最適化 解析的手法と数値的手法.

Slides:



Advertisements
Similar presentations
Absolute Orientation. Absolute Orientation の問題 二つの座標系の間における剛体 (rigid body) 変換を復元す る問題である。 例えば: 2 台のステレオカメラから得られた3次元情報の間の関 係を推定する問題。 2 台のステレオカメラから得られた3次元情報の間の関.
Advertisements

三木 光範 (同志社大学工学部) 廣安 知之 (同志社大学工学部) 花田 良子 (同志社大学工学部学部 生) 水田 伯典 (同志社大学大学院) ジョブショップスケジューリング問 題への 分散遺伝的アルゴリズムの適用 Distributed Genetic Algorithm for Job-shop.
世帯マイクロデータの適合度評価における 重みの決定手法
遺伝的アルゴリズムにおける ランドスケープによる問題のクラス分類
データ分析入門(12) 第12章 単回帰分析 廣野元久.
第5章: 偏微分の応用(§3~§5) 極大・極小の判定 陰関数定理 (平面曲線) 条件付き極値、特にラグランジュの乗数法 (最大・最小)
ネットワーク理論講義補助資料 Text. 組合せ最適化とアルゴリズム 4.5 節 主・双対法 pp
電子情報工学科5年(前期) 7回目(21/5/2015) 担当:古山彰一
© Yukiko Abe 2014 All rights reserved
遺伝的アルゴリズム  新川 大貴.
初級ミクロ経済学 -生産者行動理論- 2014年10月20日 古川徹也 2014年10月20日 初級ミクロ経済学.
遺伝的アルゴリズム概説 An Outline of Parallel Distributed Genetic Algorithms
「Self-Organizing Map 自己組織化マップ」 を説明するスライド
スペクトル法による数値計算の原理 -一次元線形・非線形移流問題の場合-
上坂吉則 尾関和彦 文一総合出版 宮崎大輔2003年6月28日(土)
第3章 重回帰分析 ー 計量経済学 ー.
第3章 重回帰分析 ー 計量経済学 ー.
確率・統計輪講資料 6-5 適合度と独立性の検定 6-6 最小2乗法と相関係数の推定・検定 M1 西澤.
マイクロシミュレーションにおける 可変属性セル問題と解法
制約条件の確率的選択に基づく 資源追加削減法の改良 三木 光範(同志社大工) 廣安 知之(同志社大工) ○小林 繁(同志社大院)
非線形方程式の近似解 (2分法,はさみうち法,Newton-Raphson法)
(ラプラス変換の復習) 教科書には相当する章はない
誤差の二乗和の一次導関数 偏微分.
高校数学の知識から、 人工知能・機械学習・データ解析へ つなげる、 必要最低限の教科書
ネットワーク理論講義補助資料 Text. 組合せ最適化とアルゴリズム 4.3 節 Lagrange緩和 pp
第6章 カーネル法 修士2年 藤井 敬士.
サポートベクターマシン によるパターン認識
© Yukiko Abe 2014 All rights reserved
データ解析 静岡大学工学部 安藤和敏
MPIを用いた並列処理 ~GAによるTSPの解法~
独立成分分析 1.問題は何か:例:解法:全体の見通し 2007/10/17 名雪 勲.
決定木とランダムフォレスト 和田 俊和.
