物理学コロキウム第一  2003.7.4 ‘An Investigation of The Spin Structure of The Proton in Deep Inelastic Scattering of Polarised Muons on Polarised Proton’ 偏極ミューオンと偏極陽子の深非弾性散乱実験による陽子のスピン構造の研究.

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物理学コロキウム第一  2003.7.4 ‘An Investigation of The Spin Structure of The Proton in Deep Inelastic Scattering of Polarised Muons on Polarised Proton’ 偏極ミューオンと偏極陽子の深非弾性散乱実験による陽子のスピン構造の研究 J. Ashman et al. The European Muon Collaboration 【内容】 Nuclear Physics B328 (1989) 1-35 1.背景 2.原理 3.実験 4.結果 5.まとめ スライドに書かれていること以外にこの欄に書かれていることを発表する予定です。 なお、かっこ書になっているものは発表しません。 また、スライド10,11,12,13は質問を受けない限りスライドを見せることもありません。 物理学科 柴田研究室 99-0508-5 岡浩喜

1.背景 60年代以降の実験により、核子は点状の荷電粒子からなる内部構造を持っていることと、その点状の構成要素(パートン)のスピンが1/2であることがわかっていた。 電荷を持つパートンはクォークである。 陽子は3つのクォーク(2つのuクォークと1つのdクォーク)で構成される。 陽子のスピン1/2を担うのは構成子であるクォークか? (SLACの実験。) (2つの構造関数がQスクエアーに依存しない⇒点状) (2xF1=F2より構成子のスピンは1/2) 実験が行われた80年代中ごろには電荷を持つパートンはクォークであり、それ以外に電荷をもたず、スピンが1のパートンとしてグルーオンがあるとわかっていた。 (陽子のスピンは水素の比熱を測る実験らしいが・・・) 陽子のスピンは1/2であるところ、最も簡単なモデル。 バレンスクォークのうち2つが陽子のスピンと同じ向きであって、残る1つが反対向きになっている。 陽子のスピン ? クォークのスピン(1/2) (1/2)

2.原理 深非弾性散乱 ミューオンと陽子を構成するクォークとの(弾性)散乱 電磁相互作用による散乱であって、ミューオンは仮想光子(  )を交換して散乱する。 μ γ 陽子 クォーク (1/2) (1) * 陽子側で光子を吸収するのは電荷を持つ構成子であるクォークである。 高エネルギーではミューオンと陽子との散乱と言うより中身との散乱と言える。=深非弾性散乱 (ミューオンは電子の仲間(レプトン)で電荷±eを持つ点状粒子である。電子と違うのは質量だけ。スピンは1/2。) ミューオンは電子と同様、電荷±eを持っているので電磁気相互作用によって散乱する。よって、陽子の中身の中でも電荷を持つ構成子であるクォークと散乱する事となる。 (はじかれたクォークはハドロンを構成して飛び出す(閉じ込め)) 偏極とはスピンの向きに偏りがあること。偏極ミューオンなら、γの出し方は一通りしかない。→ガンマも偏極。 (角運動量の保存は相対論的量子力学(ディラック方程式)の解による。) 次のページではγがクォークに吸収されるところを見る。 ミューオンが偏極していればそこから出る仮想光子も偏極する。(角運動量の保存)

仮想光子を吸収できるのは仮想光子のスピンと反平行なスピンを持つクォークである。 スピン(1) 陽子スピン 陽子のスピンとクォークのスピンに関係があるならば、散乱断面積に差が出る。 スピン(1) 陽子スピン 本実験では非対称度 仮想光子を吸収できるのは光子のスピンと反平行のスピンを持つクォーク。(先に吸収できないほうを説明する。) これによって断面積に差が出るはず。どれほどの差かを解析することでいかなる寄与をしているかがわかる。 逆に、全く差が無いとしたらクォークのスピンは陽子のスピンに寄与していない。 1/2が下側。すなわち光子と陽子のスピンが反平行。スピンの和が1/2という意味。 3/2が上側。すなわち光子と陽子のスピンが平行。 (非対称度については必ずきちんと説明する!) (非対称度にするのは数学的な理由もあるが、) 割り算なので、単に計数を比較すればよい。(なお、系統誤差が減るということもある。) (ちなみに、断面積σ=反応数/(ビームの粒子数・散乱中心数)である。) を測定する。

