どうする!?ポスト京都議定書 ~吸収源としての森林~ 2009年10月11日 中央大学 経済学部 緒方ゼミナール 環境班 中央大学 経済学部 緒方ゼミナール 環境班 山下 洋希 冨田 薫子 安部 有輝 中井 梨恵 市場 友佳子 渡辺 一
コンテンツ <問題提起> <京都議定書とは> <現地調査の成果> <問題提起> <京都議定書とは> <現地調査の成果> <ポスト京都議定書としてのREDD> <REDDプロジェクトモデルの提案> <まとめ>
<問題提起>
地球温暖化 ・海面上昇による沿岸域の浸食、島嶼の消滅 ・異常気象による集中豪雨 ・農作物の減収による食糧パニック ・生物多様性レベルの低下 バングラディシュでは洪水の起こる頻度が増え、住民の生活が脅かされている。(2005.7 ) 出典:全国地球温暖化防止活動推進センター
森林の減少・劣化からの温室効果ガスの排出が全体の排出の約20%を占めている。 出典:京都メカニズム情報プラットホーム 温室効果ガスの吸収源である森林が急速に失われている。
ねらい 世界172カ国が参加し、温暖化の原因である温室効果ガスの排出削減を目的としている京都議定書が2012年に約束期間を終えようとしている。 その中で2013年以降のポスト京都議定書には何が必要なのかを温室効果ガスの吸収源である森林に着目し探っていく。
<京都議定書とは>
京都議定書 京都メカニズム 1997年、気候変動枠組み条約に基づき、京都で開かれた会議にて採択された議定書。 参加先進国に温室効果ガスの削減目標を設定した。 京都メカニズム 温室効果ガス削減をより柔軟に行うための国家間のアプローチ。
3つのメカニズム 排出権取引 ET JI 共同実施 CDM クリーン開発メカニズム(CDM) 先進国が、開発途上国おいて温室効果ガス削減事業を実施し、自国の目標達成に利用できる枠組み。 植林によって温室効果ガスの吸収源である森林を拡大させるAR-CDM に着目した。
AR-CDM (Afforestation 植林 / Reforestation再植林) フロー図 植林によって森林を拡大しCO2吸収を促進させ削減目標を達成する。 地方農村部で行われ、現地住民の所得向上にもつながる。 ・AR-CDMの現状は?? ・ポスト京都にむけて課題や改善点はあるのか??
・A/R-CDMが承認され、実施されている国(ホスト国)である。 現地調査地としてのベトナム ・A/R-CDMが承認され、実施されている国(ホスト国)である。 ・温暖化被害をもっとも受けやすいと言われる国の1つである。 ・中央大学とハノイ国民経済大学の共同プロジェクト地がある。 出典:ベトナム生活倶楽部
実際に、ベトナムへ現地調査へ ベトナム、ゲアン省の30,000ヘクタールの共同プロジェクト地 『日越友好の森』 (2009、9)
〈現地調査の成果〉
現地調査の内容 (2009年9月1~10日) 1.AR-CDMプロジェクト実施者の見解 ・JICAベトナム事務所 2.ホスト国側(ベトナム)の見解 ・環境省環境資源研究所 ・ハノイ国民経済大学環境学部 3.現地住民の見解 ・人民委員会 ・地方農村部ヒアリング・アンケート調査311人
JICAベトナム事務所 ハノイ国民経済大学 ・AR-CDMプロジェクト ・森林管理プロジェト ・CSRの認知度 (ベトナム企業意識) ・森林管理プロジェト ・CSRの認知度 (ベトナム企業意識) ハノイ国民経済大学 ・森林劣化・減少の現状 ・REDDのパイロットプロジェクト 「持続可能な森林管理」をテーマにプレゼンテーションと意見交換
タンチュオン県 (ベトナム北中部) アンケート調査をおこない、環境問題に対する意識を調査。 (ベトナム北中部) 人口25万人、40の村 70%が森林地帯 約20ha・・・植林 約40ha・・・自然林 アンケート調査をおこない、環境問題に対する意識を調査。 森林管理をしている現地の方々と植林活動を実際に体験した。 植林活動
AR-CDMの課題 1.プロジェクト実施者の見解 ・実施過程が複雑で、採算性の確保が困難。 2.ホスト国の見解 ・実施過程が複雑で、採算性の確保が困難。 2.ホスト国の見解 ・天然林の減少・劣化の根本的な解決にならない。 3.現地住民の見解 ・プロジェクトによって土地利用が制限され、 収入源である農業が困難になる可能性。
ポスト京都への制度設計(吸収源) 政府機関等の介入 現地住民参加型 ・実施地域の住民にも参加してもらい、プロジェクト利益を参加住民に還元するシステム 政府機関等の介入 ・政府機関や森林に関する専門機関等の介入により、プロジェクトの信頼性・透明性を確保する。 森林政策は結果が出るまで時間がかかるため、公的機関による支援や危機管理が必要。
〈ポスト京都議定書としてのREDD〉 19
REDD 途上国において森林減少・劣化を防止するための施策を行うことで、森林を保全し、CO2吸収を促進させ削減目標を達成する。 回避策の例(JICAラオス森林管理支援プロジェクト) 焼畑農法によって森林が減少 畜産業への代替
背景 森林の減少からの温室効果ガスの排出の大幅な増加が国際的に懸念されてきた。 2005年国連気候変動締約国会議(COP11)において提案された。 2009年12月COP15で詳細が決定される予定で現在はベトナム、インドネシア、カンボジアでREDDのパイロットプロジェクトが実施されている。
