観測ロケット S 号機・S 号機を 中心とする電離圏波動現象の総合観測

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観測ロケット S-520-27号機・S-310-42号機を 中心とする電離圏波動現象の総合観測 宇宙科学シンポジウム発表 at JAXA宇宙研 2014/1/10 観測ロケット S-520-27号機・S-310-42号機を 中心とする電離圏波動現象の総合観測 山本衛(京大),阿部琢美(JAXA),山本真行(高知工科大) 渡部重十(北大),羽生宏人(JAXA),石坂圭吾(富山県立大), 遠藤研(東北大)、岩上直幹(東大)、高橋隆男,田中真(東海大), 斎藤享(電子航法研),横山竜宏,津川卓也(NICT), Miguel Larsen(米クレムソン大),Paul Bernhardt(米NRL)

発表内容 2013年7月20日に連続して打上げられた観測ロケットS-520-27号機・S-310-42号機と地上観測を組み合わせて実施した電離圏観測について、現在の到達点を発表する。 本観測計画の主目的は、中緯度・夏季・夜間の電離圏F領域に発生する「中規模電離圏擾乱(MSTID)」の発生機構の解明であった。 そのため電離圏のプラズマ密度・電界と中性大気風速を同時・同領域で観測することを目指した。また電離圏プラズマ密度の水平非一様性を地上のGPS受信機網やイオノゾンデを用いて観測した。 本観測には次のような技術的な挑戦が含まれている。 満月下のリチウム発光雲観測 リチウム放出機構の改良 航空機からの撮像 MSTID発生のリアルタイムモニタリング

中緯度電離圏F領域・夏季・夜間に現れる 中規模電離圏擾乱(Medium-Scale Traveling Ionospheric Disturbance (MSTID)) 1998年5月に行われたFRONT(F-region Radio and Optical measurements of Nighttime TID)キャンペーン期間中に観測された、日本上空における全電子数(TEC)と酸素原子の発光(630nm)の水平二次元分布。どちらも変動成分を示す。北西から南東にのびる波面を持つ構造(MSTID)が見られる。TEC変動と大気光変動の構造が一致していることが分かる。 地上のGPS観測網からの 全電子数観測 大気光(波長630nm)全天イメージャ観測

観測の概要 MSTID occurrence Moon light Beacon receivers to measure TEC from rockets to ground Plasma in-situ measurement (density, electric filed, etc.) Rocket trajectry S-520-27 rocket Lithium release F region wind S-310-42 rocket TMA release E region wind Ground obs. (Chemical-release imaging, GPS-TEC, ionosonde, MU radar, etc.) 2 rockets are launched from JAXA USC with 30-60 minutes interval Chemical-release imaging from a JAXA jet. 観測項目 S-520-27号機: NEI (電子密度)、 FBP (密度変動)、EFD (電界)、 DBB (ロケットビーコン)、 LES (リチウム放出)、 MAS (月センサ)、IAF (星センサ)、MGF (高感度磁力計) S-310-42号機: DBB (ロケットビーコン) TMA (TMA放出) (他に振動計測とGPS受信機を搭載) 地上・航空機観測: TMA・リチウム撮像 地上観測: GPS受信機網、ビーコン受信機、イオノゾンデ他 観測条件 満月(リチウム雲を照らす光) MSTID発生(GPS-TEC観測でモニタ) 航空機(天候条件、飛行軌道)

地上および航空機観測の配置図 ビーコン受信機 TMA/リチウム 撮像 JAXA実験機 “飛翔” と飛行経路 信楽 MU観測所 高知工大 室戸岬 薩摩川内 吹上浜 海上サイト JAXA実験機 “飛翔” と飛行経路 垂水 TMA release 内之浦 種子島 Lithium release

ロケット打上げ前後のGPS-TEC状況 (電子航法研・斎藤) July 20, 2013 22JST 23JST 24JST S-310-42 launch at 23:00JST S-520-27 launch at 23:57JST 国土地理院のGOENET(GPS観測網)から200点のデータを1秒毎に入手し、TEC値の全国水平分布を5分おきにweb配信した(電子航法研究所・斎藤による新システム)  電子密度変動を確認した上で、23:00JSTと23:57JSTに観測ロケットを打上げた。

