X線CCD新イベント抽出法の 「すざく」データへの適用 河手香織・蔵本哲也 (松本班)
目次 原理 検出器 イベント抽出法 天体データ Fitting法の適用 X線判定条件の決定 解析結果 課題と展望
原 理
X線CCD X線 電極 空乏層 (Si) 電子雲 光電吸収
前面照射型(FI)と裏面照射型(BI)
XIS (X-ray Imaging Spectrometer) すざく衛星に搭載されているX線CCDカメラ (XIS-0,2,3‥FI, XIS-1‥BI) 視野 17.8′×17.8′ エネルギー帯域 0.2~12keV 有効画数 1024×1024 1画素のサイズ 24μm×24μm
較正用線源 Fe XISには、カメラ毎に較正用線源が取り付けられている。 Mn - Kα : 5.9 keV 55
イベント抽出について X線 X線イベント バックグラウンド (宇宙線など) 非X線イベント こうなることを出来るだけ少なくしたい。 実際に入射したもの 判定結果 X線 X線イベント バックグラウンド (宇宙線など) 非X線イベント こうなることを出来るだけ少なくしたい。
Grade法 その他 スプリット閾値を超えたピクセルの分布パターンによってX線か否かを判定 X線イベント 中心ピクセル PHがスプリット閾値以上のピクセル(波高計算に用いる。) PHがスプリット閾値以上のピクセル(波高計算に用いない。)
Fitting法 ( ) 直接的に電子雲の広がりを測定 ・対称Gaussian : ・電子雲の広がり : 分散 ・エネルギー : 合計波高値 2 2 ( ) (x – b) + (y – c) ・対称Gaussian : gauss (x,y) = a×exp 2 2d ・電子雲の広がり : 分散 ・エネルギー : 合計波高値 PH 2次元対称Gaussian イメージ図 5×5 pixel
× Fitting法で期待されること ・ 5×5ピクセルで評価できる。 ・ Grade法ではスプリット閾値を経験的に決める しかないが、Fitting法では直接的に電子雲を 評価できる。 ・ エネルギー依存性を考慮できる。 ・ Grade法で除去されやすい 高エネルギーの広がったX 線を拾う。 Fitting ○ CCDのピクセルを小さくしたほうが解像度がいい⇒より多くのピクセルに広がる。 空乏層が3倍くらいになる⇒広がる。 CCD⇒電子雲の広がりが大きい × Grade
解析の目的 ・ 地上実験では検出効率が数パーセント上がることが確かめられている。 ・ 天体データにFitting法を適用してみる。 修士論文 村上弘志 (1999) 河野誠 (2001) 山口弘悦 (2005) ・ 天体データにFitting法を適用してみる。
今回利用した天体データ(1) E0102-72 座標 RA : 15.9884 deg DEC : - 72.0403 deg 観測時間 4.1598×10 sec 確定されている輝線 OⅤⅡ Kα線 (0.57keV) OⅤⅢ Kα線 (0.65keV) 3
今回利用した天体データ(2) GC SOUTH 座標 RA : 266.5016 deg DEC : - 29.1694 deg 観測時間 1.2958×10 sec 確定されている輝線 SⅩⅤ Kα線 (2.45keV) ArⅩⅤⅡ Kα線 (3.13keV) 5
Fitting法の適用
Fitting法カウント数-Grade法カウント数 解析の手順 1.天体データにフィッティング法を適用する。 2.較正用線源などのX線による 電子雲の広がり求め、X線判定条件を決定する。 3.X線イベントを抽出し、スペクトルを作る。 4.イベント増加率とエネルギー分解能を計算し、 Grade法と比較する。 Fitting法カウント数-Grade法カウント数 イベント増加率= Grade法カウント数
Fitting法におけるX線判定条件 Fitting法では、Gaussianの分散の大きさで X線か否かを判定。 エネルギーによって、広がりはかわってくるはず。 → エネルギー依存性も考慮。 FI : 高エネルギーで広がりが大きい。 BI : 低エネルギーで広がりが大きい。
FIのX線判定条件 GC SOUTH (FI) 3.13keV 5.9keV σ [pixel] 0.1 1 8 E [keV]
FIのX線判定条件 Count σ [pixel]
FIのX線判定条件 GC SOUTH (FI) σ [pixel] X線イベント 0.1 1 8 12 E [keV]
