持続的成長を実現する エネルギー資源の選択

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経常収支とは?  一国の国際収支を評価する基準の一つ。  この 4 つのうち、 1 つが赤字であっても他で賄え ていれば経常収支は黒字となる。 貿易収支 モノの輸出入の 差 所得収支 海外投資の収益 サービス収支 サービス取引額 経常移転収支 対価を伴わない 他国への援助額 これらを合わせたものが経常収支.
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アーガス・メディア社 顧問 (元慶應義塾大学 産業研究所) (元東京ガス総合企画部) 吉武 惇二
多々納 裕一 京都大学防災研究所社会システム研究分野
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Presentation transcript:

持続的成長を実現する エネルギー資源の選択 2018年11月 原子力学会シニアネットワーク連絡会 エネルギー問題に発言する会 http://www.aesj.or.jp/~snw/gakusei_taiwa/list_of_common_doc.html  本資料はエネルギー問題に発言する会が作成したものを、学生とシニアの対話、教員研修会ならびに一般市民向けに編集したものです。 SNW学生とシニアの対話幹事会 改正版編集第2版改1 2018年11月

目次 頁 はじめに 3 第1部 賢いエネルギー資源の選択指針 4 1 文明とエネルギー利用 5 2 エネルギー資源の選択 12 3 エネルギー資源の特性 29 4 化石燃料の特性 30 5 原子力の特性 31 6 安定型再生可能エネルギーの特性 33 7 変動型再生可能エネルギー・太陽光、風力の特性 34 コラム1 変動再エネの自立化に向けて 36 コラム2 変動再エネの現状 40 コラム3 事例 原発停止の補完は化石燃料 43 コラム4 日本のエネルギー安全保障に原子力は欠かせない 47 コラム5 脱原発は日本経済を衰退させる 51 コラム6 核燃料再処理と日米原子力協定 54 第2部 これからの原子力 福島第一原子力発電所事故を乗り越えて! 57 1 原子力発電は安全性が大前提 58 2 核燃料サイクルにより日本のエネルギーは盤石 68 3 高レベル放射性廃棄物の地層処分 72 4 原子力発電の産業基盤維持 83 5 世界の潮流 87 6 これからの日本のエネルギー 91 あとがき 100

はじめに 人類の進化とエネルギー 21世紀中葉から22世紀に向けてのエネルギー 火の使用・約50万年前 最初のエネルギー革命 農業・牧畜・都市革命 約1万年前  技術・産業革命    約300年前 現在 20世紀後半から21世紀初頭のエネルギー状況 社会の高度化に対応したエネルギー選択の高度化 電力分野では水主火従からエネルギー・ミックスへ 現在進行中の革命 情報革命、生命技術革命にも対応 21世紀中葉から22世紀に向けてのエネルギー 2018年7月、第5次エネルギー基本計画が制定 骨子は地球温暖化防止に向けた脱炭素化、低炭素化の推進 目標は2050年GHG排出量80%削減 主な手段 変動型再生可能エネルギーと貯蔵システムによる自立化、主力電源化 在来型安定再生エネルギーと原子力による脱炭素電源の活用 化石燃料のCCS、CCUS活用による低炭化 第5次エネルギー基本計画に基づくエネルギー資源の選択指針を第1部に、福島第一原子力発電所の事故を乗り越えたこれからの原子力のあり方を第2部に示す

第1部 エネルギー資源の選択指針 20世紀後半以降のエネルギー資源活用経緯 エネルギー資源に必要な要件 第5次エネルギー基本計画のねらい 第1部 エネルギー資源の選択指針 20世紀後半以降のエネルギー資源活用経緯 水力→石炭から石油、天然ガス→原子力→再エネ エネルギー資源に必要な要件 エネルギー資源の3要素:大量・集中・高密度 第5次エネルギー基本計画のねらい 日本の経済社会の発展、国民生活の向上、世界の持続的な発展への貢献 安定した持続的・自立的エネルギー供給 資源選択の指針 より高度な3E+S 2030年エネルギーミックスは2015年制定を踏襲しつつ、2050年をにらんだ準備を進める 2050年は脱炭素を実現可能なエネルギー技術の革新を進める

1.文明とエネルギー利用 人類とエネルギーのかかわり 電気の利用 水主火従 火主+原子力・水従 原子力・エネルギー図面集より

明治維新後の一次エネルギー供給量の推移

20世紀後半以降のエネルギー資源利用の変遷 1940年代までは水主火従・1950年代に火主(石炭主)水従へ 1960年~90年代は石炭、石油、天然ガス、原子力時代ミックスへ 21世紀は地球温暖化抑制が課題・四半期以降は脱炭素に 第5次エネルギー基本計画 資料 より 

解説1-1 エネルギーの分類 一次エネルギー 資源による分類 二次エネルギー 一次エネルギーから生産 化石燃料 世界は85%~90%依存 解説1-1 エネルギーの分類 一次エネルギー 資源による分類 化石燃料 世界は85%~90%依存 石炭、原油・石油、天然ガス、シェールオイル/ガス、オイルサンド、メタンハイドレードなど 再生可能エネルギー 安定型再エネ:水力、地熱、バイオなど 変動型再エネ:太陽光、風力など 原子力エネルギー 核分裂、核融合 二次エネルギー 一次エネルギーから生産 電気、都市ガス、水素、ガソリン、灯油など

解説1-2 エネルギー資源が具備する条件 エネルギー資源の三要素 エネルギー利用の条件・エネルギー経済指標EPR 1.大量にあること 解説1-2 エネルギー資源が具備する条件 エネルギー資源の三要素 1.大量にあること 2.集中してあること 3.密度が高いこと 太陽光、風力は大量利用の可能性はあるが、集中しておらず、エネルギー密度も著しく低い。 とはいえ、資源自体はどこにでもあり無料、大きな可能性を秘めていると言える。 エネルギー利用の条件・エネルギー経済指標EPR 古典的なエネルギー利用は知恵・知識・労力に依存 中世までは資源収集は自己の労力(タダ)・・・太陽、水、薪 現代の再生エネルギーは技術に依存・・・市場経済に組み入れ過程? 近代エネルギー利用は市場経済原理が作用(評価は収集コストと収益、エネルギギー経済指標) エネルギー経済指標はエネルギー収支比(EPR, Energy Profit Ratio)  =利用により得られるエネルギー/取り出すためのエネルギー 化石燃料の代替はエネルギー収支比の高い資源が好ましい 低密度分散型資源にEPR指標が市場経済適否指標になるだろうか?

