第一原理計算でひも解く合金が示す長周期積層欠陥構造の形成メカニズム

Slides:



Advertisements
Similar presentations
無機化学 I 後期 木曜日 2 限目 10 時半〜 12 時 化学専攻 固体物性化学分科 北川 宏 301 号室.
Advertisements

第2章.材料の構造と転位論の基礎. 2-1 材料の種類と結晶構造 体心立方格子( bcc ) 稠密六方晶格子( hcp ) 面心立方格子( fcc ) Cu 、 Ag 、 Au 、 Al 、 Ni 等 Mg 、 Zn 、 Ti 等 Fe 、 Mn 、 Mo 、 Cr 、 W 、 大部分の鋼 等 充填率.
相の安定性と相転移 ◎ 相図の特徴を熱力学的考察から説明 ◎ 以下の考察
第2回応用物理学科セミナー 日時: 6月 2日(月) 16:00 – 17:00 場所:葛飾キャンパス研究棟8F第2セミナー室
単一分子接合の電子輸送特性の実験的検証 東京工業大学 理工学研究科  化学専攻 木口学.
小笠原智博A*、宮永崇史A、岡崎禎子A、 匂坂康男A、永松伸一B、藤川高志B 弘前大学理工学部A 千葉大大学院自然B
如意棒 じゃないほう (スライドショーで見てくださいね).
クラスター変分法による 超新星爆発用 核物質状態方程式の作成
第14章 その他の燒結材料 14.1電気接点材料 要求される性質: 放電アークによる消耗および物質移動を防止すること 電気伝導性が大きいこと 接触抵抗が低いこと 変形に耐えること 適する材料:複合合金 電気伝導性はAg、Cu 骨格:高融点材料(W、Mo) Cu系:(20〜50)%Cu-W、(35〜65)%Cu-WC.
T. Ono & S. Tsukamoto, PRB84,165410(2011).
TTF骨格を配位子に用いた 分子性磁性体の開発 分子科学研究所 西條 純一.
第3章.材料の強化機構.
Ⅰ 孤立イオンの磁気的性質 1.電子の磁気モーメント 2.イオン(原子)の磁気モーメント 反磁性磁化率、Hund結合、スピン・軌道相互作用
Ⅲ 結晶中の磁性イオン 1.結晶場によるエネルギー準位の分裂 2.スピン・ハミルトニアン
INTRODUCTION n-アルカン結晶 低温秩序相(LO) 回転相(R) 融液相(L) 秩序無秩序固相転移 融解・結晶化.
MnCuNiFe合金の低温における 内部摩擦の研究
Ⅳ 交換相互作用 1.モット絶縁体、ハバード・モデル 2.交換相互作用 3.共有結合性(covalency)
前回の内容 結晶工学特論 第5回目 Braggの式とLaue関数 実格子と逆格子 回折(結晶による波の散乱) Ewald球
全電子混合基底第一原理計算法を活用したネットワーク型エネルギー絶対値算定マテリアルズ・インフォマティクス
計算材料科学 ー量子力学と熱統計力学の基礎ー
速度勾配依存 変動エディントン因子 Velocity-Gradient-Dependent Relativistic Variable Eddington Factor Plane-Parallel Case 福江 純@大阪教育大学.
すばる望遠鏡を用いた 太陽系外惑星系の観測的研究
現実の有限密度QCDの定性的な振る舞いに
1. イントロダクション:溶液中における構造不均一性の形成と拡散
耐COアノード用錯体触媒の機構解明と設計に向けた第一原理計算
有機化合物に対する第一原理GW計算 arXiv: 東京大学
北大MMCセミナー 第20回 Date:2014年1月30日(木) 16:30~18:00 ※通常とは曜日が異なります
ひび割れ面の摩擦接触を考慮した損傷モデル
ZrB2表面上のシリセンの電子状態計算 Contents 導入 実験 第一原理計算 実験 第一原理計算
銀河物理学特論 I: 講義3-4:銀河の化学進化 Erb et al. 2006, ApJ, 644, 813
物理システム工学科3年次 物性工学概論 第2回講義 火曜1限0035教室
量子凝縮物性 課題研究 Q3 量子力学的多体効果により実現される新しい凝縮状態 非従来型超伝導、量子スピン液体、etc.
金属のイオン化傾向.
研究課題名 研究背景・目的 有機エレクトロニクス材料物質の基礎電子物性の理解 2. 理論 3. 計算方法、プログラムの現状
磁気回転不安定性によるブラックホール降着流の角運動量輸送機構の 解明
原子層の電子物性、量子輸送および光物性の理論
2次元系における超伝導と電荷密度波の共存 Ⅰ.Introduction Ⅱ.モデルと計算方法 Ⅲ.結果 Ⅳ.まとめと今後の課題 栗原研究室
遅いダイナミックスを誘起する 相互作用の微視的機構
相の安定性と相転移 ◎ 相図の特徴を熱力学的考察から説明 ◎ 以下の考察
北大MMCセミナー 第95回 附属社会創造数学センター主催 Date: 2019年2月13日(水) 16:30~18:00
課題研究Q2            2017年度用 「光物性」の研究紹介  京都大学大学院理学研究科  物理学第一教室 光物性研究室 1.
Bruciteの(001)面における真の接触面での摩擦特性
アセチリド錯体を構成要素とする 分子性磁性体の構築と その構造及び磁気特性の評価
Why Rotation ? Why 3He ? l ^ d Half-Quantum Vortex ( Alice vortex ) n
5.建築材料の力学的性質(2) 強度と破壊 理論強度 実強度 理想的な無欠陥状態での強度 材料は原子の集合体、原子を引き離せば壊れる
原子核の殻構造の相対論的記述 n n n σ ω n σ ω n 柴田研究室 石倉 徹也 1.Introduction n n
有限クォークおよび有限アイソスピン化学ポテンシャル
化学量論組成フルホイスラー合金Fe2TiSn焼結体のp型熱電特性
タンパク質-リガンド複合体への共溶媒効果の系統的解析
13族-遷移金属間化合物の熱電材料としての応用
全原子の位置 r(t) を求める(各原子がいつ,どこにあるか)
水素の室温大量貯蔵・輸送を実現する多孔性材料の分子ダイナミクスに基づく解明と先導的デザイン
格子ゲージ理論によるダークマターの研究 ダークマター(DM)とは ダークマターの正体を探れ!
超格子としてのグラフェンナノメッシュ 兵庫県立大学大学院物質理学研究科                   島 信幸.
直接通電による抵抗発熱を利用した 金属粉末の半溶融焼結
対象:せん断補強筋があるRCはり(約75万要素)
B-Ti-Ru準結晶の発見 ・ 従来の準結晶と異なり、非金属元素であるボロンを含む ・ 従来の準結晶と比較して、
MD計算による血小板細胞膜蛋白とリガンド結合の立体構造および結合の力学特性の解明(loss of function 型変異体に関して)
スズに埋め込まれたダイヤモンドによる研磨のFEMシミュレーション
鉄筋コンクリートはりの 曲げ耐力の算出 コンクリート工学研究室 岩城一郎.
第29回応用物理学科セミナー 日時: 11月10日(木) 16:10 – 17:10 場所:葛飾キャンパス研究棟8F第2セミナー室
相の安定性と相転移 ◎ 相図の特徴を熱力学的考察から説明 ◎ 以下の考察
媒質中でのカイラル摂動論を用いた カイラル凝縮の解析
第20回応用物理学科セミナー 日時: 2月25日(木) 16:10 – 17:40 場所:葛飾キャンパス研究棟8階第2セミナー室
北大MMCセミナー 第23回 Date:2014年3月6日(木) 16:30~18:00 ※通常と曜日が異なります
第39回応用物理学科セミナー 日時: 12月22日(金) 14:30 – 16:00 場所:葛飾キャンパス研究棟8F第2セミナー室
? リー・ヤンの零点 これまでの格子QCD計算の結果 今年度の計画 リー・ヤンの零点分布から探る有限密度QCDにおける相構造の研究
従来研究 本研究 結果 南極大型大気レーダーPANSYで観測された大気重力波の数値モデル再現実験による力学特性の解明
複合アニオンに起因した多軌道性と低次元性からうまれる 強相関電子物性の研究
北大MMCセミナー 第94回 附属社会創造数学センター主催 Date: 2019年1月25日(金) 16:30~18:00
Presentation transcript:

第一原理計算でひも解く合金が示す長周期積層欠陥構造の形成メカニズム EX18313 (東京大学情報基盤センター推薦課題) 圓谷 貴夫 (熊本大学大学院 先導機構) 第一原理計算でひも解く合金が示す長周期積層欠陥構造の形成メカニズム 研究計画の背景 力学特性と塑性変形機構 Shockleyの部分転位 fcc (111) hcp (0001) 実用材料における長周期積層構造 (Long Period Stacking Order:LPSO)の発見 LPSO構造を有する高強度マグネシウム合金 鉄鋼材料(Fe系形状記憶合金) Mg-遷移金属(TM)-希土類(RE)系 応力誘起γ-ε変態 Fe-12%Mn-0.5%C (wt%) 熊本大学で初めて開発 TM = Co, Ni, Cu, Zn RE = Y, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm Lysak and Nikolin (1963) => LPSO構造を形成 Kawamura et. al. (2001) 10H, 14H, 18R等が電子顕微鏡(TEM)で観測されている. 部分転位の反復運動の可逆性 => 疲労亀裂の進展を抑制 ε’相の積層パターンは不明 γ, ε相との相安定性も不明 目的:長距離積層欠陥秩序構造の形成メカニズムの解明  Mg-Y-Zn合金におけるY, Znの役割を電子論的な立場から解明する ・ Y, Zn, Y-Zn層間距離に最安定な点はあるのか? ・ 積層欠陥を導入した場合に自由エネルギーは安定化するか?        —> 自由エネルギーを第一原理計算により評価 安定化するメカニズムをフォノン分散から検討 目的:第一原理計算手法により、部分転位を有する構造の相安定性を調べ、ε’相の積層パターンおよび、γ, ε相との相安定性を解明. 構造安定性と電子状態 反強磁性スピン秩序の安定性(ノンコリニア磁性を含む) 計算手法 全電子FLAPW(Full-potential Linearized Augmented Plane Wave)法 に基づく第一原理計算 E. Wimmer, H. Krakauer, M. Weinert, A. Freeman, Phys. Rev. B (1981)   スピン依存の密度汎関数理論:一般化密度勾配近似(GGA-PBE) ΔG= ΔH - TΔS 計算手法 ウルトラソフト擬ポテンシャル法に基づく第一原理計算 相対論的効果であるスピン軌道相互作用を考慮した計算 有限温度での相安定性、フォノン分散、弾性特性を評価する 実空間での力定数:フローズンフォノン(直接)法