2003年出生極低出生体重児の 3歳時予後: 脳室内出血の重症度と予後

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2003年出生極低出生体重児の 3歳時予後: 脳室内出血の重症度と予後 フォローアップ班 河野由美 研究協力者 三科潤、本間洋子、渡辺とよ子、佐藤紀子、 佐藤和夫、清水正樹、平澤恭子、鍋谷まこと、石井のぞみ、永田雅子、岡田洋一、米本直裕

IVH IVHは神経学的予後に大きく影響を与えることが知られている 周産期ネットワークのデータベースの登録の解析報告(平成19年度報告書、楠田)によると、 2003, 2004, 2005年の出生児での頻度は13.8, 14.8, 13.6%で変わっていない。III度、IV度の割合も減少していないことが指摘されている 低用量インドメタシンによる超低出生体重児の脳室内出血予防試験が実施された(NRN)

目的 2003年出生極低出生体重児のIVHの重症度別予後を明らかにする 解析 IVH I, II度を合併した児の生命・長期予後は非合併時と差があるか IVH III, IV度を合併は、どのくらい生命・長期予後不良のリスクを増加させるか 解析 出生前、出生時の要因を調整 予後に影響を与える新生児期の合併症の要因を調整

出生登録対象のフローチャート n=1519 39施設 n=2297 先天奇形あり n=93 I 群 27施設 n=1701 II 群 12施設 n=596 先天奇形不明 n=89 先天奇形あり n=47 n=1519 IVHなし n=477 IVHあり n=72 IVHあり n=206 IVHなし n=1313 IVH1~2度 n=122 IVH3~4度 n=78 程度不明 n=6 死亡 n=85 死亡 n=21 死亡 n=39 Follow群 n=720 Drop群  n=508 Follow群 n=69 Drop群  n=32 Follow群 n=19 Drop群  n=20

IVHの頻度 I 群 27施設 n=1701 II 群 12施設 n=596 p 先天異常 あり 93 5.8% 47 7.9% 0.08 不明 89 5.2% IVH なし 1313 86.4% 477 86.9% 206 13.6% 72 13.1% 0.83  I – II 度 122 8.0% 35 6.4% 0.36  III – IV 度 78 5.1% 33 6.0%  グレード不明 6 0.4% 4 0.7% 先天異常あり、不明を除く、IVHの有無、グレードの明らかな I 群例 予後データを回収した1群とII群でIVHの頻度、重症度に有意差を認めなかった 対象は先天異常あり、不明(記載なし)を除くIVHの有無、グレードの明らかな1513名とした 出生体重:大きい RDS CLD    少ない ROP 解析対象 n=1513 死亡 n=145 フォロー群 n=808 ドロップ群 n=560

IVHの重症度別交絡要因 出生前、出生時 IVHなし n=1313 IVH1-2度 n=122 IVH3-4度 n=78 p maternal age 31 15-53 30 20-42 29 18-44 0.01 multiple gestation 327 29.4% 33 27.0% 18 23.1% 0.81 sex (male) 695 52.9% 65 53.3% 43 55.1% 0.93 birth weight 1100 246-1510 802 238-1498 746 316-1495 0.00 gestational age 29.0 29.9-39.3 26.1 22.1-38.1 25.8 22.1-35.6 light for dates 494 39.1% 34 28.3% 17 23.0% histological CAM 112 8.5% 16 13.1% 20.5% prenatal steroid 490 37.3% 53 43.4% 23 29.5% 0.14 caesarian section 908 71.9% 70 58.3% 48 64.9% Out born 162 12.3% 15 0.11 Apgar 5min 8 0-10 7 5 0-9 IVHなし、1-2度、3-4度の3群の生物学的要因、出生前要因、出生時の要因を比較した結果。 Χ二乗検定またはkruskal-wallis検定による単変量解析の結果を示す。IVHなし群は母の年齢がありの2群より高く、出生体重、在胎期間が短い児であった。Light for dateの割合はなしの方が高く、帝王切開での出生が高率であった。5分Apgar値中央値は高値であった median (min-max) または n (%)

