中解像度版 大気海洋結合モデルによる 海氷分布の再現 , CCSR/NIES/FRSGC モデル開発グループ 小倉知夫 (東京大学気候システム研究センター PD) , CCSR/NIES/FRSGC モデル開発グループ
背景: 共生第一グループの結合GCM開発 (20030417) (1) 高解像度版 OAGCM 大気 T106 L56 , 海洋 1/4x1/6 L48 (2) 中解像度版 OAGCM 大気 T42 L20 , 海洋 (1/2-1)x1.4 L43 ⇒ 暫定版(CMIP用)で動作確認 80年積分(標準、CO2 1%漸増)完了。
発表内容: 1. 中解像度版 モデル(CMIP用 暫定版) - OAGCM のスペック - OAGCM の出力 2. 低解像度版モデルについて (CMIP版の原型:~2001) (3. 海氷モデルの仕組み)
1.中解像度版モデル
中解像度版: MIROC3.1 (CMIP版)のスペック 大気 CCSR/NIES AGCM 5.7 スペクトル T42 (~2.8°) 20層 トレーサー格子移流,雲水予報, エアロゾル直接・間接効果 海洋 COCO 3.3 (0.5-1.0)°×1.4°43層 自由表面 モデル北極をグリーンランドに座標回転 海底境界層,斜め移流 海氷 (0.5-1.0)°×1.4°力学・熱力学 陸面 MATSIRO ~2.8°植生キャノピー,多層積雪 河川 TRIP ~2.8° バケツモデル
中解像度版: 必要な計算機資源 大気、海洋ともに32PEによる東西方向帯状分割 32PE (4 ES nodes) / 1 ラン (ES 全資源の~0.6%) 計算時間1ヶ月で~400年積分の見込み 仮に海洋のデータを30日毎に出力した場合、11GB/日・ラン
全球・年平均地表面気温の時系列 CO2 increase integration CT02502 [℃] Surface temperature Control CT02501 [years] 標準実験はほぼ安定(ドリフト ~+0.6℃/100yr) 他グループの結合モデル結果と comparable.
全球・年平均SST 観測 WOA 1998 OAGCM ー 観測 OAGCM [℃] [℃] 他グループの結果と comparable. (北太平洋・北大西洋・東部熱帯太平洋等に顕著なバイアス)
海氷密接度(2月) 観測(SSM/I, NSIDC, OAGCM 1995-1999) 全体的に良く再現(ラブラドル海でやや過大評価.) 0.9 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 全体的に良く再現(ラブラドル海でやや過大評価.)
海氷密接度(8月) 観測(SSM/I, NSIDC, OAGCM 1995-1999) 0.9 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 全体的に良く再現(スカンジナビア北岸でやや過大評価).
海氷密接度(8月) 観測(SSM/I, NSIDC, 1995-1999) ウェッデル海東部で過小評価?(ポリニア域に対応) 0.9 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 ウェッデル海東部で過小評価?(ポリニア域に対応)
海氷密接度(8月) 観測(SSM/I, NSIDC, 1995-1999) 全体的に良く再現(西南極沿岸でやや過小評価). 0.9 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 全体的に良く再現(西南極沿岸でやや過小評価).
北大西洋 子午面流線関数(年平均) NADW 極大19 [Sv] 赤道南下 13 [Sv] AABW 赤道北上 4 [Sv] Depth [m] AABW 赤道北上 4 [Sv] 北大西洋深層水(NADW)形成 維持される. 南極底層水(AABW) やや過大評価.
年平均SSS Levitus [psu] OAGCM 全体的に過大評価の傾向. ⇒ 水収支閉じないバグ 要・再検討.
