平成20年 4月 18日 (金) 高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所、理論研究系 西村 淳

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超弦理論の非摂動的効果に関する研究 §2-超弦理論について §1-素粒子論研究とは? 超弦理論: 4つの力の統一理論の有力候補
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平成20年 4月 18日 (金) 高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所、理論研究系 西村 淳 金茶会   スパコンで探る超弦理論   平成20年 4月 18日 (金) 高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所、理論研究系          西村 淳

重力 ー素粒子理論における最大の問題 標準模型 自然界の4つの基本的な相互作用 電磁相互作用 くりこみ可能なゲージ理論 強い相互作用  重力 ー素粒子理論における最大の問題 自然界の4つの基本的な相互作用 電磁相互作用   強い相互作用       弱い相互作用   重力相互作用     標準模型 くりこみ可能なゲージ理論 結合定数が無次元量 重力はエネルギーが高くなるほど強くなる くりこみ不可能 2008年4月18日 KEK スパコンで探る超弦理論

重力は「時空の力学」 アインシュタインの一般相対論 時空のゆがみ 重力 重力の量子論 = 時空の量子論 物質(エネルギー) 重力 c.f.) dark energy 重力の量子論 = 時空の量子論 時空そのものの概念を考え直さなければいけない 2008年4月18日 KEK スパコンで探る超弦理論

時空の歪みを目で見る 2008年4月18日 KEK スパコンで探る超弦理論

超弦理論 -重力の量子論への重要な手がかり 超弦理論 -重力の量子論への重要な手がかり 弦の振動の仕方で様々な粒子を表す 光子 グルオン       など グラビトンなど 米谷etc. 1980年代~ 嫌でも重力を含んでしまう! c.f.) ハドロンの理論としての弦の失敗 2008年4月18日 KEK スパコンで探る超弦理論

超弦理論の実験的証拠? 力の統一を示唆 相互作用の強さ エネルギー 強 破綻 弱 くりこみ群 電 重 高エネルギー加速器実験 による精密測定  重力を含む力の統一が、プランクスケール付近で起こる  プランクスケールの物理を記述する理論は?   超弦理論が自然な候補 2008年4月18日 KEK スパコンで探る超弦理論

偉そうなことを言っても、何も予言できないじゃないか! The Trouble with Physics (Lee Smolin) The Rise of String Theory, the Fall of a Science, and What Comes Next Not Even Wrong (Peter Woit) The Failure of String Theory and the Continuing Challenge to Unify the Laws of Physics 2008年4月18日 KEK スパコンで探る超弦理論

しかし、状況はだいぶ変わってきた 85年頃 弦の摂動論の研究、予言能力なし 95年頃 ポルチンスキー : 「弦の凝縮状態」 85年頃 弦の摂動論の研究、予言能力なし   10次元時空 : 現実世界(4D)と矛盾 6次元分、手で丸める (コンパクト化) 95年頃 ポルチンスキー : 「弦の凝縮状態」 点状 ひも状 膜状 membrane ・・・一般次元の‘膜’ 総称して「ブレーン」 2008年4月18日 KEK スパコンで探る超弦理論

超弦理論の非摂動的性質が見えてきた ブレーンは、弦理論におけるソリトン c.f.) スカラー場の理論に現われるソリトン 古典運動方程式の解 空間的に局在したエネルギーを持つ 摂動論では、この周りのゆらぎしか考えない 非摂動的な配位 2008年4月18日 KEK スパコンで探る超弦理論

「ブレーン革命」 ’95~ 超弦理論における双対性 type I, IIA, IIB, heterotic, M theory,… 「ブレーン革命」  ’95~ 超弦理論における双対性     type I, IIA, IIB, heterotic, M theory,…      実は一つの理論の別の側面にすぎない。 超弦理論の非摂動的定式化    行列模型 ゲージ・重力対応           ハドロン物理への応用   c.f.) 夏梅氏、金茶会      ブラックホール熱力学の微視的な起源 低エネルギーで標準模型となるブレーン配位 ブレーン・インフレーション 2008年4月18日 KEK スパコンで探る超弦理論