REDDの基本的な考え 過去からの変遷に応じて、森林減少の参照ベースラインを設定し、森林減少の回避策を実施する。 森林減少に由来する二酸化炭素排出量の増減をモニタリングし、抑制できた二酸化炭素排出量に応じて、クレジット(削減量)を発行する。
〈REDDプロジェクトモデルの提案〉
REDDプロジェクト相関図 プロジェクト実施ホスト クレジット発行機関 森林調査機関 企業 森林 ①地域住民が管理 ④クレジット売買 収入 プロジェクト実施ホスト ④クレジット売買 企業 森林 収入 ③クレジット発行 ②調査 ①地域住民が管理 森林調査の委託 クレジット発行機関 森林調査機関 24
REDDプロジェクトのフロー図 ① 地域住民が森林を管理し、減少・劣化を防ぐ。 ② 管理がなされた森林の調査(CO2吸収量など) ① 地域住民が森林を管理し、減少・劣化を防ぐ。 ② 管理がなされた森林の調査(CO2吸収量など) ③ クレジット発行 ④ クレジットの売買 ⑤ 温室効果ガスの削減
<まとめ(問題提起への回答)>
プロジェクトモデル構築の流れ 事前情報調査 現地調査 プロジェクトモデル構築 (ベトナム訪問) REDDについての調査 現地情報の収集 データ整理方法の事前検討 モデル構築の基本構想 事前情報調査 現地住民アンケート調査 現地学生からの情報収集 森林状況観察 その他のデータ収集 現地調査 (ベトナム訪問) データ分析 採算性の概算 モデル方向性の確認 プロジェクトモデル構築
結論 京都議定書 吸収源である森林の減少・劣化からの二酸化炭素排出量は、全排出量の約2割を占めているにもかかわらず、現在の京都議定書にはそれらを防止する規定がない。 ポスト京都議定書 森林減少・劣化からの二酸化炭素排出を食い止める枠組みとしてREDDが必要である。なおかつそれは住民参加型で公的機関等の介入する透明性の高いものでなければならない。
<調査協力> JICA事務所 日本林業経営者協会 ベトナム環境省環境資源研究所ISPONRE研究員 ハノイ国民経済大学環境学部学生 同大学法学部学生 ヴィン大学学生 タンチュオン県人民委員会 タンチュオン県現地住民の方々 ベトナム生態村住民の方々
FoE Japan 森林プログラム(2009年10月4日) <参考URL・文献> FoE Japan 森林プログラム(2009年10月4日) http://www.foejapan.org/forest/sink/redd_01.html 京都メカニズム情報プラットホーム(2009年9月29日) http://www.kyomecha.org/seido/s01.html ベトナム生活倶楽部(2009年10月4日) http://www2m.biglobe.ne.jp/~saigon/map.htm 全国地球温暖化防止活動推進センター(2009年10月7日) http://www.jccca.org/content/view/1032/773/ AR4 SYR Longer Report (2009年10月7日) http://ipcc-wg1.ucar.edu/wg1/wg1-report.html ベトナム国際ニュース AFPBB NEWS (2009年10月7日) http://www.afpbb.com/article/1305333 宇沢弘文『社会的共通資本』岩波新書 坪井 善明 『ヴェトナム新時代』岩波新書 政府間パネル(IPCC)第4次評価報告書
ご清聴ありがとうございました。
<補足資料>
温室効果ガス(Greenhouse Gas) 温室効果を持つ気体のことで地球温暖化の原因とされる。二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)が代表的な温室効果ガスである。 IPCC第4次報告書によると二酸化炭素が最も排出量が多く、温室効果が高いとされる。
森林の減少 森林の劣化 森林の樹木が伐採などによって、農地や牧草地などの他の土地利用に転換されること。 森林の樹木が伐採などによって、農地や牧草地などの他の土地利用に転換されること。 森林の劣化 自国の森林の定義に達していない状態の森林。森林の一部が破壊され、生態系としての機能や森林資源の量が低下すること。 34 34
日本の森林定義 ベトナムの森林定義 ・最小面積 0.3 [ha] ・最小樹冠被覆率 30 [%] ・最低樹高 5 [m]
ベトナムがもっとも温暖化の影響を受けやすい国である根拠 英国 国際開発局 地球温暖化による海水面上昇の影響で、最も深刻な被害を受ける国はベトナムとなる可能性がある。 ベトナムの天然資源・環境省 地球の気温が上がり海面の水位も上昇する。ベトナムのように国土が細長く、広範にわたり沿岸地帯を有する国が、甚大な被害を受けることは必須である。 他にもツバル、バングラデシュ、オランダなど。沿岸地域や海抜の低い国が多い。
植林した樹木 アカシアハイブリット 成長が早く、栄養分が不足している土壌でも育ち、その土壌を改善していくのが特徴
REDDとAR-CDMの比較 REDD AR-CDM ○ ◎ △ REDDはAR-CDMと比べ経済的・効率的であり、環境への配慮もされている クレジットの発行 ○ 環境貢献度 ◎ 費用対効果 △ REDDはAR-CDMと比べ経済的・効率的であり、環境への配慮もされている
現地住民へのアンケート調査結果 ■ 農業を継続 ■ 転職 ■ 農業との兼業 ■ その他 ■ 無回答