発光量絶対値測定 - ホタル- ルミノールの発表は無し …

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物理化学 福井工業大学 工学部 環境生命化学科 原 道寛. 物理化学: 1 章原子の内部 (メニュー) 1-1. 光の性質と原子のスペクトル 1-2. ボーアの水素原子モデル 1-3. 電子の二重性:波動力学 1-4. 水素原子の構造 1-5. 多電子原子の構造 1-6.
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導波路放出光解析による量子細線の光吸収測定
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学年 名列 名前 福井工業大学 工学部 環境生命化学科 原 道寛 名列____ 氏名________
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金箔にα線を照射して 通過するα線の軌跡を調べた ラザフォードの実験 ほとんどのα線は通過 小さい確率ながら跳ね返ったり、
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Real Time PCR Ver.1.00.
光化学 6章 6.1.4 Ver. 1.0 FUT 原 道寛.
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22・5 反応速度の温度依存性 ◎ たいていの反応 温度が上がると速度が増加 # 多くの溶液内反応
F)無節操的飛躍と基礎科学(20世紀~) 1.原子の成り立ち:レントゲン、ベックレル、キューリ(1911) 、ラザォード、モーズリー、ユーリー(重水素、 1934)、キューリ(1935)、チャドウィック(中性子1935)、ハーン、シーボーグ 2.量子力学 :プランク(1918), アインシュタイン(1921)、ボーア(1922)、ドブローイ(1929)、ハイゼンベルグ(1932)、ゾンマーフェルト、シュレーディンガー(1933)、ディラック(1933)、ハイトラー、ロンドン、パウリ(1945)、ボルン(1
光化学 6章 6.1.5 FUT 原 道寛 名列__ 氏名_______.
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有機EL材料を用いた 新しいシンチレーターの開発
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一分子で出来た回転モーター、F1-ATPaseの動作機構 ーたんぱく質の物理ー
光化学 6章 6.1.4 FUT 原 道寛 名列__ 氏名_______.
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カンキツ果実に含まれる蛍光物質の特定 共同研究機関:東北大学,愛媛大学.
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発光絶対光量測定法の開発と 生物発光の量子収率測定
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生体親和性発光ナノ粒子の医薬送達担体への応用
宇宙線ミューオンによる チェレンコフ輻射の検出
星間物理学 講義4資料: 星間ダストによる散乱・吸収と放射 2 銀河スケールのダスト、ダストの温度、PAH ほか
学年   名列    名前 物理化学 第2章 2-1、2-2 Ver. 2.1 福井工業大学  原 道寛 HARA2005.
卒業論文発表 中性子ハロー核14Beの分解反応 物理学科4年 中村研究室所属   小原雅子.
化学1 第12回講義        玉置信之 反応速度、酸・塩基、酸化還元.
機器分析学 赤外吸収スペクトル ラマンスペクトル.
発光励起スペクトル測定法で見る ドープ量子井戸の光放出と光吸収の関係
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好気呼吸 解糖系 クエン酸回路 電子伝達系.
宮本 八太郎(日大、理化学研究所) 三原 建弘、桜井 郁也、小浜 光洋(理化学研究所)
化学1 第11回講義 ・吸光度、ランベルト-ベールの法則 ・振動スペクトル ・核磁気共鳴スペクトル.
生体分子解析学 機器分析 分光学 X線結晶構造解析 質量分析 熱分析 その他機器分析.
現実的核力を用いた4Heの励起と電弱遷移強度分布の解析
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発光量絶対値測定 - ホタル- ルミノールの発表は無し … 発光量絶対値測定     - ホタル- ルミノールの発表は無し … 2006.6.29 秋山研 PD 安東 頼子             ●研究の背景と目的                 ●発光量絶対値測定 ー ホタル ー                   ●今後の展開

研究の背景と目的

88±25% (pH 7.6, Photinus pyralis) Seliger & McElroy (1959) ① 発光量子収率 88±25% (pH 7.6, Photinus pyralis) Seliger & McElroy (1959) 発光量子収率 vs pH 1959年 発光量子収率 88% 1961年 ルシフェリンの構造決定と合成     光学異性体のD体のみが発光に寄与 年 旋光度 合成 D-ルシフェリン: -36.0° 精製 ルシフェリン: -0.6° 精製ルシフェリンはラセミ化が進み D体とL体が約50%ずつになっている (H. H. Seliger, W. D. McElroy, Arch. Biohem. Biophys, 88, 136 (1959)) 発光量子収率・・・1個の基質分子が             1フォトンを放出する確率

② 発光色変化 その1 発光スペクトルがpHによって変化する Seliger & McElroy (1959) 発光スペクトル(北米産ホタル) vs pH            Yellow-green emission Red pH7.1 pH5.4 pH6.3 (H. H. Seliger, W. D. McElroy, Arch. Biohem. Biophys, 88, 136 (1959)) 中性付近:560nmピークの非対称形状を持つ黄緑色発光 酸性側 :616nmピークの非対称形状を持つ赤色発光

