川口則幸教授退職記念ワークショップ 「VLBIとその展望」 川口さんとのVLBI開発 2014年6月2日 小林秀行(国立天文台)

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口径合成によるメーザー源の 時間変動の観測 SKA に向けて 岐阜大学 高羽 浩. 東アジア VLBI 網の 22GHz 日本 野辺山 45m 、鹿島 34m 、 高萩、日立、つくば、山口 32m 、 VERA20m× 4 北大、岐阜大 11m 、水沢 10m 韓国 KVN20m× 3+測地 20m.
2020 年( TMT 、 SPICA 時代)の すばる望遠鏡 高見英樹 ( 国立天文台) 年の光赤外の情勢 大きな流れ TMT 稼働開始 SPICA 打ち上げ、 JWST は? LSST 稼働開始、 HSC の役割は? Keck 、 Gemini は存続だが予算は厳しい、 VLT は着実.
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Radio Astronomy Frequency Subcommittee
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みさと8m電波望遠鏡の性能評価 8m (野辺山太陽電波観測所より) (New Earより) 和歌山大学教育学部 天文ゼミ  宮﨑 恵 1.
南極からの新赤外線天文学の創成 南極内陸は、ブリザードがなく、非常に穏やかな、地球上で最も星空の美しい場所です。この場所で私たちは新しい赤外線天文学を展開します 宇宙初期の広域銀河地図を作って、私たちの銀河系の生い立ちを解明します 137億年前 100億年前 宇宙の果て 最初の星が生まれ、銀河が成長した時代.
須藤 広志 高羽浩、川口則幸、 他光結合VLBIグループ
レーザー励起Csガスセル型原子発振器による測地VLBI実験
観測システムの現状 国立天文台 光結合VLBI推進室 河野裕介.
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高周波観測 大田 泉 (甲南大学理工学部) 空気シャワー電波観測ワークショップ2014@甲南大
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みさと8m電波望遠鏡の 性能評価 富田ゼミ 宮﨑 恵.
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岡山188cm望遠鏡時間の 割り当て状況 泉浦秀行 国立天文台岡山天体物理観測所 1/17/ 光赤天連シンポ@京都大学.
Multiple Antenna Radio-interferometer for Baseline Length Evaluation
SKA参入に向けた技術開発 国立天文台 水沢VLBI観測所 河野裕介 2019/1/18 水沢VLBI観測所計画部門.
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2018年度共同利用観測報告 (KaVA and EAVN)
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米倉 覚則 (茨城大・宇宙科学教育研究センター)
ASTE望遠鏡を用いたVLBI観測の ための超伝導230GHz帯受信機開発
大学連携 局代表者会議 昨日の議論 次期計画 サイエンス 各機関の計画/大学連携としての方針 開発 来年度の研究計画 予算計画.
Keck-II several nights
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川口則幸教授退職記念ワークショップ 「VLBIとその展望」 川口さんとのVLBI開発 2014年6月2日 小林秀行(国立天文台)

川口則幸氏の開発1 1975年 郵政省電波研究所入所 1989年 国立天文台野辺山宇宙電波観測所 K3システムの開発 日米実験(26mなど) 1975年 郵政省電波研究所入所 K3システムの開発 日米実験(26mなど) 鹿島34m望遠鏡の建設 マーカス局の建設 K4システムの開発 1989年 国立天文台野辺山宇宙電波観測所 NAOCOの開発 KNIFE(Kashima-Nobeyama InterFErometer)実験 バーストシステム(高速サンプリング、半導体記録、間欠的な観測)

川口則幸氏の開発2 1990年 VSOP計画に参加 1998年 国立天文台水沢 データ伝送・リンク系の開発 三鷹FX相関器のデータ再生系の開発 VSOPターミナルの開発 1998年 国立天文台水沢 VERA 2局(4アンテナ)から4局への展開 2ビームシステムの開発 1Gbps記録システムの開発 東アジア相関器(Daejoun相関器)データ再生・バッファ系の開発

川口則幸氏の開発3 私は、1989年以来、25年余り、共同で研究開発 国立天文台で最も多くの仕様書を作成?! 1995年ごろから 光ファイバー網によるVLBIシステムの開発 専用線からIPによる共用線へ KDDI 山口局のVLBI局転換 国内VLBI観測網、大学連携VLBI網の大きな契機 2003年ごろから InPによるMMIC HEMT素子の開発 その他 高安定化水晶発振器 光励起ルビジウム Wavefront clockシステム などなど 私は、1989年以来、25年余り、共同で研究開発

S2 K4 VLBA

近田・川口のタイムコード論争 DIR1000レコーダは、ヘリカルスキャン方式のために、データがフレーム構造になっている。 IDを時刻符号に転用できないか? 1年半におよぶ大議論 メリット:  レコーダのシンク機能を活用できる。 デメリット: データに時刻付けしないことで、システムのクリティカルポイントを増やす 結局、TSSIDを時刻符号にする。 VERA 1Gbps記録系では、時刻符号の復活+レコーダシンク機能の有効利用

The first space VLBI satellite; HALCA

川口・D’Addarioのフェーズリンク論争 20,000㎞離れた衛星への基準信号の伝送方法 Larry D’Addario: オープンループで残留位相の計測値を相関処理時に補正 Kawaguchi: クローズドループで、残留位相を用いて、アップリンク制御

VERA Antenna Diameter 20m (250μm) Observing band 2,8,22,43GHz Maximum baseline 2273km Minimum baseline 1000km 2 beam phase referencing -> Inst. Path error <0.1 mm Mizusawa Iriki Ogasawara Ishigakijima

Radiator for 2 beam phase correction on the surface

2ビームシステム 位相補償の究極の形 素子アンテナ視野内の相対位相を広視野に展開する 高精度・高感度の達成

そして将来 VLBIという技術はいつまで続くのか? 電波天文学の方向 基準信号を世界中に伝送する技術(ファイバー網・無線網の利用) 超広帯域の信号伝送 電波天文学の方向 もっと高感度・もっと広帯域・もっと広視野・もっと高分解能に 光赤外線天文学に比べて、視野(すばるHSCは1.5deg.)と感度の不足 光赤外線天文学に比べて、空間・速度分解能では凌駕 なんの実績もない日本の天文VLBIが、VSOP・VERA・大学連携網・東アジア網と大きな進展 電波天文学全体では、野辺山、ALMAで世界の最先端に、次は…

川口さんに学んだこと 研究には予算がかかる システムは最終形を目指せ 人との関係、和を重んぜよ 良い開発には、金がかかって当たり前 段階的な開発は、中途半端に終わる リスクは取れ (無理は良いが、無茶はするな) 人との関係、和を重んぜよ 面白い提案は、まずやらせてみる 任せて、だめなら次を考える

川口さん、長い間 ありがとうございました。 今後も、上海その他で大いに活躍されることを信じております。 もっとも苦手な所長業から解放されて、さぞ研究を満喫されていると思います。