星間物理学 講義4資料: 星間ダストによる散乱・吸収と放射 2 銀河スケールのダスト、ダストの温度、PAH ほか 2011/11/30
ダストからの放射:銀河系のシラス成分 Map of Galactic dust emission made by IRAS + COBE/DIRBE. Shown in Galactic coordinate. Northern hemisphere. Schlegel, Finkbeiner, Davis, ApJ, 500, 525
銀河スケールのダスト(減光) 可視光でみられる減光とダストレーン
銀河スケールのダスト(放射) Blue: (3.6um) Green: (4.5um) Red: ダストによる放射(8um)
環境によるダスト性質の違い : 他の銀河でのダストの性質を赤外線SEDから調べて減光曲線を推定する。 PAH: Very Small Grains: 1.2nm<a<15nm Big Grains: 15nm<a<110nm Galliano et al. 2003, A&A, 407, 159
赤外線大光度銀河 (Ultra Luminous InfraRed Galaxies, ULIRG)のSEDとダスト放射のモデル Cold (red) dust with T=40K “Cirrus” component. Warm (green) dust with T=100-200K Hot (purple) dust with up to T=1,000K Sometimes heated by active nucleus. Ultraluminous Infrared Galaxies Armus et al. 2007, ApJ, 656, 148
遠方 QSO に見られるダスト放射 遠方宇宙 (z=6.4、宇宙年齢で 900Myr) の QSO でもダストからの放射が見られる。すでに大量のダストが形成されていることを示唆する。赤色巨星の星風でのダスト形成は効かず、超新星でのダスト形成が必要なことも示唆される。 Dwek et al. 2007, ApJ, 662, 927
ダストの平衡状態と温度 太陽近傍の平均的な輻射場に置かれたダストの温度変化の推定。小さいダスト粒子は熱平衡状態にはない。放射をモデル化するときにはこれを統計的に考慮しないといけない。 Draine 2003, ARAA, 41, 241
ダストの平衡状態と温度 平衡にない場合にはより短波長側の放射が出てくることになる。 Li & Draine, 2001, ApJ, 554, 778
ダストに関わるいろいろ 1: いろいろな銀河におけるダストガス比 ダストに関わるいろいろ 1: いろいろな銀河におけるダストガス比 赤外SEDから推定されるダスト量とガス(HI+H2(from CO)) の比を金属量、銀河のタイプに対してプロットしたもの。H2/CO 比を仮定。 Draine et al. 2007, ApJ, 663, 866
ダストに関わるいろいろ 2: 星間分子?ダスト? : Polycyclic aromatic hydrocarbon molecules (PAH) の構造 Salama et al. 1996, ApJ, 458, 621 Allamandola et al. 1999, ApJL, 511, 115
ダストからの放射 : PAH による吸収のスペクトル
ダストからの放射 : 赤外線で見られる PAH のスペクトル Unidentified Infrared Bands: Wavelength (nu0(cm-1), Gamma(cm-1)) 3.3um (3030, 23.5) 6.2um (1610, 36.4) 7.7um (1300, 59.0) 8.6um (1160, 34.5) 11.3um (885, 17.5) 12.7um (787, 32.5) Peeters 2003, astro-ph/0312184
ダストからの放射 : 赤外線で見られる PAH のスペクトル 相対強度は電離によって大きく変わる(左図 a: 中性の場合、b: 電離された場合)。 右図の上は原始惑星系円盤 IRAS22272+5435 のスペクトル(a)とモデル(b)、下はオリオン星雲の電離領域のスペクトル©とモデル(d) (Allamandola et al. 1999, ApJL, 511, 115)。2種類の非常に異なるスペクトルが混ぜ合わせ、電離の違いでよく説明される。ダストのUV, X-ray, 宇宙線による電離は星間ガスの重要な加熱源と考えられる。
ダストの中の PAH の割合 PAH index : % of dust mass contributed by PAHs with Nc<10^3 C atoms. Draine et al. 2007, ApJ, 663, 866
ダストに関わるいろいろ 3: ダストの形成 赤色巨星の星風の中、II 型超新星のシェルの中、で形成されると考えられている。 ダストに関わるいろいろ 3: ダストの形成 赤色巨星の星風の中、II 型超新星のシェルの中、で形成されると考えられている。 SN1987A で観測されたダストからの赤外放射。ダストの量は 6e-5 太陽質量。 Wooden et al. 1993, ApJS, 88, 477
ダストに関わるいろいろ 4: ダストへの吸着 ガスに含まれる金属はダストに吸着して取り込まれている。取り込まれている率は凝結温度によっていて、凝結温度が高いほど吸着されている率が高い。星間ガスのスペクトルに基づいてガス中の金属量を考える場合にダストに吸着されてしまっている量を無視することはできない。 Savage&Sambach 1996, ARAA, 34, 279
ダストに関わるいろいろ 5: ダストに働く放射圧、星成長の抑制 ダストに関わるいろいろ 5: ダストに働く放射圧、星成長の抑制 太陽の輻射による輻射圧で彗星のダストが吹き飛ばされる。ダストに働く輻射圧は、衝突、クーロン力による相互作用を通じてガスに影響を与える。これによって星の質量の上限値が決められるのかも知れない。 Wolfire et al. 1987, ApJ, 319, 850