第8回 エコシステムにおける物質循環 水の循環 炭素循環・窒素循環 物質循環と水汚染.

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第8回 エコシステムにおける物質循環 水の循環 炭素循環・窒素循環 物質循環と水汚染

植物の営みの再確認 光エネルギー 光合成 呼吸 暗反応 光の入射・反射・吸収(光合成) 赤外放射(周辺気温が低いとき) 光エネルギーの吸収と糖類の合成 地中の液体水を吸収し、葉から水蒸気として蒸散 空気中CO2の吸収、酸素O2の排出 有機物の合成、炭素の固定 呼吸 空気中酸素O2の吸収、CO2の排出 糖類の還元(高分子有機物を単純な分子構造へ分解) 暗反応 土壌中の養分(P、Nなど)を吸収 土壌中の微量元素を濃縮

植物における水と物質の流れ P K P N K P K K K P P K P 光 H2O O2 ブドウ糖 CO2 H2O H2O H2O 光合成:6CO2+12H2O → C6H12O6+6O2+6H2O H2O 蒸散 (潜熱) O2 反射 ブドウ糖 葉表面温度Ts 赤外放射(Ts>T0時) 空気温度T0 CO2 顕熱 (Tg>T0時) 地面温度Tg P K P N K P H2O K K H2O K P P K P H2O H2O

出所) 瀬戸昌之、生態系、有斐閣ブックス、1995.以下同 生物圏における水の現存量と循環 生物がかかわる循環経路(蒸散)、生物がかかわらない循環経路(蒸発) 陸地では、植物を通した蒸散速度が大きい。 インプット・アウトプットがバランスしている。 立方体の大きさは水の現存量(1012t)を表す。矢印上の数字は要素間の循環速度(1012t/year)を表す。 出所) 瀬戸昌之、生態系、有斐閣ブックス、1995.以下同

炭素の循環 大気中に窒素、酸素が大量に存在するが、CO2は0.05%しかない。 CO2、メタン、CO,フロンなどは温室効果をもたらすガスである。 各立方体のインプットとアウトプットはバランスしている。 実線立方体は有機物の炭素量(単位109t)、点線立方体は無機物の炭素量をあらわす。矢印上の数字は循環速度(単位109t/year)を表す.

地球上の酸素と炭素のバランス 化石燃料の燃焼に酸素も必要だが、それによる酸素の量の減少が少なく、生物の呼吸に与える影響が少ない。 化石燃料の燃焼によって大気中のCO2濃度が変わる。1800年頃280ppmだったが、現在350ppmになっている。 地球上の化石燃料を全部燃やしたら、CO2濃度は5000ppmになり、ヒトの呼吸障害を起こし、地球温暖化をもたらす。 極相の森林では光合成により吸収されるCO2と呼吸で放出されるCO2がバランスしている。 したがって、熱帯雨林などの極相森林の生命活動はCO2による温室効果の軽減に役に立つわけではない。 かといって、極相の熱帯雨林に変化がないわけでない。老木が倒れると、ギャップが生まれる。そこに植物の遷移が始まる。ですから、極相林はマクロ的にバイオマスが変わらないが、ミクロ的に活発な新陳代謝を続けている。これは動的平衡という。 熱帯雨林で問題となっているのはその伐採である。森林伐採により、それに蓄積されたCO2が大気中に放出され、大気のCO2が50%増加すると見られる。

窒素循環 窒素分子が大気中に大量にある(78%)。しかし、それが植物に直接に利用されることはない。 植物や生物が利用できるのは硝酸(HNO3)、アンモニア(NH3)の中に含まれる窒素に限る。

窒素固定 大気の窒素ガス(N2)をアンモニア(NH3)の窒素化合物に、生物的あるいは工業的に変換すること。 マメ科(ダイズなど)の植物と共生して、根瘤を形成する菌類が窒素を固定する機能がある。 窒素固定菌:アンモニア(NH3)などの窒素化合物を硝酸塩に分解する。 脱窒素菌:窒素化合物を窒素ガスに転換し、大気中に放出する。 土壌に栄養不足となったとき、1季節マメ科の植物(ダイズやエンドウなど)を作るとよい。「輪作」という。自然の仕組みは経験豊かな農民がよく知っている。 窒素の工業的固定は、大気中の窒素ガス(N2)と天然ガスなどからえられる水素ガス(H2)を原料に、N2+3H2→2NH3、でアンモニアを合成する。 化石燃料の燃焼で発生する窒素化合物(NOx)と、雷放電などで生成するNO3も生物圏の窒素循環に組み込まれる。

