移動ロボットの改良と遠隔操作 (Improvement of the robot and remote control) 国立岐阜工業高等専門学校専攻科 電子システム工学専攻2年 林 賢一(Kenichi Hayashi) 指導教官 長南功男(Isao Chonan) 長南研究室の林賢一です。これから移動ロボットの改良と遠隔操作の発表を始めます。
研究概要 図1.動作環境 視覚機能にカメラを用いたロボットの開発 廊下環境において自律移動するロボット 近年,様々なプロセスの自動化などのために、視覚機能にカメラを用いたロボットが多く開発され,その画像処理を行うことで自律移動をさせる研究が盛んに行われています. これまでの研究により,廊下環境においてロボットが自律移動するために必要な自己位置の検出方法はほぼ完成されました。 自己位置算出の方法を説明します。まず、幅木と呼ばれる廊下の壁下方にあるものと壁や床のコントラストが非常に高いことを利用して,カメラで取り込んだ廊下画像より壁と床との境界線を抽出し,無限遠点を算出します.その後、各画素の輝度差から幅木の境界線を描き,それを元に線分化処理を行います.そして,その線分の傾きから無限遠点を算出するという手順で画像処理を行います. 図1.動作環境
自律移動ロボットの実現 ロボット技術 (自己位置検出・ モータ制御) 情報通信技術 遠隔操作ロボット 単純自律移動 ロボット 多目的自律移動 しかし,実際にロボットが自律移動するには多くの課題があります。 そこで、本研究では自律移動を行わせるひとつの過程として,PHSによってロボットを遠隔操作することにしました。 常に状況が変化する動的環境のなか、単純な自律移動だけではカバーできないことがあります。 そのようなさまざまな事態に対処するために遠隔操作ロボットの実現を目指しました.また、遠隔操作ロボットであれば、動作環境が構内であるという制約を受けないため有効です。 多目的自律移動 ロボット
実験ロボット 移動ロボットの小型・軽量化 図2.旧型ロボット 図3.新型ロボット 現在,移動ロボットは小型・軽量化が進んでいますが,本研究で使用していたロボットは使用する機器に比べて不必要に大きく,重たいものでした. そのためモータにかかる負荷が大きくなり,回路などに負担をかけてしまうことにります.また,処理速度の向上のために分散処理を行うことが不可欠となります.そのため,ロボットはパソコンを搭載出来るような構造でなければなりませんが,旧型ではそれが不可能でした.このような理由から,新しくロボットの製作を行うことにしました. 設計にはロボット本体の小型・軽量化を行うとともに,さらに研究の幅が広がるような拡張性を持たせるよう注意しました。 図2がこれまで使用してきたロボットで、図3が今回新しく製作したロボットです。素材の変更などにともなって,重量は旧型の約47%,面積は約62%程度に収まりました。 図2.旧型ロボット 図3.新型ロボット
本研究は図4に示すシステム構成で行います.ロボットに搭載されたノートパソコンはPHSによってネットワークに接続し,LANにより遠隔操作パソコンと通信をします.遠隔操作パソコンからくる制御信号をもとにノートパソコンはモータドライバのマイコンに方向や速度情報を送る.その制御信号をもとにマイコンがPWM信号を作り,増幅してモータを回転させる. 図4.システム構成
ネットワーク通信 図5.通信手順 WINDOWS付属のWinSockAPIを使用 サーバーとクライアントのみを考慮 リアルタイム処理のため,接続型アプリケーションを採用 本研究において、PHSによる遠隔操作はWindowsに付属のWinSock APIを使用します. WinSock APIを使用すると、プログラマは2つの端点であるクライアント,サーバーのみを考えればよいので、通信経路の変更ができ有効です. コンピュータ間の接続は基本的に接続型アプリケーションと非接続型アプリケーションに大別されます. 接続型アプリケーションは会話の開始時に一度だけ識別情報を確認し,あとはデータを送受信します. 非接続型アプリケーションはデータを転送するたびに識別情報を確認します. 本研究はコンピュータ1対1でリアルタイム処理が必要であるため、接続型を採用しています. (手順の説明) 図5.通信手順
実験 PWM信号のデューティ比を変化させ,そのときモータに流れる電流を測定する(空転時・走行時). 左右のモータにさまざまな速度信号を入力し,ロボットを走行させる(加速・減速・旋回). 図4で示されるシステムで,実際に遠隔操作パソコンに移動情報を入力し,モータの動作確認を行いました.このときのモータに流れる電流(空転時と走行時)とデューティ比の関係を調べました.なお,走行時電流は一定に安定したときの電流とします. その後,左右のモータを様々なスピードの組み合わせで動作させ,走行実験を行った.
実験 図6.デューティ比-電流グラフ 図6は実験で出た値をデューティ比-電流グラフにしたものです. このグラフを見て分かるように,デューティ比で決めたPWMの入力電圧と流れる電流は比例の関係にあり,通常走行時の電流の最大値は0.94[A]であることがわかります. 実際には路面のギャップなどによって多少の変化をしますが,1.0Aをこえることはなく,安全に実験を行えることが確認できました. 走行実験においては,スピードを徐々に上げていく,逆に下げていく、滑らかに左右に曲がる,2つのモータを逆に回し回転するといった走行も命令通りに動くことが確認できました. これらの動作確認は,ネットワークの状況によって命令に対する反応時間にばらつきがみられましたが,ほぼリアルタイムに制御することができました. 図6.デューティ比-電流グラフ
走行実験結果 遠隔操作パソコンの命令通りにロボットが動くことを確認 ネットワークの状況によって反応時間にばらつきがある 図7.ロボットの動作
まとめ 今後の展開 ロボットの改良によって小型・軽量化が実現されたとともに,拡張性も得られた. まとめ ロボットの改良によって小型・軽量化が実現されたとともに,拡張性も得られた. パソコンからの命令によって,ロボットを速度制御することが可能となった. PHSによる遠隔操作を実現した. 今後の展開 PHSで画像転送を可能にする. 以前の研究をもとに,自己位置算出を行う. これまでの研究で,ロボットを改良し、以前のものより小型・軽量化が実現されました。 また、パソコンを搭載することによっていろいろな事態に対処できるようにもなりました。 さらに、ネットワークを介して、遠隔操作パソコンからの命令でロボットの速度制御を行うことが可能となりました. しかし,現段階ではカメラの画像を手元で見ながら遠隔操作を行うことは出来ません. そのため,今後はカメラを取り付け,その画像の転送をPHSによって実現し、実験者の目の届かないところでも遠隔操作が出来るようにすることが今後の展開となります. これで発表を終わります。ありがとうございました。