LCGTへの適用を考えたDLCコーティングの研究

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LCGTへの適用を考えたDLCコーティングの研究 齋藤芳男1、高橋竜太郎2、佐藤吉博1、久保富夫1、都丸隆行1、 徳成正雄3、角谷透4 1高エネルギー加速器研究機構、 2国立天文台、3東大宇宙線研究所、4ナノテック Diamond-Like Carbon (DLC)とは 散乱光雑音 金属表面の黒化処理1 無電解ニッケルめっき 金属表面の黒化処理2 DLC薄膜 ガス放出特性 光学特性 まとめ 遮光用バッフルへの適用 R. Takahashi et al : Vacuum 73 (2004) 145-148

Diamond-Like Carbon (DLC) とは ダイヤモンドに似た性質を示すアモルファスカーボン膜 ダイヤモンド構造(sp3結合)、グラファイト構造(sp2結合)、及び 水素(H)の存在比によってその性質がややことなる 特徴 機械特性:平滑、高硬度(1,000~5,000Hv)、低摩擦(m=0.08~0.20) その他:絶縁(1~1016W・cm)、耐食、ガスバリア、近赤外透過 適用例 切削工具、金型、機械部品、磁気ディスク、反射防止膜等 成膜法 プラズマCVD、イオンプレーティング、スパッタリング等

散乱光雑音 干渉計型重力波検出器では腕共振器のミラー表面で散乱した光が真空ダクト表面で反射した後、メインビームと干渉して位相雑音を引き起こす。 したがってダクト表面は光をよく吸収する「黒い」面が望ましいが、一方で超高真空を実現するためガス放出速度が十分に小さい必要がある。 Diamond-Like Carbon (DLC)は反射防止膜として実用化されているが、その平滑性からガス放出に対しても良好な特性を持つ可能性がある。

金属表面の黒色化処理1 無電解ニッケルめっき フォスブラック II (旭金属工業) 無電解ニッケルめっき+ベーキング(大気中190℃、2時間) 膜厚: 16~18mm サンプル: SUS304ダクト (150mmf x 1m) ガス放出測定法: コンダクタンス変調法 ニッケルーリン合金超黒色被膜 UB-NIP (アンリツ) 無電解ニッケルめっき+硝酸水溶液によるエッチング (深さ10 mm) ➞ミクロな多孔質構造 (モヘア布のような表面) 膜厚: ~80mm 全反射率: <1% (l~1mm) サンプル: 銅プレート 10枚 (50mmf x 1mm) ガス放出測定法: スループット法(10mmfオリフィス) 250mmf x 290mmの試験用真空槽を使用

金属表面の黒色化処理2 DLC薄膜 EP ECB Diamond-Like Carbon薄膜 (ナノテック) DCプラズマCVD: 500V、120mA 膜厚: ~1mm サンプル: SUS304ダクト (150mmf x 1m) +電解研磨(EP) or 電解複合研磨(ECB) +EPのみにベーキング(215℃、23時間) ガス放出測定法: コンダクタンス変調法 EP ECB

金属表面の黒色化処理2 DLC薄膜 成膜結果(テストピース) 膜厚: マスキング部との段差を蝕針式表面粗さ計で測定 硬度: ナノインデンテンション法により測定 表面粗さ: 蝕針式表面粗さ計で測定 試料 番号 1 2 3 4 5 6 7 8 膜厚 [mm] 0.75 1.15 1.3 1.35 1.25 0.7 硬度 [MPa] 19960 24625 23760 24139 22685 Ra 0.0233 0.0199 0.0247 0.0246 0.0241 0.0224 0.0209 0.0222 位置[cm] -80 -60 -40 -20 0 20 40 60 80

ガス放出特性 1 DLCでコーティングされた試験ダクトのガス放出速度は50時間で4x10-9Pa m3 s-1 m-2以下。 この値はベーキングした同一形状のSUS316ダクト(EP処理)より小さく、TiNコーティングされたSUS316ダクトと同等。 無電解ニッケルめっき(NiP被膜)の場合これらDLCコーティングと比べて100倍以上大きい。

ガス放出特性 2 水素(H2)が支配的。

光学特性 サンプル SUS304プレート (50mm x 100mm) +電解複合研磨(ECB) +DLCコーティング(イオンプレーティング) 光源: Nd:YAGレーザー(l=1064nm) 測定反射率 DLCをコーティングした場合全入射角にわたって反射率は低下(90゜を除く) p偏光、40゜入射で5% DLC薄膜の決定パラメータ 複素屈折率: 2.4 - 0.04i 膜厚: 1049nm(s偏光)、1016nm(p偏光) ECB+DLC ×: s偏光、□: p偏光

まとめ DLC薄膜は超高真空用コーティングとしてきわめて優れた特性を持っている。 散乱光が斜入射(入射角90゜)の場合コーティングの有無にかかわらず反射率は1となってしまうので、むしろ遮光用バッフルのコーティングに適している。現在バッフルとしての効果を調べる実験を準備中である。

遮光用バッフルへの適用 可動式遮光バッフル ・直線導入端子 ・DLCコーティング(イオンプレーティング) ・p偏光の光に対して45° 実験計画 真空ダクト表面を加振し、励起された散乱光雑音の振る舞いとバッフルによる遮光量との依存性を見る