M022 ゲノム科学と医療 統計遺伝学分野 2010/11/18,25 山田 亮 複合遺伝性疾患 M022 ゲノム科学と医療 統計遺伝学分野 2010/11/18,25 山田 亮
複合遺伝性疾患とは 少なからぬ人が罹患して 1個の遺伝子が決定的に決めるわけではない 関与する遺伝子は複数 遺伝因子だけでは決まらない(環境因子も関与する) 確率的に決まる部分がある
単一遺伝子疾患の場合 原因遺伝子変異を持ち、ほぼ確実に発症する家系構成員 (100人) 日本人1億2千万人・・・ 原因遺伝子変異を持たず、発症しない大多数 (1億1999万9千9百人)
~複合遺伝性疾患の例~ 日本人1億2千万人・・・ 因子陽性で発症者 (50万人) 因子陰性で非発症者 (8400万人) 因子陽性で非発症者 (3600万人) 因子陰性で発症者 (20万人)
単一遺伝子疾患と 複合遺伝性疾患の比較 遺伝要素を持っていなくても発症する 遺伝要素を持っていても発症しない
複合遺伝性疾患を分解する 「複合」 「遺伝性」 「疾患」
疾患 個体が持ちうるフェノタイプのうち、そのフェノタイプを持つ個体が不都合であると感じる(場合によっては、そのフェノタイプを持つ個体とかかわりを持つ個体・集団が不都合であると感じる)ものである。多くの場合は、集団にあって少数派のフェノタイプであり、また、そのフェノタイプを持たない状態への変化が希望される。 →医学概論
遺伝性 血縁関係があるときに 似ること 似る程度にばらつきがあること 似やすい特徴もあれば、似にくい特徴もあること 似ることの原因が、物質の世代間伝達によること
複合 遺伝子の数が「単一」ではなくて、「複合」であること 遺伝子とフェノタイプの関係 種(の特徴の遺伝) メンデル(の遺伝) 「多数の遺伝子の集合」と「多数のフェノタイプの集合」とが1対1対応(集合の要素に着目すれば、N対M対応) メンデル(の遺伝) 「個別の遺伝子」と「個別のフェノタイプ」とが、1対1対応 複合性(の遺伝) 「複数の遺伝子のセット」と「個別のフェノタイプ」とがN対1対応
「血縁関係がある」 「似ている」 ならば 遺伝なのか 遺伝による 遺伝によらない
遺伝について 似ることの原因が、物質の世代間伝達によること 世代間には、物質伝達以外にも、共有されるものがある・影響しあうものがある 文化・生活習慣・教育など
伝達される物質 遺伝子 染色体 DNA 情報高分子 核染色体 ミトコンドリア染色体 伝達される物質 遺伝子 染色体 核染色体 ミトコンドリア染色体 DNA 情報高分子 http://www.microbe.org/espanol/news/human_genome.asp
染色体 Chromosomes
ミトコンドリア染色体のサイズ
遺伝子の多様性 遺伝子多型
遺伝子多型 構造分類 Insertion deletion repeat substitution inversion translocation
遺伝子多型 サイズ分類 substitution Insertion deletion repeat inversion translocation
種の特徴の遺伝とメンデルの遺伝 種の特徴の遺伝 メンデルの遺伝 「多数の遺伝子の集合」と「多数のフェノタイプの集合」とが1対1対応(集合の要素に着目すれば、N対M対応) メンデルの遺伝 「個別の遺伝子」と「個別のフェノタイプ」とが、1対1対応
種の特徴の遺伝とメンデルの遺伝 その違い 2倍体のこと
遺伝学 遺伝的に伝わることと多様であること 瓜の蔓に茄子はならぬ 瓜二つ 鳶が鷹を生む カエルの子はカエル 21
血縁関係 → 似る 似る程度にばらつき 似る特徴もあれば似ない特徴もある 似るか似ないかには「理由」がある
血縁関係 → 似る 似る程度にばらつき 似る特徴もあれば似ない特徴もある 似るか似ないかには「理由」がある
これなら簡単 瓜の蔓に茄子はならぬ カエルの子はカエル 24
これは・・・ 血縁関係~似る?? 瓜二つ 他人の空似 鳶が鷹を生む 25
1遺伝子が1フェノタイプに対応しているとしたら、同じか 2倍体 種の違いは「ホモ接合体」としての違いのみ AA BB メンデルの遺伝は、「ホモ接合体」「ヘテロ接合体」「もう一つのホモ接合体」 AB
2倍体の遺伝形式 優性・劣性遺伝形式 優性遺伝形式 「何かがある」と「●が起きる」 劣性遺伝形式 「何かがない」と「○が起きる」
「ある」か「ない」か、 「起きる」か「起きないか」と 家系図
家系図を描いてみる 4世代、構成メンバー10人以上、優性遺伝形式 5世代、構成メンバー16人以上、劣性遺伝形式、2つ以上のいとこ婚
家系図から読み解けないとき 表現型の発現(発病)までの時間 浸透率 フェノコピー 発現までの時間が一生より長かったら 他の要因でも同じ表現型になる 他の要因は他の遺伝子かもしれない
発病時期・浸透率・フェノコピー の 考慮 必ずしも「遺伝形式通り」ではない
優性・劣性以外の遺伝形式 優性・劣性遺伝形式 「ある」ものは、遺伝子発現したもの 発現「量」 「何かがある」と「●が起きる」 「何かがない」と「○が起きる」 「ある」ものは、遺伝子発現したもの 発現「量」 質的(「ある」か「ない」か)ではなく 「量」的に考える