まとめ: ・ ES 用OAGCM 中解像度版 で 80年積分完了. (標準、CO2 1%漸増) まとめ: ・ ES 用OAGCM 中解像度版 で 80年積分完了. (標準、CO2 1%漸増) ・ SST, 海氷分布の再現性は他グループのモデルと 比べて 同じ程度(UKMO, NCAR, COLA etc). ・ NADWの再現性良好. # バグが原因の可能性あり.(要検証) + 2003年10月 結合試験終了を目指して開発続行中。
2.低解像度版モデル (MIROC2.1, 2001年)
低解像度版: MIROC2.1 のスペック 大気 CCSR/NIES AGCM 5.6 海洋 COCO 2.1 海氷 2.8°×2.8° スペクトル T21 (~5.6°) 11層 トレーサー格子移流,雲水予報, 海洋 COCO 2.1 2.8°×2.8°20層 RIGID-LID 海氷 2.8°×2.8° 熱力学:Semtner 0 layer 力学: EVP rheology (Hunke and Dukowicz) 陸面 ~5.6° バケツモデル 河川 ~5.6°流路MAP 標準実験 300年積分完了。 51-150年目を平均して解析に使用。
年平均SST 大気海洋結合GCM: 標準実験で観測をどの程度再現できるか? 観測(Levitus) 結合GCM (51-150年目平均) 高温バイアス:熱帯東太平洋,熱帯大西洋 北太平洋西部 低温バイアス:北大西洋
海氷密接度 大気海洋結合GCM: 標準実験で観測をどの程度再現できるか? 観測 結合GCM (SSM/I,1995-1999,NSIDC) 冬季(2月) 夏季(8月) 過大評価:北大西洋と北太平洋
海氷密接度 大気海洋結合GCM: 標準実験で観測をどの程度再現できるか? 観測 結合GCM (SSM/I,1995-1999,NSIDC) 夏季(2月) 冬季(8月) 観測を良く再現できている。(夏季にやや過少評価)
海氷分布に対する力学過程の影響を評価 感度実験紹介:
冬季/南極(8月): 海氷力学過程の影響は? 海氷面積 力学あり 力学なし +大気海洋 結合過程 力学あり 力学なし Offlineモデル 結合過程 結合GCM 力学あり 力学なし 十年規模変動の抑制作用。 大気海洋結合過程により現れる。
冬季/南極(8月): No‐Drift 10年規模変動の起こる場所は? 海氷縁(青線)と海洋Convection Depth 力学あり 95 年目 (95-110年目) 112 年目 ウェッデル海で海氷縮小がconvection活発化を伴って起こる。
冬季/南極(8月): No‐Driftの海氷縮小の起こる仕組みは? 水温 (ウェッデル海) 力学なし(No-Drift) Year 105 力学あり [m] 力学あり 水深 Year 112 500 80S 45S 緯度 [℃] Convectionにより表層に熱が供給される。
冬季/南極(8月): 何故Controlの海氷は安定に維持される? 塩分濃度 (冬季8月、Weddell海) Year 105 水深 力学なし [m] 500 80S 45S 緯度 [psu] 海氷縁辺部の海面塩分がより低いことが一因。
冬季/南極(8月): 何故Controlでは海面塩分低く保たれる? 海面水フラックス ・海氷縁(黄線) 力学あり - なし 力学あり - なし 力学あり(Full-Stress) 力学なし(91-100年目) 海洋へ淡水流入 塩分流入 力学過程を入れる 海氷縁辺部で淡水排出
まとめ: ・低解像度版 OAGCM (大気T21、海洋海氷2.8x2.8) ⇒ 標準実験 300年積分完了 ・海氷分布は北半球で過大評価。 まとめ: ・低解像度版 OAGCM (大気T21、海洋海氷2.8x2.8) ⇒ 標準実験 300年積分完了 ・海氷分布は北半球で過大評価。 (SSS 過少評価・NADW形成の弱化と関係あり) ・海氷分布は南半球で再現性良好。 モデルの海氷を安定に維持することに 海氷力学過程は重要な役割を果たす。 (Brine rejection, Freshwater release 促進)
・付録:海氷モデルの仕組み (スライド 7枚分)