3.実験 偏極ミューオンビームと偏極陽子ターゲットの深非弾性散乱 CERN SPSの陽子ビームによってパイオンを作り、その崩壊から得られるミューオンをビームとして用いる。 CERN SPS配置図 EMC実験 SPS(超大型陽子シンクロトロン) リニアック PS PSB 1km 北実験区域 ミューオンを作るためにCERNSPSの陽子ビームを使う。 (現在はこの外側にLEPというとても大きなシンクロトロンがある。) リニアックで前段加速をし、SPSへ。北実験区域に引き込んだところで核子に衝突させてパイオンを生成。 その後崩壊させて特定のエネルギーのミューオンを選ぶことで偏極させ、偏極アンモニア標的によって散乱。 Eμ=100, 120, 200で行われており、(偏極度はそれぞれ0.77, 0.79 0.82, 誤差は+-0.06である)。 ミューオンビームのエネルギーは =100, 120, 200 GeVである。

実験の検出器 μ 偏極アンモニア標的のセルは二つ。 偏極は逆向きなので、同一のビームで非対称度を出せる。 吸収体 偏極ミューオンビーム 偏極アンモニア標的 Spectrometer magnetic 各種検出器 吸収体 標的にはアンモニアの水素の陽子を偏極させたものを用いる。(偏極度は0.75~0.80程度。) 標的アンモニアのセルは2つある。そのうち一方はピーム方向(向かって右)を正としたら正に、一方は負になるように偏極させてある。 これによって、断面積を同時に測定できるので、ビームのフラックスによらずに非対称度を導ける。 散乱されたミューオンはマルチワイヤーなどで位置を決められ、さらにスペクトロメーターで曲げながら位置を測定することで運動量を測定される。 位置情報からどちらの(ターゲット)セルで散乱されたかわかる。 (散乱されたハドロンの正負も見る。(uクォークが散乱されたらパイ+ができやすい)) (吸収体でミューオン以外が止められたあと散乱に関係しなかったミューオンの偏極度を測定する。) 偏極アンモニア標的のセルは二つ。 偏極は逆向きなので、同一のビームで非対称度を出せる。

4.結果 実験から得られた非対称度は全体として正の値を示している。 ∴ すなわち、陽子と平行のスピンを持つクォークのほうが多い。 :ブジョルケンの (陽子の全運動量に対するクォークの運動量の割合) SLACの実験は偏極電子ビーム(線形加速器)を使った偏極陽子標的との深非弾性散乱の実験。 (エネルギーが低かったためxが0.1~のみであって、スピンクライシスといわれるまでにはならなかった。EMCの実験によって観測の範囲がかなり広がって、陽子のスピン構造を詳しく研究することができるようになった。) 本実験もSLACの実験も非対称度は正の値である。σ1/2は仮想光子と陽子のスピンが反平行。 →陽子と平行のスピンを持つクォークのほうが多い。 Xはブジョルケンのスケーリング変数という運動学的変数。 X=0.5のあたりではA=0.6となっており、これは光子と陽子のスピンが反平行な場合の計数が平行な場合の4倍であることを示す。 これより、クォークスピンの和は陽子スピンに対して正の寄与をしているとわかる。

しかし、この結果からクォークスピンの和を求めると、 となる。 したがって、陽子のスピン1/2に対するクォークスピンの寄与は(12±9±14)%である。 陽子スピン u d s 合計 各クォークの寄与 各クォークのスピンの和(誤差は±0.016±0.023) 実験の結果と、他の実験の結果、理論などからクォークスピンの和とそれぞれのクォークの寄与が求まる。 uクォークは陽子の偏極に正の寄与をしているがdとsは負の寄与をしている。

5.まとめ 核子スピン = クォークスピンの和 (寄与はわずか) +グルーオンスピンの和 + クォーク軌道角運動量 +グルーオン軌道角運動量 CERNで偏極ミューオンビームと偏極陽子標的を用いた深非弾性散乱の実験がEMCによって行われた。 その結果、クォークのスピンは陽子のスピンに対し正の寄与をしていることが確認された。 しかし、陽子スピンに対するクォークスピンの寄与はわずかであることがわかった。 ・ 核子スピン = クォークスピンの和 (寄与はわずか)             +グルーオンスピンの和        + クォーク軌道角運動量        +グルーオン軌道角運動量 つまり、従来の二つが平行で一つが反平行というのは間違いである。 では、陽子のスピンはどこからくるのか。 (PHENIX(米BNL、RHIC)やHERMES(独HERA)。 偏極陽子陽子衝突や偏極陽電子ビームをつかって。) 現在ではクォークのスピンの寄与は30%前後だといわれている。 現在も、クォークのスピンの寄与を求める実験やグルーオンスピンの寄与を求める実験がCERN, SLAC, DESY, BNL, JLabなど世界の主要な研究所でで行われている。