IVHの重症度別交絡要因 新生児合併症 IVHなし n=1313 IVH1-2度 n=122 IVH3-4度 n=78 p RDS 611 46.5% 93 76.2% 64 82.1% 0.00 CLD at cor 36wks 200 15.8% 29 24.2% 13 17.3% 0.06 PDA 314 23.9% 48 39.3% 42 53.8% neonatal seizure 11 0.8% 9.0% 27 34.6% cPVL 34 2.6% 7 5.7% 8 10.4% HIE 5 0.4% 2 1.6% 9 11.5% sepsis 113 8.6% 15 12.3% 14.1% 0.11 壊死性腸炎 0.2% 1 3 3.9% 消化管穿孔 17 1.3% 2.5% 出血後水頭症 0.1% 26 33.8% 3歳時修正月齢 34.3 21.2-5 34.9 31.8-44 34.7 31.7-41 0.94 新生児合併症を示す。IVHなし群はRDS, PDA、けいれん、cPVL、HIE、NRC、消化管穿孔、出血後水頭症の頻度が低率であった median (min-max) または n (%)

IVHの重症度別予後:生存に対する障害合併率 n=1313 IVH1-2度 n=122 IVH3-4度 n=78 p N死亡 72 5.5% 19 15.6% 38 48.7% 0.000 退院後死亡 13 1.0% 2 1.6% 1 1.3% 0.783 生存 1228 93.5% 101 82.8% 39 50.0% 3歳drop 508 38.7% 32 26.2% 20 25.6% 0.067 予後評価 805 61.3% 90 73.8% 58 74.3% 0.003  (3歳予後)  (生存に対する%) CP疑い 14 1.1% 5 5.0% 5.1% CP 55 4.5% 6 5.9% 10 片側盲 0.4% 0.0% 0.105 両側盲 3 0.2% 2.6% 補聴器使用 0.026 DQ<70 78 6.4% 11 10.9% 4 10.3% 0.150 上記のいずれか 124 10.1% 18.8% 35.9% CP疑いを除くいずれか 116 9.4% 17 16.8% 33.3% 予後を示した。NICU死亡率はIVHなし5.5%,1-2度15.6%, 3-4度48.7%で3-4度の約半数が死亡していた。 3群で3歳時のドロップ率に有意差はなかったが、死亡率が高い3-4度群の予後評価率が高率となった。 ここでは生存数に対する障害の合併率と有意差を検討した。CP率はIVH3-4度群で高率であったが、なしと1-2度で割合は大差ではなく、CP疑いの率が1-2度ではなしより高率であった。DQ値の得られた児でDQ70未満の割合はIVHなし6.4%、1-2度11%、3-4度10%で有意差を認めなかった。CP,片側両側盲、補聴器使用、DQ70未満のいずれか、すなわちmajor handicapを合併する割合は各々、生存例の9.4%、16.8%、33.3%で1-2度はなしの約2倍、3-4度は約3倍であった。しかし、3-4度で生存例の2/3はmajor handicapを合併していないともいえる。 n (%)

IVHの重症度別予後:(死亡+障害合併)率 n=1313 IVH1-2度 n=122 IVH3-4度 n=78 p N死亡 72 5.5% 19 15.6% 38 48.7% 0.000 退院後死亡 13 1.0% 2 1.6% 1 1.3% 0.783 生存 1228 93.5% 101 82.8% 39 50.0% 3歳drop 508 38.7% 32 26.2% 20 25.6% 0.060 予後評価 805 61.3% 90 73.8% 58 74.3% 0.003  (3歳予後+死亡)   (全体に対する%) CP疑い 99 7.5% 26 21.3% 41 52.6% CP 140 10.7% 27 22.1% 49 62.8% 片側盲 6.9% 22 18.0% すべて 両側盲 88 6.7% 40 51.3% 補聴器使用 21 17.2% DQ<70 163 12.4% 31 25.4% 43 55.1% 上記のいずれか 209 15.9% 32.0% 52 66.7% CP疑いを除くいずれか 201 15.3% 37 30.3% 51 65.4% 次に障害の合併と死亡をあわせた予後不良の全登録数に対する割合を示した。死亡またはMHの合併率は、15%、30%、65%であった。

