南極サイト調査用DIMM (シーイング測定装置) の開発と試験観測 10月から行ってきたシーイング測定装置の開発について 東北大学理学部宇宙地球物理学科 天文学コース4年 沖田博文 2008年2月1日 4年生発表会
目次 ・Introduction ・シーイングとは ・DIMMの開発 ・DIMMの概要 ・理論 ・装置 ・観測、解析結果 ・シーイングとは ・DIMMの開発 ・DIMMの概要 ・理論 ・装置 ・観測、解析結果 ・Future work まず、イントロダクションとして、シーイングとは何か、を簡単に説明します。 次に今回DIMMを開発した動機、 そしてDIMMの原理の紹介、 開発した観測装置の概要 そして観測、データ解析と結果を紹介します。 最後にFuture Workとして、DIMMに関する今後の課題を説明していきたいと思います。 2008年2月1日 4年生発表会 南極40cm望遠鏡に取り付けたDIMM
Introduction シーイングとは? 地上から天体を観測すると大気の攪乱によって光の波面が揺らぎ、星像も揺らぐ。 長時間露出したときに得られる星像輝度分布のFWHMで定量化 →シーイング(星像輝度分布のFWHM) サイト シーイング値 [arcsec] 岡山天体物理学観測所 1.21±0.23 すばる望遠鏡 0.6 南極 ドームC 0.54 南極 ドームふじ 0.5以下? 大気のないスペース(宇宙空間)で得られる星像の分解能(Rayleigh limit)は まずシーイングとは、大気の・・・ 長時間露出したときの星の大きさをシーイングサイズと定義 ところで大気のない宇宙では? 昴の理論分解能は2ミクロンで0.06秒 実際の観測結果では0.6秒 十倍なまされた光を見ている、細かい模様が見えない、暗い天体が検出できない シーイングの良いサイトを選ぶことが本質的に重要 大型望遠鏡ではシーイング値を遥かに下回る理論分解能が出る →シーイングのよいサイトを選ぶことが本質的に重要 2008年2月1日 4年生発表会
Introduction DIMMの開発 南極 →DIMMの開発 宇宙に開かれた最後の窓 極寒 → 乾燥 内陸部は穏やかな天気 高い晴天率 大気の赤外線雑音が非常に小さく、赤外線~サブミリ波の 透過率が極めて高い → 乾燥 内陸部は穏やかな天気 常に下降気流 → 高い晴天率 良シーイングサイト 市川グループは南極に注目 南極 極めて寒い→乾燥 ブリザードは沿岸部、内陸は下降気流で安定、晴天率高い 宇宙に開かれた最後の窓 シーイングはドームCでは0.54秒、もっと標高の高いドームふじは? DIMMを開発し、ドームふじが本当に良いサイトか検証 ドームC(標高3250m) ~0.54” ドームふじ(標高3810m) ≦0.5” ?? →DIMMの開発 2008年2月1日 4年生発表会
DIMMの概要 DIMM(Differential Image Motiron Monitor)は対物プリズムのついた 2つの開口を持つ、望遠鏡の先端に取り付けた観測装置 天体からの光 ↓ 大気によって波面が乱れる ↓ DIMM板 ↓ 2つの星像 長時間露出すればシーイングは得られる、が小型望遠鏡では追尾精度や震動の問題で難しい DIMM 大気を通過した経路の違う2つの星の相対運動でシーイングを測定 ↓ 相対位置の揺らぎを測定 ↓ 長時間露出した時に得られる 星像輝度分布のFWHMに換算 2008年2月1日 4年生発表会
DIMMの概要 理論(1) 天体からの光・・・平面波 大気で波面が乱れる・・・波面 ・・・位相誤差 光の進行方向のズレ・・・ αの共分散 ↓ 大気で波面が乱れる・・・波面 ・・・位相誤差 光の進行方向のズレ・・・ 宇宙からの光 平面波 大気によって波面が乱れるz(x,y) この結果生じる光の進行方向のズレα αが知りたい αの共分散、φの共分散、構造関数Dを定義、コルノニコフ乱流を仮定してこれらの関係式を作る αの共分散 、φの共分散 、光の位相構造関数 を定義 Kolmogorov乱流を仮定 → 2008年2月1日 4年生発表会
