建築環境工学・建築設備工学入門 <給排水・衛生設備編> <給水設備> 給水設備の給水方式 [Last Update 2015/04/30] 建築環境工学・建築設備工学入門 <給排水・衛生設備編> <給水設備> 給水設備の給水方式 給水設備の給水方式 ・ここでは、給水設備の主な給水方式について説明をします。 ・建物の用途や規模により適切な給水方式の選択が重要です。 ・建物の給水方式は、直結方式と受水槽方式に大別されますが、それぞれに優位性があります。
給水設備の概要 高置水槽 受水槽 揚水管 止水栓 量水器(水道メータ) 配水管(水道本管) 電磁弁 定水位弁 給水管 揚水ポンプ 必要最低水圧を 確保できる高さ M 高置水槽 受水槽 揚水管 止水栓 量水器(水道メータ) 配水管(水道本管) 電磁弁 定水位弁 給水管 揚水ポンプ 給水設備の概要 ・図は、受水槽方式の中でも高置水槽方式(重力式)の概略を示したものです。 ・概略図の左下にある配水管(水道本管)より、止水栓、量水器を経て受水槽へ給水されます。 ・受水槽の水位により定水位弁が作動し、適正水量が維持されます。 ・受水槽に貯水された水は、揚水ポンプにより屋上等に設置される高置水槽へ揚水されます。 ・高置水槽に貯水された水は給水管を経て、各器具に給水されます。 ・器具の水圧は、高置水槽との落差により決定されるため、最上階の器具における水圧確保に留意します。 このように、方式ごとで構成される機器、器具、配管の名称が、系統(水の流れ)に応じて理解できると良いでしょう。
給水方式の分類 給水方式 水道直結式 水道直結 直圧方式 増圧方式 受水槽方式 重力式 ポンプ直送式 圧力水槽方式 給水方式の分類 ・給水方式は、敷地に近接する道路に敷設されている水道管の水圧を利用する水道直結式と水道管から引き込んだ水を水槽で貯水し、建物内に配水する受水槽方式とに大別されます。 ・水道直結方式は、水道管の水圧だけで給水栓に配水する水道直結直圧方式と水道管の水圧で不足する分を増圧させて給水栓に配水する水道直結増圧方式とに分類されます。 ・受水槽方式は、貯水した水を建物の最上階に揚水し、落差による水圧で給水栓に配水する高置水槽方式(重力式)と、ポンプにより給水栓まで水を汲み上げて配水するポンプ直送方式とがあります。 ・その他に圧力タンク付きポンプを使って配水する圧力水槽方式がありますが、近年ではこの技術を応用したポンプ直送式が多く用いられるようになりました。
水道直結直圧方式とは ①水道管(配水管) ③給水器具 ②水道メータ 量水器(水道メータ) 給水管 配水管(水道本管) 各家庭まで浄水を届ける管。ポンプなどで圧力を加え水を配水する。 ③給水器具 水道本管から直結した水を供給するための器具。 シャワーヘッドや蛇口など。 量水器(水道メータ) 給水管 配水管(水道本管) M 水道直結直圧方式 ・道路内に敷設された水道管(配水管)から分岐し、量水器を経由して管内水圧で水道栓へ給水されます。 ・戸建住宅や小規模の建築で、概ね2階建て以下の建物で適用されるのが一般的です。(一部の水道事業者においては、給水圧が安定したことから、3・4階への直結給水が可能なエリアもあるので、インフラ状況を事前に把握しておくと、給水計画に自由度が増します。) 特徴(長所) ・法で定められた安全で良質な水質が担保される。 ・受水槽やポンプなどの設置スペースや設置費用が不要である。 ・機器類の敵的な保守点検や清掃が不要である。 ・停電時でも給水できる。 特徴(短所) ・水道管の断水時に給水できなくなる。 ・水道管の圧力変動の影響を受ける。 ・流水音や水撃現象(ウォーターハンマー)が発生する恐れがある。 ②水道メータ 水道で水の使用量を記録するための計器。一般に止水栓とともに設置される。
水道直結増圧方式とは 増圧ポンプユニット メータボックス M A P 増圧ポンプユニット 水圧の不足分を増圧するために増圧ポンプを設置する。増圧ポンプ、逆流防止器、制御盤などをコンパクトにユニット化している。 逆止弁 増圧ポンプユニット メータボックス 電気、ガス、水道などのメータ類が一括に収納されている。検診されることを前提としているため、住戸の外に設置される。 水道直結増圧方式 ・水道引き込み管に増圧ポンプユニットを接続して、中層建築物に給水できるようにした方式です。 ・この方式は、清掃義務が無かった小規模(有効水量が10m3以下)の受水槽の設置を避けることや水道直結給水の範囲拡大を目的として開発された方式です。 ・増圧ポンプユニットはインバータによるポンプの変速制御と台数制御により給水器具の必要水圧をコントロールしています。 ・直結増圧方式による給水は、政令指定都市を中心に導入が増えており、今後も高層建築物への導入、分岐口径やメーター口径の大きい建物への対象拡大などの各種検討が進められています。 量水器(水道メータ) 配水管(水道本管)