新版K式結果 DQ 暦年齢評価 修正年齢評価 p=0.008 p=0.276 なし I~II度 III~IV度 なし I~II度 新版K式結果 DQ 暦年齢評価 修正年齢評価 10 53 523 有効数 = 140 120 100 80 60 40 20 1034 1071 1056 1048 1046 1696 1055 1054 1053 1052 1051 1050 1047 1044 1042 1041 1040 1039 1038 1037 1036 1035 8 36 275 有効数 = 140 120 100 80 60 40 20 1034 1056 1046 1048 1696 1052 1047 1044 1042 なし I~II度 III~IV度 なし I~II度 III~IV度 p=0.008 p=0.276

新版K式結果 姿勢・運動領域 p=0.053 p=0.223 暦年齢評価 修正年齢評価 なし I~II度 III~IV度 なし I~II度 新版K式結果 姿勢・運動領域 暦年齢評価 修正年齢評価 160 160 140 1691 140 1600 120 120 100 100 80 80 60 60 1164 1082 1052 1198 1073 1086 40 1057 40 1057 1038 1658 1048 1085 1089 1056 1060 1098 1170 1089 1241 1108 1085 1063 1170 1063 1041 20 1037 1128 1056 499 499 1161 1180 1054 20 1042 1075 1042 有効数 = 456 47 9 有効数 = 263 32 7 なし I~II度 III~IV度 なし I~II度 III~IV度 p=0.053 p=0.223

新版K式結果 認知・適応領域 p=0.054 p=0.449 暦年齢評価 修正年齢評価 なし I~II度 III~IV度 なし I~II度 新版K式結果 認知・適応領域 暦年齢評価 修正年齢評価 160 160 140 140 1699 1699 1688 1649 1670 1696 120 120 1578 100 100 80 80 60 60 1042 1053 1044 40 1044 1041 40 1047 1046 1047 1046 1039 1040 20 1038 20 有効数 = 456 46 8 有効数 = 263 32 7 なし I~II度 III~IV度 なし I~II度 III~IV度 p=0.054 p=0.449

新版K式結果 言語・社会領域 p=0.219 p=0.708 暦年齢評価 修正年齢評価 なし I~II度 III~IV度 なし I~II度 新版K式結果 言語・社会領域 暦年齢評価 修正年齢評価 160 160 1479 140 1479 140 120 120 100 100 80 80 60 60 1700 40 1052 1065 40 1065 1067 1055 1046 1052 1047 1046 1047 1044 1051 1044 20 1038 1039 20 1188 有効数 = 456 46 9 有効数 = 263 32 7 なし I~II度 III~IV度 なし I~II度 III~IV度 p=0.219 p=0.708

Outcomeに対するリスク要因 Outcome:不良 死亡+ major handicap (CP、片側/両側盲、補聴器、DQ<70) IVH 無 IVH I-II 度 IVH III-IV 度 RDS CLD(36週での) 症候性PDA 新生児けいれん cPVL HIE 水頭症 敗血症 壊死性腸炎 消化管穿孔 母の年齢 多胎 性別(男) 出生体重 Light for dates 組織学的CAM 出生前ステロイド 帝王切開 院外出生 5分アプガースコア HFOの使用 PDAインダシン IVHのある群は、出生体重や在胎期間が小さく、新生児期の合併症も多くみられた児であったことから、予後不良について、多重ロジスティック解析を行った。ここにあげたIVHの他に予後に影響を与えると考えられる出生前、出生時の要因、新生児期の合併症、治療の項目を説明変数としてあげた。今回は施設間差については検討していない。新生児けいれん、水頭症はIVHに引き続きおこす合併症(中間変数)のため除外した。HIE、NECは合併児の数が少なかったことから除外した。cPVLはオッズ比が著しく大きくなり過大推定となった。除外により、IVHのオッズ比に大きな変化はなかったため説明変数から除外した。 施設番号

