超高光度赤外線銀河(ULIRGs)中に埋もれたAGNの探査 今西 昌俊(国立天文台 光赤外研究部) アブストラクト ULIRGsの中に埋もれているであろうAGNを探査する手法を提示し、研究の現状、将来計画をまとめる。 宇宙赤外線背景放射(=宇宙全体のダストに隠された活動の 総和を反映)は、可視光背景放射(=隠されていない活動) よりも大きく、遠方のULIRGsに支配されている。 宇宙でもっとも明るい天体クエーサーに 匹敵するエネルギー源(星生成、AGN)が、 ダストの向こう側に存在。 ULIRGsのエネルギー源は、 宇宙全体の、ダストに隠された側 のAGNと星生成の結び付きを理解 する上で、非常に重要 超高光度赤外線銀河 (ULIRGs)とは、 太陽の 10^12 倍の光度を赤外線で 放射している銀河。右のようなSEDを示す。 1. はじめに IR optical SED of a ULIRG Kpc程度に広がった、母銀河中の、吸収のさほど大きくない 星生成ではなくて、大きさにして300pc程度より小さな、中心核 がエネルギーを支配している。 この中心核が、AGNなのか、非常にコンパクトな星生成 なのかを区別することが、今、一番重要なテーマである。 2. 近傍ULIRGsの現在の理解 AGNの周囲のダスト分布がドーナツ状で、電離光子が充分に 洩れ出ていれば、AGNの検出は容易である。しかし、ULIRGsの 中心核は、ダスト・ガスに富むため、存在しているであろうAGNは、 ほぼ全方向ダストに埋もれていると考えられる。 このような埋もれたAGNは、見つけるのが困難である(=elusive)。 Imanishi & Dudley 2000 ApJ 545 701 3. (見つかりにくい)埋もれたAGNを研究する方法 3-1: 熱的赤外線(波長3-20ミクロン)のスペクトル 星生成は、強いPAH放射を示すが、埋もれた PAH放射を示さず、ダスト吸収フィーチャーを示す。 PAHとは、ベンゼン状 の炭素分子 近傍ULIRGsは、すばる。 遠方ULIRGsはSPICA。 論文① 3-2: エネルギー源とダストの配置 Av(3um) > Av(10um) > Av(20um) 星生成では、星とダストは、 空間的に混在 埋もれたAGNは、エネルギー 源が、ダストに比べて中心集中 して存在 ダストは強い温度勾配を持ち、 外側ほど低温。 黒体放射を考えれば、波長3ミクロンの 連続線は、内側の1000Kダストが支配。 波長10ミクロン(20ミクロン)の連続線は、 外側の300K(150K)ダストが支配。 3-3: AGNからの強いX線放射を探す 各波長帯の、ダスト吸収フィーチャー の深さから、Avを導出 AGNは、星生成に比べて2-10 keVの X線が強い。ただし、多くのULIRGsにおいて、 埋もれたAGNからのX線放射は、 Compton thickになると考えられ、検出は困難 成功例もあり(UGC5101) 吸収を受けたAGN からのX線放射 Av(3um) =120 mag Av(10um) =50mag Av(20um) <20mag NeXTが必要。 遠方ULIRGsは厳しい Imanishi et al. 2003 ApJ 596 L167 すばる・Spitzerの採択課題で、 データ取得中 論文② 3-4: AGNの周囲に発達するXDRのサインを探す 遠方ULIRGsは、SPICA XDRはPDRと異なる ライン比(FIR~ミリ波) HCN/HCO+ HCN/CO starburst pure AGN Kohno+ 02 星生成では、PDR(光解離領域)が 発達するが、AGNはX線が強く、 XDR(X線解離領域)が発達する。 近傍ULIRGsは、NMA/RAINBOW 遠方ULIRGsはALMA。 Imanishi et al. 2004 AJ 128 2037 論文③