坂本彰弘(岡山天体物理観測所) 栗田光樹夫(京都大学)

Slides:



Advertisements
Similar presentations
磁歪素子を用いた3軸球面モータの 駆動原理と特性評価
Advertisements

データ取得・解析ソフトウェア CRD分光法用プログラム 各¥600,000より (A/D変換ボード付の選択可)
伝達事項 皆さんに数学と物理の全国統一テストを受けても らいましたが、この時の試験をまた受けていただ きます。
定在波型熱音響エンジンにおける 臨界温度比推定のための適応制御系の 安定性に関する実験と理論の比較 長岡技術科学大学
24 両端単純支持梁に対する外乱抑制制御系の製作
望遠鏡制御関係現状報告 ナノオプトニクス・エナジー ナノオプトニクス研究所 下農 淳司.
フィードバック制御に基づく 定在波型熱音響エンジンにおける 自励発振条件の特徴付け
超磁歪アクチュエータを用いた キャビテーション発生機構における 機械的特性の解析
セグメント鏡の研削加工 所 仁志 株式会社ナノオプトニクス・エナジー
次世代超大型望遠鏡の 広視野補償光学系の光学設計
第11章 機構と機械要素の概要 ●マイコン回路とプログラミング ●センサと計測 ●アクチュエータ(モータ) ●機械制御法
プロセス制御工学 6.PID制御 京都大学  加納 学.
木造住宅の 常時微動観測 05TC012 押野雅大 05TC021 川村潤也.
28 梁の振動制御系における移動可能なアクチュエータの検討
1.Atwoodの器械による重力加速度測定 2.速度の2乗に比例する抵抗がある場合の終端速度 3.減衰振動、強制振動の電気回路モデル
3.8 m望遠鏡主鏡エッジセンサ 開発進捗 京都大学 理学研究科 M2 河端 洋人.
京大岡山3.8 m望遠鏡計画: 分割主鏡制御エッジセンサの開発
京大岡山3.8m新技術望遠鏡の開発XVI: 主鏡位置制御システム開発の進捗状況
セグメント研削工程の改善 所 仁志 名古屋大学大学院 理学研究科 光赤外天文計測学研究室
京大岡山3.8m新技術望遠鏡の開発XV: 主鏡位置制御システム開発の進捗状況 各アクチュエータ軸の10往復試験によるセンサの値の変化
鏡支持機構 分割鏡用センサ ドーム概算(内部のみ)
不安定な補償器を用いた 低剛性・高慣性比の 二慣性ねじり振動系における 外乱抑制制御性能の改善
2012年6月6日 京都大学宇宙物理学科修士二年 出口和弘
T2K実験 前置検出器のための 光検出器MPPC/SiPMの性能評価
みさと8m電波望遠鏡の 性能評価 富田ゼミ 宮﨑 恵.
京大岡山 3.8m 望遠鏡 分割鏡制御に用いる アクチュエータの特性評価
低周波重力波探査のための ねじれ振り子型重力波検出器
機械創造工学課程 08104288 鈴木翔 担当教員 小林泰秀 准教授
水平板を用いた消波機構における指向性 アクチュエータの境界要素法による性能解析
25 ロバスト制御に基づく柔軟ベルト駆動二慣性系の外乱抑制制御 機械創造工学課程 西村光博 担当教員 小林泰秀 准教授
DECIGO pathfinderのための 試験マスモジュールの構造設計・解析(2)
2013/05/18 主鏡制御の進捗状況 京都大学 木野 勝、 長友 竣.
28 PICマイコンを用いた能動騒音制御系の制御性能
大阪電気通信大学 工学部 電子機械工学科 入部正継
2013/02/09 望遠鏡技術検討会 3.8m望遠鏡の主鏡制御 京都大学 木野 勝.
位相カメラの進捗状況 京都大学修士1回 横山 洋海.
従動側角速度フィードバック による不安定化に基づく 二慣性系の外乱抑制性能の改善
機械創造工学課程 西久保智昭 担当教員 小林泰秀 准教授
制御系における指向性アクチュエータの効果
モデルに基づいた PID コントローラの設計 MBD とは モータ駆動系のモデリング モデルマッチング 5.1 節 出力を角速度とした場合
DECIGO pathfinderのための 試験マスモジュールの構造設計・解析
高分解能ビーム軌道傾きモニターの設計開発
26ロバスト制御に基づく片持ち梁の外乱抑制制御系の設計
ロボットの協調動作の研究: マップ作成とマップ情報を利用した行動計画
材質感提示のための振動を用いた力覚インタラクション環境の提案
小型JASMINE計画の状況       矢野太平(国立天文台)       丹羽佳人(京大).
栗田光樹夫 第29回望遠鏡技術検討会 於ナガセインテグレックス
C4 能動騒音制御を用いたループ管熱音響冷却機の製作
DPFのマスモジュールにおける残留ガス雑音の研究II
7.一次元ダクトの消音制御系における低コスト化
30 両端単純支持梁に対する外乱抑制制御系の製作 機械創造工学課程 11307489 古澤大輔 担当教員 小林泰秀 准教授
2013/02/09 主鏡制御の進捗状況 京都大学 木野 勝.
両端単純支持梁の フィードフォワード外乱抑制制御系における 指向性アクチュエータの効果
偏光X線の発生過程と その検出法 2004年7月28日 コロキウム 小野健一.
実橋のPC桁における鋼線破断のAE による連続モニタリング 日本フィジカルアコースティクス(株) 湯山茂徳、李 正旺 NIPPON WA
抗力への振動付加による 高剛性とすべり感提示
これまでの試験研削について 第8回新技術望遠鏡技術検討会 2007年1月6日 名古屋大学 板津、長尾、宇野、石井、本多 名古屋大 所 仁志.
第17回DECIGOワークショップ 2018.11.1 川村静児(名古屋大学)
低剛性・高慣性比の二慣性系の 外乱抑制制御問題に対して 任意の制御性能を達成する 不安定な補償器
第4班 王 健強 倉本吉和 須賀孝太郎 和田英志 服部修策 池内 玄
1.5層スペースフレームの 接合方法に関する研究
第 5 章 :周波数応答 5.1 周波数応答と伝達関数 周波数伝達関数,ゲイン,位相 キーワード : 5.2 ベクトル軌跡 ベクトル軌跡
TOBAの現状と今後の計画 坪野研輪講 2012年2月22日 岡田健志.
水平板を用いた消波機構における指向性 アクチュエータの境界要素法による性能解析
KAGRA用防振装置のプレアイソレータの性能測定
31 ループ管熱音響システムにおける管内圧力計測系の製作 機械創造工学課程 梅本康平 担当教員 小林泰秀 准教授
振動体の振幅を一定とする 振動発電機負荷のフィードバック制御 長岡技術科学大学 ○ 永井 和貴 齋藤 浄 小林 泰秀
長岡技術科学大学 大学院 工学研究科 機械創造工学専攻 髙山 誠 指導教員 小林 泰秀 准教授
圧電素子を用いた 高エネルギー素粒子実験用小型電源の開発
信号データの変数代入と変数参照 フィードバック制御系の定常特性 フィードバック制御系の感度特性
Presentation transcript:

坂本彰弘(岡山天体物理観測所) 栗田光樹夫(京都大学) 主鏡支持機構の評価報告 Ver 01 坂本彰弘(岡山天体物理観測所) 栗田光樹夫(京都大学)

主鏡支持機構のやくわり 鏡を歪めずにささえる アクチュエータの駆動を正しく伝える 十分な剛性

概要 主鏡支持機構の検証実験を行い、以下の事項を確認し、本支持機構が分割鏡システムとして矛盾なく仕様を満たすことを確認した。 脱着の作業性 主鏡支持機構と鏡の脱着が容易かつ十分な保持力を有すること 支持の剛性 剛性: アキシャル0.5 um/N、ラテラル0.2um/Nの剛性を有すること 再現性: 100 nmの位置再現性を有すること 伝達機構 リニアリティ: > 98 %リニアリティーを有すること 減速比: 設計値どおり1/10であること 分解能: 微小駆動に対して< 17 nmの分解能を有すること 応答速度 50 msの応答速度であること 固有振動数 鏡を含む支持機構の固有振動数が40Hzであり、設計値と矛盾しないこと また、この実験により明らかとなった改良点を報告する。

はじめに 3.8m新技術望遠鏡の主鏡支持機構は図に示すように、アクチュエータ・減速器・ツリーを介して裏面から鏡を9点で支持する構造となっている。この支持機構の性能評価及び制御モデル構築のために、実機と等価なシステムを実装した状態での応答特性を把握する必要がある。 トラスグローブ アクチュエータロッド 固定ブシュ 固定ナット 減速器 アクチュエータ ベース 位置決めピン Whiffle Tree×3 ロッド テコ ラテラルサポート

