第8回 その他の測位方法 自律航法とナビ 携帯電話測位 gpsOneの事例
GPSの限界 今日,位置情報の計測とサービスの需要が高まる一方である。 測位の精度の向上と安定性の改善という2つのことを高く要求する. DGPSでは1m程度の精度が得られるため、人間の移動を測定するという意味では、精度十分であるが。 トンネル、地下道、高架下などや高層ビル街、街路樹の多い通りなど、測位のできない場所も多い。 利用環境に制約されない位置測定の必要な事例も多い そこでは、GPSとジャイロセンサを組み合わせた自律航法(Dead Reckoning)や携帯電話測位(Cellular-phone Positioning System:CPS)が役に立つ。
自律航法(Dead Reckoning)のシステム 方向センサ (コンパス/ジャイロ) GPS 地図 ナビ用コンピュータ 傾斜計 車速センサ ディスプレイ
自律航法システムの作動 コンパスは磁北方向を定める.しかし,コンパスの精度は周辺環境にある金属物体に影響される。 車両が斜面を動く時、コンパスは地球磁気場の垂直成分から影響を受けるため、正確に方向を示さない。その影響を取り除くために傾斜計を使う。 車速センサは、車輪にパルスセンサを取り付けて車の走行速度と走行距離を測る. 現在,方向センサにコンパスよりも精密なジャイロが使われる.
ジャイロの原理
自律航法の動作方法 ジャイロや速度センサだけでは、走行距離が長いと誤差が累積して、予定コースを外れてしまう。そこで、地図を持ち込み、車の表示が走行中の道路から離れないようにする。 さらに,自律航法では,走行中の道路を間違ってマッチングすると、迷子になる可能性がある。そこで、GPSを導入し、出発地や途中の経由地が正確にわかるようにする。
自律航法・地図・GPSを組み合わせたナビ まず手入力あるいはGPSによって出発地を設定する。 コンピュータはコンパスと傾斜計のデータを使って前進方向を推計する。 同時に車速パルスによって走行距離が計算される。 このように前進方向と走行距離から現在地が推計される。 コンパスと傾斜計に誤差があるため、距離が長ければコースから外れる。 そこで、推計した位置を地図と比較して、現在地を更新してよいかどうかを判断する。 たとえば、現在の位置は道路区間にあるか、当該道路は前進方向と一致するかなどを条件にするわけである。 条件が満たされる場合、現在地を更新し、次のナビゲーションをはじめる。 GPSの計測値が入ったら、それも同様に以上の条件で更新の可否を判別する。
単独GPSとジャイロ付きGPSの違い
自律航法ナビの応用 軌跡を一貫して追跡する必要のある業務システムでは、ジャイロセンサとGPSの組み合わせが不可欠である。 たとえば、空中写真測量や航空機レーザスキャナシステムでは、カメラやセンサの姿勢パラメータをリアルタイムで、高精度にトラッキングしなければならない。 また、都市部でリアルタイムに道路を調査するときに、衛星数が4つ以上確保できない場合もあるため、飛行機と同様にジャイロセンサの併用が有効である。 さらに、歩行者ナビゲーションのシステムでは、人が歩道を歩くことが多いことを考えると、GPSだけでは安定した測位ができないため、軽量、高精度のジャイロセンサが必須となる。
携帯電話測位の必要性 携帯電話基準局のサービスエリアは、都市部では数100mから数km、農村部では数kmから数10kmまであるため、それをもとにした携帯電話測位の精度が悪い。 そこで、1996年に米国連邦通信委員会(FCC)からE911という勧告が出された。それによると2001年までに緊急通報時の携帯電話の位置特定が95%の確率で150m以内となるように要求している。そこで、携帯電話の測位を開発する機運が急速に高まったわけである.