解説1-3 太陽のエネルギー・地球内部のエネルギー 解説1-3 太陽のエネルギー・地球内部のエネルギー 太陽から地球が受け取るエネルギー Q=(1-A)SπR2=3.89×1013kW A アルベード 0.3程度 地球の反射率 S 太陽定数 1.37kW/m2 R=6.37×106m (6370km、地球の半径)  地球の表面積当たりでは Q/4πR2=0.24kW/m2 地球表面の面積当たりとしては希薄 地球の環境維持は太陽エネルギー 大気循環、海洋循環の駆動力 生命を維持できるハビタブルな惑星 地球内部のエネルギー  表面付近の内部からの熱流速から推測 Q=4πR2F=3.5×1013W=3.5×1010kW Q:地球内部の熱発生量 F:地球表面付近の内部からの熱流速  F=70mW/m2  現在の熱源は放射性元素の崩壊熱 K40、U235、U238 、Th232 現在はU238とTh232が主体 初期は地球生成岩石の衝突エネルギー   出典:宇宙・自然システムと人類(放送大学資料)より  太陽放射と地球入射・放射  地球内部のネルギー 太陽放射 地球放射 表面積 4πR2 断面積 πR2

解説1-4 資源のエネルギー収支

2.エネルギー資源の選択 持続性のある発展を目指し、最適なエネルギー資源群を選択し組合せる⇒エネルギー・ミックス 資源選択の4要素 S+3E 資源選択の4要素 S+3E S 安全性 Safety 3E 供給安定性 Energy Security 経済性 Economic Efficiency 環境適合性 Environment Protection より高度なS+3E(第5次エネルギー基本計画) 安全性  :国民が受容可能な安全レベル・安全目標 安全最優先+技術・ガバナンス改革による安全の革新 供給安定性:震災前の自給率 資源自給率+技術自給率向上/選択肢の多様化確保 経済性  :国際競争力ある料金 国民負担抑制+自国産業競争力の強化 環境適合性:GHG削減目標達成 環境適合性+脱炭素化への挑戦 第5次エネルギー基本計画 2018/7/3 より 

S+3Eの評価指標 安全性 安定供給性・安全保障 経済性 環境適合性 視点:健康影響 評価:安全性の受容レベル・安全目標 視点:国内自給率、技術自給率、選択肢の多様化 評価:震災前の自給率、国内技術依存率、供給元多様化、 活用資源多様化 経済性 視点:自国産業競争力、国民負担抑制 評価:エネルギーコスト、電気料金、GDP 環境適合性 視点:地球環境適合性、脱炭素化 評価:GHG削減目標

リスクを踏まえた資源選択 資源の4要素 <= 各要素の評価指標 効用とリスク 選択(エネルギーミックス)の評価 安全性 safety 安定供給  Energy Security 経済性   Economic Measure 環境適合性 Environment Effect 各要素の評価指標 効用とリスク 効用 例 安全性   安全目標達成、社会的合意 安定供給  国内自給率、使用資源多様化 経済性   国際水準のエネルギー料金 環境適合性 GHG削減率  リスク 安全性   健康影響、環境破壊   安定供給  エネルギー供給危機 経済性   経済競争力低下 環境適合性 地球温暖化 選択(エネルギーミックス)の評価 総合的な国力の持続 社会の持続的な発展 リスクとベネフィットを社会が受容 健康で豊かな生活の可能性 リスク 効用 自立性 安定供給 経済性 環境適合性 再エネ・変動型  再エネ・安定型  原子力 化石燃料 <=

第5次エネルギー基本計画の骨子 長期に安定した持続的・自律的なエネルギー供給により、経済社会発展、国民生活向上、世界の持続的発展への貢献を目指す 3E+S原則により、安定的で負担が少なく、環境に適合したエネルギー需給を実現 2030年に向けた対応 GHG26%削減に向けたエネルギーミックスの確実な実施 2050年に向けた対応 GHG80%削減を目指す 再エネ:主力電源化 原子力:脱炭素化の選択肢・安全炉追求/バックエンド技術開発発 化石燃料:ガス利用にシフト、脱炭素化に向け水素開発に着手

2030年に向けた主な方向 再生可能エネルギー(震災前10%⇒30年22~24%) 原子力(震災前25%⇒30年22~20%) 主力電源化への布石 低コスト化、系統制約の克服、変動調整を火力等に依存 原子力(震災前25%⇒30年22~20%) 依存度を可能な限り低減 不断の安全性向上と再稼働 化石燃料(震災前65%⇒30年56%) 化石燃料等の自主開発の促進 高効率な火力発電の有効活用 災害リスク等への対応強化 省エネ(実質エネルギー効率35%減、1次エネルギー13%減・電力需要17%減) 徹底的な省エネの継続 省エネ法と支援策の一体実施 水素/蓄電/分散型エネルギーの推進 第5次エネルギー基本計画 2018/7/3 より 

2030年エネルギー・ミックスと電源構成 省エネと原子力活用により、再エネ導入による費用増大をカバー エネ庁資料より

2050年に向けた主な方向 安定型再生可能エネルギー(水力、バイオ、地熱) 変動型再生可能エネルギー(太陽光、風力) 原子力 化石燃料 一定規模のベース電源 変動型再生可能エネルギー(太陽光、風力) 経済的に自立化した主力電源を目指す 水素/蓄電/デジタル技術開発に着手 原子力 脱炭素化の選択肢 安全炉追求/バックエンド技術開発に着手 化石燃料 過度期の主力、資源外交強化 ガス利用にシフト、非効率石炭フェードアウト 脱炭素化に向けて水素開発に着手 熱・輸送、分散型エネルギー 水素・蓄電等による脱炭素化への挑戦 分散型エネルギーシステムと地域開発 次世代再エネ+蓄電・EV+マイクログリッド等の組合せ 第5次エネルギー基本計画 2018/7/3 より 

2050年エネルギー・ミックスに向けて 発電電力量 電化率(最終エネルギー消費部門) 電力は、脱炭素化電源(再エネ、原子力)と低炭素化電源(化石燃料CCS、CCUS) CCS:Carbon dioxide gas Capture and Storage, CCUS : Carbon dioxide gas Utilization and Storage 電化進行・低・脱炭素燃料へ転換 発電電力量 電化率(最終エネルギー消費部門) (出所)資源エネルギー庁 総合エネルギー統計より作成 小野洋氏資料

2050年エネルギー・ミックスのシナリオ(私案) 化石燃料 原子力 再生ネルギー 再エネシナリオ 一部の民意に過大迎合 化石燃料フェードアウト 15% 原子力フェードアウト 5% 再エネ依存 80% 一極集中リスク、再エネバックアップ要・GHG80%は不可能 延長シナリオ 現状技術改良 可能な限り縮小 50 ~ 58% 再稼働レベル維持 20 25% 1日程度の変動再エネ安定供給 ~25% 化石燃料依存度大、GHG削減50%以下 成長シナリオ 先進技術依存 低炭素化により活用 40% ベース電源機能維持 25 3日程度の変動再エネ安定供給 適度な多様化、脱炭素・低炭素化組合せで高度なS+3E実現 革新シナリオ 先端技術依存 10 30% 最大限の増設 35 45% 主力電源化 再エネ・貯蔵システムの技術革新は不確実性、不透明性高、過剰期待で実現困難

解説2-1 地球温暖化抑制 現状を上回る対策をとらないと、 産業革命時期比で3.2~5.4℃上昇 厳しい対策をとれば、産業革命時期比で 解説2-1 地球温暖化抑制 パリ協定2015年2月 今世紀後半GHG排出と吸収をバランス 産業革命前より2℃下方に保持 (℃) 厳しい対策をとれば、産業革命時期比で 0.9~2.3℃上昇 (出所)AR5 SYR 図SPM.6 現状を上回る対策をとらないと、 産業革命時期比で3.2~5.4℃上昇 【世界平均地上気温変化(1986~2005年平均との差)】

2050年に向けたGHG削減計画 削減目標:2030年度26%削減、2050年80%削減を目指す 基本的考え方:環境・経済・社会の統合的向上に資する施策 排出量 (億トンCO2換算) 2030年度 2013年度比 26%減 (10.42億トン) 2050年 80%減 吸収源 基準年度 排出量  2013年度 14.08億トン  2005年度 13.97億トン ※削減目標決定時の数値 基準年 基準年 (出所)「2016 年度の温室効果ガス排出量(速報値)」及び「地球温暖化対策計画」から作成(小野洋氏資料より)