「シミュレーション革命」 ’08~ ↓毎日(08.1.20) References 「シミュレーション革命」 ’08~ References           PRL 99 (’07) 161602 [arXiv:0706.1647] PRL 100 (’08) 021601 [arXiv:0707.4454] ↓毎日(08.1.20) 2008年4月18日 KEK スパコンで探る超弦理論

ブラックホールは、単なる「黒い穴」じゃない! ホーキング輻射(1974年) ? 何もない真空中でも・・・ ? 対生成 対消滅 温度を持った‘物体’に見える 2008年4月18日 KEK スパコンで探る超弦理論

ブラックホールの中には何がある? 物性理論における例 : 磁性体 温度 の平衡状態 エネルギー ブラックホールの場合、これが何か? 物性理論における例 : 磁性体 (無数の原子から成る) 温度  の平衡状態 エネルギー 微視的構造 から決まる ブラックホールの場合、これが何か? 2008年4月18日 KEK スパコンで探る超弦理論

ブレーンでブラックホールを作る 97年~ マルダセナ、ウィッテン、・・・ ブレーンでブラックホールを作る 97年~ マルダセナ、ウィッテン、・・・ 今回の研究(’07) この弦の凝縮状態を数値シミュレーション。 そのエネルギーの計算に初めて成功。 ホーキングの理論と一致。 超弦理論が予測する ブラックホール内部の様子を実証 2008年4月18日 KEK スパコンで探る超弦理論

D0ブレーンの低エネルギー有効理論 10次元の U(N) 超対称ゲージ理論を Witten (’96) 10次元の     U(N) 超対称ゲージ理論を 1次元にdimensional reduction   16個の超電荷  有効結合定数    以下一般性を失うことなく ゲージ場 周期的境界条件 反周期的境界条件 温度 高温 弱結合 高温展開 (Kawahara-J.N.-Takeuchi ’07) 低温 強結合 10次元ブラックホールからの予言 2008年4月18日 KEK スパコンで探る超弦理論

フーリエモード・シミュレーション 格子正則化の問題 一次元系では、非摂動的にゲージ固定が可能 並進対称性 格子では離散的なもののみ。 Hanada-J.N.-Takeuchi, PRL 99 (07) 161602 [arXiv:0706.1647] 格子正則化の問題 一次元系では、非摂動的にゲージ固定が可能 並進対称性 格子では離散的なもののみ。 Fourier mode cutoff 2008年4月18日 KEK スパコンで探る超弦理論

強結合ゲージ理論からブラックホール熱力学へ Itzhaki-Maldacena-Sonnenschein-Yankielowicz ’98 ホライズン 1次元 U(N) 超対称    ゲージ理論 t   10次元 IIA 超重力理論 0-ブレーン解 温度 T near-extremal ブラックホール熱力学 N 個のD0ブレーン D0ブレーンに端を持つ 開弦の統計力学       が  大きい極限 Klebanov-Tseytlin ’96 2008年4月18日 KEK スパコンで探る超弦理論

結果 : 内部エネルギー free energy 高温展開 (含next-leadingの寄与) 10次元ブラックホール から得られた結果 Anagnostopoulos-Hanada- J.N.-Takeuchi,        PRL 100 (’08) 021601 [arXiv:0707.4454] free energy 高温展開 (含next-leadingの寄与) 10次元ブラックホール から得られた結果 2008年4月18日 KEK スパコンで探る超弦理論

専門家からのコメント Lubos Motl氏 “Reference Frame” より引用 2008年4月18日 KEK スパコンで探る超弦理論

超弦理論の非摂動的定式化 10次元の U(N) 超対称ゲージ理論を 1次元にdimensional reduction 別の解釈 D0-ブレーンの低エネルギー有効理論    M理論(BFSS ’97)   0次元にdimensional reduction           Dインスタントンの低エネルギー有効理論 タイプIIB超弦理論                                     (IKKT ’97) 4D ブレーン自体のダイナミクスを解く もともと弦の伝播しうる10Dの世界に 我々の4Dの世界が現れるか? 10D 2008年4月18日 KEK スパコンで探る超弦理論