質的な評価(優性・劣性遺伝形式) 量的な評価(相加的・相乗的遺伝形式) 「何かがある」と「●が起きる」 「何かがない」と「○が起きる」 「何かがある多い」と「●が起きるやすい」 「何かがない少ない」と「○が起きるやすい」
Genotypic risk ratio (GRR)と オッズ比 g(AA),g(Aa),g(aa) g(aa)=1 :基準 純粋な優性・劣性遺伝形式のGRR・オッズ比 優性 g(AA)=g(Aa) 劣性 g(Aa)=g(aa)=1
優性・劣性以外 それ以外は、何かしらの数値になる 相加的 相乗的 オーバードミナンス(超優性) g(Aa)=(g(AA)+g(aa))/2 g(Aa)=sqrt(g(AA)*g(aa)) オーバードミナンス(超優性) g(Aa)>g(AA)>g(aa)=1
1遺伝子の影響を分子生物学的に考える 「ある」ものは、遺伝子発現したもの セントラルドグマDNA mRNA タンパク質 機能性分子
Central Dogma & DNA Variations DNA Transcription initiation point Transcription Transcription termination point Splicing and mRNA maturation mRNA Translation initiation point Translation Codon triplets Translation termination point Peptide Post-translational peptide modifications Molecules
Transcript variations セントラルドグマより多様・多段階 DNA mRNA1 mRNA2 Peptide1 Peptide2 Peptide3 Molecule3 Molecule2 Molecule1 Molecule4 Transcript variations Peptide variations Molecular variations Gene-molecule network
Complex relation between gene-molecular network and phenotypes DNA mRNA1 mRNA2 Peptide1 Peptide2 Peptide3 Molecule3 Molecule2 Molecule1 Molecule4 Complex relation between gene-molecular network and phenotypes Phenotype1 Phenotype2 Phenotype3 Phenotype4
Genetic variations and network DNA Genetic variations and network mRNA2 mRNA1 Peptide3 Peptide1 Peptide2 Molecule3 Molecule4 Molecule1 Molecule2 Phenotype3 Phenotype2 Phenotype4 Phenotype1
Association study of Complex Traits with DNA-markers Non-susceptible Susceptible DNA RNA Peptides
ジェノタイプとフェノタイプ
中間フェノタイプ バイオマーカーというフェノタイプ 診断基準というフェノタイプ
Extreme example of simplification of genetic study Monogenic determination ~Recessive trait~ Disease mutation and mal-functional molecule DNA mRNA1 Peptide1 Molecule1 Bijection (One-to-one) between DNA/mRNA/Protein variation and phenotype variation Non-disease phenotype Disease phenotype
Difference between rare diseases and common diseases Monogenic Trait Complex Trait Non-coding Silent Missense Depth of transmission of allele-specific molecular difference depends on type of polymorphism Missense mutation and significant change of molecular function
Association study of Complex Traits with DNA-markers Non-susceptible Susceptible DNA RNA Peptides How to simplify ?