モデルの海氷分布(L=100km)はA, h, g(h) で表現。 海氷モデルの仕組み : 「海氷分布」をどのように表現するか。 A:海氷密接度(0~1) h: 平均海氷厚 100km g(h): 海氷厚分布 (サブグリッドのばらつきを表現) 何故 海氷縁分布が重要か? 海氷は全球的気候に影響が大きいから。どのような影響? -アルベドが高くて短波をよく反射する -大気・海洋の間の乱流輸送を妨げる -塩分排出、淡水排出を通して海洋大循環に影響を及ぼす。 *** ここで海氷縁分布が何故重要かを確認しておきます。理由は 気候に大きな影響を及ぼすからです。海氷はアルベドが海面よりも大きい(海氷0.3-0.7 海水0.1)ので短波放射をよりよく反射します。 また、大気・海洋間の乱流輸送を妨げます。また、海の水は凍るときに塩分を海の中に吐き出します。氷が融けるときは塩分の薄い水として表面にたまります。これらが 海洋の密度成層を変え、深層水形成を促進したり妨げたりして海洋熱輸送にも影響を及ぼします。 例えば、、、 モデルの海氷分布(L=100km)はA, h, g(h) で表現。
「海氷分布」を予報する方法 初めに「あった」海氷の収束(含む ridging)・発散を表現。 海氷モデルの仕組み : 「海氷分布」を予報する方法 質量保存則(+経験則)より、 何故 海氷縁分布が重要か? 海氷は全球的気候に影響が大きいから。どのような影響? -アルベドが高くて短波をよく反射する -大気・海洋の間の乱流輸送を妨げる -塩分排出、淡水排出を通して海洋大循環に影響を及ぼす。 *** ここで海氷縁分布が何故重要かを確認しておきます。理由は 気候に大きな影響を及ぼすからです。海氷はアルベドが海面よりも大きい(海氷0.3-0.7 海水0.1)ので短波放射をよりよく反射します。 また、大気・海洋間の乱流輸送を妨げます。また、海の水は凍るときに塩分を海の中に吐き出します。氷が融けるときは塩分の薄い水として表面にたまります。これらが 海洋の密度成層を変え、深層水形成を促進したり妨げたりして海洋熱輸送にも影響を及ぼします。 例えば、、、 ( Y:再分配関数、 f:凍結率、 FL: 水平融解率) 初めに「あった」海氷の収束(含む ridging)・発散を表現。 海氷の熱力学的生成・融解は Source term で表現。
「海氷分布」を予報する方法(続き) 海氷の熱力学的生成・融解を表現。⇒「熱力学海氷モデル」 海氷モデルの仕組み : 「海氷分布」を予報する方法(続き) エネルギー保存則より Source term 求める。 何故 海氷縁分布が重要か? 海氷は全球的気候に影響が大きいから。どのような影響? -アルベドが高くて短波をよく反射する -大気・海洋の間の乱流輸送を妨げる -塩分排出、淡水排出を通して海洋大循環に影響を及ぼす。 *** ここで海氷縁分布が何故重要かを確認しておきます。理由は 気候に大きな影響を及ぼすからです。海氷はアルベドが海面よりも大きい(海氷0.3-0.7 海水0.1)ので短波放射をよりよく反射します。 また、大気・海洋間の乱流輸送を妨げます。また、海の水は凍るときに塩分を海の中に吐き出します。氷が融けるときは塩分の薄い水として表面にたまります。これらが 海洋の密度成層を変え、深層水形成を促進したり妨げたりして海洋熱輸送にも影響を及ぼします。 例えば、、、 海氷の熱力学的生成・融解を表現。⇒「熱力学海氷モデル」 複数のモデルがある。(表現するプロセスの多寡による)
「海氷分布」を予報する方法(続き) 風・海流応力、内部応力の影響を表現。 内部応力モデルが複数提案されている。「力学海氷モデル」 海氷モデルの仕組み : 運動量保存則より 海氷流速場を 求める。 内部応力項の役割(模式図) 何故 海氷縁分布が重要か? 海氷は全球的気候に影響が大きいから。どのような影響? -アルベドが高くて短波をよく反射する -大気・海洋の間の乱流輸送を妨げる -塩分排出、淡水排出を通して海洋大循環に影響を及ぼす。 *** ここで海氷縁分布が何故重要かを確認しておきます。理由は 気候に大きな影響を及ぼすからです。海氷はアルベドが海面よりも大きい(海氷0.3-0.7 海水0.1)ので短波放射をよりよく反射します。 また、大気・海洋間の乱流輸送を妨げます。また、海の水は凍るときに塩分を海の中に吐き出します。氷が融けるときは塩分の薄い水として表面にたまります。これらが 海洋の密度成層を変え、深層水形成を促進したり妨げたりして海洋熱輸送にも影響を及ぼします。 例えば、、、 風・海流応力、内部応力の影響を表現。 内部応力モデルが複数提案されている。「力学海氷モデル」
