星間物理学 講義1: 銀河系の星間空間の世界 太陽系近傍から銀河系全体への概観 星間空間の構成要素

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オリオン星形成領域における 前主系列星の X 線放射の 長期的時間変動 京大理 ○ 兵藤 義明 中嶋 大 高木 慎一郎 小山 勝二 /23 天文学会 秋季年会 P39a もくじ  星の長期的変動  今回行った解析  まとめ.
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第6回 制動放射 東京大学教養学部前期課程 2012年冬学期 宇宙科学II 松原英雄(JAXA宇宙研)
晩期型星T-Lepに付随する 水メーザースポットを用いた年周視差測定 ~系内MIRA型変光星周期-絶対光度関係の測定に向けて~
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AOによる 重力レンズクェーサー吸収線系の観測 濱野 哲史(東京大学) 共同研究者 小林尚人(東大)、近藤荘平(京産大)、他
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銀河物理学特論 I: 講義2-2:銀河バルジと巨大ブラックホールの相関関係 Magorrian et al
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銀河物理学特論 I: 講義1-4:銀河の力学構造 銀河の速度構造、サイズ、明るさの間の関係。 Spiral – Tully-Fisher 関係 Elliptical – Fundamental Plane 2009/06/08.
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銀河風による矮小銀河からの質量流出とダークマターハロー中心質量密度分布
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形成期の楕円銀河 (サブミリ銀河) Arp220.
高地におけるγ線エアシャワー地上観測のシミュレーション
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すざく衛星によるSgr B2 分子雲からのX線放射の 時間変動の観測
Xmasによるサイエンス (Xmas チーム)
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星間物理学 講義1: 銀河系の星間空間の世界 太陽系近傍から銀河系全体への概観 星間空間の構成要素 星間物理学 講義1: 銀河系の星間空間の世界 太陽系近傍から銀河系全体への概観 星間空間の構成要素 2012/10/03

太陽系近傍の中性ガス(T<1000K)の分布の様子 : Local bubble ? Hipparcos の観測による年周視差で太陽からの距離のわかっている星について NaI D-line (5890A) の吸収線の深さから中性ガスの柱密度を測定。太陽の周りのそれぞれの方向について中性ガスの分布を出す。 銀河面上の方向 銀河面に垂直の方向 Welsh, Lallement et al. 2010, A&A, 510, A54 似たような仕事: Lallement et al. 2003, A&A, 411, 447 Paresce 1984, AJ, 89, 1022 Sfeir et al. 1999, A&A, 346, 785 Vergely et al. 2001, A&A, 366, 1016 コントアは Log n(NaI) = -9.5 - -7.8 cm^-3 それは HI のガスの量に直すとおよそ Log n(HI) = -1.0 – 0.7 cm^-3 に相当する。

太陽系近傍の中性ガス(T<1000K)の分布の様子 : Local bubble ? 紫外線に見られる HI (Lya), H2 の吸収線から推定された柱密度と NaI D 線の柱密度の比較。NaI D 線の観測で中性のガスを捉えることができる。 太陽組成を仮定した場合の関係 電離された Na の成分があるので完全には合わず散らばりも大きい。 Bohlin et al. 1983, ApJS, 51, 277 Ferlet et al. 1984, ApJ, 298, 838 Sfeir et al. 1999, A&A, 346, 785

太陽系近傍の星のダスト吸収の分布 : Local bubble ? Hipparcos 衛星の観測による年周視差で太陽からの距離のわかっている星について 赤化量を求めてそれぞれの方向についてダストの柱密度を推定した結果。それぞれの点が測定に用いた星に対応し、黄色か紫色、黒色になるにつれて吸収が大きくなることを示す。 銀河面上の方向 Reis et al. 2011, ApJ, 734:8

