かなた望遠鏡/TRISPECによる変動天体観測 笹田真人 (広島大学)
目次 かなた望遠鏡とTRISPEC ガンマ線バースト X線連星 新星 矮新星 ブレーザー その他
かなた望遠鏡の利点 突発天体への即時対応 豊富な観測時間によるモニター 毎晩の観測体制による突発天体への対応 速い機動の望遠鏡 毎晩の観測による長期間のモニター観測 撮像、分光、偏光モードという多次元的な観測
TRISPECの観測モード 撮像観測 分光観測 偏光撮像観測 偏光分光観測 名古屋大学Z研が開発した装置 天文台開設当時から主力観測装置として使用 撮像観測 可視1バンド、近赤外2バンドでの同時撮像 視野 : 7’ x 7’ 分光観測 可視から近赤外までをカバーした低分散分光 偏光撮像観測 撮像と同様のバンドでの偏光観測 視野 : 7’ x 1.5’ 偏光分光観測 低分散での可視近赤外同時偏光分光観測
ガンマ線バースト Uehara et al. 2010
ガンマ線バースト(GRB) 宇宙論的距離での爆発現象 ガンマ線で突如明るくなる その後可視光などでの残光を検出 かなた/TRISPECでの即時多バンド観測を実施
GRB071112Cと080506の光度曲線 X線フレア時に可視は変化しない GRB080506では減光のべきが変化
X線連星 Arai et al. 2009
X線連星とは 高密度星(中性子星やブラックホール)と恒星の連星 ジェットを伴う天体も存在 電波からガンマ線の多波長での観測も
GRS1915+105の近赤外モニター KsバンドとX線、電波光度が反相関 Delayなし X線、電波からはジェット放射 近赤外からは降着円盤放射の可能性
新星 Arai et al. 2010
新星とは 白色矮星(WD)と恒星の連星系 降着による質量増加での水素の核暴走反応 周囲にダストを形成するダスト新星も存在
ダスト新星V2362 Cyg 爆発後70日から可視光で減光 一方近赤外では急激な増光 → ダストの形成 → ダストの形成 スペクトルから1500K, 1000Kのダストの形成を示唆
矮新星 Matsui et al. 2009
矮新星とは 白色矮星(WD)と恒星の連星系 WDのまわりに降着円盤を形成 降着円盤の不安定性のためアウトバーストの発生
WZ-Sge型V455 Andの多色観測 早期スーパーハンプの検出 スーパーハンプ 色変化があり低光度時に青くなる 早期スーパーハンプとは異なった色の挙動
ブレーザー
ブレーザーとは 変光星の一種 活動銀河核ジェットを真正面に受けて観測 観測的特徴 速く激しい光度変動 電波からガンマ線までの広帯域放射 高い偏光と変動
44天体の種類と変動 Ikejiri et al. 2011
光度、色、偏光の変動 天体によって各変動の大きさにばらつきがある 各天体でのピーク周波数と変動の振幅を調べる 光度、色、偏光共に観測期間中において変動 3C 66Aにおいて1.6等光度が変化 V-Jの色が0.4等変化 Vバンドの偏光度が25%変化 偏光方位角は180度付近に集中 天体によって各変動の大きさにばらつきがある 各天体でのピーク周波数と変動の振幅を調べる
光度振幅とピーク周波数 縦軸:観測期間中の光度の振幅 ΔV (VMAX - VMIN) 横軸:シンクロトロン放射のピーク周波数 ピーク周波数が低い天体ほど光度変動が激しい 同じピーク周波数でのFSRQとBL Lacに変動振幅の違いはない BL Lac天体 FSRQ 観測点の少ない天体
偏光度振幅とピーク周波数 縦軸:観測期間中の偏光度の振幅 ΔP (PMAX - PMIN) 横軸:シンクロトロン放射のピーク周波数 ピーク周波数が低い天体ほど偏光が変化 紫外に熱的成分がある3C273とQSO 0454-234は偏光の変化が小さい 同じピーク周波数でのFSRQの方がBL Lacより変動振幅が大きい可能性 BL Lac天体 FSRQ 観測点の少ない天体
