天然物薬品学 発酵による医薬品の生産.

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きのこ種菌の純粋分離 ①培地作成 ・基礎培地 →「Potato Dextrose Agar」 ⇒PDA (ジャガイモ寒天培地)
解剖生理学 12月16日(木) 炭水化物の消化・吸収 食環境デザインコース 3年 09210211~09210220.
炭水化物 砂糖,デンプン,セルロースなど DNAの構成成分,膜にも存在(糖脂質) ストレプトマイシン,ビタミンC 主にC, H, Oからなる
食品学とは 食品の成分や成分の変化および食品の特徴について学ぶ学問
ビタミン (2)-イ-aーJ.
天然物薬品学 発酵による有用物質の生産.
水処理工学(1) 水中の物質変化、水の汚れと富栄養化
生物学 第8回 代謝経路のネットワーク 和田 勝.
嫌気性生物ろ床における排水からの窒素除去機構
無機質 (2)-イ-aーH.
大成企業株式会社 環境事業部 新活性汚泥技術研究会会員 〒 東京都府中市八幡町2-7-2
タンパク質(Protein) ~基本的なことについて~.
研究テーマ 福山大学 薬学部 生化学研究室 1) 脂質代謝を調節するメカニズムに関する研究 2) がん細胞の特徴と
活性化エネルギー.
脂肪の消化吸収 【3】グループ   ~
枯草菌C4-ジカルボン酸輸送体DctPとMaeNの機能解析
生体分子解析学 2017/3/ /3/16 機器分析 分光学 X線結晶構造解析 質量分析 熱分析 その他機器分析.
人工血液 神戸大学輸血部 西郷勝康.
外膜 内膜 R- (CH2)n -COOH R-(CH2)n-CO-S-CoA R-(CH2)n-CO-S-CoA CoA-SH
1)解糖系はほとんどすべての生物に共通に存在する糖の代謝経路である。 2)反応は細胞質で行われる。
栄養と栄養素 三大栄養素 炭水化物(糖質・繊維) 脂質 たんぱく質 プラス五大栄養素 ビタミン 無機質.
10 水環境(5)富栄養化 水の華(Water bloom) 赤潮 アメリカ カリフォルニア州 アオコ 神奈川 津久井湖.
好気呼吸 解糖系 クエン酸回路 水素伝達系.
代謝経路の有機化学 細胞内で行われている反応→代謝 大きな分子を小さな分子に分解→異化作用 第一段階 消化→加水分解
緩衝作用.
福井工業大学 工学部 環境生命化学科 原 道寛 名列____ 氏名________
解糖系 グルコース グルコキナーゼ(肝) ヘキソキナーゼ(肝以外) *キナーゼ=リン酸化酵素 グルコース6-P グルコースリン酸イソメラーゼ
オーダーメード型の 発酵培養機.
8章 食と健康 今日のポイント 1.食べるとは 何のために食べるのか? 食べたものはどうなるのか? 2.消化と吸収 3.代謝の基本経路
3)たんぱく質中に存在するアミノ酸のほとんどが(L-α-アミノ酸)である。
第15章 表面にエネルギーを与える 生命と惑星の共進化による惑星燃料電池の形成
F)無節操的飛躍と基礎科学(20世紀~) 1.原子の成り立ち:レントゲン、ベックレル、キューリ(1911) 、ラザォード、モーズリー、ユーリー(重水素、 1934)、キューリ(1935)、チャドウィック(中性子1935)、ハーン、シーボーグ 2.量子力学 :プランク(1918), アインシュタイン(1921)、ボーア(1922)、ドブローイ(1929)、ハイゼンベルグ(1932)、ゾンマーフェルト、シュレーディンガー(1933)、ディラック(1933)、ハイトラー、ロンドン、パウリ(1945)、ボルン(1
生物機能工学基礎実験 2.ナイロン66の合成・糖の性質 から 木村 悟隆
タンパク3000プロジェクト個別的解析プログラム
微粒子合成化学・講義 村松淳司
コレステロール その生合成の調節について 家政学部 通信教育課程 食物学科 4年 大橋 万里子 佐藤 由美子 鷲見 由紀子 堀田 晴 子
農学部 資源生物科学科 加藤直樹 北村尚也 菰田浩哉
9 水環境(4)水質汚濁指標 環境基本法(水質汚濁防止法) ・人の健康の保護に関する環境基準 (健康26項目) 
一分子で出来た回転モーター、F1-ATPaseの動作機構 ーたんぱく質の物理ー
第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
9 水環境(4)水質汚濁指標 ・人の健康の保護に関する環境基準 (健康26項目) 環境基本法 地下水を含む全公共用水域について適用
コレステロールの合成 と 脂肪酸の合成 これからコレステロールの合成と脂肪酸の合成についての説明をはじめます。★
従来の感染症法では、感染症患者の治療及び感染症の予防を行うための法律内容であった。
特論B 細胞の生物学 第5回 エネルギー代謝 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
高度生物処理法(BBS)実証実験結果報告書
1月19日 シグナル分子による情報伝達 シグナル伝達の種類 ホルモンの種類 ホルモン受容体 内分泌腺 ホルモンの働き.
モデル体型ダイエット塾® ワンデーセミナー (社)日本栄養バランスダイエット協会.
カルビンーベンソン回路 CO23分子が回路を一回りすると 1分子のC3ができ、9分子のATPと 6分子の(NADH+H+)消費される.
植物と大気汚染 ー研究の概略ー 1)大気汚染のバイオモニタ  リングへの利用 2)大気汚染物質の分解除去.
5大栄養素と水 (2)-イ-aーA.
牛ふん堆肥、豚ぷん堆肥の無機・有機成分と窒素肥効 鶏ふん堆肥(副資材なし)の無機・有機成分、分析方法と窒素肥効
何が遺伝子か ● ウイルスの構成要素: タンパク質と核酸だけ; どちらが遺伝子か?
アミノ酸の分解とアンモニアの代謝 タンパク質やアミノ酸はどこにでもあるありふれた食材ですが、実は分解されるとアンモニアという、体に非常に有害な物質を産生します。これは、普段われわれが何も気にせずに飲んでいる水が、実はH+(酸)とOH-(アルカリ)で出来ているのと似ているように感じます。今回、アミノ酸の分解に伴って産生されるアンモニアを、生体はどのようにして無毒化しているかを考えましょう。
大成企業株式会社 環境事業部 新活性汚泥技術研究会会員 〒 東京都府中市八幡町2-7-2
生物学 第7回 エネルギー代謝 和田 勝.
細胞の膜構造について.
酵素表層発現酵母を用いた有機リン農薬検出法の構築
タンパク質.
化学1 第12回講義        玉置信之 反応速度、酸・塩基、酸化還元.
The Nobel Prize in Medicine 1953
合成抗菌薬 (サルファ剤、ピリドンカルボン酸系)
福井工業大学 原 道寛 学籍番号____ 氏名________
物質とエネルギーの変換 代謝 生物体を中心とした物質の変化      物質の合成、物質の分解 同化  複雑な物質を合成する反応 異化  物質を分解する反応 
好気呼吸 解糖系 クエン酸回路 電子伝達系.
特論B 細胞の生物学 第6回 エネルギーはどこから 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
水酸化PCBの生成について 日鉄環境エンジニアリング株式会社         福沢 志保.
好気呼吸 解糖系 クエン酸回路 電子伝達系.
有機バイオ材料化学 3. アルコールの反応.
沿道植物中のEROD活性による 大気汚染のバイオモニタリング ー研究の概略ー.
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天然物薬品学 発酵による医薬品の生産