解析の手法 をもとめる。 の実験値から xが0~1の範囲で積分すると、 は既知の値であるので が求まる。 非対称度からスピン依存する構造関数g1を求める。 ここでxはブジョルケンのスケーリング変数で、本実験ではxごとに分けて計測している。(ちなみに弾性散乱ではx=1であって、非弾性度ともいえる)なお、xの値は0から1であり、本実験では0.01~0.7の範囲で測定されている。特にそれまでエネルギーが低いため測定できなかった0.01~0.2までを測定できたことが大きい、 F2はスピン依存しない構造関数であり、本実験では既知の値として計算している。 (Qスクエアーは運動量移行qの自乗のマイナス、νは交換された光子のエネルギーをしめす。)

標的の偏極・DNP( dynamic nuclear polarisation ) 磁場をかけるとスピンによるエネルギー状態は二つに分かれる。電子と陽子のペアを考えると4つのエネルギー状態に分かれる。 e p 電子は即座に偏極するが陽子は磁気モーメントが小さいためほとんど偏極しない。 電子は即座に偏極 | ↓↑> | ↑↑> |↑↓ > | ↓↓> エネルギー状態が二つに分かれるのはZeeman効果。本来は二つの粒子が一つの光子を吸収できはしないがスピンスピン相互作用によりペアを作るとそれも可能。大きく分かれているのは電子のスピンによるもの。その先で小さく分かれているのが、陽子のスピンによるもの。電子は下向きスピンのほうがエネルギーが低くて陽子は上向きスピンのほうがエネルギーが低い状態の絵である。 hωeはちょうど電子スピンを反転させるエネルギー。hωpはちょうど陽子スピンを反転させるエネルギー。これを書き換えたのが右下図。 磁場をかけて温度を下げた状態ではペアはほとんどが| - ->か| - +>にある(電子はほとんどエネルギーの低いスピン状態に集まるから)。これら2状態にあるペアの数はほとんど同じ。そこにマイクロ波を照射すると| - +>と| + ->が共鳴してペアの数が同じになる。図の左側に注目するとやはり、ほとんどが| - ->に集まっていないといけない。そのため、どんどん落ちて、共鳴はくみ上げるような働きばかりをする。結果、ほとんどが| - ->に集まる。 逆に、h(we-wp)のマイクロ波を照射したら| - +>に集まってくる。→マイクロ波の周波数を変えるだけで陽子を逆向きに偏極させることができる。誘導放出レーザーと同じ原理。ちなみに、0.5K(液体ヘリウム希釈冷却法)、2.5T(テスラ)でやってる。 偏極の測定、核磁気共鳴(NMR,Nuclear Magnetic Resonance) コイル(それぞれのセルに4つずつ)を使ってhωpを含む電磁波を照射。| - ->と| - +>を共鳴させてエネルギーの吸収、放出をコイルのインピーダンスの変化として取り出す。データ計測中ずっとやってる。 のマイクロ波を 照射すると|↑↓ >と| ↓↑>が共鳴する。 陽子のスピンが下向きにそろう

ターゲットにアンモニアを使う理由 手に入る物質の中で最も多く水素を含んでいた。 本実験では自由陽子による散乱か束縛された核子による散乱かは判別できない。 標的の偏極はdilution factor によって修正する なるべく大きな  になる分子がよかった。 窒素の周りの水素を構成する陽子が自由陽子で、窒素の原子核を構成する核子が束縛された核子である。 窒素を構成する核子が14個、その周りの水素に陽子が3つ。 ただし、DNPによって偏極させるのが大変。非対称度とかは標的のスピンを反転させたものと平均を取って使うのだが、反転させるのに8時間程度かかり、一週間に一回以上反転させることはできない。 アンモニアの場合は である。

ミューオンの偏極 パイオンは と崩壊する。 この際2体崩壊なので2粒子は反対方向に放出される。また、パイオンのスピンは0なので、2つのレプトンのスピンは互いに反対方向を向いている。ここで、ニュートリノのヘリシティーは決まっているのでこのこの場合はヘリシティー1/2の崩壊のみが許される。 絵はπ-の場合。π+だとスピンは逆。 本実験ではEπ/Eμ=110/100, 130/120, 210/200で行われており、偏極度はそれぞれ0.77, 0.79 0.82, 誤差は+-0.06である。モンテカルロシュミレーションで正しさを検証している。 これにより、パイオンのエネルギーと得られるミューオンのエネルギーをうまく選んでやると、縦偏極したミューオンビームが取り出せる。