解説2-2 主要国のGHG削減対応 大幅な削減に向けた野心的な戦略として提示 政策には柔軟性を確保

解説2-3 ヨーロッパは送電網で各国と連携 日本は自国内で完結する必要がある 出典; 電事連原子力・エネルギー図面集2016

解説2-4 震災以降温室効果ガス排出量増大 出典; 資源エネ庁 日本のエネルギー2017

解説2-5 各種電源のライフサイクルCO2排出量 出典; 電事連原子力・エネルギー図面集2016 

解説2-6 主要国の一次エネルギー自給率 日本は34位 解説2-6 主要国の一次エネルギー自給率 日本は34位 出典; 資源エネ庁 日本のエネルギー2017

解説2-7 日本の電気料金は国際的に高水準 資源輸入国 日本の電気料金 国家百年の計で取り組むエネルギー政策 解説2-7 日本の電気料金は国際的に高水準 トップレベルの化石燃料依存率 資源輸入国 エネルギー源の9割以上が輸入化石燃料 日本の電気料金 国際的に高水準 化石燃料の国際市場価格依存と再エネ賦課金 国家百年の計で取り組むエネルギー政策 国際水準の経済力維持、強化 ぜい弱な供給構造の改善 産業用は世界一、家庭用はドイツに次ぐ料金 資源エネ庁HP2017年7月

3.エネルギー資源の特質 エネルギー資源 安全性 供給安定性 経済性 環境適合性 化石燃料 石炭 酸性雨健康影響など 資源量に限界(石油、天然ガスより豊富) 良好 CO2排出量高 石油 同上 国際情勢の影響アリ、資源量に限界 変動 CO2排出量 やや高 天然ガス 資源量に限界 中程度 原子力 軽水炉 放射能汚染による健康影響など 準国産資源 CO2排出量低 高速炉 2000年程度 再生エネ 安定型 水力、地熱、バイオ 水害など 開発限界に近い 森林破壊など懸念 変動型 太陽光、 風力 地域破壊など 発電は昼夜(太陽光)と天候の影響を受けない自立性(蓄電等)、もしくは火力等によるバックアップが必要 バックアップ含めると高 FIT要

確実性のあるものを選別し、実現時期を見通すこが必要 4.化石燃料の特性 産業革命を支えた動力源 抜群の資源量、エネルギー密度、取り扱い易さ 多様な用途 : 産業用、運輸用、民生・家庭用燃料、電気など 戦後復興・高度成長の原動力 電源として 戦後復興初期は水主火従 石炭から石油へ、水主火従から火主水従に、高度成長期へ(1950年代後半から1960年代) 安定したベースロード電源からピーク電源まで幅広く活用 工業用、民生用燃料 化学製品の原材料 脱炭素化に向けて⇒効率的な活用と革新的CO2低減(第5次エネ基) 効率的な活用 CO2分離・回収・処分技術(CCS) 水素社会への転換   革新技術の実現性は不透明(コラム参照)   確実性のあるものを選別し、実現時期を見通すこが必要

5.原子力の特性 核分裂エネルギー エネルギー密度が高い 資源量が豊富 備蓄性が高い ⇒ 準国産エネルギー、安定供給性高 核分裂エネルギー エネルギー密度が高い 100万kWの発電所を1年間運転するのに必要な燃料 化石燃料 石炭約200万トン、石油約130万トン、天然ガス約100万トン 核燃料  約20トン (10万分の1) 資源量が豊富 備蓄性が高い  ⇒ 準国産エネルギー、安定供給性高 装荷した燃料は3~4年継続使用 核燃料サイクル・再処理路線により、プルトニウムも資源として活用(資源量の制約がほぼなくなる) 社会的合意に向け安全性向上活動の持続 新規制基準と事業者努力による安全対策の充実 安全目標と達成度評価による安全性の確認 長期的なエネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源(第5次エネ基) 再稼働、核燃料サイクルの稼働 安全炉追求/バックエンド技術開発 課題は運転終了発電所のリプレース・新増設

安全性の指標の例 原子力の安全目標 定性的安全目標 定量的安全目標 参考 生活における身近なリスク 性能目標 安全性の指標の例 原子力の安全目標 定性的安全目標 原子力の利用活動に伴って放射線の放射や放射性物質の放散により公衆の健康被害が発生する可能性は、公衆の日常生活に伴う健康リスクを有意に増加させない水準に抑制されるべき 定量的安全目標 原子力施設の事故に起因する敷地境界の公衆の個人平均急性死亡リスク、および施設からある範囲の距離にある公衆の個人のがんによる死亡リスクは、ともに年当たり100万分の1程度を超えない セシウム137の放出量が100TBq(福島第一原発事故の百分の1)を超える事故は、原子力発電所1基あたり100万年に1回以下に抑制する。 福島第一原発事故の1/100程度に抑制するよう原子力規制員会が制定 性能目標 炉心損傷確立(CFD):<10-4/炉年 格納容器機能喪失確立(CFF):<10-5/炉年 課題:社会的合意の指標とするには! 参考 生活における身近なリスク 個人死亡率 1/年   全死亡       1.0×10-2   悪性新生物(がん)  8.0×10-3   交通事故    4.5×10-5   転倒・転落    6.4×10-5 原子力安全目標    1.0×10-6 身近なリスクにくらべ低い。 原子力事故による日本での死亡はゼロ むしろ汚染、被ばく回避のための避難が問題 セシウム放出量抑制目標 放出量100TBqを超える事故は100万年に1回以下に抑制 (福島事故の1/100以下)

6.安定型再生可能エネルギーの特性 安定型再エネは実績あるエネルギー 脱炭素・ベース電源機能を引続き活用 水力 :水車は中世から動力に利用、発電は19世紀後半から 事業用では三居沢発電所(1888年、宮城紡績、現所有は東北電力)、商用では蹴上発電所(1891年、京都、現所有は関西電力) 1950年代までは発電の主力 水主火従 生物エネルギー(バイオ):古代から利用(薪、木炭など) 直接利用と製造燃料利用(アルコール、メタンなど) 量に制約 再生範囲を超えると環境破壊(森林伐採など) 地熱 :日本は火山国なので、一定程度は資源あり   発電地域に制約(観光地、温泉地) 脱炭素・ベース電源機能を引続き活用 規模の拡大には限度がある

7.変動型再エネ・太陽光と風力の特性 発電量:太陽光は夜間ゼロ、太陽光、風力とも天候次第 変動型再エネの特徴 需要に応じた発電ができない バックアップ電源が必要 安定電源 火力 ⇒ CO2低減にならない 貯蔵 バッテリー 揚水発電など このような構造的要因により高コスト化(FITでカバー) 変動型再エネの特徴 発電時は一斉に同じように発電・重複、余剰が生ずる「共喰い現象」 設備容量が需要容量を超えると発電量が過剰になる 間欠発電からの供給を優先すると、バックアップ電源の経済性が低下 2050年に向け経済的に自立化した主力電源化を目指す 再生エネルギー・電力貯蔵&バックアップ電源システム   再エネ発電設備、蓄電システム、水素システムの革新技術は不透明   実現可能性のある範囲を見通したエネルギーミックス計画が必要