Simplification of design Non-susceptible Susceptible DNA-mRNA-Protein relation is not straight, but comparison between DNA variations and phenotype variations bypassing mRNA/proteins simplifies the analysis structure.
遺伝性か否か 遺伝性疾患 非遺伝性疾患
Commmon diseasesとその遺伝性 遺伝的要因 環境的要因 偶然性要因 感染症 悪性腫瘍 単一遺伝子病 外傷 生活習慣病 リウマチ性疾患 アレルギー性疾患 イメージ
遺伝性の強さ 分散という考え方 形質の分散は、独立な要因の分散に分解できる 要因が独立でないときは、単純に要因の分散に分解できない
分散 分散の足し算 段々、まとまりがなくなる
遺伝率 遺伝因子の分散と環境因子の分散に分解する V(T)=V(G)+V(E)
量的形質 量的形質と多数の因子(身長の場合)いくつの因子が関与するか いくつの遺伝子多型が関与するか その内訳は 遺伝因子 環境因子 いくつの遺伝子多型が関与するか 遺伝子多型同士の関与は独立か 1つの遺伝子に複数の関連多型 遺伝子同士の関与は独立か 機能性パスウェイごとに非独立な関係 パスウェイとは
遺伝子はどのように影響を与えるか 量的形質への多数の遺伝子の影響を考える 単純な相加的モデル 遺伝要因と環境要因を分ける すべての遺伝子が相互に相加的 すべてのアレルが相加的 関与遺伝子数 (単一遺伝子病) 少数の遺伝子による(Oligo-genic) 多数の遺伝子による(Poly-genic)
重みを付けた相加的モデル アレルに重みをつける(遺伝子ごとの重み) それ以外は、「単純な相加的モデル」と同じ
遺伝子ごとの重みはどうなるか 関与遺伝子数の重み別振り分けパターン 重みづけの分布 アレルの強さとアレル頻度の関係はどうなっているのか 1個の強い遺伝子とその他の弱い遺伝子 いくつかの強い遺伝子とその他の弱い遺伝子 重みづけの分布 一様 強い遺伝子と弱い遺伝子 強弱の分布を付ける(指数分布?正規分布?) アレルの強さとアレル頻度の関係はどうなっているのか 遺伝子ごとに同じ力(分散)を想定すれば、アレル頻度が小さいほどアレル1本分の影響は強い アレル1本分の力(分散)を等しくすれば、アレル頻度が大きい遺伝子ほど、大きな力(分散)を持つ
相加的でないモデル 1遺伝子のアレルコピー数が相加的でないとき 複数の遺伝子間の影響が相加的でないとき
疾患(ありか、なしか)のモデル 閾値モデル 遺伝的リスクを量的形質の量とする
確率的リスクモデル 単一遺伝子の場合
確率的リスクモデル 多遺伝子の場合直列のモデル 並列のモデル カスケードのモデル ネットワーク状
遺伝子の組み合わせによるリスク SNPがk個あるときのジェノタイプの数は 組み合わせ効果 独立効果 独立効果からの逸脱:遺伝子x遺伝子間相互作用がある 確率的リスクモデルとの関係
複合遺伝性疾患の遺伝要因の同定と応用、その課題
同定の現状と課題 どのくらいのリスクを持つのか 遺伝的背景の違い 環境要因の違い 組み合わせの解析
応用の現状と課題 先行する薬剤選択 その理由 診断応用 遺伝子組み合わせ 遺伝子多型以外との組み合わせ
遺伝子多型の機能性の確認 多型の機能差 1多型に着目してわかること・ばらつくこと・その効用 多型影響を動的に考える