主鏡支持機構 ラテラル支持 支持機構と実験用の回転台 位置決めピン テコ Whiffle Tree×3 ロッド ×9 ラテラルダイアフラム 固定ブシュ アクチュエータロッド 減速器 固定ナット アクチュエータ 支持機構と実験用の回転台 ラテラル支持

ダミー鏡 外形:実機鏡と同じ、ただし平板 質量:70㎏ 厚み:45mm 材質:アルミニウム 裏面にはラテラル支持が取り付けられる穴加工が施されている。

脱着の作業性 実験方法 結果 結論 回転支持台に載せた主鏡支持機構とダミーブランク ダミー鏡をチェーンブロックで吊り上げ支持機構に搭載する。 作業時間:5分程度。 位置再現性:P-V=70 um 結論 円滑に作業ができ、とくに問題はなかった。 位置決め機構に改善の余地がある。 回転支持台に載せた主鏡支持機構とダミーブランク

ラテラル支持の剛性 実験方法 結果 結論 ダミー鏡の側面にラテラル方向に外力を加え、ラテラル方向の変位を計測した。 ラテラル剛性 1 um/数 Nm または10N 結論 鏡の位置誤差の許容値は平行移動に50 um、回転方向に0.05度(計測点では35 um)であり、得られた変位は想定される外力と合わせて十分小さい。 計測点 外力

静的再現性 実験方法 結果 結論 30 20 10 -10 -20 変位 um -30 ブランクに外力を加え、解放した後のブランクの位置を計測 結果 およそ100 nm 結論 十分な再現性である また応答も十分早い (固有振動数) フィードフォワードに対応 押す ぱっと離す 引く 30 20 10 -10 -20 -30 変位 um 25 nm -119 nm -3 nm

伝達機構 実験方法 主鏡支持機構の主鏡傾きを0度とする アクチュエータに860nmの指令を与える 変位センサでダミー鏡上面の変位をサンプルレート250Hzで計測する 計測点 アクチュエータロッド 減速器 アクチュエータ ベース Whiffle Tree×3 テコ

伝達機構 リニアリティと減速比 実験方法 結果 結論 アクチュエータに指令を送り、期待される出力と実際の駆動量をダイヤルゲージで計測した。計測点はダミー鏡面 結果 減速比との差はリ2%であった(リニアリティ>98%)。 結論 十分なリニアリティの達成を確認した。 指令値(um) 指令値と出力値の偏差(um)

伝達機構 分解能 実験方法 130 nm/Stepを10ステップずつ往復駆動させ、各ステップの分散を計測した 結果 RMS = 17 nm 結論 十分な分解能を得た ※駆動量を減らせばさらに小さい値がでると予想される(アクチュエータ単体なら5 nmほど) 縦軸:変位出力、 横軸:時間(秒) 10ステップ=1300 nm 1.4 1.2 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0 -0.2 0   4   8   12   16   20   24

伝達機構 応答速度 結果 ~50 msで応答 結論 十分はやい応答性を得た 制御帯域20 Hzまでは可能

固有振動数 実験 結果 結論 ダミー鏡を木槌でたたき、ダミーブランクの変位を250 Hzでサンプリングした 40Hzが固有振動数 ツリーに5㎏の負荷で25umの変位がった。これよりアクチュエータの剛性k = 5*9.8/25*10^6であり、1点当たりの鏡と支持機構の質量を30㎏とすれば、固有振動数はf = sqrt(m/k)/2πより、40 Hzとなり、振動試験と一致する。 結論 十分な剛性を達成した。 ハンマリング 縦軸:変位(mm)、 横軸:時間(ms) 周波数特性 縦軸:振幅 、横軸:周波数

まとめ 試験項目 結果 目標 評価 Keck 脱着作業性 良好。特に問題ない 合格 位置再現性 P-V=70 um 30 要改良 ラテラル剛性 um/N 0.5 0.8 アキシャル剛性 um/N 0.2 TBD 0.04 0.017 ラテラル再現性 um 数 リニアリティ % 98 微小駆動(最小分解能) RMS =17 nm RMS = 20 nm 応答速度 ms 50 固有振動数 Hz 40 100 駆動レンジ mm 1.3 0.6 駆動速度 um/s 370 10