放射光ビームライン排気用非蒸発ゲッター(NEG)アセンブリの製作と性能評価

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放射光ビームライン排気用非蒸発ゲッター(NEG)アセンブリの製作と性能評価 ○菊地貴司1,間瀬一彦1,渡辺文夫2・KEK物構研1,(有)真空実験室2 1.はじめに  真空紫外軟X線(VSX)ビームラインでは光学素子の炭素汚染を防ぐために1×10-8 Pa以下の超高真空が望まれる。我々はターボ分子ポンプ(TMP)と自作の非蒸発ゲッター(NEG)アセンブリのみによる排気で、 1×10-8 Pa以下の超高真空を低コストで実現することを目的として研究を進めている。NEGアセンブリは10-8~10-9 Paの極高真空下においても高い排気速度を持ち、オイルフリー、コンパクト、軽量、非スパッター、非蒸発、無振動、省エネルギーなどの利点を持つため、VSXビームライン用排気ポンプとしては理想的である。今回、市販のNEG材料St707ストリップ、 St172モジュール(SAES Getters)を用いて、数種類のNEGアセンブリを製作し、排気速度を測定した。さらに、ビームラインや表面研究装置に設置して到達圧力を改善したので報告する 。 2.St707ストリップを用いた低価格高性能非蒸発ゲッター(NEG)   アセンブリの開発1  3.St707ストリップを用いたNEGアセンブリの開発2 基板材料 ストリップ幅 ゲッター材料重量 活性化温度 St707/CTAM/30D コンスタンタン 30 mm 20 g/m 450℃ St707/CTS/NI/8D ニッケル/鉄 8 mm 3.6 g/m ST707ストリップ Zirconium    70% Vanadium    24.6% Iron             5.4% [St 707TM Brochure, SAES Getters.] 45A直接通電 加熱(450℃)、 10分で活性化 13A直接通電 加熱(450℃)、 10分で活性化  Φ0.8mmのタンタル線に6A通電して間接的に加熱(450℃)、10分で活性化。(NEGモジュールはKEK加速器研究施設が製作。) 4.St172モジュールを用いた   NEGアセンブリ 5.NEGアセンブリの排気速度測定  オリフィス法による排気速度測定装置 [M. H. Hablanian: J. Vac. Sci. Technol. A, 5 (1987) 2552.] S:NEGの排気速度 C:オリフィスのコンダクタンス   1.23 L s-1 (N2)、   4.57 L s-1 (H2 ) at 20˚C P:チェンバー内の圧力 P0:ガスを導入していないときの圧力 45A直接通電 加熱(450℃)、 10分で活性化 45A直接通電 加熱(450℃)、 10分で活性化 6.NEGアセンブリの排気速度測定結果 7.NEG利用例  放射光光電子分光装置(BL-13A) SR  測定チャンバー ○ 光電子分光装置SES-200   TMP 300 L/s、1台   TMP 50 L/s、1台   自作ICF203NEG、1台、   自作ICF152NEG、1台   到達圧力:1×10-8 Pa NEG材料 St707/CTAM/30D St707/CTS/NI/8D HI/16-10 HI/9.5 -7.5 NEGストリップの 長さ(mm) 1,000 750 2,850 フランジ CF203 CF70 CF34 CF152 ベーク時の電流値 ( A 、200°C) 24 10 4.0 1.3 3 (Indirect) 活性化の電流値 (A、450°C) 45 13 5.1 1.8 6 水素ガスに対する20˚Cでの最大排気速度 8.0 L s-1 3.6 L s-1 82 L s-1 窒素ガスに対する20˚Cでの最大排気速度 4.8 L s-1 1.2 25 L s-1 東日本大震災でTMPが停止した とき、NEGのみで10-8Pa台に保つ 試料作製用チャンバー ○ LEED ○ スパッタイオン銃   TMP 300 L/s、1台   自作ICF70NEG、2台   到達圧力:7×10-8 Pa ☆超高真空領域でも高い排気速度。 ★高い圧力領域で排気速度が低下するのは NEGのガス吸着量が増大するため。 8.NEGアセンブリ利用の今後の計画 9.まとめ 1)10-8Pa台でも高い排気速度を持ち、かつ低コストで自作可能な非蒸発アセンブリ数種類を開発。 2)排気速度を測定。ICF152マウント型NEGアセンブリでは、窒素に対して25 Ls-1、水素に対して   82 L s-1。 3)自作NEGアセンブリとTMPによる排気で、光電子分光装置にて1×10-8 Paの到達圧力を実現。 4)今後、VSXビームラインに採用して低コストで<10-8 Pa の到達圧力を実現することを計画。 発表論文 "Construction of Simple Non-Evaporable Getter Assemblies Using St707 Strips",   T. Kikuchi, H. Tanaka, A. Toyoshima, and K. Mase,  J. Vac. Soc. Jpn., 53, 533-534 (2010).(技術メモ) 2. “Construction of Simple Non-Evaporable Getter Assemblies Using St 707 Strips or St 172 Modules”, T. Kikuchi, K. Mase and F. Watanabe, J. Vac. Soc. Jpn. 54, in press (2011). 真空紫外軟X線ビームラインに自作のNEGアセンブリを設置し、低コストでビームライン全般にわたり、<10-8 Pa の到達圧力を実現することを計画。 PF-BL13A 謝辞  KEKB用非蒸発ゲッターポンプモジュールを提供くださった久松広美氏(KEK加速器)、非蒸発ゲッターポンプ製作に関してアドバイスをいただいた本田融氏、谷本育律氏、宮内洋司氏(KEK加速器第7系)、豊島章雄氏、田中宏和氏(KEK物構研)に感謝します。本研究はPF施設長裁量経費の支援のもとに行なわれました。