Outcome; 不良 死亡+major handicap (CP、片側/両側盲、補聴器、DQ<70) 多重ロジスティック解析 OR (95% C.I.) IVH 0.000 IVH I-II 度 0.701 0.88 (0.47-1.67) IVH III-IV 度 8.54 (2.94-24.8) 母の年齢 0.638 0.99 (0.95-1.03) 多胎 0.195 1.38 (0.85-2.23) 性別(男) 0.072 1.48 (0.97-2.25) BW (per 100g) 0.80 (0.73-0.88) Light for dates 0.639 0.89 (0.54-1.46) 組織学的CAM 0.360 0.72 (0.36-1.45) 出生前ステロイド 0.121 1.41 (0.91-2.18) 帝王切開 0.059 0.63 (0.39-1.02) 院外出生 0.890 1.05 (0.53-2.08) 5分Apgar 0.74 (0.67-0.83) p OR (95% C.I) RDS 0.021 1.71 (1.09-2.71) CLD(36週時) 0.425 0.80 (0.47-1.38) 敗血症 0.002 2.84 (1.46-5.53) 消化管穿孔 0.186 2.72 (0.62-11.9) HFOの使用 0.172 0.72 (0.44-1.16) PDAインダシン 0.982 1.01 (0.62-1.62) 全体で584名で分析された結果のp値とオッズ比、95%信頼区間を示す。IVH3-4度は予後不良の危険増加要因であったが、95%信頼区間の幅は大きくなった。IVH1-2度は予後不良の危険増悪要因ではなかった。 他に、RDSの合併、敗血症の合併が危険増加要因であった。危険抑制要因は、出生体重が大きいこと、5分Apgar値が大きいことであった。男児は弱い増加要因、帝王切開は弱い抑制要因と示唆された。 多重ロジスティック解析  分析に使用したケースn=584  予測値の正分類パーセント78.9%

結論 死亡+major handicapの合併率で比較するとIVH1-2度はIVHなしの約2倍であったが、ロジスティック回帰分析では有意な予後不良要因ではなかった IVH3-4度の死亡+major handicapの合併率は65%で、ロジスティック回帰分析で有意な予後不良要因であった 出生時、出生後の治療、介入の効果について時間経過の加味した検討が必要である

予後データ回収へのご協力を 2004年出生の極低出生体重児3歳予後 2005年出生の極低出生体重児3歳予後 昨年回収分(24/51施設)はデータベースに入力中 追加可能です 2005年出生の極低出生体重児3歳予後 本年1月から回収を始めています 対象が不明、用紙がないなどの施設はご連絡を下さい 5年毎に行われる上谷班の超低出生体重児の予後調査とかねています!!超だけても返送をお願いします。 2006年出生の極低出生体重児3歳予後 2009年1月から対象児の健診が始まっています 2月中に対象一覧と健診用紙をお送りします

インフォームド・コンセント 2005年出生の3歳予後データの収集につきましては、分担研究者の所属する自治医科大学において倫理審査を経て承認済 インフォームド・コンセントのための手続き 人体から採取された資料を用いず、観察研究であるため、研究対象者(代託者)からインフォームド・コンセントを必ずしも要しない  研究に関わる情報は中央事務局である「自治医科大学小児科学」のホームページ上に公開するhttp://www.jichi.ac.jp/usr/pedi/obstetrics/index.html (研究対象者への研究内容の情報提供、研究実施計画書、資料 各共同研究機関からのデータ提出にあたっては、各機関の倫理指針に沿って行う

予後データ記入上のお願い 健診用紙といっしょに送付している問診用紙を活用して下さい。聞き忘れた項目(集団保育の有無など)、聞きにくい項目(家族構成、両親の教育年数など)について後から記入が可能です 空欄はなるべく減らす→不明の場合は不明にチェックをいれて下さい データの記入や入力が大変! 医療秘書の活用をご検討下さい

予後解析の内容、方法について ご意見を下さい 今後の解析予定 ベンチマーク、施設間の比較 PVLの予後と影響要因 CLD児の成長、予後と影響要因 SGA児の成長と予後 多胎児の予後 予後とsocioeconomic status(SES)