マクロ経済学初級II タイプIIクラス 白井義昌

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マクロ経済学初級II タイプIIクラス 白井義昌 第4回講義 マクロ経済学初級II タイプIIクラス 白井義昌

第4回講義の項目 4.1需要と供給 4.2有効需要の原理 4.3消費と貯蓄

海外部門 輸入 輸出 国内 政府 政府購入 総生産  GDP 財・サービス市場 消費 家計 生産者 投資 労働   土地    資本 生産への 投入 賃金・地代・利潤 要素  所得 利子所得 生産要素市場 貯蓄 労働・資本 貸し出し 借り入れ 資産市場 金融市場 利払い

有効需要の原理を理解する 短期の生産(所得)水準決定 総生産水準の決定 有効需要の原理を理解する 短期の生産(所得)水準決定

4.1 需要と供給 需要曲線:与えられた(提示された)価格の下で買い手が欲する需要量を決める。これら、価格と需要量の組み合わせを示す曲線。 4.1  需要と供給 需要曲線:与えられた(提示された)価格の下で買い手が欲する需要量を決める。これら、価格と需要量の組み合わせを示す曲線。 供給曲線:与えられた価格の下で売り手が望む供給量を決める。これら、価格と供給量の組み合わせを示す曲線。 市場均衡:需要量と供給量が一致するように価格が定まる。  均衡価格 均衡需給量 (次図を参照)

価格 需要曲線 供給曲線 均衡価格 均衡需給量 需要量 供給量

短期的に価格が変化しない状況を考える。   (次図を参照) 需要と供給はかならずしも一致しない。 与えられた価格の下で、欲せられる需要量、または望まれる供給量のどちらか少ない方が、取引量を決定することになる。 価格が高い水準で与えられているならば、需要量が取引量を決定することになる。

価格 需要曲線 供給曲線 価格 需要量 供給量 取引量

4.2 有効需要の原理 財市場において需要の内訳は、消費、投資、政府購入の3つがある(海外部門がある場合には純輸出も付け加わる)  4.2   有効需要の原理 財市場において需要の内訳は、消費、投資、政府購入の3つがある(海外部門がある場合には純輸出も付け加わる) これらをたし合わせたものが一国の総需要(Aggregate Demand)と呼ばれる。 AD=C+I+G+NX 有効需要の原理とは総生産量は総需要によって決定される(総生産量は総需要に見合うように調整される)という考え方である。

総生産量が総需要量を上回っているときは売れ残り(在庫)が出る。企業はこれを減らそうと生産量を減少させる。 逆に総生産量が総需要量を下回っているときには生産物は品不足になる。企業は生産量を増大させてこれに対応する。 総生産量と総需要量が一致した状態での生産量が均衡生産量とよばれる。また、そのような生産量は均衡水準にあるという。

総需要量 AD 45度 総生産量Y (総供給) AD>Y AD<Y 均衡総生産量

均衡総生産と国民所得勘定の恒等式 総需要はある価格と所得水準のもとで、人々が買いたいと思う財の量である。(計画された総需要) 国民所得勘定で測られた総支出は現実に買われた財の量である。 (現実の総需要)

均衡において、「計画された総需要」と「現実の総需要」は一致することになる。 理由:均衡において計画された総需要は総生産に等しい(均衡生産量)。それは人々の所得になり、その所得のもとで計画された総需要が現実の総需要になるからである。

考えるべきこと では、 計画された総需要はどのようにさだまるのか?? 消費はどのように決まるのか? 投資はどのように決まるのか? では、 計画された総需要はどのようにさだまるのか??   消費はどのように決まるのか?   投資はどのように決まるのか?   純輸出はどのように決まるのか?

4.3 消費と貯蓄

消費と貯蓄 計画された(望ましい)消費水準 Cd: 家計が望む財サービスの経済全体の消費量 計画された(望ましい)貯蓄水準 Sd:      Sd =Y- Cd -G 計画された消費はどのように決まるか?=    計画された貯蓄はどのように決まるか?

個人の消費貯蓄決定 現在の消費と将来の消費にはトレードオフがある。 消費者には消費の平準化動機がある: 現在の消費1単位の価格は将来の消費1+r 単位である。 ( rは実質利子率) 消費者には消費の平準化動機がある: 各時点の消費量を同等にしようとする。(ある時点だけの消費を増やそうとはしない)

現在の所得が現在の消費に 与える効果 現在の所得増大は、消費および貯蓄両方を増やす。 現在の所得が現在の消費に 与える効果 現在の所得増大は、消費および貯蓄両方を増やす。 消費の限界性向(marginal propensity to consume MPC):追加的所得のうち消費にまわされる割合。0と1の間の値になる。 経済全体では、Yの増大にともない、 Cdも増大するが、Yの増大ほどではない。   →貯蓄も増大する。

将来の所得が消費に与える効果 将来の所得増大は現在の消費を増やす。 現在の所得が一定であるならば、将来の所得増大は現在の貯蓄を減らすことになる。 応用:1991年のアメリカの不況は消費者の将来の所得に対する展望を悪化させ、現在の消費を減らした。

         The index of consumer sentiment, January 1987-December 1994

         Total consumption expenditures and consumption expenditures on durable goods, first quarter 1987 to fourth quarter 1994

純資産(国富)が消費に与える効果 国民純資産の増大は現在の消費を増大させる。 現在の所得が一定であるならば、それは現在の貯蓄を減少させる。 応用:1987年のアメリカ株式市場の暴落→消費の減少