BIのX線判定条件 GC SOUTH (BI) σ [pixel] X線イベント 0.5 0.1 1 8 12 E [keV]
GC SOUTHのFI型のスペクトル ArⅩⅤⅡKα線 (3.13keV) 6.9% SⅩⅤKα線 (2.45keV) 11.4% 2.0% 3.8% 4.7% 7.6% ArⅩⅤⅡKα線 (3.13keV) 6.9% SⅩⅤKα線 (2.45keV) Cal Source Fe 55 (5.9keV,6.5keV)
E0102のFI型のスペクトル 42.7% 13.4% 2.6% OⅤⅡKα線 Cal Source Fe (0.57keV) 42.7% 13.4% 2.6% OⅤⅡKα線 Cal Source Fe 55 (0.57keV) (5.9keV,6.5keV) OⅤⅢKα線 (0.65keV)
FI型のエネルギー分解能 Fitting : 59.1eV Grade : 46.0eV (@ 1keV) エネルギー分解能 [%] Fitting : 59.1eV Grade : 46.0eV (@ 1keV) Fitting : 160.8eV Grade : 161.4eV (@ 6.5keV)
GC SOUTHのBI型のスペクトル 18.4% 5.1% 5.1% 5.0% 6.2% 7.4% 0.7 1.6 2.75
E0102のBI型のスペクトル 2.9% 2.0% 2.1%
BI型のエネルギー分解能 Fitting : 68.1eV Grade : 66.1eV (@1keV) エネルギー分解能 [%] Fitting : 149.3eV Grade : 130.5eV (@ 6.5keV)
イベント増加率のエネルギー依存 高エネルギー側で 増加率が高い
まとめ(Grade法との比較) ・ イベント検出数はFI型、BI型ともにあがる。 1~8keVでは検出数が数%増加している。 高エネルギーほどイベント増加率が大きい。 ・ Grade法とあまりかわらないエネルギー分解能 が得られる。 FI型の低エネルギー側で分解能が落ちて いる。
課題と展望
Fitting法の課題 E0102のFI型データ
Fitting法の課題(原因) ・ 一方向に広がっているイベントを捨て切れない。 ・ 宇宙線等によるバックグラウンド ・ 複数のX線が入射
Fitting法の課題(対策) ・ 非対称なGaussianでフィットする。
御清聴 ありがとうございました。
以下、おまけ。
X線判定条件の決め方(補足) CCDのcalibration Source部分に対して Fitting法を適用
X線判定条件の決め方(補足)
X線判定条件の決め方(補足) 2.45keV 3.13keV 5.9keV 6.5keV
X線判定条件の決め方(補足) 5.9keV 6.5keV 0.65keV 0.57keV
X線判定条件の決め方(補足)
X線判定条件の決め方(補足) σ = 0.0239×E + 0.259
X線判定条件の決め方(補足)
X線判定条件の決め方(補足) σ = - 0.0182×E + 0.469
X線判定条件の決め方(補足)
BI型の分解能 GC SOUTH BI型 6.5keV 5.9keV 3.13keV 2.45keV Grade法 6.21% 2.72% 2.28% 3.86% Fitting法 5.02% 3.08% 3.85% E0102 BI型 6.5keV 5.9keV 0.65keV 0.57keV Grade法 2.29% 2.33% 7.74% 10.1% Fitting法 2.34% 2.31% 8.59% 9.60%
FI型の分解能 GC SOUTH FI型 6.5keV 5.9keV 3.13keV 2.45keV Grade法 6.62% 2.76% 2.84% 3.86% Fitting法 5.70% 2.96% 3.61% 3.85% E0102 FI型 6.5keV 5.9keV 0.65keV 0.57keV Grade法 2.31% 2.38% 6.04% 4.83% Fitting法 2.29% 2.34% 7.20% 20.5%
Fitting法の課題(3) イベント増加率 2%前後
一方向のイベントを抜いたFI型スペクトル E0102のFI型データ
GC SOUTHのBI型のスペクトル 分散を一定にした場合(b<=0.39)
GC SOUTHのFI型のスペクトル 分散を一定にした場合(b<=0.41)