酵素の種類によって発光スペクトルのpH依存性が異なる ② 発光色変化 その2   酵素の種類によっても異なる !? pH感受型:ミヤコマドボタル、北米産ホタル          ゲンジボタル、ヘイケボタルなど pH非感受型:イリオモテボタル、ヒカリコメツキ            など (近江谷克裕 (2004) 生化学, 第76巻, 第1号, p.5-15) 酵素の種類によって発光スペクトルのpH依存性が異なる

研究の現状 ① 発光量子収率 高効率の発光反応機構の解明 ex) CIEEL機構 etc… ② 発光色変化   高効率の発光反応機構の解明   ex) CIEEL機構 etc… ② 発光色変化 ルシフェリンやその誘導体を用いた生物・化学発光、吸収・蛍光測定 色々な種類の酵素やその遺伝子組換え体を用いた生物発光測定 酵素やその生成物との複合体のX線構造解析 ex) モノアニオン・ジアニオン説、 結合回転説、 ケトン共鳴状態説、       オキシルシフェリン 電荷偏り説、 酵素の構造差異説 考え方の基本は、2つの発光成分の平衡状態によって 発光スペクトルが変化するというもの → 未だに決着していない... 絶対値発光計測は不可欠 !

発光量絶対値測定 ー ホタル ー

ホタルの絶対値発光スペクトルと発光量子収率 - 絶対値発光スペクトル - - 発光量子収率 - (1個の基質分子が1フォトンを放出する確率) Luminescence yield (photon/eV) Quantum yield : 41.0 ± 7.4 % (pH 8.5)  Firefly luciferase : Natural “Photinus pyralis”              (SIGMA)

結果の考察 その1 発光量子収率 88%だと思っている人達に この値を信じてもらうには…… 41.0±7.4% (pH8.5) 結果の考察 その1 発光量子収率  41.0±7.4% (pH8.5)  88%のおよそ半分の値 → そもそも比較出来ない 発光生物と比較→最も高い値(ウミホタル:28%, オワンクラゲ:17%, 発光バクテリア:12-17%) 一重項状態統計重率の25%を超えている 88%だと思っている人達に この値を信じてもらうには…… ① ルミノールの発光量子収率測定 を行なう !       → 過去の報告(1.2%)と一致 ② Seligerらと同じ方法で ルシフェラーゼ(酵素)を精製する ! 市販のルシフェラーゼ(SIGMA) 発光量子収率測定に使用 → 精製したルシフェラーゼと市販の   ルシフェラーゼの発光量が一致

結果の考察 その2 発光色変化 (発光スペクトル pH依存性) 黄緑色発光と赤色発光 本測定で明らかになった事 従来の考え方 黄緑色発光 結果の考察 その2 発光色変化 (発光スペクトル pH依存性) 黄緑色発光と赤色発光 本測定で明らかになった事 従来の考え方 黄緑色発光 (pH7.8 < ) 2.2eV(560nm)、2.0eV(620nm)、1.85eV(670nm) ピークの3つのガウス型発光成分 560nmピークの非対称形状を持つ単一の発光成分 赤色発光 (pH6 > ) 2.0eV、1.85eVピークの2つのガウス型発光成分 620nmピークの非対称形状を持つ単一の発光成分 発光色変化 黄緑色発光成分の中には赤色発光成分が 含まれる。2.2eVピーク成分のpH依存性による。 黄緑色発光成分と赤色発光成分が入れ替わりに観測される。両発光成分の平衡状態pH依存性による。

ΦQY : 発光量子収率, ΦCR : 化学反応効率, 今後の展開  –発光色変化に関連して- オキシルシフェリンまたは酵素との複合体絶対値 PL測定    ΦQY = ΦCR × ΦEX  ×  ΦLM ΦQY : 発光量子収率, ΦCR : 化学反応効率, ΦEX : 一重項励起状態の効率   ΦLM : 励起生成物の蛍光量子収率 オキシルシフェリン PL時間分解測定 黄緑色、赤色発光成分( 2. 2eV 、2.0eV、 1.85eV成分)それぞれの時間測定を行なう 発光成分+非発光成分 様々な種類のルシフェラーゼを用いた発光量子収率   発光スペクトルpH依存性 酵素の種類を変えると発光スペクトルpH依存性が異なる。 その定量的な評価を行なう。

C2-C2’ bondの回転によって発光色が変わる 発光色決定の諸説 モノアニオン・ジアニオン説 発光生成物オキシルシフェリンの励起一重項状態 モノアニオン → 赤色発光     ↑↓±H+   ジアニオン →  黄緑色発光 回転角説 C2-C2’ bondの回転によって発光色が変わる MaCapra, F., Gilfoyle, D. J., Young, D. M., Church, N. J., Spencer, P., Bioluminescence and Chemiluminescence, John Wiley & Sons, p387 (1994). オキシルシフェリンのpolarization説 Luciferaseに取り込まれているオキシルシフェリンの電子状態によって決まる Ugarova, N. N., Brovko, L. Y., Luminescence, 17, 321 (2002). N S O -O * O- Keto-form Red emission enolate-form Yellow-green emission H+ N S O -O * Φ Twisted keton

発光減衰時間