磁気回転不安定性によるブラックホール降着流の角運動量輸送機構の 解明

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磁気回転不安定性によるブラックホール降着流の角運動量輸送機構の 解明 EX17311 (東京大学情報基盤センター推薦課題) 町田 真美 (九州大学大学院 理学研究院) 磁気回転不安定性によるブラックホール降着流の角運動量輸送機構の 解明 課題参加者: 川島 朋尚 (国立天文台), 工藤 祐己 (鹿児島大学) 研究の背景と目的 磁気回転不安定性はブラックホールへ回転しながら落下するプラズマ流(降着流あるいは降着円盤)においてプラズマの角運動量輸送を引き起こし、重力エネルギーを最終的に運動エネルギーや輻射エネルギーに変換するための最重要物理機構である。しかし、これまでの降着流の大局的シミュレーション研究では磁気回転不安定性の成長波長が十分に分解されていない。そこで、本研究では過去最高解像度でのブラックホール降着流の磁気流体シミュレーションを実施し、降着円盤における角運動量輸送機構、エネルギー変換機構を明らかにする。さらにシミュレーショ・データのポストプロセスで輻射輸送スペクトル計算を行いシミュレーション結果と観測データの直接比較を実施し、降着流を支配する物理機構を検証する。 Fig.1 降着流(降着円盤)の模式図 研究方法 磁気流体コード CANS+を用いて3次元散逸性磁気流体 シミュレーションを長時間実施する。 CANS+:千葉大学で開発された高精度な磁気流体コード (Matsumoto et al., submitted to PASJ, see also Kawashima et al., 2017) HLLD近似リーマン解法を用いた有限体積法 TVDルンゲクッタ法による時間3次精度 MP5法による空間5次精度 9 wave法を用いた div B クリーニング 空間5次精度の補間法を採用したことで、メッシュ数の少 ない計算(φ方向64メッシュ)でもφ方向への移流による 磁場の散逸が抑えられる(Fig.2)。メッシュ数を増やすこと でこれまでにない精度で降着流をシミュレートする。 MP5法(空間5次精度) MUSCLE法(空間2次精度) Fig.2 空間補間法が動径方向磁場の時間発展に与える影響。上段はMP5法で下段は2次のMUSCLE法。左図から右図へと時間発展。 (Matsumoto et al., submitted to PASJ) 研究計画 メッシュ数を(Nr, Nφ, Nz) = (256, 64, 512), (256, 128, 512), (256, 256, 512)と設定しブラックホール降着流の大局的な散逸性磁気流体シミュレーションを実施する。これらのシミュレーション結果をもとに以下の内容を明らかにする。 磁気回転不安定性の飽和値のφ方向の空間解像度依存性 磁気回転不安定性におけるm=2モードの起源 αΩダイナモと磁気回転不安定性の関係 ポストプロセスによる輻射スペクトル時間変動の計算と観測データとの比較 時間発展 初期状態 15.2回転 31.1回転 Fig.3 降着流の時間発展。メッシュ数は(Nr, Nφ, Nz) = (256, 64, 512)。ブラックホールの位置は原点。 Fig.4 磁気エネルギーの時間発展。