DIMMの概要 理論(2) → と星像輝度分布のFWHMの関係・・・ 天頂角補正・・・ これらから求めるシーイングは D・・・開口直径 光の進行方向の角度 の変動 =星像位置の変動 2つの星の角度差 の二乗平均 =2つの星像の相対的な揺らぎの分散 → と星像輝度分布のFWHMの関係・・・ 天頂角補正・・・ これらから求めるシーイングは αが星の瞬き 望遠鏡の追尾エラーなども含めた値 キャンセルする為、2つの差分Δαをとる、この2乗が得られるシーイングの2乗 瞬間の星の位置変動と長時間露出したときのシーイングサイズの関係式は 0.98何とか 天頂角の補正も加える よって、以下の式 これに各パラメーター、観測結果を代入→シーイングが得られる D・・・開口直径 d・・・開口間距離 →星像の相対的な揺らぎ からシーイング測定が可能 2008年2月1日 4年生発表会
DIMMの概要 装置 東大TAO計画で開発されたUT-DIMMとほぼ同じ構造 観測ソフトも同じものを使用 南極40cm望遠鏡 口径 焦点距離 5190mm 今回開発したDIMMは東大TAO計画のDIMMとほとんど同じ ソフトウェアはすでに東大で開発済み→短期間で観測可能に 最大の特徴は開口が2つではなく4つ それぞれ対角線2つの開口を用いてシーイングを測定 上空の風の影響を考慮する為 右の写真は屋上の小さいドームに納めてある40cm南極望遠鏡にDIMM板を取り付けた状態 東大DIMM DIMM板 開口間距離d 250[mm] 開口口径D 74mm[mm] 頂角 30[arcsec] ピクセルサイズ 水平方向 0.3903[“/pix] 垂直方向 0.4553[“/pix] 2008年2月1日 4年生発表会
観測、解析結果 2008年1月13-14日 ピクセルサイズ測定 ピクセルサイズ決定はM42のFits画像を5枚取得し、これらから決定 2008年1月16-17日 DIMM観測 ふたご座β星ポルックス(天頂角15°)で10分間観測 ポルックス 土星 まず観測装置のピクセルサイズを求める観測を行った 次に実際のDIMM観測 天頂付近のふたご座の星で観測、10分間 動画 参考までに土星 この観測で得られたシーイングは、およそ2秒 仙台としてはまあまあ良いほう? これが今回の観測結果 解析結果 Average 2.09” Median 2.03” 2008年2月1日 4年生発表会
Future Work ・1晩のみ、10分間のみの観測 →シーイングの1日の時間変動、季節変動を 調べる為、長期間の観測が必要 調べる為、長期間の観測が必要 ・そもそも正しいシーイングなのか? →広大DIMMと比較観測 広大DIMM ・4つのシーイング値の意味 →上空の風向に依存 ・さらなる考察 ・十分な観測 が必要 今回のDIMM観測はまだ試験的要素が多い 観測時間をもっと長く、もっと長期に 正しいシーイング値を測定できているか、広大DIMMと比較観測 得られたシーイング値から上空の風向等がある程度わかる 露出時間によってもシーイングは異なる 南極用に開発したDIMMなので、シーイングサイズが1.8秒より大きいと正しい値を得られないかも? これらの効果を南極に行くまでにきちんと検証し、また仙台での観測を続け、 南極でのサイト調査を成功させたい。 以上 ・露出時間の補正 →シーイングは露出時間にも依存 ↓ ・開口直径Dの調整 仙台で問題点を洗いだし、 南極サイト調査を成功へ →典型的な空気の塊の大きさに依存 2008年2月1日 4年生発表会