参考 各国の再エネの国土面積当り発電量 国土面積当りの再エネ発電量  高 電力需要密度(国土面積当り総発電量)  高 

コラム1.変動再エネの自立化に向けて 希薄、低密度、間欠性を補完するため貯蔵(現状は蓄電池・揚水発電によるピークシフト)と火力によりバックアップ コスト増大、CO2削減効果減少、依存度に制約 FITによる支援で推進・再エネ賦課金を徴収 ⇒2050年はFITなしで自立 長期的には経済的に自立化した主力電源化を目指す(第5次エネ基) 自立供給を可能とするシステムの構築 「再エネ発電・電力貯蔵システム」と「水素システム」 経済的な自立にはコストの画期的低減が必要 コストの大幅削減 目標(パリティーコスト)は   家庭用 25円/kWh、業務用 15円/kWh 程度 この実現には革新技術が必要なるも実現は不透明  技術革新は不透明性 利用する資源の多様化も踏まえた実現性の高いエネルギーミックスを構築するには、原子力発電が欠かせない

蓄電池コストの抜本的低減と調整火力の維持 蓄電池はバックアップなしでの成立前提、1日の需要全体の3日分の容量が必要としてエネ庁が算定。 調整コストは蓄電池コストと蓄電池の耐用年数(10~30年?)とその間の充・放電回数によると推察。 再エネ・蓄電池システムの大規模化、低コスト化の技術革新は不透明。実現可能な範囲で選択することになり、調整火力維持も必要となろう。 エネ庁エネルギー基本計画資料2018/7より

蓄電池の稼働率と利用コスト 蓄電池の利用コストは蓄電池の設備費用と耐用期間中の利用回数に依存する 1回当りの利用料金=設備費用/利用回数 設備費用を下げる 利用回数(蓄電・放電回数(稼働率)を増やす 短期間に繰返し利用(充電と放電)するのが有利 1日1回(ピークシフト利用)は1週間の蓄電・放電(天候不順対応等)の1/7 総利用回数を増やせばコストは下がる 繰返数と耐用年数(寿命延長)がカギ 利用可能な範囲 蓄・放電コストは蓄電池設備費(NAS電池4万円/kWh、リチウムイオン電池(LIB)20万円)を、稼働率より求めた耐用期間(15年)中の総使用回数で除した値。

水素社会に必要なインフラ 水素の供給技術(製造、供給)、利用(燃料電池、熱機関など)に技術革新が必要。実現は不確実。 エネ庁2030年エネルギーミックス必達対策資料より

コラム2.変動再エネの現状 太陽光、風力の発電設備は設備利用率(定格発電時間率)が12%,20%と低く、設備利用率の高い火力、原子力(80%)に比べて、太陽光では7倍、風力では4倍の発電設備を必要とする 太陽光、風力の発電設備kwに対しその発電量kWhが少ないため、その発電コストは本質的に高価で、火力発電、原子力発電の2倍以上になる 固定価格買取制度による再エネ賦課金の補助なしでは競争力がない 再エネ賦課金は電気料金として負担⇒国民負担が増大 2017年の賦課金は総額で2.1兆円にも及び国民一人当たり年間1万7千円の負担に相当する ドイツでは1億kwに及ぶ太陽光・風力発電設備ができ 運用されているが 実際の温室効果ガスの排出量は横ばいで下がらず、2020年、2030年目標の達成が絶望的な状態にある

価国民負担の推移 出典;エネルギー白書2008  

ドイツとイギリスのCO2削減の実体 電力由来のCO2排出量と電気料金 ドイツ イギリス 年次 1990 2010 2015 発 電 量 合計 億kWh 5500 6300 6400 3200 3800 3400 再エネ 億kWh 190 1000 1900 60 260 840 原子力 億kWh 1500 1400 920 660 620 700 火力  億kWh 3600 2500 2900 1800 電力CO2排出量 億t 3.4 3.0 2.9 2.2 1.7 1.2 家庭電気料金  円 32 40 18 27  総合的な傾向 再エネ拡大でも火力削減が少なくCO2減少せず。電気料金も高い。 全方位でCO2削減。 再エネ拡大、原子力維持、火力削減。 出展 エネ庁資料

コラム3.事例 原発停止の代替は化石燃料 大量輸入で貴重な国富が流出 コラム3.事例 原発停止の代替は化石燃料 大量輸入で貴重な国富が流出 先の震災後原子力発電は全面的に運転停止されており、その代替として火力発電を炊き増し、そのため化石燃料を緊急輸入して対応している その結果LNGを主体として2011年度は2.3兆円、2012年度3.1兆円、2013年度には実に3.6兆円の貴重な外貨が国外流失している これは1日当たり100億円に相当し、国民一人当たり年間3万円の負担、ムダ使いになる その後化石燃料の値下がりの動きもあり、幾分減少しているものの現在までに累計20兆円以上の国富が流出し、今後とも大幅に増大する

震災後のエネルギー需給構造の変化 震災後一次エネルギーの自給率が約1/3に低下 貿易収支値が赤字転落、経常収支も大幅に低下 この傾向は現在も継続 出展:経済産業省資料「日本のエネルギーのいま」、エネルギー白書 貿易収支と経常収支

東日本大震災後の電気料金 電気料金の推移 電気料金は石油ショックで急騰したがその後下降傾向に推移 震災後、上昇傾向となり、震災前と比較すると約25%(家庭用は約3割、産業用は約2割)上昇 国際的にもドイツに匹敵する高いレベル (解説2-7参照) 中小企業、零細企業の多い鋳・鍛造業界や金属熱処理業界等には廃業、倒産などの影響が生じている 電気料金の推移

kWh当りの発電コスト 各資源の発電コストと内訳(2014年モデル)   資源エネ庁資料発電コスト検証WG資料(2017.5)より編集

コラム4.日本のエネルギー安全保障に 原子力は欠かせない コラム4.日本のエネルギー安全保障に  原子力は欠かせない  エネルギー資源を全面輸入に頼る日本のエネルギー自給率は現状僅か7.4% 原子力は備蓄性が高いこと、再処理によりウラン燃料の利用拡大が可能なことから準国際エネルギーといえる 福島原子力事故以前の自給率はは約20%⇒事故後は約6~8%に低下(右図) 1978年石油危機に味わった無資源国の悲哀を思い起こし万全の備えをとるべきではなかろうか 戦前の石油途絶が先の大戦の引金になった経緯を顧みるまでもなくエネルギー安全保障は国家安全保障に直結していることを肝に銘ずるべき 

1978年石油危機に味わった無資源国の悲哀 万全の備えが必要 第4次中東戦争に端を発した石油危機を乗り越えるための施策は、エネルギー使用の節約、エネルギー効率向上、備蓄と脱化石燃料化 1960(商業発電所1号基運転開始)~70年代(20基運転開始)に始まった原子力発電の導入は、石油危機克服に大きく寄与   運転開始発電所数    1960年代 1基、1970年代 20基,1980年代 16基、1990年代 15基、2000年代 5基 70年代の原子力発電大量導入は、1950年代からの先見性のある計画によるもの 震災前一次エネルギーの化石燃料依存度は81%であったが、現在では原発運転停止・火力発電の炊き増しで89%に増加している エネルギー資源を海外に全面依存して自給率の低い日本は資源確保の面で国際情勢の影響をもろに受けやすくその安定供給が懸念されている

