Suzaku/XISによるSN1006の観測 060621 CRcolloQ 山口 弘悦.

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Suzaku/XISによるSN1006の観測 060621 CRcolloQ 山口 弘悦

Contents 世界各国の記録と光度曲線 Suzakuによる観測(の、中間報告)

日本の記録:明月記 藤原定家 (1162-1241) が過去の記録をまとめる。 実際に観測し、 記録したのは 安倍吉昌 (?-1019) 晴明の次男・陰陽頭

一條院 寛弘三年 四月二日 葵酉 夜以降 騎官中 有大客星 如螢惑 光明動耀 連夜正見南方 或云 騎陣将軍星本体 増変光 騎陣将軍 (Kijin-Shogun) Lupusκ

1006年5月1日

中国の記録 宋会要輯稿 宋史天文志 五月一日(1006年5月30日)司天監言 先四月二日(5月1日)夜初更,見大星, 色黄,出庫楼東、騎官西,漸漸光明, 測在氐三度。 宋史天文志 景徳三年四月戊寅(5月6日), 周伯星見,出氐南騎官西一度, 状如半月,有芒角,煌煌然可以鉴物, 历庫楼東,八月,随天轮入浊, 十一月,復見在氐。

杭州 ‥ 南宋の都・臨安 蘇州に並ぶ中国屈指の景勝地 北緯~30°(屋久島と同じくらい) → 日本より長く観測できた。 岳王廟(岳飛の墓)   蘇州に並ぶ中国屈指の景勝地 北緯~30°(屋久島と同じくらい)  → 日本より長く観測できた。 岳王廟(岳飛の墓) 秦檜とその妻(晒し者)

各国の記録 明月記(Japan): 寛弘三年四月二日(= 5/1)…如螢惑(=火星) Ibn al-Jawzi (Baghdad) :  A large star similar to Venus appeared to the left of qibla. at the beginning of the month of Sha’ban (= 5/3). Ali ibn Ridwan(Egypt) : 2and a half to 3 times as large as Venus. The intensity of its light was a little more than a quarter of that moonlight. (5/5?) 宋史天文志(China) : 景徳三年四月戊寅(=5/6)…如半月 -2等級 -4等級 戊寅 ぼいん つちのえとら 大きさ: 75’’, -8等級 -10等級 参考: 満月= -12.6等級、金星= 最大-4.6等級

Ia型絶対等級(極大) = -20 距離 = 7100光年 = 2.2kpc → 視等級 ~ -9

Suzakuの観測 43.5ksec 62.4ksec 2005/9 と 2006/2 に 4pointing (+ BGD 2pt)観測 XIS-BI 0.3 - 5.5 keV image

観測の目的 XIS-BIが最適か? 加速現場の物理状態は? Non-thermal成分との切り分けが重要 SN1006のshellからシンクロトロンX線の発見 Koyama et al. (1995) → ~100TeV電子の存在を示唆 SNRでは粒子加速が起こっている 加速現場の物理状態は? Temperature ‥ 0.1 - 1.5 keV Density ‥ 0.1 - 10 cm-3 → 要するにイマイチよくわかっていない。 10’ ASCA image of SN1006 Bamba et al. 2003 Non-thermal成分との切り分けが重要 (特にO輝線を連続成分と分離すること) XIS-BIが最適か?

Suzakuの特長 BI CCDはそんなにエライのか? 低エネルギー側の検出効率が 高いと言いますが‥、 実はXMMに負けている。  低エネルギー側の検出効率が  高いと言いますが‥、 黒:XIS-BI 赤:EPIC-MOS 青:EPIC-pn 実はXMMに負けている。 しかもcontaminationで検出効率は 劣化する一方。。orz… 有効面積はXMMの方が 圧倒的に大きい。 0.57keV 0.91keV 6.4keV 低エネルギーX線に対する分解能・レスポンスに優れる     → continuumとの切り分けが比較的容易

北東部全体のスペクトル H-O He-O He-O band Non-thermal emission 3 - 5 keV band He-like酸素についてはFWHMの範囲でイメージを作りました。 3 - 5 keV band Black : XIS-BI Red : average of 3 XIS-FIs OVII, OVIII 輝線がはっきりと分離できましたよ。

Narrow band images 3 - 5 keV band He-O line band 熱的成分は全体に、非熱的成分は北東、南西のみに分布。 3 - 5 keV band He-O line band Distributions of thermal plasma (line emission) and non-thermal electron (synchrotron emission) are different.

Narrow band images 北東部だけでも分布がかなり異なる。

Narrow band images 南西部:北東部ほど顕著な差はない

Chandraのimage 北東部に少なくとも2つの filament状構造 A few 10 arcsec の 極めて狭い領域で粒子加速 が起こっている。 (Bamba et al.2003) 北側がより出っ張っている。 (Rothenflug et al. 2004) 緑枠はXISのFOV ACIS 0.5-2.0keV image

Color: XIS, Contour: ACIS 3-5 keV OVII band Non-thermalが強い部分は 北側のfilamentと一致。 東側のfilamentの内側で thermal(輝線)が強い。

そういうわけで、左図の 4ヶ所からスペクトルを抽出。  North rim と その内側  East rim と その内側  BGD ‥ BGD観測        CCD上同じ位置 North rim North inner East rim East inner

Surface brightness (2-10keV) East rim と North rim まずはFI3台を足した スペクトルの2-10keVを power-lawでfitting 黒:East rim 赤:North rim χ2 (dof) = 0.99 (519) Γ Surface brightness (2-10keV) East rim 2.95 (2.89-3.02) 2.4E-13 [erg cm-2 s-1 arcmin-2] North rim 2.77 (2.73-2.81) 3.0E-13 [erg cm-2 s-1 arcmin-2] North rim の方が明るい → imageとconsistent さらに North rim の方がhard → 加速効率が良い?

