(1)<<故郷喪失者>> (2) ディアスポラ(離散) (3)一神教 (4)巨大財閥 (5)長い差別の歴史

Slides:



Advertisements
Similar presentations
制度経済学Ⅰ ①. 制度経済学とは何か 制度 institutions 最も根本的な制度は・・・・ 言語、法、貨幣 いずれも経済、そして経済学に関係する それらなしに、経済は成立しない.
Advertisements

1.欧州. 特許会社  特許会社とは …. 経営権が国に保留されている事業の、 一部または全部の経営権を、法律などに より付与された会社。  世界で最初の特許会社 モスクワ会 社.
ひでき 平成17年4月12日 「日本教」モデルを ネットワーク分析する ひでき 平成17年4月12日.
スポーツ文化   第4回目 スポーツとは何だろうか? スポーツの定義.
第3章 実態経済に大きな影響を及ぼす金融面の動向
社会的な見方・考え方を深める 子どもの育成
24・クリスマスとお正月  青山・文化人類学.
南北問題 国際的経済格差は何が問題なのか.
トルコ及び中欧からの人の移動とそのEU加盟問題に与える影響
ドイツとロシアの比較 ↓ 全体主義という概念の変遷 ドイツの日本の比較 戦前と戦後の連続・不連続 ふたつの反ユートピア小説
情報社会とガバナンス 歴史的経緯から 吉田寛.
実存主義-1 「はじめに」 (1) 実存主義とは (2) キルケゴール (3) ニーチェ.
統一原理 総 序 よ う こ そ.
23A[再]・クリスマス  青山・文化人類学.
宗教の問題 宗教的対立をどう克服するか.
宗教の問題 宗教的対立をどう克服するか.
場所1 空間分析批判と場所の概念化 政治地理学の理論と方法論 第4週.
 鎌田ゼミへの道案内 ~鎌田ゼミ流総政ライフ~.
バベルの塔 創世紀11:1~9.
「存在の肯定」を規範的視座とした作業療法理論の批判的検討と 作業療法・リハビリテーションの時代的意義 田島明子
沈黙の文化について 201100661 김 오윤.
新学期にあたって 作花 一志.
日本神話 ~ひょんなことから日本は生まれた~ 11-1-13  田中亮祐.
近代国家における社会福祉・ 保育所の役割 土俵にのらない 哲学をもって臨む.
人たるに値する生活を積極的に保障 ○就労の機会の保障 労働能力がある者 労働している者 労働機会を喪失
民営化とグローバリゼーション 国家の役割は何か.
『宇宙、教育』という  キーワードのコンテンツ   ~宇宙文明時代の到来~ 京都市立洛陽工業高校 有本 淳一.
知・徳・体・地域連携 伏見中学校 教育目標 心豊かに共に生きよう 生き生きした生徒が集う学校 特に今年度取り組んだ点は 知の部分
公共政策大学院 鈴木一人 第7回 政治と経済の関係 公共政策大学院 鈴木一人
誰が全体主義を支えたのか? 収容所のなかで被害者はどのような経験をしたのか? では、どうすればいいのか?
2013 現代文明論 10 3つめの原理 資本主義.
インフレはなぜ止まらないのか?.
2017現代文明論 7 近代化=西欧化(16-18世紀)←1492年に始まる世界システム(前回の講義参照)
第3回    仏教伝来以前の    渡来人の宗教観 中国仏教と朝鮮仏教 の歩みを確認しよう.
トランプ政権の 一年を「評価」する 情報パック2月号.
宗教の問題 宗教的対立をどう克服するか.
社会主義の教育理論.
ワークシート 高校生向け Q1 Q2 Q3 Q4 Q5 自然・環境 サンゴは海の中でどんな役割を担っていますか?
選抜と教育・人生選択 選抜のメッセージ.
宗教の問題 宗教的対立をどう克服するか.
経済学とは 経済学は、経済活動を研究対象とする学問。 経済活動とは? 生産・取引・消費 等 なぜ、経済活動を行うのか?
制度経済学Ⅰ② 4.20. DVD質問 Q1 日本経済にとり中国経済がもつ意味? Q2 中国中流世帯の特徴?
オランダ社会論 究極の合理主義と寛容.
ベトナム戦争 戦争の正義・勝者の苦悩.
国家構築の際におけるタイの「標準化」、 国民の統一化
電気通信大学 2016年度前期 水曜5限 社会思想史A (新C303教室)
民主主義ってどういうこと? 1、始まり 2、見方 3、政治 4、課題 5、これから.
日本教育の特質 国際教育論2.
スポーツ文化 第2回目 スポーツと文化.
『組織の限界』 第1章 個人的合理性と社会的合理性 前半
道徳教育論 価値観は教えられるのか.
グローバリゼーションは 国際的画一化なのか
グローバリゼーションは 国際的画一化なのか
理論研究:言語文化研究 担当:細川英雄.
オランダ社会(2) 柱社会の特質.
「リゾーム」 ドゥルーズ、ガタリ そして今田高俊
ワークシート 中学生向け Q1 Q2 Q3 Q4 Q5 自然・環境 サンゴは海の中でどんな役割を担っていますか?
日本と異なる選抜方式 があることを理解しよう
統一原理 総 序 よ う こ そ.
臨床教育学 授業に関する説明.
2017 現代文明論 第5回 1492年 世界システムの始まり.
メディア社会学6-7回? 2017年5月23日(火).
ドイツとロシアの比較 ↓ 全体主義という概念の変遷 ドイツの日本の比較 戦前と戦後の連続・不連続 ふたつの反ユートピア小説
2012‐06‐14 まい ヒトラーの政策.
制度経済学Ⅰ③ DVD質問 Q1 日本経済にとり中国経済がもつ意味? Q2 中国中流世帯の特徴? Q3 中国市場でいかに生き残るか?
戦争と平和 正義の戦争は 戦争で利益を得る者は.
国際教育論1 オリエンテーション.
まとめ イギリス: BBC/マードック, 1931~ フランス: エルサン Robert Hersant, 1920~96
帝国主義の3つの要素 (アーレントによるオリジナルな説明)
教育行政・財政 導入説明.
Presentation transcript:

