ALMAの偏光観測とサイエンス 永井 洋 (国立天文台ALMA推進室).

Slides:



Advertisements
Similar presentations
硬 X 線で探るブラックホールと銀河の進化 深沢泰司(広大理) 最近の観測により、ブラックホールの形成と 銀河の進化(星生成)が密接に関係することが わかってきた。 ブラックホール観測の最も効率の良い硬 X 線で 銀河の進化を探ることを考える。 宇宙を構成する基本要素である銀河が、いつ どのように形成され、進化してきたか、は、宇宙の.
Advertisements

かなた望遠鏡・フェルミ衛星によ る活動銀河核の多波長同時連携観 測 伊藤亮介、深沢泰司、かなたチー ム、 フェルミ LAT コラボレーション 多色同時観測 広島大学.
口径合成によるメーザー源の 時間変動の観測 SKA に向けて 岐阜大学 高羽 浩. 東アジア VLBI 網の 22GHz 日本 野辺山 45m 、鹿島 34m 、 高萩、日立、つくば、山口 32m 、 VERA20m× 4 北大、岐阜大 11m 、水沢 10m 韓国 KVN20m× 3+測地 20m.
電波干渉計偏光観測で探る AGN ジェットのプラズマ環境 林 隆之 (Univ. Tokyo, NAOJ/VLBI) 共同研究者:土居 明広 (ISAS/JAXA), 永井 洋 (NAOJ/ALMA) 秋山 和徳 (NAOJ/VLBI), 浅田 圭一 (ASIAA)
第5回 分子雲から星・惑星系へ 平成24年度新潟大学理学部物理学科  集中講義 松原英雄(JAXA宇宙研)
かなた望遠鏡による NGC2264の可視赤外同時観測
星形成領域NGC2264における AA Tau 型星の可視赤外同時観測
太陽多波長フレアデータ解析研究会 NSRO-CDAW10 ピーク時のループトップ電波源(2周波)の高さ (統計解析)
高感度 VLBI 時代の QSO ターゲットを考えた
X線による超新星残骸の観測の現状 平賀純子(ISAS) SN1006 CasA Tycho RXJ1713 子Vela Vela SNR.
第6回 制動放射 東京大学教養学部前期課程 2012年冬学期 宇宙科学II 松原英雄(JAXA宇宙研)
第11回 星・惑星系の誕生の現場 東京大学教養学部前期課程 2012年冬学期 宇宙科学II 松原英雄(JAXA宇宙研)
山口大学電波グループ ブレーザー電波データの紹介
AOによる 重力レンズクェーサー吸収線系の観測 濱野 哲史(東京大学) 共同研究者 小林尚人(東大)、近藤荘平(京産大)、他
GRS 等におけるジェット噴出と X 線強度変動の相関
Multi-λで探る活動銀河核ジェットの高エネルギー放射領域
高周波観測 大田 泉 (甲南大学理工学部) 空気シャワー電波観測ワークショップ2014@甲南大
本間 希樹 Mareki Honma (水沢VLBI観測所)
S3: 恒星とブラックホール (上田、野上、加藤)
2m電波望遠鏡の製作と 中性水素21cm線の検出
S3: 恒星とブラックホール (上田、野上、加藤)
信川 正順、小山 勝二、劉 周強、 鶴 剛、松本 浩典 (京大理)
神戸大大学院集中講義 銀河天文学:講義6 特別編 観測装置の将来計画
宇宙で星はどのように生まれるか? 富士山頂サブミリ波望遠鏡で探る星のゆりかご
内山 泰伸 (Yale University)
NeXT衛星 宇宙の非熱的エネルギーの源を探る focal length m
Taurus-Auriga association
Fermi Bubble と銀河中心の巨大構造
SAX J1748.2−2808 からの 3 つの鉄輝線と593 秒周期の発見