エネルギー安全保障は国家安全保障 エネルギー資源の途絶は国家の存亡に関わる事態であり、戦前に石油全面禁輸から無謀な戦争に突入した記憶も新しい 海外からのエネルギー資源の輸送ルートであるシーレーンの安定な確保は重要であり、とりわけホルムズ海峡、南シナ海、東シナ海等での軍事的紛争はその発生防止と抑止に努めねばならないが、できる限り海外資源に依存しない体質とすべきである  国際エネルギー機関の最近の見通しによれば既存の在来型油田からの原油生産量は2040年には現在の1/3に下がるとのこと 再生可能エネルギーの導入には限界があることから我々の子供、孫、子孫の世代のエネルギーをどう確保するかを真剣に考えることが我々の世代の使命である原子力なしでは成り立たないことを認識すべきである

石油輸送のリスク

コラム5.脱原発は日本経済を衰退させる 震災後の化石燃料依存急増(85%)⇒供給リスク、価格変動リスク増大 変動再エネ(太陽光、風力)増大⇒電気料金押上、CO2増大(変動バックアップ) 電気料金高騰⇒製造業の国際競争力低下 経済衰退 一人当たりGDPの凋落 1996年世界第3位⇒2016年第22位 2010年~2030年の年平均経済成長率0.09%低下 2030年 実質GNP 7.8兆円に縮小(1.7%減) 化石燃料輸入18.7%増大、電気料金36.4%上昇、CO2排出量74.6%増大 出典: 季刊『国際貿易と投資』Spring2014/No.95『脱原発が日本の経済・産業に与える影響』

試算 原子力比率の低下が日本経済に与える影響 試算 原子力比率の低下が日本経済に与える影響 原子力発電比率がエネルギーミックス計画の20~22%が15%程度に低下した場合 2030年の実質GDPは原子力不足分をLNG火力で補てんすると2.5兆円、再生可能エネルギで補てんすると 2.7兆円、それぞれ減少する 2017-2030年までの累計ではLNG火力で補てんする場合は約11兆円、再生可能エネルギで補てんする場合は約13兆円の減少となる 家計への影響を一人当たりのGDPで見ると、2030年で年間2.1-2.3万円の減少となり、これを消費税の支払いに換算すると、一人当たり 2か月分程度の負担となる     出典: 電力中央研究所 試算公表 2017/11

日本の経済的豊かさは凋落している 一人当たり名目GDP(万USドル) 出典:IMF-World Economic Outlook Databases(2017年10月版)

コラム6.核燃料再処理と日米原子力協定 核燃料サイクル・再処理路線を基盤に据えた日米原子力協定は、2018年7月に自動延長した コラム6.核燃料再処理と日米原子力協定  核燃料サイクル・再処理路線を基盤に据えた日米原子力協定は、2018年7月に自動延長した 再処理により抽出するPuはすべてMOX燃料として軽水炉に使用、将来は高速炉燃料としても使用するのに必要な資源として理解されている 不要なPuは持たない IAEAにより厳重に管理 日本は6000発の核爆弾を保有しているとの報道もあるが、原子炉級Puでは実用的な核爆弾はつくれないことは国際常識(日本の保有するPu 48トンを6000発と表現) 事例と言われているのは軍事用Pu生産と発電を兼ねた原子炉から生産されたPuによるもの 原子炉級Puから待機時の安全性と使用時の性能を満たす核弾頭はできない 第5次エネ基ではPu保管量に削減に取り組むとしているが、再稼働本格化、高速炉導入まで一時的に増加するも、いずれすべて消費される資源で不要なものではない

日本で再処理方式が有利な5つの理由 河田東海夫氏資料より

再処理により生成したプルトニウム 使用済燃料から生成するPuはすべて資源として消費する ⇒余計なPuは持たない 日本のPu保有量 47t (2016年) 国内保管10t 海外保管37t 全て軽水炉MOX燃料、高速炉初装荷燃料として使用する 当面軽水炉プルサーマルで消費(現在4基で使用中) 高速炉1基を立上げに約15tのPuが必要になる 一時的に保管料が増えて発電所が稼働すれば消費される 河田東海夫氏資料より

第二部 これからの原子力 福島第一発電所事故を乗り越えて! 第二部 これからの原子力 福島第一発電所事故を乗り越えて!  第一部では脱原発を主張する方々もおられますが、地球環境を維持しながらエネルギー需要にこたえるには、一定規模の原子力発電が不可欠なことを示しました。  第二部では東日本大震災に際して発生した、福島第一原子力発電所の津波に起因する炉心損傷事故の反省を踏まえたうえで、原子力発電の役割を果たすためにはどうすればよいのかについて、私案を示します。  安全に対してリスクゼロは不可能ですが、国民が受容できる程度にリスクを抑制することがまず求められます。そのうえで、核燃料サイクルを推進することにより、長期的に安定供給を可能とし、エネルギー資源面での安全保障が実現できます。更に経済性、地球環境問題の解決を目指し、21世紀全体を通したエネルギー選択、エネルギー・ミックス計画をどうすれば実現できるかを検討しました。  ここでは検討結果を示します。 

1.原子力発電は安全性が大前提 東電福島第一原子力発電所事故の反省を原点とした、社会の合意が得られる安全水準の達成 社会的合意が得られる安全水準 安全水準の指標は安全目標 原子力選択の視点・便益とリスクの天秤 便益・3E ≧ リスク         安全水準Sはリスクの許容水準 もう一つの天秤 便益・3E ≧ 原子力のナイ場合のリスク  再エネ一極集中のリスク 参考 我が国では東電福島第一原子力発電所事故を含め、原子力発電所の事故が直接的な原因による死亡者はゼロ しかし福島事故で15万人以上が長期強制避難し、避難中に死亡者が発生した

原子力発電の基礎 原子力発電のエネルギーは核分裂のエネルギー 核分裂が連続的に反応 中性子の生成と消失が均衡状態(外から中性子を補給することなしに連鎖反応が持続する状態)を臨界という 原子力炉では必要な出力で一定レベルの連鎖反応を行わせるため、制御棒(中性子を吸収)で中性子の量を臨界レベルに制御している 核分裂の際に放出されるエネルギー U235+中性子⇒核分裂生成物+中性子+エネルギー(MeV単位) 1グラムの質量から得られるエネルギーは化石燃料の燃焼から得られるエネルギー(eV単位)の300万倍程度(大概算) 100万kWの発電所、1年間運転するのに必要な燃料 濃縮ウラン 21t、 天然ガス 95万t、 石油 155万t、 石炭 235万t 原子力発電の廃棄物は、毒性は高いが量は著しく少ない 原子炉 原子爆弾 核分裂数が増加しないよう制御 U235 がほぼ100%と多いので核分裂数が急激に増加近い)

事故後の安全対策 過酷事故を想定した深層防護対策を充実・・特に第4層、第5層   深層防護 : Defense in Depth 多重防護とも言われる 第1層から第5層までの深層防護対策の要点  第1層 異常の発生防止 余裕ある設計:安全設計、フェールセーフ、インターロック  第2層 異常の拡大防止 異常・過度事象防止:止める、冷やす、閉じ込める  第3層 炉心損傷防止 工学的安全設備:非常用炉心冷却系など  第4層 周辺への放射性物質放出防止 過酷事故緩和策:冷却、フィルターベントなど  第5層 被ばく防止・環境汚染防止・復旧活動 避難、復興:循環冷却、除染など