リンの循環 リン(P)は核酸、ATP、骨などの構成元素である。木本の0.01%、草本の0.3%、動物や微生物の1~3%含まれる。 リンの濃度は陸水、海水ではきわめて低い。だから、水界での緑色プランクトンや微生物の増殖や代謝はリンによって強く制限されている。 陸域では、リンの濃度は比較的高い。それでも緑色植物の増殖や代謝はリンによって制限されている。 土壌中のリンは物理・化学的風化や微生物の作用によって形成されたものである。 過度の土地耕作のため、土壌中のリンが不足となる。それを補うために、化学肥料を投入する。 リン資源は肥料のほかに、家庭用合成洗剤、金属洗剤、加工食品、飲料、飼料などに添加することに利用されている。 工業国では1人1日、数gのリンを農業、工業、家庭生活で消費している。 土壌中に存在するリンの一部は農作物に吸収されるが、ほかの大部分は難融性の塩となって土壌に固定される。 工業や家庭生活で排出したリンの大部分は下水道を通って、河川、湖沼に入る。それで湖沼の富栄養化の問題を起こす。

水域における窒素・リンの循環

停滞性水域の水質問題:富栄養化 富栄養化問題 肥沃な土壌や人間活動から大量に排出された栄養塩類(植物の栄養となる物質)が水中で増加し,それにより水域の生態系のバランスが崩れた状態をいう. 湖沼や内湾などの停滞性水域に大量の栄養分(窒素・リン等)が流入すると、富栄養の状態となり,水域内部での一次生産量(植物プランクトン)が増加して,二次生産者(動物プランクトンなど)による補食が追いつかないために生態系のバランスが崩れる.富栄養化による障害は植物プランクトンの異常発生による濁り,浄水場のろ過障害,清水性魚介類の生息障害などがある. 富栄養化による極端な例が赤潮やアオコ現象.

富栄養化現象の代表的水質指標 ◎T-N:総窒素、T-P:総リン ◎クロロフィルa ◎SS(浮遊物質量) 富栄養化の代表的な原因物質。植物プランクトンを含め植物の3大栄養素である窒素,リン,カリウムのうち、カリウムは比較的天然に多く存在するため、窒素とリンが富栄養化の原因となる。総窒素,総リンはともに有機態と無機態に大別され,このうち植物プランクトンが摂取できるのは無機態だけです。 ◎クロロフィルa クロロフィル(葉緑素)aは光合成細菌を除く全ての緑色植物に含まれるため、水中の植物プランクトン量の指標として用いられる。 ◎SS(浮遊物質量) 水の中に浮遊している直径2mm以下の、懸濁性物質(水の濁りの元にけんだくなる物質)の量のことをいう。粘土などの鉱物性の微粒子や、湖や海ではさらに、動物プランクトンや植物プランクトンなどの生物性微粒子からなっている。

生物濃縮の問題 産業活動によるエコシステムの汚染にともない、ヒトの健康を脅かすある種の元素や化合物もヒトをはじめ多くの生物に高濃度に蓄積することを生物濃縮(biological concentration)という。 ある物質の生物中の濃度を環境中の濃度で割った値を濃縮係数(concentration factor)という。 「濃縮」はその物質に限ってみればエントロピー減少の現象である。濃縮に使われるエネルギー(有機物など)と一緒に考察する場合、システムのエントロピーは増大する法則と矛盾はしない。 生物濃縮を起こす物質に2つの共通性質がある。 きわめて安定である Hg(水銀)がタンパク質と強く結合し、Cdなどは骨に沈着し、DDTや雪金属が志望によく取り込まれ、生体に蓄積し、排泄されにくい。 このことから、生物濃縮は生体が処理し切れなかったエントロピーともいえる。 DDTなどの有毒物質の濃縮は生物群集に与える長期的影響は特に大きいと見られる。 水俣病の事例

