血液事業と血液製剤 血液新法 鹿児島大学輸血部 古川良尚
血液新法制定までの経緯と問題点 1982~1984年をピークに米国産の非加熱血液凝固因子製剤で血友病患者の40%がHIVに感染 1988年 「後天性免疫不全症候群の予防に関する法律」で 血液製剤の国内自給を促進する事。 1989年 新血液事業推進検討委員会第一次報告で 献血血液の有効・適正利用のため使用適正化を推進等々・・ が議論された。 問題点として 国内自給原則や献血推進について、法的位置づけがなかった。 国内自給達成に向けた進め方が明確でなかった。 血液製剤の使用について、一層の適正化が必要。 血漿分画製剤の相当量を輸入(外国血液由来)に依存。 (平成15年の自給率: アルブミン45.9%、グロブリン 87.9%) 全面輸入の遺伝子組替え製剤について、安定供給を図る観点から適切な位置付けが必要。
血液新法制定までの経緯と問題点 (つづき) 1980年代初頭の薬害エイズ禍により、血液事業と輸血療法の責任の所在が曖昧である事が露呈 新たな法的枠組みを制定する事になる 基本理念、関係者の責務等の明確化 献血の推進と、血液製剤に係わる需給の適正化 「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律」 市販後対策の充実強化 生物由来製品全般についての安全性の確保・向上 薬事法を改正 健康被害の救済 医薬品副作用被害救済制度
「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律」 (2003年7月30日施行 (国の責務; 第四条) 国の責務として、血液製剤の安全性の向上及び安定供給の 確保に関する施策の策定、実施しなければならない。 安全性のための国内自給、そのための適正使用の推進。 (地方公共団体の責務; 第五条) 献血についての住民の理解と献血の受け入れが円滑に行われるように必要な措置を講ずる事。 (採血事業者の責務; 第六条) 献血受け入れの推進、安全性向上等。 (血液製剤の製造販売業者等の責務; 第七条) (医療関係者の責務; 第八条) 医師その他の医療関係者は、基本理念にのっとり、血液製剤の適正な使用に努めるとともに、血液製剤の安全性に関する情報の収集及び提供に努めなければならない。
血液製剤の安全性の向上及び安定供給の確保を図るための基本的な方針 (厚生労働省告示第二百七号) 前記血液法第9条第1規定に基づき策定され、平成15年7月30日より施行 第七 血液製剤の適正な使用に関する事項 一 血液製剤の適正使用の推進 医療関係者は、血液製剤の特徴を十分に理解し、その適正な使用を一層推進する必要がある。 国は、医療機関における血液製剤の使用状況等について報告を求め、定期的に評価を行うなど、適正使用の推進のための方法を検討する。 二 院内体制の整備 医療機関においては、血液製剤を用いた医療が適正になされるよう、院内の血液製剤を管理し、使用するための体制を整備することが重要である。このため、国及び都道府県等は、そのような医療機関に対し、様々な機会を通じて院内における輸血療法委員会、責任医師の任命及び輸血部門の設置を働き掛けるものとする。 三 患者等に対する説明 医療関係者は、それぞれの患者に応じて血液製剤の適切な使用に努めることが重要であり、患者又はその家族に対し、適切かつ十分な説明を行い、その理解と同意を得るよう努めるものとする。
薬事法の改訂 (2003年7月30日施行) 特定生物由来製品 (輸血用血液製剤ばかりでなく、血液凝固因子製剤・人血清アルブミン・人血清グロブリンなどの血漿分画製剤のほかテタノブリン・一部の遺伝子組替え製剤など感染症伝搬のリスクのあるもの280品目)について、 医療関係者による特定生物由来製品に係る説明 製剤使用の必要性 製剤の感染リスク に係わる説明を書面その他の手段で行う事。 特定生物由来製品に関する記録の保存 万が一、感染症が発生した場合、使用対象となった患者の特定を容易 に行うため、製品を使用した患者の記録を作成し保管(20年)すること。 3. 医薬関係者から厚生労働省への副作用の報告
生物由来製剤の被害救済制度 平成16年4月創設 人や動物など、生物に由来するものを原料や材料とした医薬品や医療機器などの生物由来製品については最新の科学的知見に基づいて安全対策が講じられても、ウイルスなどの感染の原因となるものが入り込むおそれがあり、感染被害のおそれを完全になくすることはできない。 (Window期感染など) このような場合、感染被害の責任の所在がなくても実際には被害が生じる事から、被害者の迅速な救済を図る事を目的として創設された。