規制基準の高度化 世界一厳しい基準に! 新規制基準を制定 (世界一厳しい基準) 深層防護第1層~3層の充実 規制基準の高度化 世界一厳しい基準に! 新規制基準を制定       (世界一厳しい基準) 深層防護第1層~3層の充実 第4層、5層によりシビアアクシデントを防止 <従来の規制基準>

安全性は格段に高まった! ④格納容器の過温破損 水素爆発と放射能飛散 ②津波で非常用電源や 電源盤、直流が使用不能 受電設備の耐震性向上 (碍子対策、ガス遮断器採用) 冷却水源・注水手段多様化 安全弁や除熱の強化など ①地震で受電設備が破損  (外部電源喪失) 浸水防止対策(水密ドア、高所 設置など)、非常電源多様化 速やかなベントと格納容器 冷却、フィルター付ベント ③原子炉冷却・注水不能・炉心溶融・水素発生 非常時の訓練・対策強化 原子力防災体制強化 ⑤計測監視と通信不能 過酷事故時の防災遅延 奈良林直教授資料より 62

事例 事故対策 その1

事例  事故対策 その2 遮水対策(東電柏崎刈羽原発) 防潮堤(関西電力) フィルターベント概念図) 水密扉(関西電力)

事故対応の被ばくは低い基準値で管理 被ばく管理基準 避難区域 食物摂取基準 一般人 放射線取扱者 初期段階から低い基準値を採用した 1mSv/年 放射線取扱者 50mSv/年 緊急時100mSv/年 5年で100mSv 非常時 250mSv/年 避難区域 20mSv/年以上 食物摂取基準 暫定規制値 内部被爆5mSv/年 食品汚染率50%     一般食品 500Bq/kg 新食品基準地 追加内部被曝1mSv/年     一般食品 100Bq/kg 初期段階から低い基準値を採用した 65

放射線による人体への影響 確定的影響 確定的影響にはしきい値がある 確率的影響 しきい値なしの直線(LNT)仮設とホルミシス効果

食品中の放射性セシウム濃度 単位 ベクレル/kg 事故後の日本の食品基準は世界厳しい 食品中の放射性セシウム濃度 単位 ベクレル/kg 食品の種類 日本 米国 EU (域内産) コーデックス委員会 (国際基準) 基準値 乳児用食品 50 1200 400 1000 牛乳 1,200 飲料水 10 一般食品 100 1250 条件 内部被曝 <1mSv/年 <5mSv/年 食品汚染率 50% 30% 10% 日本は基準値ならびに食品汚染率ともに世界基準より厳しい 日本の汚染率は輸入食品(カロリーベース自給率)を参考に設定 事故当初は年間内部被曝5mSvを目標に500Bq/kg(それでも国際基準の半分)としたが、半年後にこの基準とした 市場食品による内部被曝は2015年10月時点で0.0015mSv/年以下 それでも一部の国は日本食品に対し輸入規制を継続 風評被害はなかなかなくならい 出典 福島の風評被害を絶つために(川合将義氏)より

2.核燃料サイクルによりエネルギーは盤石 使用済燃料も貴重な資源 ⇒核燃料サイクルにより有効利用       ⇒核燃料サイクルにより有効利用 使用済燃料を再処理し、残存ウランと生成されたプルトニウムを取り出し、核燃料をとことん活用 当面の再処理MOX燃料の軽水炉利用(プルサーマル)により、ウラン燃料を約20%有効活用 MOX燃料の軽水炉利用:欧米諸国で活用中 将来は高速炉利用により数千年のエネルギー資源が確保 高速炉:ロシア、中国、フランスで稼働、開発中 再処理による高レベル放射性廃棄物の処分は、使用済核燃料の直接処分より有利 発熱量が少ないため処分場の面積を少なくできる 再処理廃棄物にはPuが含まれないため放射性毒性が少ない 再処理の有無に関わらず、使用済燃料の処分は避けられない        再処理が最善の選択

核燃料サイクル 再処理によるPu利用 使用前と使用後のウラン燃料 ウラン燃料とMOX燃料 軽水炉の初期燃料と使用済燃料の組成 核燃料サイクル 再処理によるPu利用 軽水炉の初期燃料と使用済燃料の組成 初期燃料  U235 3~5%、U238(残り) 95%~97% 使用済燃料  Pu 1%、 U235 1%、 U238 93%~95%、  核分裂生成物 3~5% 再処理により使用済燃料中のPuとU235からウラン燃料とMOX燃料を生成 軽水炉用ウラン燃料  (軽水炉初期燃料と同程度) 軽水炉用MOX燃料  Pu 4~6%、U238 94~96% 高速炉用MOX燃料  Pu 16~21%、U238  79%~84% 使用前と使用後のウラン燃料 ウラン燃料とMOX燃料 出典; 電事連原子力・エネルギー図面集2016

核燃料の有効利用1 プルサーマルの軽水炉活用 核燃料の有効利用1 プルサーマルの軽水炉活用 再処理工場(設備容量800t-U/年)で使用済核燃料から生成される核燃料の量 MOX燃料の年間生成量 : 104t/年 (MOX燃料加工工場で生産される) ウラン燃料の年間生成量 : 104t/年 (ウラン燃料加工場で生産される) この燃料による年間発電電力量 700億kWh (100万kW発電所約10基分に相当する) 従って年間に発生する使用済燃料から発生するPuはMOXで消費することができる 備蓄Puは高速炉導入時の立ち上げ燃料としては活用(FBR2機分程度) →余剰Puの心配は無用 出典; 電事連原子力・エネルギー図面集2016

核燃料の有効利用2 高速炉での活用 高速炉はウラン資源の99.3%を占める非核分裂性ウラン(U238)を核分裂性Puに転換することにより、ウラン資源をとことん利用できる。 U238→Pu への転換比 約1.2 (軽水炉では 0.6程度) これにより数千年間の資源が確保できる 出典; 電事連原子力・エネルギー図面集2016

3.高レベル放射性廃棄物の地層処分 これまでの原発の運転に伴い、既にガラス固化体換算で25,000本相当の使用済燃料が発生 高レベル放射性廃棄物はガラス化し安定化処理(ガラス固化体) ガラス固化体は安定した深い地層に安全に埋設 ガラス固化体の放射能は当初は高いが長期埋設後には低レベル廃棄物並みの放射能に減衰 日本列島にはガラス固化体の地層処分に適した場所が多い

直接処分とガラス固化処分

ガラス固化処分と直接処分 処分場体積と属性比較 ガラス固化処分と直接処分 処分場体積と属性比較 処分場の広さ ガラス固化体は直接処分にくらべ体積が1/4以下 軽水炉再処理 : 0.22 高速炉    :0.15 再処理により体積の減少とともに発熱量も減少 発熱量大きい程まばら配置で面積も大 放射性毒性低減 直接処分10万年 ガラス固化体処分ではPuが除去されるので毒性が低減 ⇒軽水炉再処理 8千年 ⇒高速炉 3百年

再処理廃液の高レベル廃棄物は ガラス化し安定化処理する ガラスは色々な物質を溶かし込む性質があり、一旦溶かし込んだ物質はガラスが解けでもしない限り外に漏れ出ることはない性質を持っている  ガラスに物質を溶かし込むと色が付くがエジプト時代に作られた色ガラスは3000年以上たった今でも色あせてはいない エジプトの歴史が証明したように、ガラスが長期に亘り物質を閉じ込めるという自然の原理を利用したものである