2007年以降、3G携帯は原則GPS機能搭載へ 110番/119番通報時の位置情報提供機能の強化が求められている。総務省の報告書案に沿った形で、携帯各社は2007年4月を目処に、第3世代携帯電話にGPSを使った位置情報提供機能を載せ込む方針。 携帯電話からの110番通報や119番通報が急増しているにもかかわらず、固定電話と違い携帯電話では通報者の位置を特定できないことが問題になっている。 総務省は、「2007年4月以降、携帯電話事業者が新規に提供する第3世代携帯電話端末については、原則としてGPS測位方式による位置情報通知機能に対応する」としている。携帯各社は、緊急通報時にGPSを使って位置を測定、警察や消防などへ通知する機能を端末に搭載する方針だ。
固定電話や一般の位置特性法の限界 携帯からの緊急通報が増えるに従い、問題となるのはレスポンスタイム──通報の受理から警察官などが現場に駆けつけるまでの平均時間だ。 ここ数年のレスポンスタイムの推移を見ると、携帯からの通報件数が増えるのに歩調を合わせて長くなってきている。2003年度のレスポンスタイムは、全国平均7分17秒(110番通報)。報告書では「過去最悪の数字であり、ここ5年間で約1分半長くなっている」と表現している。 レスポンスタイム悪化の理由の1つは、“位置特定の難しさ”だ。固定電話からの通報の場合、利用者が住所を知っているほか、電話帳情報のデータベースなどを参照し、システムによる位置特定が可能。ところが携帯電話の場合、位置を特定する仕組みは整備されていないため、駆けつけるべき現場を特定するのに時間がかかる。「携帯事業者のネットワーク上のシステムにより、位置を測定し指令台(緊急通報を受ける機関)に通知する仕組みを導入することが必要である」(報告書より)。
携帯電話測位の原理 信号強度:受信した信号の強度から距離を推計する。開けた場所では精度が高い。都市域ではマルチパスの問題があり、誤差が大きくなる。 ・到達角度:大きなアンテナで到達信号の角度を測る。都市域では基準局が多いため、アンテナの大きさが大きくなくてもよい。 ・位相計測:受信した信号の位相を測る。位相は非常に正確に測れる。ただし、GPSと同じように整数値バイアスの問題がある。 ・時間計測:受信機が信号の到達時間を正確に計測する。到達時間は距離の関数であり、信号強度法より正確に測れる。
携帯電話測位の方式 セルフ方式 リモート方式 セルフ測位の原理は非常に簡単である。 電源入れると、携帯端末は1つの基準局と通信し、必要なシステム情報、たとえば基準局の位置、自分の近似位置、同期情報などを入手する。 そして、3~2個の基準局から到達時間を取得する。 これらの到達時間は位置計測値に変換される。 リモート方式 リモート測位では、まず,中央測位装置は、ユーザから特定のモバイルの測位要求を受ける。 この要求は複数の携帯端末を計測したり、特定の携帯端末の位置を今後3日間1分ごとに測位したりすることができる。 中央測位装置は携帯端末と基準局との間の往復時間を測定する。 そして、携帯端末は2番目の基準局との往復時間を計る。 これで2つの基準局との三角関係で位置を特定する。もし整数値バイアスが決まらないなら3つ目の基準局を探す。往復時間は、中央測位システムに送られ、位置が計算される。 そして、計算結果は、再びユーザに送られる。
携帯電話測位のメリット/デメリット 携帯電話で測位できると、既存の携帯電話の通信基盤を使うため、基盤整備のコストが抑えられる。信号が弱いなら基準局を増やせばよい。 また,携帯システムは既存の電波を利用するため、新たに電波を割り当てる必要がない。 さらに重要なのはユーザ数が非常に多いため、双方向通信を生かした新しいアプリケーションの登場が期待できることだ。 しかし、携帯電話システムは測位のために設計されたわけでないため、解決しなければならない課題も多い。 たとえば、携帯電話システムは1つの基準局からしか信号を受けないように設計されている。これは良好な三角形を望むという測量の基本要求と矛盾する。
gpsOneの測位(a)衛星3つの場合 GPS衛星 携帯基準局 携帯移動局
gpsOneの測位(b)衛星2つの場合 GPS衛星 携帯基準局 携帯移動局
gpsOneの測位(c)衛星1つ 携帯基準局 携帯移動局
gpsOneの測位(d)衛星なし 携帯基準局 携帯移動局
GPS携帯の各社の対応状況 KDDIは既にGPS機能を備えた携帯電話を投入済みで、稼働台数は4月末で848万台(同社3G端末内の60%)に達している。ただし、現状110番などの緊急通報に連動した位置情報通知機能は備えておらず、2007年に向けて開発に取り組む。 2007年4月時点でGPS未搭載の3G端末については、基地局の所在地から位置情報を検知したり(セルベース)、複数の基地局を使って精度を上げるなど、代替の測位方式による位置情報通知機能を利用可能にしていく。 GPSを使った緊急時の位置通報機能を備えた3G端末の普及率について、報告書案では、2009年4月時点で50%、2011年4月時点で90%という目標を掲げている。
NTT ドコモのGPS対応携帯電話
ドコモの位置情報サービス
問題 日本の位置情報サービスと、欧米のものを比較して、共通点、相違点を挙げてみよう。 (位置情報サービス、LBS、Whereなどで検索) 次回の授業では、この話題を中心にプレゼンをしてもらい、議論を行います。