微生物の培養

微生物の培地 ヒトの栄養素 微生物の培地成分 肥料の3要素 炭水化物 脂質 タンパク質 ミネラル ビタミン 炭素源 窒素源 塩類 生育因子 リン酸 カリ

細菌培養の培地 ブイヨン培地 肉エキス 1.0 % ペプトン 1.0 % NaCl 0.5 % L培地 バクトトリプトン 1.0 % 肉エキス 1.0 % ペプトン 1.0 % NaCl 0.5 % L培地 バクトトリプトン 1.0 % バクトイーストエキス 0.5 % ブドウ糖 1.0 % NaCl 0.5%

微生物による物質生産に利用される農産廃棄物 培地成分 製品 廃糖蜜 砂糖 大豆粕 大豆油 綿実粉 綿,綿実油 コーンスティープリカー デンプン,コーン油 乾燥酵母 ビール

静置培養 固体培養(寒天) 液体培養 振盪培養 往復振盪(試験管,坂口フラスコ) 回転振盪(三角フラスコ) 通気撹拌培養(ジャーファーメンター,培養タンク) 培養条件 温度 25~37℃ ~80℃(好熱菌) 酸素 空気中,通気 ~0%(絶対嫌気性菌) pH 5.6~7.4 塩濃度 0~1% ~10%(好塩菌)

無菌封入法 綿栓 シリコンゴム栓 アルミキャップ

一次代謝産物 生物が生産し,その生物の個体維持,種族維持に必須な役割を持つ有機化合物 アミノ酸,核酸,脂肪酸など 多くの生物種に共通の生合成系 二次代謝産物 生物が生産し,その生物の個体維持,種族維持に必須な役割を持たない有機化合物 抗生物質,色素,アルカロイドなど その生物種に独自の生合成系