ブレーザーの種類と変動 高エネルギー電子からのシンクロトロン 放射が激しく変化する ピーク周波数が低い天体ほど可視光での変動が大きい ピーク周波数が違う天体を同じ可視光帯域で観測する → 異なるエネルギーの電子からのシンクロ トロン放射を観測 高エネルギー電子からのシンクロトロン 放射が激しく変化する
Abdo et al. 2010 Sasada et al. 2010 Sasada et al. 2012 accepted 偏光ベクトルの回転 Abdo et al. 2010 Sasada et al. 2010 Sasada et al. 2012 accepted
2009年の3C 454.3 2009年以外にも偏光ベクトルの回転を検出 アウトバーストが存在 アウトバーストのピーク時に偏光度が2%とアウトバースト中でもっとも低い → その後上昇し22%へ到達 アウトバースト中に偏光ベクトルが約360度回転 活動的な時期には逆方向に回転を検出(約270度) 8 6 光度 ×10^-11 (erg/s/cm^2) 4 2 25 20 15 偏光度 (%) 10 5 -100 -300 偏光方位角 (deg) -500 -700 -900 5000 5100 5200 JD - 2450000 2009年以外にも偏光ベクトルの回転を検出
複数の回転の検出;3C 454.3 2005〜2009年において5回の回転を検出 回転達において時計、反時計回りの両方が存在 2005 outburst 2005〜2009年において5回の回転を検出 回転達において時計、反時計回りの両方が存在 偏光ベクトルの回転率はそれぞれ 8.7, 22, -5, -26 , 9.2 (deg/day) (2005, 2007, 2008, 2009) 2007 outburst Sasada+ 2010 Jorstad + 2010 First rotation Second rotation 2008 outburst
偏光の回転の解釈 問題点 螺旋磁場:両方の回転方向で回転が観測 Bent jet:400度以上一定の回転率 偏光ベクトルの回転から螺旋磁場が示唆される (Marscher+ 08) 両方向の回転を説明するためにBent jet modelが提唱 (Abdo+ 10) 問題点 螺旋磁場:両方の回転方向で回転が観測 Bent jet:400度以上一定の回転率
フレアと偏光 Sasada et al. 2011
PKS 1510-089 2009年から観測を開始 光度が10倍増光する20日以内の大フレアを検出 フレアに相関して偏光度が上昇 Sasada+ 2011 2009年から観測を開始 光度が10倍増光する20日以内の大フレアを検出 フレアに相関して偏光度が上昇 光度と偏光度の相関係数; + 0.79 −0.07 +0.05 光度 偏光度 (%) 方位角 (deg)
フレア中の光度と偏光度 仮説 検証 短期間のフレアにおいて光度と 偏光は普遍的に相関して変化する 多数の天体に対しての偏光モニター観測から、 20日以内に変動するフレアに伴って偏光度が上昇 短期間のフレアにおいて光度と 偏光は普遍的に相関して変化する 仮説 検証 多数の天体に対しての偏光モニター観測から、 フレアの光度と偏光度の変動を系統的に調べる
検出したフレア 観測天体数 44天体 総フレア数 166個 フレア検出天体 29天体 光度が二倍以上変化した大フレア 28個 観測天体数 44天体 総フレア数 166個 フレア検出天体 29天体 光度が二倍以上変化した大フレア 28個 大フレアを検出した天体 12天体 大フレアの光度と偏光度の相関(相関係数で判断) (正, 負, 有意な相関なし)= (13, 5, 10) 相関なしの中には誤差が大きいもの、データ点の少ないものも含む
光度と偏光度振幅の相関 フレアは固有の偏光成分を持つ 正の相関が存在 r=0.62±0.05 偏光度振幅 (Pmax – Pmin) 光度比 (Fmax / Fmin) フレアは固有の偏光成分を持つ
その他
その他の観測天体 超新星 マイクロレンズ天体 彗星(ホームズ彗星) 太陽系内天体 測光、分光、偏光撮像 偏光観測 偏光分光による偏光の変化 近赤外での低分散分光
おわり