(1)<<故郷喪失者>> (2) ディアスポラ(離散) (3)一神教 (4)巨大財閥 (5)長い差別の歴史 第1部・反ユダヤ主義 じつは、映画「もののけ姫」での説明がこの理解に役立つ。 ユダヤとは、宗教?民族? (1)<<故郷喪失者>> (2) ディアスポラ(離散) (3)一神教 (4)巨大財閥  (5)長い差別の歴史 西欧文明のふたつの源泉 = ヘレニズム + ヘブライズム コレ!

たとえばゼウス、インドラ、辰の子太郎・・・ これらは雷を司る神であり、雷とともに雨の恵みの神である。 宗教の原始形態 アニミズム (自然崇拝) 人間と神のあいだに絶対的なカベは存在しない。 たとえばゼウス、インドラ、辰の子太郎・・・ これらは雷を司る神であり、雷とともに雨の恵みの神である。

たび重なる戦争 → ディアスポラ(民族離散) ユダヤ教の特徴 = 一神教 有名な旧約聖書でさえ、最初の段階では一神教ではなく、 多様な神々(多くの場合に自然崇拝)を信仰する多神教だったことが伺われるが・・・ たび重なる戦争 → ディアスポラ(民族離散) ↓ どんな場所にいても信仰できる神を必要とする。 ● 神は必ずしも神殿にいなくていい。 ● 場所にとらわれないということは身体をもたなくていい。 ●身体をもたないので心/身のカベをのりこえ、心を覗き込む能力をもつ。 ● 空間に縛られないということは時間にも縛られない・・・ ・・・と、徐々に超越的な能力が想定されるようになっていく。 (「歴史を支配する神」) 偏在する、人格をもった全能の唯一神 (他宗教とくらべると明らかなように極めて特殊な存在)

●貨幣=ケガレ ●不労所得 ●金融業 → とりたて ●反感―差別 そうした特殊な宗教を育ててきたユダヤ民族は市場に関係して生きてきた。 ↓ 専業状態 巨大財閥 ●貨幣=ケガレ ●不労所得 ●金融業 → とりたて ●反感―差別

何が<<飛躍>>を生んだのか? 近代以前のユダヤ民族 民族離散 → 市場で生き延びる        → 各地に散らばっているため          外交で活躍することができた。 差別されても役割、居場所があった → 伝統的差別はよくないもので、今なお残る差別は是正されるべき。   だが、それは<<民族絶滅>>をめざすようなものではなかった。 ↑ 何が<<飛躍>>を生んだのか?

