偏光X線の発生過程と その検出法 2004年7月28日 コロキウム 小野健一
はじめに 目次 偏光の基礎 偏光X線の発生 偏光X線の検出 X線のもたらす情報 ・到来方向 ・エネルギー ⇒ X線画像 ・時間 ・偏光 ⇒ X線画像 ⇒ エネルギースペクトル ⇒ 光度曲線 ⇒ ・・・いまだ十分な観測がなされていない 目次 偏光の基礎 偏光X線の発生 偏光X線の検出
偏光の基礎 いろいろな偏光状態 Ey Ex Ex max Ey max Ey max Ex max Ex Ey max Maxwell方程式の平面波解 E = E0 exp[i(kz - ωt)] 電場の振動する方向分布に偏りがあるとき ⇒ 「偏光」している B E Ey Ex 2つの方向成分Ex、Eyの 振幅比、位相差により さまざまな偏光状態が存在 Ex = E1 cos(ωt – φ1) Ey = E2 cos(ωt – φ2) 位相差0 位相差π/2、振幅比1 一般の場合 ⇒ 直線偏光 ⇒ 円偏光 ⇒ 楕円偏光 単色平面波は必ず偏光している
偏光の基礎 自然光 ①放射源はランダムに運動 ②Ex、Eyの位相差はランダムに時間変動 ③偏光方向もランダムに変動 ⇒自然光、または非偏光と呼ぶ 実際に存在する光は 「部分的に偏光」している。 部分的に偏光した光 =ランダム偏光成分(位相差変動が完全にランダム) +偏光成分(位相差が一定の楕円偏光) Ex = E1(t) cos(ωt – φ1(t)) Ey = E2(t) cos(ωt – φ2(t)) ⇒単色ではない
偏光の基礎 偏光度 偏光度Π = Ip / I Ip I :楕円偏光している光の強度 :全強度 直線偏光の場合、 Π= Imax:最大強度 Imin:最小強度 楕円偏光の場合も使えるが、 偏光度は過小評価される Imax – Imin Imax + Imin Imax Imin = (I – Ip) / 2 + Ip = (I + Ip) / 2 = (I – Ip) / 2
. . 偏光の発生 基本原理 n β E 加速する荷電粒子からの電磁波放射 ⇒トムソン散乱、シンクロトロン放射、・・・ Eの方向 : n× (n × β) 放射方向と加速度 を含む 平面内に存在 . 放射方向 n . β E 電場 粒子の加速度に垂直な 方向で放射強度大
トムソン散乱 入射波が直線偏光 ⇒散乱波も直線偏光 散乱波 n E 入射波 E 電子
トムソン散乱 n x Ex z Ey y θ 1 : cos2θ (強度比) 90° 入射波が非偏光 ⇒散乱波は方向によって 部分的に偏光している Ex 散乱波 Ey x θ 入射波 1 : cos2θ (強度比) z 1 – cos2θ 1 + cos2θ 偏光度Π= θ= 90°でΠ=1 θ= 0°でΠ=0 90° y
トムソン散乱 Sgr B2分子雲からのX線 Sgr B2分子雲 X線源 鉄輝線⇒蛍光X線 連続成分⇒外部から照らされたX線をトムソン散乱 GC 銀河中心方向 3’~7pc X線 Chandra simulation (Murakami et al. 2002)
シンクロトロン放射 B B . β 磁場に垂直な面内で 直線偏光
シンクロトロン放射 B E|| E⊥ P⊥(ω) – P||(ω) P⊥(ω) + P||(ω) 偏光度Π(ω) = 一粒子の場合 周波数積分 ⇒ 75% N(γ) ∝ γ-pの分布の場合 周波数積分 ⇒ p + 1 p + 7/3 p=2のときΠ=70%
シンクロトロン放射 パルサー風星雲からのシンクロトロン放射 強磁場で加速された粒子がパルサーの磁場によりシンクロトロン放射 1970年代、 OSO-8衛星によりかに星雲からのX線偏光を検出(有為度3σ) ⇒シンクロトロン放射であることの証拠 (Weisskopf et al. 1978) かに星雲 (Chandra)
偏光の検出 ブラッグ反射 コンプトン散乱 光電吸収 数keV 10keV~ 偏光の観測はさまざまな現象の解明につながる。 しかし、その検出は難しく、数少ない観測例を除いて いまだ未開拓の状況と言える 検出効率、検出感度、エネルギー帯域が重要 ブラッグ反射 コンプトン散乱 光電吸収 数keV 10keV~
偏光の検出 OSO-8衛星の場合 θ ブラッグ反射の利用 E|| E⊥ E|| 結晶の反射率はE||とE⊥で異なる グラファイト 結晶 OSO-8衛星(1976-1978) 結晶の反射率はE||とE⊥で異なる θ=45°のとき、E||の反射率1、E⊥の反射率0
偏光の検出 OSO-8衛星の場合 OSO-8衛星搭載の偏光計 グラファイト結晶パネル 比例計数管 パネルを回転させて 強度変化を測定 かに星雲からのX線偏光を検出(有為度3σ) X線
偏光の検出 μ-PICなどガス検出器の場合 コンプトン散乱の利用 微分散乱断面積 z 光電子 放出方向 dσ dΩ 散乱X線 θ ∝ (1 – sin2θcos2φ) y y z x x x φ 偏光方向 入射X線 z方向から見ると y方向から見ると
偏光の検出 μ-PICなどガス検出器の場合 光電効果の利用 微分散乱断面積 z 光電子 放出方向 dσ dΩ sin2θcos2φ (1-βcosθ)4 θ ∝ y y z x x x φ 偏光方向 入射X線 z方向から見ると y方向から見ると
偏光の検出 μ-PICの場合 Ar / 20keV 電子雲 数100μ~1mm程度 (Ueno et al. 2004)
偏光の検出 μ-PICの場合 ピクセル読み出しにすれば、イメージングが可能 シミュレーションで偏光検出能の向上を検証 600μm 600μm
偏光の検出 μ-PICの場合 現在は ・基礎特性に関する実験 ・多チャンネル読み出し回路の構築 10月にはPhoton Factory(KEK)にて偏光度100%に近いX線を用いた実験を行なう予定
まとめ 偏光の発生 ⇒シンクロトロン放射、トムソン散乱など宇宙で起こるさまざまな過程で偏光X線が発生 偏光X線の検出 ⇒ブラッグ反射、コンプトン散乱、光電効果などを利用することで検出可 光電効果での光電子放出方向の偏りをピクセル読み出し型μ-PICで検出する予定