生物濃縮の実態 この倍率をよく比べてください

河川・水・湖の自浄作用 物理的作用 化学的作用 生物的作用 流入した汚濁物は大量の水によって希釈(うすめる)・拡散(拡げる)され,また水より重たい粒子は次第に沈殿して、水中の汚濁物濃度は減少する。 しかし,汚濁物の総量が減少するわけでないため,本質的に浄化されることにならない。 化学的作用 酸化,還元,凝集,吸着などの作用によって汚濁物質が無害なものに変化したり,沈殿しやすくなったり,水中に溶出しにくくなったりする。 生物的作用 汚濁物質が生物により吸収され,分解されることをいう。有機物が微生物(水中のバクテリア等)によって分解されることが中心である.窒素やリンが藻類や水棲植物によって吸収されることも自浄作用の一種。

好気的分解のメカニズム 廃水 脱窒 再曝気 流入 移流 溶解性 吸着 希釈 拡散 浮遊性 有機物 硝化 溶出 吸収 沈殿 巻き上げ 浮遊性 生物 化学的 分解 希釈 拡散 浮遊性 有機物 硝化 溶出 溶出 吸収 沈殿 巻き上げ 浮遊性 藻類 好気的分解 付着性 河床 底泥 嫌気的分解 もうひとつの図

有機物の好気性分解と嫌気性分解 好気性微生物と嫌気性生物 好気性分解 嫌気性分解 好気性微生物は、酸素ガス(O2 )の存在する環境(好気的環境)で生育する。 嫌気性微生物は、酸素ガスの存在しない環境(嫌気的環境)で生育する。 好気性分解 自然水は、空気中の酸素によってほとんど溶存酸素が飽和している.そこで,水中に入ってきた有機物はまず好気性微生物によって酸化分解される(好気性分解)。 有機物の主成分は炭素(C)、水素(H)、酸素(O)、と窒素(N)、硫黄(S)などで、好気性微生 物 は 水 中 の 酸 素 を 使 っ て そ れ ら を 二 酸 化 炭 素 (CO2) 、 水(H2O)、硝酸イオン(NH3- )、硫酸イオン(SO42-)などの無機物に分解する。 嫌気性分解 酸素ガスの存在しない環境では、有機物は嫌気性微生物による分解が行われる(嫌気性分解)。この場合の最終生成物はメタン(CH4)、アンモニア(NH3)、硫化水素(H2S)などである。 堆積した底泥の内部では、溶存酸素の補給が少ないために、嫌気性分解が主体になる。 嫌気性分解も、自然の浄化作用の中で重要な役割を果たすものだが、人間にとっては好ましい環境とは言えない(悪臭の元)。

化学豆知識 酸化 物質を作る原子(有機物を構成する炭素:C)が「+」や「-」の電気を帯びた状態のことをイオンという。 電気の状態が「-」の状態から「ゼロ」や「+」の方向に変化することを「酸化」という。 酸化することで、物質は別の物質に変化する。 炭素:Cは、「-」の電気を2つ持っているが,酸素から「+」の電気をもらい、電気的に「ゼロ」の状態になる(酸素とくっつく)。 水素と酸素がくっついて水ができることも同じ 水の酸化による浄化とは,水中の有機物に含まれる炭素(C)、水素( H ) 原 子 が 別 の 酸 素 原 子 ( O ) と 結 び つ い て 新 た に 二 酸 化 炭 素(CO 2)、水(H2 O)に変化することである.これにより汚れ(有機物)が分解(酸化)されることになる。

還元 吸着・凝集 還元とは酸化の反対で,物質が「-」の電気を一つでも多く持つようになることである. 水の還元による浄化とは,水中の有機物に含まれる炭素(C),水素(H),窒素(N),イオウ(S),酸素(O)などの各原子のうち,酸素がはなれて,新たにメタン(CH 4),硫化水素(H2S),アンモニア(NH3)に変化させることで,汚れ(有機物)が分解(還元)されるということである。 吸着・凝集 微粒子がお互いの引力により集まってくっつき、大きな塊となることである。同じ電気を帯びた原子(イオン)はお互いに離れようとします。 酸化・還元反応により電気的にゼロになった物質はお互いに結びつきやすくなる(吸着)。物質同士が吸着してさらに大きな塊となり(凝集)、沈殿しやすくなる。