実質利子率が消費に与える  効果 実質利子率の増大(変化)が消費に与える影響は二つの効果に分解できる。 代替効果: 所得効果:

代替効果 実質利子率の増大は貯蓄の収益率を上げる(将来の財が現在の財にくらべてやすくなる)ので現在の消費を減らす。

所得効果 実質利子率の増大は、 貸し手主体にとっては貯蓄を減らす(現在の消費を増やす)効果をもたらす。理由:以前より少ない貯蓄で同等の将来の利子収入を得ることができるから。 貸し手主体にとっては貯蓄を増やす(現在の消費を減らす)効果をもたらす。理由:利子負担の増加によって生涯の所得が減るから。

財政政策(政府購入)が消費に与える効果 政府購入の拡大は将来の増税を意味し、将来所得の減少を通じて現在の計画された消費を減らす。 政府購入の拡大は直接現在の貯蓄を減らす。         Sd = Y - Cd - G

図式によって消費の決定を考えてみよう 時点は現在と将来の二期間からなるとする。 y:ある個人の現在の実質所得 yf:ある個人の将来の実質所得 a:ある個人の現在時点での実質保有資産 c:ある個人の現在の実質消費 cf:ある個人の将来の実質消費 r:実質利子率

ある個人の予算制約 生涯にわたって支出可能な額の現在価値(present value of life time resources, PVLR): PVLR=y + yf/(1+r) + a 生涯にわたっての支出額の現在価値:     c + cf/(1+ r) 予算制約:  c + cf/(1+ r) =y + yf/(1+r) + a

将来の消費 cf 予算制約線 yf 1+r a y 現在の消費 c a+y

ある個人(消費者)の選好 以下の三つの仮定をおく 消費者は現在および将来の消費を両方とも多ければ多いほど満足度が高い。「単調性」仮定 現在と将来の消費の組み合わせ(cA,cfA)より(cB,cfB)を好み、かつ(cB,cfB)より(cC,cfC)を好む個人(消費者)は(cA,cfA)より(cC,cfC)を好む。「推移性」の仮定

3.現在と将来の財の消費の組み合わせ(cA,cfA)および(cB,cfB)の加重平均  (αcA+(1-α)cB, αcfA + (1-α) cfB)は  (cA,cfA)および(cB,cfB)よりも好まれる。   「凸性」の仮定

無差別曲線 同等に好ましい現在および将来の消費の組み合わせの軌跡を無差別曲線という。 無差別曲線上の現在および将来の消費のくみあわせは同等の満足度を消費者にもたらす。 上記三つの仮定の下では無差別曲線は次の図のように表される。

将来の消費 無差別曲線は右下がりである  単調性の仮定 cf B A C 現在の消費 c

将来の消費 右上にある無差別曲線ほど好ましい 満足度が高い 単調性の仮定 cf B A 現在の消費 c

将来の消費 無差別曲線は交わらない cf 無差別曲線が交わると次のような 矛盾が起こる。 AとBは無差別。 単調性の仮定よりCはBより好ましい。 推移性によりCはAより好ましくなる。 しかし、AとCは同じ無差別曲線上に あるので無差別。 これは矛盾 A C B 現在の消費 c

将来の消費 無差別曲線は原点にむかって凸である。 凸性の仮定 cf 点Aと点Bは無差別。 点Aと点Bの加重平均点C は凸性の仮定によってAおよび Bよりこのましいので必ずA またはBをとおる無差別曲線の 右上にこなくてはならない。 A C B 現在の消費 c

個人の最適消費点 予算制約線上のどの点で現在の消費と将来の消費を決定するのが個人にとって最適か? 無差別曲線が予算制約に接する点に現在の消費と将来の消費を決定するのが最適である。

貯蓄主体のケース 将来の消費 cf 最適消費点 貯蓄 y-c* 貸し出し cf* yf c* 1+r a 現在の消費 y c a+y

将来の消費 借り入れ主体のケース cf 借り入れ 返済額 最適消費点 yf 1+r a y 現在の消費 c a+y

貯蓄主体のケース 将来の消費 cf 消費点がこの範囲にくるときは、 消費者は貯蓄主体 消費点がこの範囲にあるときは、 消費者は貯蓄主体であるが、資産 をとりくずしている。 消費点がこの範囲に あるときは、消費者は 借り入れ主体である。 yf 1+r a 現在の消費 y c a+y

将来の消費 cf 現在の所得、将来の所得、そして 資産の増大は現在の消費および 将来の消費を増やす 1+r 現在の消費 c

利子率の増大: 代替効果によって現在の消費は減り、 将来の消費は増える A→B 所得効果によって現在および将来の 消費は増える。  B→C このふたつの効果を合わせたものが 利子率増大の効果となる。 将来の消費 cf C B A yf 1+r 1+r 現在の消費 c a y a+y

ケインズ型の消費関数 短期的な所得と消費には次のような関係が観察されている。(ケインズの消費関数) C=A+c・YD c: 限界消費性向  0<c<1 YD: 可処分所得 YD≡YーT  (T=0ならばYD=Y)

(ケインズ型の消費関数のもとでの)貯蓄関数 政府貯蓄は      政府収入-政府支出        Sgvt=T-G  として定義される。 民間貯蓄と政府貯蓄の和が国民貯蓄Sである。  S(Y)= Spvt(YD)+ Sgvt=Y-T-C(YD)+T-G         S(Y)=Y-C(YD)-G