第9条改正について考える 1026588c 谷央輔 2012年1月23日
憲法第9条 第2項 前項の目的を達するため、陸海空軍その 他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、 これを認めない。 第1項 日本国民は、正義と秩序を基調とする国 際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、 武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解 決する手段としては、永久にこれを放棄する。 第2項 前項の目的を達するため、陸海空軍その 他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、 これを認めない。
憲法9条の成立とその後の歴史 1945年 日本敗戦 1950年 朝鮮戦争 1954年 自衛隊法成立 1960年 安保闘争 ~冷戦終結~ 各年代のできごとをピックアップ! 1945年 日本敗戦 1950年 朝鮮戦争 1954年 自衛隊法成立 1960年 安保闘争 ~冷戦終結~ 1990年 湾岸戦争 1991年 PKO協力法成立 1996年 日米安全保障協働宣言
1945年 日本敗戦 GHQによる占領統治 徹底した民主、非軍事化の占領政策 戦前日本への脅威から、軍隊を持たせない憲法 1945年 日本敗戦 GHQによる占領統治 徹底した民主、非軍事化の占領政策 戦前日本への脅威から、軍隊を持たせない憲法 →占領軍の統治憲法という性格を持つ 国民には好意的に受け入れられた。
1950年 朝鮮戦争 警察予備隊、海上警備隊の誕生 (GHQの戦略転換) 海上警備隊による機雷撤去 →戦後すぐに日本人が従軍 1950年 朝鮮戦争 警察予備隊、海上警備隊の誕生 (GHQの戦略転換) 海上警備隊による機雷撤去 →戦後すぐに日本人が従軍 1951年 旧日米安保条約(日米同盟)の締結 →吉田ドクトリン 米軍に国家の安全を依存し、戦後復興する方法 を取る。
1954年 自衛隊法成立 陸海空三自衛隊の誕生 →個別的自衛権を行使することは可能であると 解釈 憲法成立時の解釈を変化させた 1954年 自衛隊法成立 陸海空三自衛隊の誕生 →個別的自衛権を行使することは可能であると 解釈 憲法成立時の解釈を変化させた アメリカに防衛を依存 →国家として、交戦権、軍隊がすでに必要な状 況であったと考えられる。 (鳩山一郎による改憲の動き→失敗)
1960年 新日米安全保障条約 米軍の日本防衛を義務化 1960年 新日米安全保障条約 米軍の日本防衛を義務化 アメリカが日本の防衛義務を負う見返りに、日 本の施設、区域を使うことができる相互補完関係 アメリカ 「日米同盟は、アメリカのアジア、 太平洋政策の要石」 1970年代末ソ連の爆撃機による領空侵犯が頻繁に 発生 →冷戦終結まで、ソ連という明らかな脅威の存 在=自衛隊、日米安保の必要性 →冷戦終結後、明確な脅威の消失
1990年 湾岸戦争(冷戦終結以降) イラクによるクウェート侵攻 ←国連(安保理)による、武力の行使 1990年 湾岸戦争(冷戦終結以降) イラクによるクウェート侵攻 ←国連(安保理)による、武力の行使 ※日本の貢献策が国際的評価を受けられなかった。 (クウェート政府の感謝広告) →国民の中で、自衛隊を派遣する必要性への認識 の高まり
1991年 PKO協力法成立 自衛隊の海外派遣が可能に(平和維持、人道的支 援目的) ←国家の軍隊の国際警察力としての機能の高まり 日本は、冷戦以前の安全保障政策を転換 五原則 ①当事者の停戦合意、②PKOの中立性、③当事者の受け入れ同意、④これら三つのうちどれかが崩れたら、直ちに引き揚げられる、⑤武器の使用は、隊員の生命などの防護のために必要な最小限度とする。
1996年 日米安全保障協働宣言 日米安保条約の見直し →「アジア、太平洋の平和のための条約」に再定義 1998年 周辺事態法 1996年 日米安全保障協働宣言 日米安保条約の見直し →「アジア、太平洋の平和のための条約」に再定義 1998年 周辺事態法 日本領土本体の脅威だけでない、「周辺事態」のな かでの米軍への日本の協力についての法的根拠が成 立 →後方支援が可能に 2001年 テロ対策特別措置法成立 2003年 イラク人道復興支援特別措置法成立 ⇒自衛隊の在り方の変化
憲法9条改正案、代替案 自由民主党「新憲法草案」第2項(第1項は変更なし) 日本の平和と独立および国土と住民の安全を確保するために、(日本は)首相を最高司令官とする自衛軍を保持する。 自衛軍は、第一項の規定に基づく任務を果たすための活動と並んで、法律にしたがい、国際社会の平和と安全を確保するため国際協力によって実施される出動に(参加し、)緊急時には社会秩序を維持し、(日本)国民の生命または自由を保護するため出動することができる。 公明党案 第9条の第2項をともに保存しながら、自衛戦力の存在に関する一項を加える 自衛隊を国連の指揮下におき、日本に駐留する国連警察軍の性格を持たせ、要請があればその一部をPKOに参加させる 憲法9条改正案、代替案
改正賛成派の意見 もともとアメリカにおしつけられた憲法である 憲法と現実とのねじれの解消 米国との同盟の強化 主権国家として軍を持つことは当然の権利である
改正反対派の意見 9条は、戦後の平和と繁栄の基盤である 歴史を反省する強いメッセージでもある 軍事力での問題解決には限界があり、9条の価値 を発展させるべきだ 米国の単独行動主義への、大きな歯止めを失う
一国平和主義 日本だけが平和ならば良いとする考え方 ・事なかれ主義 ・気配り八方美人的外交 →世界の平和という観点の欠落
スマートパワーの考え方 戦略国際問題研究所(CSIS) 「九・一一から六年後 スマートパワーと九・ 一一後の米国の安全保障戦略」 「九・一一から六年後 スマートパワーと九・ 一一後の米国の安全保障戦略」 ハードパワー(軍事力)とソフトパワー(情報、 宗教、文化、教育、技術、人の知恵)を組み合わ せた概念であり、同盟関係、統合的な開発、経済 統合、技術革新などを総合した要素を含む概念 →軍事力のみによる国防の限界
まとめ(論点) 憲法9条の、日本の安全保障政策に対する影響力 はどれだけあったか。 (日本の安全保障政策、対外戦略は基本的に国際 状況、米国の対外政策の2点によって決定されて はいないか) ≒改憲することにより、現在の状況は変わるか否 か。 交戦権、軍隊は国家の安全保障に必要不可欠か否 か。(→米軍なしの日本国家は軍隊を持たないで も東アジアで成立するか。国連中心の集団安全保 障、PMCの利用?)
参考文献 『日本の安全保障問題』森本敏編著 海竜社 『日本防衛再考論』森本敏著 海竜社 『日本の外交政策』西川吉光著 学文社 『日本の安全保障問題』森本敏編著 海竜社 『日本防衛再考論』森本敏著 海竜社 『日本の外交政策』西川吉光著 学文社 『憲法9条新鮮感覚』桜井均編 花伝社 『「平和憲法」を持つ三つの国』吉岡逸夫著 明 石書店 『戦後60年を問い直す』『世界』編集部編 岩波 書店