太陽系近傍の星のダスト吸収の分布 : Local bubble ? Hipparcos 衛星の観測による年周視差で太陽からの距離のわかっている星について 赤化量を求めてそれぞれの方向についてダストの柱密度を推定した結果。それぞれの点が測定に用いた星に対応し、水色から紫色に向かうにつれて赤化量が高いことを意味する。黒点はデータのない箇所を示す。 銀河面上の方向 銀河面に垂直の方向 Vergely et al. 2010, A&A, 518, A31 Frisch et al. 2007, Space Sci Rev, 130, 355

太陽系近傍の高温度(10^6K)ガスの分布の様子 : Local Bubble ? 0.25 keV のソフトX線での背景放射観測により推定される高温ガスマップ。ソフトX線での背景放射は銀極方向が強い。ソフトX線は logNH(cm^-2)~20 程度で吸収されるので太陽近傍での放射を見ていると仮定している。高温ガスは一様な温度(10^6.0-6.1K, R1/R2 比で推定)と密度(log ne=-2.3 cm^-3)を持ち強度は視線方向の深さによって決まる、と仮定して求めた。銀河面の垂直方向に広がる構造が推定される。ただし太陽風に伴う放射の寄与も示唆されており、温度などについて議論がある。 Snowden et al. 1998, ApJ, 493, 715 Snowden et al. 1990, ApJ, 354, 211

太陽系近傍のHI ガスシェルの分布の様子 HI ガスのマッピングによって見えてきたガスシェル。 Heiles 1979, ApJ, 229, 533

太陽系近傍のHI ガスシェルの分布の様子 HI ガスのマッピングによって見えてきたガスシェル。それぞれのガスシェルまでの距離は Fich et al. (1989) の銀河系回転曲線を用いて推定した。 McClure-Griffiths et al. 2002, ApJ, 578, 176 Heiles 1984, ApJS, 55, 585

太陽系近傍のHI ガスシェルの分布の様子 観測されたサイズと膨張速度を超新星残骸のモデルと比較して決めた年齢は 1-10Myr。シェルを生成するのに必要なエネルギーは 1 – (a few 100s) x 10^51 erg。 McClure-Griffiths et al. 2002, ApJ, 578, 176

太陽系近傍の分子ガスの分布の様子 広い視野の CO 分子輝線探査で明らかになった太陽系近傍の分子雲の分布。 Dane et al. 1987, ApJ, 322, 706

太陽系近傍の星、星形成領域、などなどまとめ 緑:分子雲 水色:個々の星 オレンジ:星団 赤:超新星残骸 http://galaxymap.org

太陽系近傍の星、星形成領域、などなどまとめ http://galaxymap.org

HI ガスの分布から見た銀河系の構造 Nakanishi et al. 2003, PASJ, 55, 191 Oort et al. 1958, MNRAS, 118, 379

HI ガスの分布から見た銀河系の構造 Nakanishi et al. 2003, PASJ, 55, 191

HII 領域の分布から見た銀河系の構造 星形成領域(HII領域, 分子雲)の分布、銀河回転を仮定して距離を推定している。星の明るさで距離を確認。方向と合わせて銀河系内での位置を推定した結果。 銀河系平面からずれている様子。= “ warp “ Russeil 2003, A&A, 397, 133 初期の仕事: Georgelin&Georgelin 1976, A&A, 49, 57 似たような仕事: Paladini et al. 2004, MNRAS, 347, 237 励起パラメータが大きい(=たくさんの若い星を持つ)領域を大きい印でプロットしてある。実線は4本アームでフィットした結果。

分子ガス(CO)の分布から見た銀河系の構造 Dane et al. 1987, ApJ, 322, 706

さまざまな波長で見た銀河

外から見た銀河で想像する アンドロメダ銀河のガスの構造。 Nieten et al. 2006, A&A, 453, 459

外から見た銀河で想像する M33 の中の HII 領域、星形成領域、HI ガスの分布。 右:HI(blue) + Ha(red) + optical (yellow)  左:HIガスの速度場 Ha+GALEX Thilker et al. 2005, ApJ, 619, L67

光電離ガスの分布  M51 の中の HII 領域の分布。

銀河系内のガスの諸相 Myers et al. 1978, ApJ, 225, 380