明大理工,通総研A 木下基、福田京也A、長谷川敦司A、細川瑞彦A、立川真樹

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明大理工,通総研A 木下基、福田京也A、長谷川敦司A、細川瑞彦A、立川真樹 薄いセル中のセシウム原子のEIT信号Ⅱ 明大理工,通総研A  木下基、福田京也A、長谷川敦司A、細川瑞彦A、立川真樹

概要 目的 薄いガラスセル中のCs原子とセル壁面との衝突による緩和特性を調べること。 方法 EIT(Electromagnetically Induced Transparency)を用いる。 今回 その信号線幅のセルの厚さとレーザー光強度の依存性を調べた。

薄いセル 使用したパイレックス製ガラスセル 本実験ではセル壁面間の距離(セルの厚さ)           使用したパイレックス製ガラスセル  本実験ではセル壁面間の距離(セルの厚さ)  0.3mm、0.5mm、1mm、2mm、5mm、40mmのものを使用。

EIT原理図 |NC> |C> |3> γN γC 6P3/2 |3> F’=4 ΩC ΩP γ1 γ2 F=4 干渉前のエネルギー準位 6P3/2 |3> F’=4 Coupling Probe ΩC ΩP γ1 γ2 F=4 |1> 6S1/2 F=3 |2> EIT信号の線幅は|C>と|NC>間のコヒーレント時間で決まる。 我々は薄いセル中の原子ではそのコヒーレント時間は原子の速度に依存するのではないかと考えた。

実験配置図 Cs thin cell coupling probe coupling coupling + probe Photo detector E.O.M isolator l/4 plate s+ ECDL attenuators 852 nm Cs D2 line AM Excited state Synthesizer Lock-in amplifier F’=4 9192MHz Ref. 300 kHz coupling probe Signal out F=4 9192 MHz detuning d F=3 Ground state

薄いセル中のCs原子のEIT信号スペクトル セルの厚さ:1mm (-3,-3) (-2,-2) (-1,-1) (1,1) (2,2) (3,3) Probe detuning d (MHz) 0.1mTの磁場あり (mF,mF’) 2 4 -2 -4 (0,0) 磁場なし 1MHz Transmission (a.u.) -4 -2 2 4 Probe detuning d (MHz) Probe detuning d (kHz) セルの厚さ:0.3mm セルの厚さ:40mm Transmission (a.u.) 典型的なEIT信号スペクトル(クロック遷移) -200 -100 100 200 50 -50

実験結果 : 実験結果 : ガイド線 0.3 mm 0.5 mm 1 mm 2 mm 5 mm 40 mm FWHM (kHz) 150 125 100 75 50 25 150 FWHM (kHz) 150 125 100 75 50 25 FWHM (kHz) 150 125 100 75 50 25 125 100 FWHM (kHz) 75 50 25 100 200 300 400 Intensity (mW/cm2) 100 200 300 400 Intensity (mW/cm2) 100 200 300 400 Intensity (mW/cm2) 2 mm 5 mm 40 mm FWHM (kHz) 150 125 100 75 50 25 200 300 400 Intensity (mW/cm2) FWHM (kHz) 150 125 100 75 50 25 200 300 400 Intensity (mW/cm2) FWHM (kHz) 150 125 100 75 50 25 200 300 400 Intensity (mW/cm2) 得られたEIT信号スペクトル線幅のレーザー光強度依存性

薄いセル中ではレーザー光強度が弱くなるとEIT信号に寄与する原子の速度分布が変化してくるのではないか? 実験結果の考察 薄いセル atoms L 薄いセル中では 原子の速度 位相緩和時間 遅い 長い 速い 短い 薄いセル中のEITスペクトルのイメージ 遅い原子 速い原子 Transmission (a.u.) Transmission (a.u.) Probe detuning d (a.u.) Probe detuning d (a.u.) 薄いセル中ではレーザー光強度が弱くなるとEIT信号に寄与する原子の速度分布が変化してくるのではないか? |NC>状態での速度分布は? レート方程式モデル

レート方程式 N3 |3> γ γN γC NC NN |C> |NC> 薄いセル : セル壁面との緩和効果 D atoms : セル壁面間の距離(セルの厚さ) x L z

レート方程式の解析結果 セルの厚さの違いによるNon-coupled stateの原子の速度分布 セルを薄くすると、遅い原子のみが十分な光との相互作用時間を持ち、|NC>に遷移する。その結果、得られる速度分布はセルの厚さが薄くなるほど先の尖った非Maxwell-Boltzmann分布となる。

透過光強度: EITスペクトルの計算値 L= 0.3 mm 但し L= 40 mm : |NC>にある原子の速度分布 : Lorentz 形 Probe detuning d (kHz) Transmission (a.u.) L= 0.3 mm EITスペクトルの計算値 但し : |NC>にある原子の速度分布 : Lorentz 形 : probe detuning : レーザー光強度 : power broadening 係数

レート方程式の解析結果 : 計算値 : ガイド線 0.3 mm 0.5 mm 1 mm 2 mm 5 mm 40 mm FWHM (kHz) 150 125 100 75 50 25 200 300 400 Intensity (mW/cm2) 150 FWHM (kHz) 150 125 100 75 50 25 FWHM (kHz) 150 125 100 75 50 25 125 100 FWHM (kHz) 75 50 25 100 200 300 400 100 200 300 400 Intensity (mW/cm2) Intensity (mW/cm2) 2 mm 5 mm 40 mm FWHM (kHz) 150 125 100 75 50 25 200 300 400 Intensity (mW/cm2) FWHM (kHz) 150 125 100 75 50 25 200 300 400 Intensity (mW/cm2) FWHM (kHz) 150 125 100 75 50 25 200 300 400 Intensity (mW/cm2) EIT信号スペクトル線幅の計算値のレーザー光強度依存性

結論 薄いセル中の原子のEIT信号の線幅はpower broadeningやtransit time broadeningから期待されていたよりも狭い。 モデル解析によって得られた線幅のレーザー光強度とセルの厚さ依存性は実験結果とよく一致した。 薄いセル特有の速度選択性がEIT信号の観測によって確かめられた。