災害補償制度の概要 平成30年6月4日(月) 地方公務員災害補償基金 富山県支部
災害補償制度とは 地方公務員災害補償基金とは 【地方公務員災害補償法第1条】 地方公務員が公務上の災害(負傷、疾病、障害又は死亡)又は通勤による災害を被った場合に、その損害によって生じた身体的損害を使用者である地方公共団体がその責任において補償し、必要な福祉事業を行い、職員及びその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする制度。 地方公務員災害補償基金とは ○常勤の地方公務員が公務災害又は通勤災害を受けた場合に、被災職員の 属する地方公共団体に代わって補償を実施する専門機関。 ○民間労働者及び国家公務員との均衡を図り、その制度を統一整備するた め地方公務員災害補償法が昭和42年に制定され、同年に設置。本部は 東京都に、支部は各都道府県及び政令市に設置。 ※ 基金設置以前の地方公務員の災害補償制度は、統一的な補償制度の定めがなく、各地方 公共団体が独自の定めや労働基準法の定めにより補償を実施。
災害補償制度の特徴①~⑥ ① 使用者に無過失責任が課されていること ⇒ 災害補償制度は、使用者の無過失責任主義をとり、 地方公共団体に過失がなくても補償義務が発生する点 で民法上の損害賠償とは異なる。 ② 補償対象は身体的損害のみであること ⇒ 災害補償制度により補てんされる損害は、専ら身体 的損害に限られており、物的損害や精神的損害(慰謝 料)は対象とならない。
③ 定型的・定率的補償であること ④ 請求主義であること ⇒ 損害補償の額は、実損害額そのものではなく、平 ⇒ 損害補償の額は、実損害額そのものではなく、平 均給与額を基準とした定型的、定率的な方法により 算定。(一部の補償を除く。) また、被災職員の過失に応じた減額(過失相殺) はないが、療養の指示に従わない場合等には、休業 補償等の全部又は一部の支給を行わないことができ ることとなっている。 ④ 請求主義であること ⇒ 災害補償制度では、補償の実施は、補償を受けよ うとする者からの請求に基づいて行われることとさ れている。従って、被災職員等が補償を受けるため には、各種の請求手続きを行う必要がある。
⑥ 補償は地方公共団体からの負担金で賄われていること ⑤ 補償は基金が行うこと ⇒ 災害補償責任は、本来的には地方公共団体に存す るものであるが、迅速かつ公正な補償を統一的、専 門的に実施するために地方公共団体に代わって基金 が補償を行う。これにより、地方公共団体の補償責 任は基金に移り、その限りにおいて、地方公共団体 は免責されることになる。 ⑥ 補償は地方公共団体からの負担金で賄われていること ⇒ 地方公共団体は、職員の給与の総額に職種ごとに 決められた負担金率及び理事長が定める率をそれぞ れ乗じて算出される金額を負担金として基金に納付 することとなっている。この負担金が、補償や福祉 事業の財源となっている。
地方公務員災害補償制度により補償される災害の種類 1 公務災害 2 通勤災害 勤務時間中に起こった災害全てが公務災害として認められるわけではない。 勤務のために ① 住居と勤務場所との往復 ② 勤務場所から他の勤務場所への移動 ③ 単身赴任者の赴任先住居と帰省先住居 間の移動 を合理的な経路及び方法により行うことに起因する災害 <公務災害として認められる要件> 公務に従事し、任命権者の支配管理下にあるときの災害かどうか。 公務遂行性 ・・・ このため・・・ ★公務遂行中の負傷は、それが故意によるものや本人の素因によるもの等を除き、原則として公務上の災害と認められます。 移動の経路を「逸脱」または「中断」した場合は通勤災害と認められない。 災害の種類 公務起因性 ・・・ 公務と災害との間に相当因果関係があるかどうか。 ★ただし、その逸脱・中断が日用品の購入、その他これに準ずる日常生活上必要な行為であり、やむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合には、経路に復した後の災害については通勤災害として扱われる。 ★脳出血、心筋梗塞等の疾病については、その発症が明らかに公務に起因する場合(相当因果関係がある場合)のみ、公務上の災害と認められます。
【参考1】災害補償制度の適用関係 一般職 特別職 地方公務員災害補償法 再任用短時間勤務職員 常勤的非常勤職員 職種 全職員 議会、行政委員会の委員、地方公 共団体の付属機関の委員、統計調査 員等他の法令の適用を受けない者 労働基準法別表第1に掲げる 事業以外の事業に雇用される者 労災法の対象とならない場合 は条例 消防組織法、水防法及び消防 団員等公務災害補償等責任 共済等に関する法律 公立学校の学校医、学校歯科 医及び学校薬剤師の公務災害 補償に関する法律 再任用短時間勤務職員 常勤的非常勤職員 職種 全職員 消防団員・水防団員 学校医、学校歯科医 及び学校薬剤師 非 常 勤 職 員 労働者災害補償保険法 地方公務員災害補償法に基づく条例 臨 時 等 水道、交通、清掃、病院、学校など 労働基準法別表第1に掲げる事業に 雇用される者 1年目は労災 2年目以降は 公務災害へ
【参考2】災害発生からの請求手続、補償内容等フロー図 療養補償 被災職員 災害発生 医療機関で受診 職場へ 連絡 所属長 任命権者 基金支部 基金本部 認定請求 認定通知 公務上 補償請求 公務外 負傷・疾病 死亡 必要な療養を受けるとき 遺族補償年金の受給権者 遺族特別一時金 有 無 遺族補償年金 葬祭補償 医療機 関で療 養 関に直 接全額 を支払 医療機関に療養補償請求書を提出 被災職員が、療養補償請求書を受け取り、所属長に提出 基金が医療機関又は被災職員に支払 事実調査・証明、請求手続の援助 公務上・外の意見 公務上・外の認定 事案により協議 決定に不服がある場合は、決定があったことを知った日の翌日から起算して3ヶ月以内に支部審査会に審査請求できます。 支部審査会の裁決に不服がある場合は、裁決があったことを知った日の翌日から起算して1ヶ月以内に審査会(基金本部)に再審査請求できます。 ※休業援護金や障害特別支給金のように、補償に併せて給付される福祉事業等は記載を省略しています。 治ゆ(症状固定) 療養中に給与を受けられなくなったとき 休業補償 (療養しながら受給) 療養を開始してから1年6箇月を経過したとき 療養の現状に関する報告書提出 傷病等級 非該当 該当 傷病補償年金 介護補償 治ゆ報告書提出 1~7級該当 8~14級該当 障害等級 障害補償年金 障害補償一時金 福祉事業(外科後処置、アフターケア、リハビリテーション等) 請求書類・添付書類の作成
おわりに ◆災害補償制度の目的を達成するためには、公務災害または通勤災害の認定請求手続きが速やかに、かつ、正しく行われることが必要。 ◆そのためには、所属、任命権者及び支部のそれぞれの段階での各実務担当者の方々の補償、福祉事業の仕組みの理解が不可欠。