高置水槽方式とは ①受水槽 ③高置水槽 ④量水器(水道メーター) ②揚水ポンプ ビル・マンション・学校など一時に多量に水を使用する建物に設置する水槽。水道本管からの水を貯めておく。 ③高置水槽 必要とされる圧力を得るため給水箇所よりも高い位置に設置し、重力で給水する建物に設置する水槽。 高置水槽 P M ④量水器(水道メーター) ②揚水ポンプ 受水槽から高置水槽に水を揚水するためのポンプ。 高置水槽方式 ・水道管から引き込んだ水を受水槽で貯水し、ポンプで屋上などの高置水槽へ揚水して重力によって配水する方式です。 ・この方式は、一時的に多量の水を使用する用途の建物に適しており、安定した水圧が得られます。 ・断水時でも受水槽と高置水槽に貯水された水が利用できます。 ・水槽に水を貯水するため、水質管理に留意する必要があります。 ・ポンプや水槽の定期点検や清掃が必要です。 ・最近では、ポンプの制御技術が向上した結果、ポンプ直送式が採用(あるいは、既存建築において方式変更)される事例が増えています。 【コラム】 「受水槽方式から直結方式へ」 直結給水方式の給水設備の適用範囲拡大により、新築のみならず、既存の建物においても受水槽方式から直結方式への切り替えが行われるようになりました。ストック社会へとシフトする我が国においては、今後、設備などの更新時期を迎える建物が増加するものと考えられ、このような給水方式の切り替えニーズが増加する方向にあるでしょう。 量水器(水道メータ) 配水管(水道本管) 受水槽 揚水ポンプ
ポンプ直送方式とは 高置水槽の撤去 加圧給水ポンプ 最近では高置水槽を撤去してポンプ直送式に変更する事例も増えている。 M 空気抜き弁 A M 空気抜き弁 電磁弁 定水位弁 直送ポンプユニット 受水槽 水道本管 (配水管) 道路 流水器 止水栓 加圧給水ポンプ 水道管から一度受水槽に水をため、ポンプにて各水栓類に水を送る。 ポンプ直送方式 ・高置水槽を設けず、受水槽から直接ポンプで配水する方式です。 ・この方式は、時々刻々変化する使用水量に合わせてポンプからの給水量を変化させるため、省エネルギーに寄与(※)します。 ・複数台のポンプからなるユニットの台数制御、ポンプの回転数制御を利用して給水量を制御しています。 ・その他の特徴は、高置水槽方式とほぼ同等と考えてよいでしょう。 ポンプユニットの制御 ・小規模建物には、回転数制御による変流量制御を、工場や倉庫などの規模の大きい建物では、台数制御による変流量制御を用いることが多い。 ・大規模の住宅や事務所建物では、回転数と台数制御を組み合わせた変流量制御を用いることが多い。 (※)ポンプ直送方式の省エネルギー性 ポンプの回転数が変化すると軸動力はその3乗で変化するため、回転数を必要水量に応じて変化させる運転は省エネルギー性が高いといえます。
ポンプ直送式の配管ゾーニング・ポンプ台数制御 (a) 減圧ゾーニング方式 (b) 系統別ゾーニング方式 A M 空気抜き弁 電磁弁 定水位弁 直送ポンプユニット 受水槽 水道本管 (配水管) 道路 流水器 止水栓 P P 減圧弁 ポンプ 受水槽 (住宅) (事務所) (店舗) 受水槽 ポンプ ポンプ圧送式の配管ゾーニングとポンプの台数制御 ・高層あるいは超高層建築物の場合、給水設備を1系統にすると、下層階において給水圧力が過大となり、器具給水圧のコントロールに支障をきたしたり、配管まわりの水撃現象(ウォーターハンマ)の原因になったりします。 ・そのため、建物の高さ方向に対して、給水圧力が0.4~0.5MPa以内になるよう系統を分けるなど給水系統のゾーニングが必要になります。 ・給水ゾーニングは、(a)減圧弁によるゾーニング、(b)給水ポンプ別(系統)によるゾーニングがあります。 ・また、配管(図では「揚水管」)の抵抗曲線に対して、ポンプAとポンプBの並列運転時の特性曲線およびポンプA,Bの単独運転時の特性曲線との接点から送水量を比較すると、並列運転時の送水量Q3は、ポンプA,Bの送水量の合計Q1+Q2になりません。 ポンプAの 特性曲線 揚水管の 抵抗曲線 ポンプAおよび Bの並列運転時 の特性曲線 揚程 [mAq] ポンプBの 特性曲線 Q1 Q2 Q3 吐出し量 [L/min] Q1+Q2>Q3
発 行 公益社団法人 空気調和・衛生工学会 西川 豊宏 発 行 公益社団法人 空気調和・衛生工学会 (SHASE: The Society of Heating, Air Conditioning and Sanitary Engineers of Japan) 西川 豊宏