-36v2を使用して~ 医療法人社団スマイル クレア焼山クリニック ○藤井 恵子、永谷 美子、桐林慶

はじめに 血液透析患者の足病変の出現は、QOL維持・向上の妨げとなる重要な因子である。足病変で最も重要なことはその予防であるといえるが、外来血液透析患者は限られたクリニック滞在時間の中で、患者自身が痛みや変化を訴えない限り見逃しがちな症状であり、発見時はすでに重症化しているケースも少なくない 。 当院でも足病変の重症化を予防する目的で、3年前より患者の足病変のリスクに応じた頻度でフットケアを行っている。

目的 今回、MOS 36-Item Short-Form Health Survey ver.2 (以下SF-36v2とする) を用いて当院血液透析患者のQOLの現状把握を行い、足病変のリスクがQOLに与える影響を知る。

当院のフットケアの経緯 2011年~フットカルテ作成・導入 上記項目に加え、生活背景・セルフケアに影響する身体状況 2010年~フットケア開始  ※ 開始時、当院血液透析全患者を対象に以下の項目で観察を行った。   ○足背動脈・膝窩動脈触知   ○胼胝 、鶏眼、浮腫、冷感、疼痛、痺れ   ○皮膚色   ○皮膚の性状   ○爪の性状   ○足全体の状態   ○その他検査 SPP CAVI モノフィラメント  2011年~フットカルテ作成・導入  上記項目に加え、生活背景・セルフケアに影響する身体状況  により足病変へのリスク評価を行い、患者の自覚症状に関わ  らず、設定した頻度により観察を行っている。

対象・方法 対象:血液透析患者86名中、SF-36v2によるアンケートに おいて有効回答の得られた63名(男性41名、女性22名)    おいて有効回答の得られた63名(男性41名、女性22名)    平均年齢 68.4±10.1歳     平均透析歴 6.6±4.9年 方法:対象患者を、自覚症状の有無にかかわらず、足病変障害    あり群(フットケア回数、1回以上/月未満)と、障害なし   群(フットケア回数、1回/月以上)に分け、SF-36v2を   用いQOLの比較検討を行った。

結果(記述統計表) 国民標準値に基づいた得点 平均 標準偏差 標準誤差 PF 身体機能 59.4 31.6 3.9 RP 日常役割機能(身体) 55 31.4 4 BP 体の痛み 62.6 29.1 3.7 GH 社会生活機能 45 16.2 2 VT 全体的健康感 49.5 24.9 3.1 SF 活力 70 25.9 3.2 RE 日常役割機能(精神) 57.6 32.5 4.2 MH 心の健康 65.9 22.2 2.8 PF_N 28.5 22.8 RP_N 31.8 16.7 2.1 BP_N 13 1.6 GH_N 40.4 8.6 1 VT_N 43.1 12.8 SF_N 41.5 13.3 RE_N 34.9 MH_N 46.9 11.9 1.5 PCS 32.3 17.6 2.3 MCS 52.3 10.6 1.4 RCS 36.9 14.5 1.9 国民標準値に基づいた得点 身体的・精神的・役割/社会的側面によるサマリースコア

結果1 7 * * * * * あり群 なし群 スコアの平均値 *:P<0.05 mean±SE 90 * * * * 80 70 * スコアの平均値 60 50 あり群 なし群 40 30 20 10 PF RP BP GH VT SF RE MH 足病変障害あり群は、なし群に比べて8つのサブスケールすべてにおいて低下を認めた。 中でもBP(痛み)、GH(全体的健康感)、SF(社会生活機能)、RE(日常役割機能)、MH(心の健康) に関しては有意差を認めた。 7

結果2 (国民標準値に基づくスコアリング) 60 50 40 30 20 10 8 * * * * * あり群 なし群 国民標準値 *:P<0.05 mean±SE (国民標準値に基づくスコアリング) 60 * * * 50 * * 国民標準値 40 スコアの平均値 あり群 30 なし群 20 10 PF_N RP_N BP_N GH_N VT_N SF_N RE_N MH_N 足病変障害あり群がなし群に比べQOLが低下していた。 BP(痛み)、GH(全体的健康感)、 SF(社会生活機能)、RE(日常役割機能)、MH(心の健康)に関しては有意差を認めた。 BP(痛み)、 MH(心の健康)でのなし群においては国民標準値に達していた。 8

結果3 PCS MCS RCS (スリーコンポーネントサマリースコア) 60 50 40 30 20 10 9 * mean±SE (スリーコンポーネントサマリースコア) 60 * 国民標準値 50 スコアの平均値 40 あり群 30 なし群 20 10 PCS MCS RCS PCS(身体的側面)、RCS(役割/社会的側面)において国民標準値を下回り、 RCS(役割/社会的側面)ではあり群に有意な低下が見られた。 MCS(精神的側面)は両群とも国民標準値に達していた。 9

考察1 血液透析患者は様々な合併症を有しており、QOLを低下させる。足病変もその要因の一つであり 、今回すべてのサブスケールで足病変あり群が、なし群に比べQOLが低下していたという結果から、患者の身体のみならず、心の健康感をも低下させている現状を知ることができた 。 これにより患者のフットチェックと共に、精神面へのケアを行うことの重要性を改めて認識し、今後も足病変の予防を行っていくべきであると考える。

考察2 足病変なし群が、BP_N(痛み),MH_N(心の健康)において国民標準値に達していたこと、またサマリースコアにおいても両群がMCS(精神的側面)で国民標準値に達していたことは、患者の様々なバックグラウンドの関与が示唆され、今後はその要因を探るべく情報収集を行い、より綿密なアセスメントによって患者への関わりを深めていくことが大切であると考える。今回の結果をもとに更なるQOLの維持、向上に努めていきたい。

結語 ❑今回SF-36v2による調査で、当院血液透析 患者のQOLの現状を把握することができた。 ❑血液透析患者の足病変は障害あり群が、なし  群に比べ、すべてのサブスケールにおいて  QOLが低下しており、フットケアの重要性を  再認識した。 ❑ QOL調査が、患者のアセスメントツールと  しても有効であった。