ガラス固化体は 安定した深い地層に安全に埋設 ガラス固化体はオーバーパック(金属製容器)に収めて粘土の緩衝材を詰めた人工バリアを深さ300メートル以上の安定した岩盤に埋設して地層処分する 地下300メートル以上とは、人間の生活環境から完全に隔離できる深さで地表での人間活動や自然現象の影響を受けない環境にある 深い地下は酸欠状態で腐食が進まないという利点もあり、かつ岩石主成分のケイ素濃度が飽和して岩石の水への溶け出しが抑えられるという自然の鎧になっている この地層処分は、フィンランド、スエーデン、フランス等の 欧州で先行しており、フィンランドの最終処分場は既に建設が始まっている ガラス固化体に含まれる放射性物質が地下水で運び出されようとしても人工バリア周辺で放射能は減衰する

出典; 電事連原子力・エネルギー図面集2016

出典; 電事連原子力・エネルギー図面集2016

ガラス固化体の放射能は当初は高いが 長期埋設後には低レベル廃棄物並みの放射能に ガラス固化体の放射能は地下埋設の当初は強烈であっても1000年後には 3000分の1 程度に低下して、もはや低レベル放射性廃棄物並みの放射能になる ガラス固化体の発生量は極めて少量で、国内全原発の稼働でも国民1人当たり年間5グラム(10円玉1枚相当)しか発生しない  一般廃棄物・産業廃棄物は合せて国民1人当たり年間4トン(2㌧トラック2台分)も発生している状況に比べてもいかに 少量であるかが理解できる

高レベル放射性廃棄物の放射能の減衰 原子力機構第4回FaCT評価委員会(2011)

高レベル放射性廃棄物の最終処分に向けて 最終処分法にもとづき、高い透明性のもとに段階を踏んで処分地を選定 地層処分全国シンポジウム(資源エネルギー庁(2017)

科学的特性マップとその位置づけ グリーン 濃いグリーン オレンジ シルバー 好ましい特性が確認できる可能性が高い 輸送面でも好ましい 科学的特性マップとは 処分地選定に先立ち、地下の科学的特性が地層処分に適さない所や輸送面で好ましい地域を提示したもの 科学的特性パップを活用し対話活動を通じて、国民や地域社会が最終処分に関する情報を共有する 対話を積み重ねる中で、地域発展を支援する施策を展開する グリーン 好ましい特性が確認できる可能性が高い 濃いグリーン 輸送面でも好ましい 海岸から15㎞以内 オレンジ 地下の長期的安定性等に懸念アリ 火山から15㎞以内、活断層付近、隆起浸食の可能性アリなど シルバー 将来掘削の可能性アリ 油田、ガス田、炭田等 出典; 資源エネ庁HP

4.原子力発電の産業基盤 原子力発電所のような大規模プラント建設には総合的なマネージメントが不可欠 総合的なマネージメントの基盤 プロジェクト・マネージメント技術 プロジェクトを統合的にマネージ 必要な時に必要なものを投入 プラント・エンジニアリング技術 全体が調和のとれたエンジニアリング モデルエンジニアリングからCAD/CAE統合システムに!  総合マネージメントシステムは、技術導入、国産化、改良標準化の過程で、エンジニアリング・建設技術として確立した

総合エンジニアリング エンジニアリングモデルからスタート

全てのデーターの一元管理 → 品質向上、工期短縮、原価低減 原子力総合エンジニアリング 全てのデーターの一元管理 → 品質向上、工期短縮、原価低減 建設計画のビジュアル化 保守点検のビジュアル化

日本が原子力産業を維持するためには! リプレース・新増設の目途が立たない状況では産業界が弱体化、人材育成と技術維持の困難 再稼働からリプレース・新増設への道筋をつけるためには: 原子力発電に対する社会的合意の取得  22世紀に向けた長期戦略を構築し、官民一体となったエネルギー政策に格段の配慮が必要 短期的には80年運転も視野に入れる必要もあろう 海外での原子力発電プラント建設への参入 中国、韓国、ロシア等の原子力産業は拡大、自国内外の市場で実績、経験を積み、独自技術の開発も進めている 先進国の原子力産業にとって代わろうとしている 我が国も福島事故を踏まえた安全技術で、原子力発電導入国に対し貢献できるはずである

5.世界の潮流 2030年と2050年の原子力発電予測 2030年 1.8倍 2050年 2.6倍 2030年 1.5倍 世界は原子力発電の依存が増大する 2030年、50年における原子力 発電量と発電規模予測は  以下の通り(2013年比、低、高位予測の平均値) 発電量(TWh) 2030年 1.8倍 2050年 2.6倍 発電規模(GW) 2030年 1.5倍 2050年 2.0倍 出典 IAEA「世界の原子力発電予測」(IAEA2017) 2013年比 平均2.6倍 2013年比 平均1.8倍 2013年比 平均1.5倍

欧米先進国の原子力開発は停滞気味と言われるが アジア諸国を中心に原子力推進の潮流は強い 世界で現在運転中の原発は439基4億600万kwで過去1年間に8基が運転開始した(中国5基、米国、韓国、ロシア各1基) 新規に建設着工した原発は中国で3基、パキスタン1基で現在建設中の世界の原発は69基、7,290万kwである 新設計画の進展も見込まれ、世界各国で98基、1億1,116万kwの新規建設が計画されている。 世界では原子力発電は必要欠くべからざるものとして認識され、脱原発に向かっている国はほんの一部のみで、明らかに世界の潮流は原子力推進へと鮮明に向かっている

原子力発電所の建設は続く 欧州・ロシア 北米 アジア ■欧州・中国・ベトナム・インドネシア・アラブ諸国を中心に今後150基以上が建設 日本 スイスは即時原発ゼロを国民投票で否決 欧州・ロシア ロシア 中国 2020年までに21基(計2,100万kW) 北米 2020年までに32基(計3,200万kW) イギリス 2030年までに 10基~20基 米国  2基建設中 他はキャンセル? 日本 ベースロード電源20%確保 トルコ 2020年までに5基 (計540万kW) ベトナム アラブ首長国連邦 2020年までに2~4基 →キャンセル2016年 2020年までに14基 アジア サウジアラビア 2030年までに16基 インド インドネシア 2020年までに16基 (計1,600万kW) マレーシア 2025年までに4基 (計400万kW) 2020年までに2基 出典; 奈良林直教授 74    89

中国、ロシア、インド、韓国等で 原発の新規建設が目白押しである 中国では最近5基500万kwが運転開始して、原子力発電 容量は35基、3350万kwとなり、日本に次いで世界第4位の規模だが近々第3位の原子力大国に インドでは21基が運転中で、6基が建設中、2032年までに原子力規模を6,300万kwとし、2050年までには原子力の割合を25%に拡大する目標 韓国では世界初のAPR-1400新古里1号機が運転開始、原子力設備容量は25基、2,310万kwに、原子力発電量は約30%を占めている 脱原発の動きも見える一方、海外輸出は差し控える様子は見 えない?