2013/7/20 Lithium atom scattering moon lights 2013/7/20 from airplane TMA 23:01:40 23:04:20 23:12:25 2013/7/20 Lithium atom scattering moon lights 00:05:18 00:05:23 00:05:28 00:05:33 From airplane From Tanegashima

From Habu

E-F Region Coupling: 2013/7/20 at Uchinoura TMA 23:02:51 23:03:50 23:04:31 23:08:50

23:03:50 KSC 23:04:31 KSC 23:08:50 KSC 23:03:52 TAN

NEIによる電子密度観測(東北大・遠藤) Electron Density Profile (Ascent/Descent) 下降時の電子密度が上昇時よりも約 7倍大きい -Ascenct -Descent 電子密度の測定結果はFBPデータとも整合的であった。(ISAS・阿部) Altitude [km] a part of data being over range リチウム放出に伴う増大 2層構造のEs層 Electron Density [/cc] Fig. 6 Electron density profiles obtained by NEI in the S-520-27 rocket experiment.

Detrended TEC Data (60 min-window) NEI観測と地上観測の比較 corresponding to ΔTEC=0.32×1016/m3 -Ascenct -Descent Detrended TEC Data (60 min-window) TEC [1016/m2] 28 32 36 132 136 128 Latitude [°] Longitude [°] 15:00:00 UT 07/20 2013 ・TECs vary with time in the region which the S-520-27 rocket flies. ・The difference between the electron density profiles obtained in the ascent and descent phase might reflect the TEC perturbations. Fig. 11 Trajectory of S-520-27 rocket overwritten on the detrended TEC data (60 min-window) map at 15:00 UT on July 20, 2013.

ロケットビーコン(DBB)による電子密度測定 (京大・山本衛、NRL・Bernhardt) S-520-27号機の全電子数の時間微分 dTEC/dt の変動を示す。T=200-370s (矢印)が高度280km以上に対応。電子密度の空間変化が見られる。 S-520-27 S-310-42 S-520-27号機:下降時の密度増大はNEIの電子密度観測と整合的。 S-310-42号機:約1時間前の観測でも複数層をもつEs層が見られた。

ロケット姿勢解析(1)(東海大・田中/高橋) ロケット姿勢:スピン、コーニング(機体軸とスピン軸のずれ)、歳差運動に分けて記述 MAS (月センサ)とMGF (磁力計)を組み合せた解析によって、各時刻のロケット姿勢を精度0.02度で決定した。磁場のIGRFモデル値からの乖離は±20nT程度である。 更なる精度向上を目指している。

ロケット姿勢解析(2)(東海大・田中/高橋) MAS (月センサ)とMGF (磁力計)が同 時に得られる時刻におけるIGRFモデル からの乖離を示した(左図)。時間スケー ルが数十秒程度の変動が5回検出された。 電離圏電流による磁場変動分か?

まとめ 観測ロケット実験 データ解析の現状 今後の課題 MSTIDの出現(=電子密度の空間変動が多い状況)を選んで打上げに成功。 リチウム放出機構の安定動作を達成。 リチウム発光雲の満月下でのイメージングに成功。 データ解析の現状 TMAを用いて風速を推定(背景風成分)した。 複数の電子密度観測から、大きな空間変動が検出された。 ロケット姿勢の精密測定に成功した。 今後の課題 TMA/リチウム観測について大気波動成分の解析。 ロケット姿勢の精密値を用いた電界解析。 磁場測定値とIGRFモデル値の乖離(電離層内の電流?)を解析。 ロケットビーコン観測についてトモグラフィー解析。 MSTID発生機構について総合的に議論する。

以降は予備

Photos from the ground Sky was clear during the experiment. These are example photos from Satsuma-sendai city. TMA upleg TMA downleg S-310-42 launch Photos by Hayamizu and Ando at Sendai Uchu-kan http://sendaiuchukan.jp/data/gallery/ex/1307-TMA.html

E/F領域結合の3次元シミュレーション 「Es層にランダム変動+南向き風」の例 時間 (Yokoyama et al., JGR, 2009)

Neutral Wind Velocity N-S E-W where

2013/7/20 at Tanegashima TMA 23:03:52

From Habu