SFN 282 No 担当 内山.
かなた望遠鏡/TRISPECによる変動天体観測
かなた望遠鏡を用いたブレーザーの 可視偏光変動の研究
巨大電波銀河 3C 35 の「すざく」による観測 磯部直樹 (京都大学, kyoto-u. ac
重力・重力波物理学 安東 正樹 (京都大学 理学系研究科) GCOE特別講義 (2011年11月15-17日, 京都大学) イラスト
(GAmma-ray burst Polarimeter : GAP)
基礎宇宙物理学 II 電磁流体力学入門 第1回 天体活動現象入門 2011年4月8日.
銀河・銀河系天文学 星間物理学 鹿児島大学宇宙コース 祖父江義明 .
S3: 恒星とブラックホール (上田、野上、加藤)
「すざく」衛星と日本のX線天文学 July 10, 2005
高エネルギー天体グループ 菊田・菅原・泊・畑・吉岡
星形成時間の観測的測定 東大天文センター M2 江草芙実 第4回 銀河shop 2004/10/19.
CTA報告19: CTA時代におけるSNR研究
電波銀河 Fornax A の東ローブのEnergetics の XMM-Newton による調査
銀河物理学特論 I: 講義2-1:銀河中心の巨大ブラックホールと活動銀河中心核
京都大学理学研究科 中村卓史 2006年2月24日 国立天文台
S5(理論宇宙物理学) 教 授 嶺重 慎 (ブラックホール)-4号館409 准教授 前田 啓一(超新星/物質循環)-4号館501
宇宙線研究室 X線グループ 今こそ、宇宙線研究室へ! NeXT
新潟大学集中講義 ープラズマ物理学特論ー (天体電磁流体力学入門) 2004年1月19日ー1月21日
セイファート銀河中心核におけるAGNとスターバーストの結び付き
クエーサーの内部構造はどうなっているのか? マグナム望遠鏡の威力
偏光X線の発生過程と その検出法 2004年7月28日 コロキウム 小野健一.
下降流(Downflow)の観測と磁気リコネクション
超高光度赤外線銀河(ULIRGs)中に埋もれたAGNの探査
COE外国出張報告会 C0167 宇宙物理学教室 D2 木内 学 ascps
第12回 銀河とその活動現象 東京大学教養学部前期課程 2017年度Aセメスター 宇宙科学II 松原英雄(JAXA宇宙研)
スターバースト銀河NGC253の 電波スーパーバブルとX線放射の関係
ALMAへの期待 -埋れたAGNの探査から-
天文・宇宙分野1 梅村雅之 「次世代スーパーコンピュータでせまる物質と宇宙の起源と構造」
COSMOS天域における赤方偏移0.24のHα輝線銀河の性質
宮本 八太郎(日大、理化学研究所) 三原 建弘、桜井 郁也、小浜 光洋(理化学研究所)
XMM-Newton衛星による 電波銀河 3C 98 の観測
ASTE搭載用ミリ波サブミリ波帯 多色ボロメータカメラ光学系の開発 竹腰達哉 北海道大学修士課程2年 Collaborators:
S5(理論宇宙物理学) 教 授 嶺重 慎 (ブラックホール)-4号館409 准教授 前田 啓一(超新星/物質循環)-4号館501
電離圏イオン流出現象 山田学,渡部重十(北大・理) プラズマ圏・内部磁気圏研究会(2002/03/13)
BH science for Astro-E2/HXD and NeXT mission
巨大電波銀河 3C 35 の 「すざく」による観測 磯部 直樹(京都大学,
すざく衛星によるSgr B2 分子雲からのX線放射の 時間変動の観測
Xmasによるサイエンス (Xmas チーム)
ローブからのX線 ~ジェットのエネルギーを測る~
中性子星/ブラックホール連星の光度曲線の類似性
Presentation transcript:

ALMAの偏光観測とサイエンス 永井 洋 (国立天文台ALMA推進室)

What’s ALMA? 日米欧、チリの共同で建設中の、大型ミリ波・サブミリ波電波干渉計 今年から部分運用開始、2015年から本格運用開始

What’s ALMA? ACA 日本の担当 4台の12mアンテナ+12台の7mアンテナからなるアタカマコンパクトアレー(ACA) Band 8 & 10 ACA 相関器

アルマの科学目標 科学目標 1 太陽系以外の惑星系とその形成を解明 科学目標 2 銀河形成と諸天体の歴史を解明 科学目標 3 科学目標 2  銀河形成と諸天体の歴史を解明 科学目標 3  膨張宇宙史と宇宙物質進化を解明

ALMA: 原始惑星系円盤 赤外線で見た星形成現場 アルマが見る予想図 原始惑星系円盤の想像図 光で見た円盤の影 150 光年 300 原始太陽 原始惑星 150 光年 300 光で見た円盤の影 惑星系の多様性の鍵を握る原始惑星系円盤をはじめて詳しく観測できるのがアルマである。

ALMA: サブミリ波銀河 宇宙誕生45億年後から現在 宇宙誕生から45億年まで ALMA Expected

ALMAの性能 分光性能:2GHz帯域幅(1ベースバンド)を最大8192点分光 Band 周波数 [GHz] 分解能 [“] Compact / Extended 連続波感度 [mJy/beam] ライン感度 [K] Compact/Extended 3 84-116 4.9-3.6 / 0.05-0.038 0.05 0.07 / 482 4 125-163 3.3-2.5 / 0.035-0.027 0.06 0.071 / 495 5 163-211 * 6 211-275 2.0-1.5 / 0.021-0.016 0.1 0.104 / 709 7 275-373 1.5-1.1 / 0.016-0.012 0.2 0.29 / 1128 8 385-500 1.07-0.82 / 0.011-0.009 0.4 0.234 / 1569 9 602-720 0.68-0.57 / 0.007-0.006 0.64 0.641 / 4305 10 787-950 0.52-0.43 / 0.006-0.005 1.2 0.94 / - 分光性能:2GHz帯域幅(1ベースバンド)を最大8192点分光 ⇒ 110GHzで観測した場合、0.01 km/sの速度分解能に相当

近況 19台のアンテナがArray Operation Center (AOS)に

スケジュール 10月からCycle 0 Early Scienceがスタート 12m×16台 Band 3, 6, 7, 9 (100, 230, 345, 650 GHz帯) 配列 Compact (18-125m) / Extended (36-400 m) No special mode Cycle 1 (proposal deadline 2012/3/29) 32台(ACA含む) Band 3, 6, 7, 9 (possibly 4 and 8) Polarization observation, solar observation, …

Early Scienceのコンセプト Best effort basis (risk share) Full scienceでは十分保証されたクオリティのデータが提供されるが、Early scienceでは、観測提案者自身の努力が求められる イメージが観測者に提供されるのではなく、おそらく提案者自身がデータ解析をする必要がある 偏波データの解析はやっかい・・・ 東アジア地域センター(EA-ARC)のサポートを積極的にご利用ください

EA-ARCの面々

ALMAにおける偏波観測 XX*=I+Q XY*=U+iV YX*=I-Q YY*=U-iV Xpol SIS mixer Amp Ortho mode transducer XX*=I+Q SIS mixer Amp Ypol XY*=U+iV Cprrelator YX*=I-Q Xpol SIS mixer Amp YY*=U-iV Ortho mode transducer SIS mixer Amp Ypol 4つの相関を使って、4つのStokes parameterを分離

実際には・・・ D:XとY間で発生する偏波の漏れ込みのターム ALMAでは、おおよそD-termの値は3%以内におさまっているが、ほとんどのastronomical objectの偏波率はせいぜい数%-10% D-termのキャリブレーションが、偏波検出の鍵

Calibration test進行中 Goal 偏波率0.1%(!!!)を検出 偏波角6度で決定 Polarization commissioning & science verificationを実施(8/23-9/4) 2C273のイメージングの例 by 永井 Goal 偏波率0.1%(!!!)を検出 偏波角6度で決定

偏波観測のプラン(仮) Cycle 0(2011年10月スタート):偏波観測なし Cycle 2(2013年):偏光分光、モザイキング、ACA combine

ALMAの偏波サイエンス ダストの偏波 ゼーマン効果 Goldreich-Kylafis効果 シンクロトロン放射 ・・・ 星・惑星形成領域 をプローバーにして、 星・惑星形成領域 銀河 AGN ・・・ の磁場構造を探る