ネットワーク理論 Text. Part 3 pp 最短路問題 pp 最大流問題 pp.85-94
第9章 混合モデルとEM 修士2年 北川直樹.
第14章 モデルの結合 修士2年 山川佳洋.
独立成分分析 5 アルゴリズムの安定性と効率 2007/10/24   名雪 勲.
6. ラプラス変換.
第7章 疎な解を持つカーネルマシン 修士2年 山川佳洋.
遺伝的アルゴリズムを用いた 構造物の最適形状探索の プログラムの作成
25. Randomized Algorithms
変換されても変換されない頑固ベクトル どうしたら頑固になれるか 頑固なベクトルは何に使える?
ポリゴンメッシュ (2) - 変形と簡略化- 東京大学 精密工学専攻 大竹豊 資料および授業の情報は :
遺伝的交叉を用いた 並列シミュレーテッドアニーリング 同志社大学工学部/大学院 廣安知之,三木光範,○小掠真貴
適応的近傍を持つ シミュレーテッドアニーリングの性能
© Yukiko Abe 2015 All rights reserved
知識科学研究科 知識システム構築論講座 林研究室 佛明 智
「データ学習アルゴリズム」 第3章 複雑な学習モデル 報告者 佐々木 稔 2003年6月25日 3.1 関数近似モデル
ナップサック問題 クマさん人形をめぐる熱いドラマの結末.
第3章 線形回帰モデル 修士1年 山田 孝太郎.
計測工学 計測工学8 最小二乗法3 計測工学の8回目です。 最小二乗法を簡単な一時関数以外の関数に適用する方法を学びます。
情報経済システム論:第13回 担当教員 黒田敏史 2019/5/7 情報経済システム論.
データ解析 静岡大学工学部 安藤和敏
サポートベクターマシン Support Vector Machine SVM
回帰分析(Regression Analysis)
第9章 学習アルゴリズムとベイズ決定側 〔3〕最小2乗法とベイズ決定側 発表:2003年7月4日 時田 陽一
土木計画学 第12回(1月14日) 計画における代替案の作成2 担当:榊原 弘之.
データ解析 静岡大学工学部 安藤和敏
表紙 分散遺伝的アルゴリズムのための 新しい交叉法.
情報工学科 05A2301 樽美 澄香 (Tarumi Sumika)
分枝カット法に基づいた線形符号の復号法に関する一考察
実験計画法 Design of Experiments (DoE)
2008年6月5日 非線形方程式の近似解 2分法,はさみうち法,Newton-Raphson法)
モデルの微分による非線形モデルの解釈 明治大学 理工学部 応用化学科 データ化学工学研究室 金子 弘昌.
「データ学習アルゴリズム」 第3章 複雑な学習モデル 報告者 佐々木 稔 2003年8月1日 3.2 競合学習
回帰分析入門 経済データ解析 2011年度.
確率的フィルタリングを用いた アンサンブル学習の統計力学 三好 誠司 岡田 真人 神 戸 高 専 東 大, 理 研
3 一次関数 1章 一次関数とグラフ §4 方程式とグラフ         (3時間).
高校数学の知識から、 人工知能・機械学習・データ解析へ つなげる、 必要最低限の教科書
各種荷重を受ける 中空押出形成材の構造最適化
遺伝的交叉を用いた 並列シミュレーテッドアニーリングの検討 小掠 真貴 廣安 知之 三木 光範 角 美智子 岡本 祐幸 同志社大学大学院
Presentation transcript:

最適化 解析的手法と数値的手法

最大値(最小値)を求める 解析的 手法 数値的 手法 すでに知られている関数の性質を使って解く 制約条件がない場合 制約条件がある場合 極値では,微分係数 が0である性質を利用 制約条件がある場合 ラグランジュの未定乗数法 数値的 手法 実際に数値を当てはめ,計算により解く 山登り 法(hill climbing)もしくは最急勾配法 模擬アニーリング (simulated annealing) 遺伝子アルゴリズム (genetic algorithm)

解析的手法 極値を求めるには微分 微分:曲線に接する直線の傾きを求める 最大,最小の極値では接線は水平 Δx を0に近づけると 接線 の傾きに 最大,最小の極値では接線は水平 傾きは 0

多次元でも同じ http://handa.blog19.fc2.com/blog-entry-69.htmlより x, yの法線ベクトル 偏微分の結果=0 を解けばよい [すぐ後に出てくる全微分] 任意の接ベクトルは  と  に より張られるので,     と書ける 全微分 曲面のある点における接平面 dx, dyはこの点からのxおよびyの誤差 zの誤差dzは赤線で近似可能

最小二乗法 すべての観測値から もっとも近い 位置に線を引く 最小二乗法 すべての観測値から もっとも近い 位置に線を引く 観測値 xi, yi (i=1,2,..,n)がある xiの値でyiの値を予測.予測値を とする 誤差の2乗           を最小化 予測式を          とすると a, bでの微分を0とした連立方程式をとく ※ 解き方は回帰の週で説明 http://mjin.doshisha.ac.jp/R/13.htmlより

ラグランジュの未定乗数法 与えられた条件下での極値の探索 関数: f (P1,P2,P3・・・,Pn) が最大となる点を, 制約条件: g(P1,P2,P3・・・,Pn)=0 の条件下で探せ 最大値(あるいは最小値)の点では微分して0になる 山の頂上か谷の底に相当 制約条件のため単純に f を Pi(i=1…n) で微分してもダメ. 制約条件のため,答は必ずしも山の頂上ではなく,斜面の途中にあるかもしれない [ラグランジュの未定乗数法] 新しい変数 λ を用意して式 f + λ・g = 0 を作る これの Pi(i=1…n)とλでの偏微分結果=0とした連立方程式を解くと,目的の f の最大値(最小値)が得られる. f + λ・g = 0 が3変数の場合

簡単な例 http://d.hatena.ne.jp/rikunora/20110210/p1より抜粋 関数:          が最大となる点を 制約:           が0という条件の下で探し出せ [従来方式] 直線       が半径1の円に接する点 (Lを変動させ)直線を上下に動かし円と接する点を探す [ラグランジュの未定乗数法] 式                を x,yで偏微分 制約 これらを解いて,x,y,λ が求まる λを変動させることは,何を動かすこと? L

まずはイメージで - 3次元に増やす - 式 の (x,y,g)空間での3D図 関数 も表現 では f と g を足し合わせると まずはイメージで - 3次元に増やす - 式        の (x,y,g)空間での3D図 水平に切れば円 垂直に切れば放物線 関数   も表現 では f と g を足し合わせると 平面 f の分だけ(斜めに平行移動して) 放物面の中心が原点からずれる 真上から みたとき

λで窪みが変化 λg という項でλを変化させると, 窪みの深さが変化 λ=0 ならまったくの平面 λが小さい:少しだけ窪んだ「お皿」形 λが大きい:深く窪んだ「おわん」形 窪みの深さを変化させ, ちょうどxy平面上のところで 放物面λg と平面 f の傾斜を ぴったり一致させることが可能

放物線をずらす f +λg を足し合わせると (斜めに平行移動して) 傾斜がぴったり一致した点が, もっとも低い谷底に降りてくる 3Dグラフを真横から切った図で解説 放物線の中心がずれて解の点が一番底へ 目的の関数と傾斜がぴったり一致するように制約条件を適当に調整して重ね合わせる 重ね合わせた関数=0とすると,傾斜が一致した点である目的の点が谷底に来る 一番下に来た点は微分で探しだせる 解の位置が移動

数式による説明 せっかくだから, ひとつ変数を増やし3変数の場合で 関数 f は極値近傍で次の式を満たす(全微分)                         [意味] f は極値をもつ 関数 g = 0 が成立するので,全微分すると                      [意味] g=0 のため x,y,zは勝手に動けない 第2式を第1式に代入する形でdzを消去.       (*) とおくと, この式にはもう拘束条件がなく,x と y は独立な変数 dx と dy がそれぞれ勝手に動けるので,右辺 が成立するなら, 中辺に含まれる()内の式は それぞれ恒等的に0,  (*)の式も追加して

数値的手法 目的関数の勾配情報を基に最適解を探索 最大化問題では,関数値のもっとも高い地点 最小化問題では最も低い地点 にたどり着く ちなみにラグランジュの未定乗数法は山をある条件を満たした道で登ったときの,もっとも高い点を探す