差別や圧迫はむしろ弱くなるようにみえた。 そして近代化の過程で・・・ 経済が社会の中心となるなかで、 ● 地位向上 ● 特権化 ● 国家との癒着 →さらなる巨大財閥化が可能になる。 差別や圧迫はむしろ弱くなるようにみえた。

ユダヤ資本のスキャンダル 競争の激化 勝ち組と負け組への分化 だが、近代以降、ユダヤ民族とそれ以外のひとびとは 同じ土俵で競争しなければならなくなった。 ↓ 競争の激化  勝ち組と負け組への分化 勝者であり経済システムのシンボルであるユダヤ民族 に対する敗者の憎悪は却って強まっていく。 19世紀末にバブル経済の好景気があり、「夢」がばらまかれたが、やがて経済が破綻し、すべてがインチキだったと判明した。 そんななかでパナマ運河疑獄事件が起きる。 ユダヤ資本が関与し、じつはインチキな計画で遅延を繰り返し、結局工事すらしなかった。巨大汚職スキャンダル―これが伏線となる。

同化ユダヤ人 ユダヤ人の側で溶け込む努力、非ユダヤ人の側で受け入れの努力があった? 「きみはユダヤ人なのに一生懸命に同化しようとしている」 「きみはユダヤ人なのにいいヤツだ」 ↑ 一見すると理解ある態度のようだが、 じつは差別感情を温存するものでしかない。 貴族のサロン(社交界) ・・・ユダヤ受け入れがもっともすすんだ場所だが、 ● 犯罪を喜ぶ風潮・・・犯罪者を喜ぶようにユダヤ人を受け入れる 道徳的退廃と感覚まひ = 世紀末の時代精神

ドレフュス事件(1894) ユダヤ人将校にスパイ容疑 じつは「えん罪」 だが、法的手続きをすっ飛ばして投獄する。 よく並び称せられるブーランジェ事件は性質が違う ユダヤ人将校にスパイ容疑 じつは「えん罪」 だが、法的手続きをすっ飛ばして投獄する。 そして、誤審が誰の目に明らかになってからも、フランス社会はそれを訂正しなかった。 ユダヤ人=敵 敵であれば何をしてもいいという感覚 「フランス人のフランスを!」と叫ぶ声

ドレフュス事件では、 フランス革命以来の「法の支配」の伝統が 軽々と踏みにじられた。 これが「全体主義のリハーサル」となった。 <<無法状態>>に慣れ、受け入れる土壌となった。 誰がユダヤ人を排斥しようとしたか? → モッブ(<<故郷喪失者>>) モッブは第Ⅱ部以降のキーワードのひとつ(→あとで説明) <<故郷喪失者>>たるモッブが同じ<<故郷喪失者>>たるユダヤ人を憎悪する

そして「黄金の安定期」(作家・ツヴァイクの言葉)へ 世紀末に吹き荒れた反ユダヤの嵐はいったん収まる ユダヤ人の権利を守ろうとした者は? → 国民に広く訴えかけた作家・ゾラ → そして「たったひとりで」戦った政治家・クレマンソー アーレントはクレマンソーを評価する (∵ ゾラのやり方には大衆を煽動するヒトラーに似たものが感じられる・・・) そして「黄金の安定期」(作家・ツヴァイクの言葉)へ 世紀末に吹き荒れた反ユダヤの嵐はいったん収まる 反ユダヤ主義の3段階 ①伝統的なユダヤ差別/②世紀末の反ユダヤの嵐 だが、全体主義における反ユダヤ主義はそれ以上のものだった。

舞台はフランス いくつかの伏線 つぎなる課題 → 通常、全体主義の問題はドイツだけの問題だと考えられているが、アーレントは西欧全体の問題と捉えている。 いくつかの伏線 → 資本制の問題、故郷喪失者の登場、たったひとりで戦うこと・・・etc つぎなる課題 →そして、反ユダヤ主義の3段ロケットはいかにして第3段階へと移行していったか? 「差別はよくない」という教訓だけでは反ユダヤ主義のさまざまな段階が理解できない。また、それらの「悪」や「敵」と戦うにしても、何とどう戦えばいいかがわからないのではないか? → 講義のテーマ:「悪の諸類型」