次にthin-thermalを決めたい → BI-CCDを使う。 2-10keVで決めたpower-lawは固定 0.4keVまで延ばし、吸収とthin-thermal model を加える BIでも輝線がほとんど見えないので難しそう。 → とりあえず後回し。。

Surface brightness (2-10keV) 輝線の強そうなrimの内側から 先に調べますが? 黒:E inner 赤:N inner χ2 (dof) = 1.04 (597) Γ Surface brightness (2-10keV) East inner 3.20 (3.13-3.26) 1.5E-13 [erg cm-2 s-1 arcmin-2] North inner 2.97 (2.93-3.01) 2.0E-13 [erg cm-2 s-1 arcmin-2] rimより比較的softで暗い。 やはり北側の方がhard

Surface brightness (0.4-2keV) wabs * (VNEI + pow) χ2 (dof)   = 1.97 (974) NH = 1.87E21 (H cm-2) abundances O = 1.3 Ne = 0.2 Mg = 2.1 2領域で一定と仮定。 kT(keV) net(s cm-3) Surface brightness (0.4-2keV) E inner 0.17 1.7E11 1.5E-12 [erg cm-2 s-1 arcmin-2] N inner 0.36 1.1E9 4.8E-13 [erg cm-2 s-1 arcmin-2] East: 低温・高密、North: 高温・低密の傾向?

ところでfitting合ってませんが? χ2 (dof) = 1.97 (974) レスポンス(分解能)の精度に問題あり もうちょっとまってください。

Surface brightness (0.4-2keV) 最後にさっき後回しにした rimについて、 吸収、abundanceを inner regionで求めた値に 固定してthin-thermal成分を 求める。 χ2 (dof)   = 1.36 (911) kT(keV) net(s cm-3) Surface brightness (0.4-2keV) E rim 0.25 (0.21-0.31) 2.7E9 4.7E-13 [erg cm-2 s-1 arcmin-2] N rim 0.52 (0.45-0.66 4.3E8 4.1E-13 [erg cm-2 s-1 arcmin-2] thermal成分の傾向はinner regionと同じ 極めてnon-thermal dominant

Surface brightness (0.4-2keV) discussion thermal成分 kT(keV) net(s cm-3) Surface brightness (0.4-2keV) E rim 0.25 2.7E9 4.7E-13 [erg cm-2 s-1 arcmin-2] N rim 0.52 4.3E8 4.1E-13 [erg cm-2 s-1 arcmin-2] E inner 0.17 1.7E11 1.5E-12 [erg cm-2 s-1 arcmin-2] N inner 0.36 1.1E9 4.8E-13 [erg cm-2 s-1 arcmin-2] rimはまさに加熱が起こっているので innerに比べて電離度が低い 東側は北側に比べて密度が高く、 電離が進みやすい 電子温度→電離温度(SNRの進化)

discussion non-thermal成分 kT(keV) Γ East rim 0.25 2.95 (2.89-3.02) North rim 0.52 2.77 (2.73-2.81) East inner 0.17 3.20 (3.13-3.26) North inner 0.36 2.97 (2.93-3.01) 外側の方がhard(加速現場) East 北側(高温)の方がhard 加速源(衝撃波)のエネルギー の差を反映? 北側が半径大 = 衝撃波速度大 North

まとめ Suzaku/XISにより、Chandraで見えた2枚のfilamentの性質を明確に区別できた。 北側がより高温・低密、non-thermalはhard 外側ほど高温でhard 結局はレスポンスの精度向上が必須課題

Thermal X-ray from SNRs We can get the information of temperature and density from thermal X-ray spectrum of SNR ! Shock front of SNR heats the matter up to a temperature of a few keV (~107 K), and emits X-rays (bremsstrahlung and line emissions). Electron temperature ‥ the shape of the bremsstrahlung continuum Density ‥ the flux of the continuum and the line emissions Brems: I(ν) ∝ (hν)-0.4 exp(-hν/kTe)・nenpV Line: Iz∝ nenzV この研究会は比較的超新星(「残骸」ではない)の理論を専門にされている方が多かったので、 高温希薄プラズマ、電離非平衡状態についての必要最低限の説明を加えました。 ne = electron density, np = proton density nz = ion density, V = volume of emission region

Thermal X-ray from SNRs Ionization He-like H-like Fully ionized 1 10 100 103 104 Electron temperature (eV) Oxygen ionization fraction vs. electron temp. Neutral He-like ion H-like ion Higher temperature Higher density Higher ionized state Non-equilibrium ionization (NEI) He-like H-like Fully ionized 106 107 108 109 1010 1011 1012 net (cm-3 s) Oxygen ionization fraction vs. net (for kTe=1.5keV) ほとんどの元素はHeおよびH状まで電離が進んでいる。 高温、高密であるほどイオン化度は高くなる。 At low density, Te ≠ Tz Ionization equilibrium requires ~103 years ! Neutral