6.これからの日本のエネルギー 2030年のエネルギーミックス計画 2050年のエネルギー選択 新エネ基への対応 CO2削減目標26%を、原子力発電比率20~22%、再エネ発電比率26~24%で実現 2050年のエネルギー選択 新エネ基への対応 資源選択の軸はCO2削減目標80%の実現 電力分野は脱炭素発電が必須。 原子力、火力、再エネの適度な組合わせ 火力は枯渇リスク回避と低・脱炭素化、変動再エネは電力貯蔵と組み合わせた自立化が必須 22世紀に向けたエネルギー選択 再エネ主体シナリオ~原子力主体シナリオまで幅広い選択肢があるが、革新的技術次第 原子力主体は技術的には可能、国民の理解と一極集中の限度設定次第 時間軸を設定した実現可能な政策エネルギーミックスの制定が急がれる エネルギーインフラではリードタイムに留意する必要 運転が終了する原子力発電所のリプレース・新増設のリードタイムは10年~20年

変動再エネ電源(太陽光、風力)は同量のゼロ・エミッション電源が必要となる 21世紀中葉以降も原子力が柱 2050年CO2削減80%の対応策 変動再エネ電源(太陽光、風力)は同量のゼロ・エミッション電源が必要となる 適度な組合わせ:先進技術に依存する成長シナリオ(P19参照)の例 数値はP19の表の概略中間値 ゼロ・エミッション電源   70% 原子力発電 35% 安定再エネ 15% 変動再エネ 20%  化石燃料電源 30% CCS付でゼロ・エミッションとする 原子力発電40%の実現には原発のリプレース・新規増設が不可欠 手をこまねいているといずれ脱原発状態

22世紀のゼロエミッションは原子力なしでは不可能 22世紀はゼロエミッション、ネガティブ・エミッションも? 対応できるのは原子力と再エネのみ 原子力も変動再エネのバックアップのため、出力調整運転導入 化石燃料は枯渇問題と低炭素化、脱炭素化により一定枠寄与 革新技術進展に応じたシナリオの例 原子力最大シナリオ:80% フランス並みの規模 再エネ最大シナリオ:80% 自立化の進展による 火力補完範囲   :20% 低炭素化による   一極集中リスクを避けるためには、適度な配分が求められよう。 自立変動再エネ・貯蔵システムは技術革新に依存 実現可能性は不確実 イノベーションに頼れる段階ではない 現段階ではオプションの一つ

22世紀に向けた原子力シナリオ 2050年の成長シナリオ 22世紀に向けて 原子力主力シナリオ ミックスシナリオ 原子力衰退シナリオ 原子力35% 過大は社会の需要 22世紀に向けて 原子力主力シナリオ 原子力比率80% 新増設要 現在の仏と同程度の依存率 課題は立地問題と一極集中問題 ミックスシナリオ 40~60%程度か? 原子力衰退シナリオ エネルギーリスクが懸念される 22世紀に向けた原子力主力シナリオ 原子力比率80%へ増強

次世代の原子力発電1 第4世代炉 第5次エネルギー基本計画で取り組むべき技術課題 第4世代原子力システム開発に対する国財フォーラムの提案 次世代の原子力発電1 第4世代炉 第5次エネルギー基本計画で取り組むべき技術課題 軽水炉の一層の安全性・信頼性・効率性の向上 米国や欧州の小型モジュール炉や溶融塩炉を含む革新的原子炉開発の取り組みを踏まえる 第4世代原子力システム開発に対する国財フォーラムの提案 第4世代炉の概念 超臨界圧水冷却炉 ナトリウム冷却高速炉 鉛合金冷却高速炉 超高温ガス冷却炉 ガス冷却高速炉 溶融塩炉 国際短期導入炉  第3世代+炉 改良型ABWR、改良型APWRなど

第4世代炉の概念図 六つの

次世代の原子力発電2 小型モジュール炉 小型モジュール炉のタイプと事例 次世代の原子力発電2 小型モジュール炉 従来型&改良炉 小型モジュール炉 主な用途 一極集中型大容量電力供給 分散型地域需要対応(電力、暖房、脱塩など) サイズ 格納容器高さ30~70m、直径30~40m モジュール高さ20m、直径5m程度 電気出力 30万~140万kW 概ね30万Kw以下 建設費(1基当り) 数千億~1兆円オーダー 初号機3千~4千万円 安全設計 耐震性強化、機能多重化(冷却系、非常電源など)により安全性向上 受動的炉心冷却、災害時非常電源、追加冷却不要化、運転員操作不要化 小型モジュール炉のタイプと事例 軽水炉型 NuScale Power45MW、B&W180MW、ウエスティング 200MW 高温ガス炉型 ペブルベッドモジュール型高温ガス炉など 高速炉型 GE日立PRISM炉 (燃料取替サイクル30年、発電や暖房)   東芝4S炉         (10MW程度、ナトリウム冷却、シンプル)

参考 1970年代の石油危機は 原子力の備えができたから乗り越えられた 参考 1970年代の石油危機は 原子力の備えができたから乗り越えられた 日本の原子力開発の経緯 1954  Atoms for Piece アイゼンハワー演説 1955 原子力基本法の制定 1956  原子力委員会、科学技術庁原子力局が発足  1963  原研動力試験炉が初発電に成功 1966  原電東海発電所が運転開始 1970  原電敦賀1号機、関電美浜1号機が運転開始 1971  東電福島第一1号機が運転開始 1970年代は原子力発電時代の幕開 石油危機を乗り越えることができた!備えあれば憂いなし 1960年代 東海発電所運開 1970年代 敦賀1、美浜1、福島第一1など20基運開 以降、1980年代16基、1990年代15基、2000年代6基が運開 2010年までに57基が稼働、エネルギーの安定供給に寄与

参考 持続できる資源利用に向けて 指数関数で増大、劣化 資源の供給力⇔消費量 人口・資源消費・工業生産・環境 指数関数 参考 持続できる資源利用に向けて 人口・資源消費・工業生産・環境  指数関数で増大、劣化 資源の収容力の限界と着地点    資源の供給力⇔消費量    消費量∝社会のレベル×人口 着地点に向けた取り組み  人口、資源消費、生産、環境劣化    持続性のある範囲に抑制 世界の人口増加  2050年頃がピーク?   日本はピークを過ぎた! エネルギー資源  化石燃料:ピークを過ぎた  核エネルギー:千年以上ある  再生可能エネルギー  :変動に対するバックアップが鍵 指数関数 人口 ・ 資 源 ・環境 資源の収容力 =着地点 持続可能な資源量  =最大人口 破局へ 時間

あとがき 再生可能エネルギーの大量導入には不確実性がともなう。確実性の高い資源の選択を優先する必要がある。 再生可能エネルギーの大量導入には不確実性がともなう。確実性の高い資源の選択を優先する必要がある。  世界は人口増加、経済成長が進み、エネルギー需要は増加する。原子力発電も増加の潮流にある。特に途上国は導入ラッシュ。 我が国では原発停滞、代替火力の燃料輸入で年間3兆円の国富流出と、再エネ賦課金2兆円の負担で財政を圧迫している。 フランス人のように「アラブの油に頼らず、自国の科学技術を信頼したい」といえないものだろうか? 教員研修・学生対話向け編纂    学生対話幹事グループ:石井正則、若杉和彦、大野崇、松永一郎、早野睦彦、               針山日出夫、金氏顕、工藤和彦 オリジナル版 「脱原発政策は国家を滅ぼし国民を不幸にする」    作成:エネルギー問題に発言する会 チームE         林勉、小野章昌、石井正則、大野崇、坪谷隆夫、川合将義、小川修夫 本資料に関する問い合わせ先 石井正則 メール m_Ishii@flamenco.plala.or.jp