4次元時空が出てくるのか? IIB行列模型 (石橋・川合・北澤・土屋 ’97) 「慣性モーメント・テンソル」 10×10 実対称行列の固有値 10×10 実対称行列の固有値 SO(10)対称性の自発的破れを見るオーダーパラメタ の極限で、 SO(10)→SO(4) というようなことが、起こるのか? 2008年4月18日 KEK スパコンで探る超弦理論

時空次元に対する様々なアプローチ 低エネルギーの有効理論 (青木・磯・川合・北澤・多田 ’98) ガウス展開法 低エネルギーの有効理論 (青木・磯・川合・北澤・多田 ’98)     ブランチポリマー的な構造の持つ複雑なダイナミクス ガウス展開法     SO(4)を保つ解が最も低い自由エネルギー (J.N.-杉野 ’01)    次数を上げるテクニック (川合・河本・黒木・松尾・篠原’01、青山・川合・渋佐)    簡単化した模型での計算 (J.N.-大久保-杉野’05) 6D IKKT模型 (青山-J.N.-大久保 in prep.) フェルミオン行列式の位相の効果  つぶれた配位(但し )を favor (J.N.-Vernizzi ’00) この効果を取り入れる新しいシミュレーション法     (Anagnostopoulos-J.N. ’02) 6D IKKT模型 (東-花田-J.N.-竹内 in prep.) d =3 の時空が 選ばれる(?) 2008年4月18日 KEK スパコンで探る超弦理論

時空次元に対する様々なアプローチ(続) いろいろな次元を持ったファジー多様体に対する有効作用 ゲージ/重力対応の応用             (北澤、高山、今井、金子、松本) ゲージ/重力対応の応用     D0ブレーンの有効理論を考えて、 SO(9)のSSBが     重力側で不安定性として見えないか?           (石橋明浩・磯・J.N.・住友) Cosmophysicsグループ との共同研究 行列模型の観点では、古典的な時空の描像は 低エネルギーでのeffectiveな概念 プランクスケールくらいに小さくなっている余剰次元を 時空計量で表現するのが、どこまで正しいか? Randall-Sundrum模型 フラックス・コンパクト化 ランドスケープ ストリング・インフレーション ・・・・・・・ 2008年4月18日 KEK スパコンで探る超弦理論

超弦理論はどこまで来たか ~まとめに代えて~ 超弦理論はどこまで来たか ~まとめに代えて~              QCD                       超弦理論     強い相互作用      記述するもの     重力を含むすべての相互作用    自由なクォーク          摂動論           10次元時空        閉じ込め        非摂動ダイナミクス       コンパクト化 格子ゲージ理論 (Wilson ’74)  非摂動的定式化    超対称行列模型(BFSS,IKKT)    強結合展開         解析手法         ガウス展開法 シミュレーション(Creutz ’80)                シミュレーション   SU(2)、NJL模型     簡単化した模型    超対称性の低い模型、toy model     クエンチ近似                       低エネルギー有効理論     ハドロンの性質         目標      ブラックホールの性質                                  時空次元、標準模型の導出 2008年4月18日 KEK スパコンで探る超弦理論

超弦理論は未完成・・・ ブレーンに基づく定式化 BFSS or IKKT 「時間」の取り扱い方で意見が分かれる。。。 「ランドスケープ」   「時間」の取り扱い方で意見が分かれる。。。    もっと自然な定式化があるのか? 「ランドスケープ」    我々の世界は、超弦理論の記述しうる    無数の世界の一つに過ぎない?  人間原理、「宇宙定数」の確率分布 宇宙観測、加速器実験 との関わり    インフレーション、ダークエネルギーを説明できるか?    ガンマ線バーストやLHC実験から、新しい手がかりは? 2008年4月18日 KEK スパコンで探る超弦理論