コスト関数,もしくは,効用関数 コスト関数 効用関数 最適化 以下,効用の最大化に絞って説明 目的を達成するためのコストを表わす関数 達成によって得られる価値を表わす関数 最適化 コスト関数を最小化する 効用関数を最大化する 以下,効用の最大化に絞って説明 コスト c が得られれば,効用 u は などでの式で表現できる http://www.mathman.biz/html/1overx.htmlより

旅行プラン検索の例 お正月に,3兄弟が家族を連れ,そろって旅行 全体の効用を最大にしたい 多様な属性に重みづけ,ひとつの尺度で表現 楽しみとして,名所観光,グルメ,温泉, etc 手段として飛行機,新幹線,マイカー, etc 考慮すべき属性 行ってみたい度,有名度,美味しさ,運賃,疲労度, etc 全体の効用を最大にしたい 多様な属性に重みづけ,ひとつの尺度で表現 若い頃は楽しさ重視,年を取ってくると疲労度重視 属性の効用(コストの場合もあり)の数値化により 正しい要素の組合せを選んで効用を最大化すること が目標であることが明確になる

ランダム探索 ランダムに手段の組合せを複数選び, 最大のものを解とする 過去の経験 を活かせていない 効用関数は 連続 であることがほとんど 右の図で,1が解となる 過去の経験 を活かせていない 効用関数は 連続 であることがほとんど 最大化の場合 価値が最高の解は,他の価値の高い解の 近く にあるはず

山登り法(最急勾配法) もっとも急な勾配を登る(下る) 利点 欠点 現在のノードよりも評価値が高い(低い)継続ノードへ進む. 次のノードの評価値と現在の評価値の差が小さい場合,そこで終了する 利点 簡単 欠点 局所解 に留まる可能性

模擬アニーリングsimulated annealing アニーリング:焼きなまし 温度が高い間は激しく動く ゆっくり冷やしていくうちに,動きが小さくなる ランダムな解から開始 解の候補を取得 改善する場合は受理(確率 p=1) 改悪の場合も,計算される確率 p で受理 所定の回数2.を試行したら温度を下げる 温度が下がりきるまで2-3を繰り返す 温度を T ,現在の解と(改悪となる)新しい解候補との効用差を△E として,改悪を受け入れる確率 温度が高い間は指数部が 0 に近く確率は 1 に近い. 低温や大差になると,指数部の絶対値が大きくなり,確率は 0 に近い p 1.0 ΔE/T

遺伝子アルゴリズム genetic algorithm 生物が環境に適応し進化する過程を模倣(菊川玲の研究テーマ) 個体群という無作為解の集団を生成 最適化のステップごとに,個体群の全メンバに対して効用を計算し,解を順位付ける 新しい個体群(次の世代)を生成 選択 (selection): 生物の適者生存の模倣 交叉 (crossover): 生物の有性生殖を模倣 突然変異 (mutation): 自然界におけるDNA複写の際に起こるミスに相当 上記を,次世代で改善が見られなくなるまで繰り返す

新生代の個体の生成法 選択(selection): 適者生存 現在の優れた解のいくつかを,そのまま次世代に入れる 交叉(crossover): 有性生殖 解を優れたほうから2個体とり,その一部分を個体同士で交叉 突然変異(mutation): DNA複写ミス 最良の解に単純な変更 (例)子Aに対し,マスクパターンが 0 の位置では親Aの遺伝子を 1 の位置では親Bの遺伝子を    複製    子Bに関しては,これの逆

特徴 選択,交叉,突然変異の確率を変動させる 初期集団から選択と交叉の組合せにより並列的に山登り探索を実施,かつ,突然変異により,ときどきランダムな変化 [長所] 複数の解について並列的に調べるので山登り法のような局所安定には陥りにくい.たとえ,局所安定に近づいても突然変異により脱出 [短所] 個体数,交叉,突然変異の確率の一般的手法が未確立 必ず最適解を求めなくてはならないという場合には使えない.(基準以上の解を少ない計算量で求めたい場合に適す)