メインサイエンス NGC1333 Girart+ 2006, Science ※小質量星の形成理論と矛盾しない結果らしいが、素人目には何が何だかよくわからない 星・惑星系形成、円盤物理、アウトフローの噴出に磁場がどういった役割を果たすのかといった観点で、ALMAの偏光観測は研究の新展開をもたらすはず

個人的な興味 AGNジェット ALMA偏波観測に関連したopen question 高エネルギー放射機構と磁場構造 Intrinsic property or external effect (Faraday depol.) ? > Faraday depolarizationが少ないサブミリ波帯での観測 kpcスケールジェットにおけるサブミリ波放射の起源 可視光偏光との比較により、電波~可視光が単一成分で説明できるかを検証 ・・・

AGN Zoo 電波で強い種族 (≒質量降着エネルギーからジェットへのエネルギー転換効率が良い) 電波で弱い種族 (≒質量降着エネルギーからジェットへのエネルギー転換効率が悪い)

ジェットの駆動メカニズムの理解に本質的な研究 ブレーザーの多波長研究 ブレーザー=電波で強く、ジェットの見込む角が小さく、電波からγ線にわたって放射をする典型的なAGN Mrk421の多波長スペクトル 逆コンプトン シンクロトロン ジェットの駆動メカニズムの理解に本質的な研究 物理量の決定 Inoue & Takahara 1996 (1)放射輝度 Lpeak (2)二つの山の輝度比 (3)ピーク周波数 光子のエネルギー密度 ∝uphR2δ4 ∝uph/uB ∝uB1/2γ2δ ドップラーファクタ サイズ 磁場のエネルギー密度 ローレンツ因子

γ線源の所在はどこか? たぶん、ジェットの根元(~pc以下)にあるが、詳細はよくわからない VLBI(43GHz)で観測されたM87の電波イメージ ジェットの下流? 電波コアの上流? 電波コア?

GENJIプログラム GENJI=Gamma-ray Emitting Notable-AGN Monitoring by Japanese VLBI  VERAを用いた、高頻度の活動銀河核ジェットモニター観測 観測周波数:22GHz(典型的分解能~1ミリ秒角) 8天体 1天体あたり、約1~2週間に1回の頻度で観測

ねらい γ線AGNの系統的モニター観測 電波コアの変動とγ線変動の関係 変動が同期 ⇒γ線放射領域は電波コアの中にある 電波がdelay ⇒放射領域が光学的に厚い 変動が無相関 ⇒放射領域が空間的に異なる(多層構造など) ジェットの下流あるいは広がった領域におけるフレア成分の有無(e.g., M87 におけるHST-1) ジェットの固有運動と、γ線放射から期待されるローレンツ因子との関係

3C454.3 γ線フレア直後のフォローアップに成功 22GHz帯は緩やかな反応 ⇒ γ線放射領域は22GHz帯では光学的に厚い? Akiyama+ in prep. γ線フレア直後のフォローアップに成功 22GHz帯は緩やかな反応 ⇒ γ線放射領域は22GHz帯では光学的に厚い? 一方、1mm帯はγ線フレアと強く相関 γ線放射領域を見通すにはサブミリ波が必要 preliminary SMA@1mm GENJI

非熱的粒子の生成 サブミリ波偏波観測で、衝撃波の物理に新たな知見を! 偏光観測は衝撃波の良いトレーサー どうやって電波からγ線にわたって放射をする非熱的粒子を生成? ⇒内部衝撃波が従来考えられてきた v2>v1 サブミリ波偏波観測で、衝撃波の物理に新たな知見を! 偏光観測は衝撃波の良いトレーサー Speed: v1 ~0.01 pc ~0.1 pc Speed: v2 Accretion disk Black hole

Fermi時代の多波長研究 3C279の多波長キャンペーン Fermiの登場により、AGNジェット多波長研究の新たな時代が到来(since 2008) Fukasawa-san’s presentation

偏光角の回転は何を意味する? (ALMA+可視光)偏光観測による、さらなる検証に期待

まとめ ALMAの概要と、ALMAにおける偏波観測機能について紹介した 0.1%の偏波検出を目指す Cycle 1から部分的にスタート AGNジェットサイエンスを例に、ALMAでどういったことに迫れるのかを紹介 高エネルギー放射領域とジェット物理に知見を与える