Radiation dosimetry of 137Cs γray for a long time irradiation 笹谷晋吾*1・菅慎治*1 ・北川和英*1 ・田中憲一*2 ・遠藤暁*2 *1技術センター,*2原爆放射線医科学研究所線量評価・測定研究分野
はじめに 現在、低線量・低線量率の生物影響は、急照射影響との相違や適応応答などを理解する為の重要なテーマとなっている. 原医研においてもCs-137γ線を用いた低線量率における生物影響を研究する実験が計画されている. この照射はインキュベータ内で長時間培養細胞への照射が必要であり、散乱線の影響など不確定な要因も多く,通常の方法では正しい線量が決定できない. そのため,今回電離箱とTLD(熱蛍光線量計)を併用して、まさにその試料の位置における線量測定を行ったので測定方法及び測定結果を紹介する.
今回使用した線量計 電離箱(キャピンテック製PM-30) TLD(パナソニック社製UD-170L)
照射場全体図 インキュベータ Cs-137線源 電離箱
平面図 立面図
測定方法(1) ① 個体差が大きいTLDの測定値の信頼性を高めるために校正を実施. ② 電離箱をCs-137線源から1mの距離で高さを試料設置面に合わせ配置. ③ 空気中において目標とする線量率(0.04cGy/min,0.004cGy/min)になるように線源から試料までの距離を理論計算によって求め配置する.
測定方法(2) ④ 電離箱の前面,後面,インキュベータ内の試料が入ったデッシュの前面,背面,インキュベータ本体の前面,側面,背面にTLDを設置. ⑤ Cs-137γ線照射,及び電離箱による線量測定. ⑥ 照射終了後,TLDの取り出し及び測定.
校正について 一般的に放射線の測定において、放射線測定器の出力は単なる相対値にすぎないため,目的とする測定量を得るにはその測定量に関して適切に目盛り付けを行なうこと(校正)が必要となる. 使用した電離箱は国家基準とトレーサビリティが確保されており,TLDにおいてもトレーサビリティを確保する必要がある. トレーサビリティが確保されているということは,その検出器は国家標準と直接または間接的に比較校正されていることである. トレーサビリティを持つ測定器同士なら,どの測定器で測っても整合性が得られるので,第三者(社会的)にその信頼性が得られる.
TLD校正 TLDリーダー Co-60照射装置 線量=指示値(測定値)*校正定数
線量計設置風景 電離箱とTLD 電離箱は測定時,照射場の外にある測定器とコードでつながれている. インキュベータ内のTLD
測定結果(1) 電離箱により線量の絶対値をもとめ,TLDによりそれぞれの相対値から試料の線量を求めた 線源からの距離(m) 測定線量(cGy) 距離補正理論線量(cGy) 理論値からのずれ(%) 電離箱 1 1587.9932 100 ディッシュ(1) 1.42 751.5188 787.5388 95 ディッシュ(2) 4.49 74.1141 78.7691 94 補正後の線量は理論値より5%程度減少している.
測定結果(2) TLDの測定値の誤差から線量率において7%~11%程度の誤差が考えられる. 線源からの距離(m) 線量率(cGy/min) 4/4~4/17 ディッシュ(1) 1.42 0.041±0.0027 (7%) 0.04 752 ディッシュ(2) 4.49 0.004±0.0004 (11%) 0.004 74 TLDの測定値の誤差から線量率において7%~11%程度の誤差が考えられる.
まとめ 電離箱とTLDを併用した結果,インキュベータ内の線量率を数%程度の誤差の範囲で測定することができた. 測定結果から散乱線の影響は線量計の誤差を考慮すれば,有為なものは検出できなかった. 今後,他の線量計との組み合わせなどにより精度が高い測定方法を検討していきたい. 0.0406cGy/min 0.0040cGy/min 0.0857cGy/min