Journal Club 2013/11/19 聖マリアンナ医科大学 救急医学

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Journal Club 2013/11/19 聖マリアンナ医科大学 救急医学

背景 ARDSは1967年に提唱された概念 酸素化を評価する条件が一定していない 両側の肺浸潤影 心源性肺水腫が否定されている 高濃度の酸素を投与しても低酸素血症が遷延 酸素化を評価する条件が一定していない 1994年にAECCが定義しているが一致した見解は得られていない 最近になってBerlin definitionも提案された

12 patients acute onset 急性発症 Tachypnœa 頻呼吸 Hypoxæmia 低酸素血症 loss of compliance コンプライアンス低下 after a variety of stimuli 様々な原因 the syndrome did not respond to usual and ordinary methods of respiratory therapy 治療に反応しない

死亡率のPredictive validityは上昇した p < 0.001 Berlin 0.577 vs. AECC 0.536 Meta-analysis 4188 cases P/Fで3群に分類 mild : 201 – 300 moderate : 101 – 200 severe : < 100 死亡率 p < 0.001 mild : 27% moderate : 32% severe : 45% 呼吸器管理期間 p < 0.001 mild : 5days moderate : 7 days severe : 9 days 死亡率のPredictive validityは上昇した p < 0.001 Berlin 0.577 vs. AECC 0.536

方法 P/F比を一定の条件で評価すれば,より適切な重症度分類とリスクの層別化ができるのではないか? スペインからの多施設研究 2004年5月~2009年12月 longitudinalコホート研究 longitudinal study is a correlational research study that involves repeated observations of the same variables over long periods of time 縦断的研究・・・2つの独立したコホート研究 倫理委員会の承認あり 以前の研究のサブ解析から,後ろ向きに検証すべき条件を特定し,その後に前向き研究で検証する方法

Previous Study AECC診断基準で診断されたALI/ARDS(170 cases)が対象 24時間後も診断基準を満たしたのは僅か41.8%であった 様々な重症度と予後が含まれ診断基準として不適切である 診断時 24時間後

統計処理 ICU mortality:Pearson‐χ2検定,Fisher検定 連続変数:Kruskal-Wallis検定 正規分布しない変数:Mann-Whitney U test 28日生存率:Kaplan-Meier法(log-rank test) ICU死亡率の95%信頼区間:Jeffrey’s interval 両側検定 P値 < 0.05を有意差とした

方法 Fig.1 ① 解析群 ② 検証群 ⑤ ③ ④ ① Inclusion criteria 452症例(成人) AECCによるARDSの定義を満たす 呼吸器管理 肺保護戦略 lung protective strategy Fig.1 ① ② Standard ventilator setting 従量式volume Control 一回換気量 TV 7ml/kg 吸気呼気比 I/E比< 1:1 PaCO2 30-50mmHg 解析群 2004年5月~ 2005年10月 ② 検証群 2008年9月~ 2009年12月 ③ 重症度の分類 Mild : P/F >200 Moderate : P/F 101-200 Severe : P/F ≤ 100 ⑤ ③ ④ ④ 4タイプの呼吸器設定 FiO2 ≥ 0.5,PEEP ≥ 5 FiO2 ≥ 0.5,PEEP ≥ 10 FiO2 = 1.0,PEEP ≥ 5 FiO2 = 1.0,PEEP ≥ 10 ⑤検証群でprospectiveに評価 解析群でICU死亡率の差が最大であった重症度のみを対象にprospective評価

ICU mortality 38.9%, Hospital mortality 42% Table.1 患者背景(両群比較) ICU mortality 38.9%, Hospital mortality 42%

ICU mortality(両群) Fig.2 全症例がP/F < 200 P/F 100を境にmortalityに有意差あり Derivation群とvalidation群には差なし →期間は異なるが同程度の群を比較できた P=0.853 P=0.444

Derivation群(170 cases) Table.2 ① ② ARDS onsetの時点ではICU mortalityと相関する呼吸器設定の条件は存在しなかった 24時間後では「FiO2 ≥ 0.5, PEEP ≥ 10」の条件がICU mortalityと相関した → validation群では「 FiO2 ≥ 0.5, PEEP ≥ 10 の条件で診断から24時間後」を評価することに決定(^^)/

Validation群(282 cases) Table.3 Table.4

重症度による3群間でICU mortalityに有意差があった Fig.3 Validation群(282 cases) 24時間後 58.1% 40.9% 17% 重症度による3群間でICU mortalityに有意差があった

Validation群(282 cases) Fig.4 15日間で半数以上が死亡した 15日までの死亡(132例)の内訳 Severe 38例/全死亡53例71.7% Moderate 31例/全死亡68例45.6% Mild 4例/全死亡11例36.4% Kaplan-Meier 28日間生存曲線

Discussion The Berlin Definitionとの比較 Present study 前向きに検討されていない Validation群はprospective cohort P/Fの評価が研究への参入時に行われているが正確な時間は不明 FiO2とPEEPの条件が不明 呼吸器設定後30分でPaO2を測定している P/F > 200の症例が24%含まれている 含めていないので呼吸器不要の症例は除外できている P/F評価時のFiO2が一定ではない FiO2の条件を定めて検証した 518症例がPEEP不明 or PEEP < 5で除外されている(regression analysis済みではあるが) 除外症例なし(intention to treatとアピール) 呼吸器条件を定めていない 50%以上の症例がPEEP < 10 PEEP ≤ 5は治療として不十分 PEEP5の条件でP/Fを分類してもmortalityとは相関しないと証明できた 対象がcase mix 1996-2000年に行われた研究が含まれているので肺保護戦略の概念が導入されていない 肺保護戦略が全例に施されている

Conclusions AECCの診断基準によるARDSは様々な肺障害の重症度と予後を包含している 測定時間と呼吸器設定を厳密に設定したP/Fによる重症度と予後の評価は初めてである ARDSの診断は24時間後が好ましい 森澤のコメント 臨床現場に与える影響は少ない Study designは参考になる(サブ解析→前向き研究)