熱力学過程の簡単化 気候モデルへの適用の現状 : 熱力学海氷モデル Full-Spec 例 簡単化モデル 例 (Ebert and Curry 1993) (Semtner 0 layer) Melt ponds Brine pockets 何故 海氷縁分布が重要か? 海氷は全球的気候に影響が大きいから。どのような影響? -アルベドが高くて短波をよく反射する -大気・海洋の間の乱流輸送を妨げる -塩分排出、淡水排出を通して海洋大循環に影響を及ぼす。 *** ここで海氷縁分布が何故重要かを確認しておきます。理由は 気候に大きな影響を及ぼすからです。海氷はアルベドが海面よりも大きい(海氷0.3-0.7 海水0.1)ので短波放射をよりよく反射します。 また、大気・海洋間の乱流輸送を妨げます。また、海の水は凍るときに塩分を海の中に吐き出します。氷が融けるときは塩分の薄い水として表面にたまります。これらが 海洋の密度成層を変え、深層水形成を促進したり妨げたりして海洋熱輸送にも影響を及ぼします。 例えば、、、 短波の透過 氷の熱容量 熱力学モデルを簡単化する(計算コスト削減のため)。
サブグリッド海氷分布の簡単化 気候モデルへの適用の現状 : サブグリッドの海氷厚分布 g(h) 例:15 category 0.4 0.2 0 2 4 6 [m] 0 2 4 6 [m] 0 2 4 6 [m] <イメージ> 何故 海氷縁分布が重要か? 海氷は全球的気候に影響が大きいから。どのような影響? -アルベドが高くて短波をよく反射する -大気・海洋の間の乱流輸送を妨げる -塩分排出、淡水排出を通して海洋大循環に影響を及ぼす。 *** ここで海氷縁分布が何故重要かを確認しておきます。理由は 気候に大きな影響を及ぼすからです。海氷はアルベドが海面よりも大きい(海氷0.3-0.7 海水0.1)ので短波放射をよりよく反射します。 また、大気・海洋間の乱流輸送を妨げます。また、海の水は凍るときに塩分を海の中に吐き出します。氷が融けるときは塩分の薄い水として表面にたまります。これらが 海洋の密度成層を変え、深層水形成を促進したり妨げたりして海洋熱輸送にも影響を及ぼします。 例えば、、、 サブグリッド海氷厚分布を簡単化する(計算コスト削減のため)。
力学過程の簡単化 気候モデルへの適用の現状: 力学過程 内部応力項の役割(模式図) Elastic Viscous Plastic(EVP) 何故 海氷縁分布が重要か? 海氷は全球的気候に影響が大きいから。どのような影響? -アルベドが高くて短波をよく反射する -大気・海洋の間の乱流輸送を妨げる -塩分排出、淡水排出を通して海洋大循環に影響を及ぼす。 *** ここで海氷縁分布が何故重要かを確認しておきます。理由は 気候に大きな影響を及ぼすからです。海氷はアルベドが海面よりも大きい(海氷0.3-0.7 海水0.1)ので短波放射をよりよく反射します。 また、大気・海洋間の乱流輸送を妨げます。また、海の水は凍るときに塩分を海の中に吐き出します。氷が融けるときは塩分の薄い水として表面にたまります。これらが 海洋の密度成層を変え、深層水形成を促進したり妨げたりして海洋熱輸送にも影響を及ぼします。 例えば、、、 Cavitating Free Viscous Plastic(VP) 力学なし fluid(CAV) Drift Granular Material(GRAM) 力学過程を簡単化する(計算コスト削減のため)。
力学過程 簡単化の影響 気候モデルへの適用の現状: 海氷密接度 観測 OAGCM(力学あり) OAGCM(力学なし) 力学過程 簡単化の影響 気候モデルへの適用の現状: 海氷密接度 観測 OAGCM(力学あり) OAGCM(力学なし) 何故 海氷縁分布が重要か? 海氷は全球的気候に影響が大きいから。どのような影響? -アルベドが高くて短波をよく反射する -大気・海洋の間の乱流輸送を妨げる -塩分排出、淡水排出を通して海洋大循環に影響を及ぼす。 *** ここで海氷縁分布が何故重要かを確認しておきます。理由は 気候に大きな影響を及ぼすからです。海氷はアルベドが海面よりも大きい(海氷0.3-0.7 海水0.1)ので短波放射をよりよく反射します。 また、大気・海洋間の乱流輸送を妨げます。また、海の水は凍るときに塩分を海の中に吐き出します。氷が融けるときは塩分の薄い水として表面にたまります。これらが 海洋の密度成層を変え、深層水形成を促進したり妨げたりして海洋熱輸送にも影響を及ぼします。 例えば、、、 力学なしでは Flux adjustment 不可避。 Free Drift は欲しい。内部応力は、、、??