微生物の培養曲線と二次代謝 定常期 静止期 炭素源 物質生産 菌数(対数) 対数期 死滅期 誘導期 適応期 物質生産 培養時間(日)

ペニシリンの発酵生産 Penicillium chrysogenum 生産培養 種培養 コーン浸出液固形物 35 g/L CaCO3 5 g/L (pH 5.7)  25℃, 250 rpm, 36 hr 生産培養 コーン浸出液固形物 35 g/L ラクトース 25 g/L フェニル酢酸カリウム 2.5 g/L MgSO4 ・ 7H2O 3 g/L KH2PO4 7 g/L コーン油 2.5 g/L CaCO3 10 g/L  25℃, 250 rpm, 96 hr

ペニシリン生産菌の培養 ペニシリン 菌体窒素(g/L) ペニシリン(単位) 増殖 培養時間(日) Penicillium chrysogenum 3 1200 ペニシリン 菌体窒素(g/L) 2 ペニシリン(単位) 800 増殖 1 400 1 2 3 4 培養時間(日)

発酵微生物の菌株改良 ペニシリン生産菌株 ペニシリン収率 ペニシリン生産菌株 ペニシリン収率 Penicillium notatum (Flemingのペニシリン生産菌) 1 mg/L Penicillium chrysogenum NRRL-1951 60 mg/L 自然発生 NRRL-1951.B25 150 mg/L X線照射 X-1621 300 mg/L 紫外線照射 WIS Q-176 550 mg/L ナイトロジェンマスタード処理等 E-15.1 7,000 mg/L

微生物変換

微生物を利用した化学反応 微生物変換法・・・微生物の培養液,静止生菌体,死菌体 酵素法・・・微生物由来の粗酵素,精製酵素 固定化生体触媒法・・・精製酵素または微生物を担体に固定化 ・基質選択性,位置選択性,立体選択性が高い ・温和な条件下での水系反応 ・分子生物学的手法によって酵素の改善も可能 ・合成化学では困難な反応も進行  (アルカンのヒドロキシ化など)

微生物変換によるホスホマイシンの製造 Penicillium spinulosum cis-プロペニルホスホン酸 ホスホマイシン

微生物変換によるプラバスタチンの製造 Streptomyces carbophilus ML-236B プラバスタチン

微生物変換による1α-25-ジヒドロキシビタミンD3の製造 Pseudonocardia autotrophica 1α-25-ジヒドロキシビタミンD3 (活性型ビタミンD3) ビタミンD3 ・腎透析患者の副甲状腺機能亢進症 ・低カルシウム血症

微生物によるステロイド変換 Aspergillus ochraceus エピコルチゾール 11-デオキシコルチゾール Curvularia lunata コルチゾール Arthrobacter simplex プレドニゾロン

微生物によるステロイド側鎖切断 Arthrobacter simplex アンドロスタ-1,4-ジエン- コレステロール 3,17-ジオン(ADD) コレステロール テストステロン エストリオール スタノロン

微生物変換によるL-DOPAの製造 カテコール ピルビン酸 Erwinia herbicola 菌体 + チロシンフェノール リアーゼ DL-セリン L-DOPA レボドパ (抗パーキンソン病薬) + CH3COCOOH + NH3 ピルビン酸

微生物変換によるβーラクタム抗生物質前駆体の製造 E. coli ペニシリン アシラーゼ ペニシリンG 6-APA Pseudomonas sp. セファロスポリン アシラーゼ セファロスポリンC 7-ACA

微生物変換によるD-p-ヒドロキシフェニルグリシンの製造 Pseudomonas striata D-ヒダントイナーゼ + DL-5-p-ヒドロキシ フェニルヒダントイン L-5-p-ヒドロキシ フェニルヒダントイン N-カルバモイル- D-p-ヒドロキシフェニルグリシン ラセミ化 Agrobacterium sp. N-カルバモイルD-アミノ酸 アミドヒドロラーゼ D-p-ヒドロキシフェニルグリシン アモキシシリン

Corynebacterium ammoniagenes 菌体(界面活性剤処理) 複平行微生物変換によるCDP-コリンの製造 Corynebacterium ammoniagenes 菌体(界面活性剤処理) UTP オロト酸 CO2 グルコース ATP ADP コリン ホスホコリン CDP-コリン UTP CTP シチコリン (意識障害改善薬) E. coli 菌体(界面活性剤処理)

生体触媒の固定化法 担体結合法 - 架橋法 包括法 スペーサー 生体触媒 共有結合法 イオン結合法 物理的吸着法 架橋法 + 担体結合法 共有結合法 イオン結合法 物理的吸着法 架橋法 架橋法 包括法 マイクロカプセル型包括法 格子型包括法