準実大模型を用いた 都市の表面温度と気温分布 に関する野外実験 準実大模型を用いた都市の表面温度と気温分布に関する野外実験について岩畑が発表します。 1033129 岩畑 士貴
目的 ヒートアイランド現象の解明 都市内の熱環境の把握 不均一な表面温度分布となる都市の建物間(キャノピー層: 建物以下の層)の気温分布について観測事例が少ない ヒートアイランド現象を解明するうえで、都市内の熱環境の把握が不可欠です。 しかし、今までに不均一な表面温度分布となる都市の建物間の気温分布については観測事例も少なく、その実態は十分に知られていません。そこで、日本工業大学拡張地にある観測サイトを使い、キャノピー層の気温分布と建物表面温度を測定し両者の関係を検討しました。 キャノピー層の気温分布と建物表面温度の関係を検討
実験概要 測定場所:日本工業大学拡張地 N 高さ1.5m(1H) 1.5m 44° 50m(16列) 日射計 雨量計 100m(32列) 長辺100m×短辺50mのコンクリートスラブ上に一辺が1.5m角のコンクリート立方体を1.5m間隔32×16で計512個配列されている。 50m(16列) 1.5m 高さ1.5m(1H) サイト中央付近 キャノピー層 観測サイトは、南東・北西に延びる100mかける50mのコンクリートスラブ上に、一辺が1.5m角のコンクリート立方体を1.5m間隔に配列されています。ここでいうキャノピー層は、立方体高さ以下の層となります。観測サイトの南脇で、観測サイト内の日射、雨量を測定し、中央付近で気温分布などの測定をしました。 日射計 雨量計 100m(32列)
実験概要(サイト中央付近) 高さ2Hの風向風速の測定 (サンプリング間隔1/50秒) Center Tower 熱電対 熱流板- FLOOR1 熱流板-E FLOOR2 FLOOR3 ROOF1 熱流板-W 熱流板-N 熱流板-S 北 44 Center Tower(超音波風速温度計) 高さ2Hの風向風速はサイト中央にあるセンタータワーで超音波風速計を使い測定し、
実験概要(サイト中央付近) 表面温度測定 (サンプリング間隔1秒) 壁面温度測定 床面温度測定 屋上面温度測定 熱電対 熱流板- FLOOR1 熱流板-E FLOOR2 FLOOR3 ROOF1 熱流板-W 熱流板-N 熱流板-S 北 44 Center Tower(超音波風速温度計) 建物表面温度は壁面4面、Floor面3面、Roof面1面、計8面、
実験概要(サイト中央付近) 気温分布測定 気温分布測定はサイト中央付近の一区画を使い測定を行いました。 熱電対 熱流板- FLOOR1 熱流板-E FLOOR2 FLOOR3 ROOF1 熱流板-W 熱流板-N 熱流板-S 北 44 Center Tower(超音波風速温度計) 気温分布測定はサイト中央付近の一区画を使い測定を行いました。
熱電対による 気温分布測定 熱電対278点 熱電対立面配置図 (mm) 気温分布測定では、温度センサーの熱電対をZ1層からZ5層に36本、Z6・Z7層に48本、Z8層に2本、計278本を使い測定を行った。 (mm) 熱電対立面配置図
熱電対平面配置図 北 (mm) 熱電対 南東壁面 北西壁面 北東壁面 熱電対(φ0.02mm) ※1~3日おきにメンテナンス、データ回収をする 壁近傍の気温 熱電対は早い応答性をもち放射の影響を受けない、直径0.02mmを使っているため、ちょっとした振動や雨、蜘蛛の巣などですぐ切れてしまいます。また、気温分布測定では熱電対の全点欠測なしがふさわしいので、1~3日おきに修理とデータ回収を行いました。データは5秒間隔で収録をしました。 5秒間隔でデータ収録 南西壁面 Floor Roof 熱電対平面配置図
測定期間における気象条件の解析 快晴日 5/3・4・5 9/5・20・24 12/3・4 期間 2006年4月~2006年12月 5月 9月 期間 2006年4月~2006年12月 5月 9月 野外実験では天候の安定している日のデータが使いたいので、測定期間内の雨量、日射量から快晴日を取り上げていくと、5/3・4・5、9/5・20・24、12/3・4の日が上げられます。 これらの日のデータを10分平均し考察を行いました。 12月 快晴日 5/3・4・5 9/5・20・24 12/3・4
風速3m/s以上のとき、データ数が少なかったため参考値とする キャノピー層の鉛直気温分布 風速3m/s以上のとき、データ数が少なかったため参考値とする Z1層 Z2層 Z3層 Z4層 Z5層 0m/s≦U<1m/s Ta(Z):各層の平均気温 Z5層は表面温度の影響を受けにくい Ta(1.35H):1.35Hの平均気温 1m/s≦U<2m/s 風速による大きな変化はない 2m/s≦U<3m/s Ts(all):全表面温度の平均 3m/s≦U Z2~Z4層は表面温度の影響が同一になる この式を使い、1.35Hの気温が0、表面温度が1になるように温度比を求めました。 各層の平均気温は一区画の層の平均気温とり、 全表面温度の平均は全8面の表面温度平気をとり、 1.35Hの平均気温は、高さ1.35Hの平均気温をとりました。温度比を風速別に比較していくとZ1層は表面温度の影響が強く受け、 Z2からZ4層は表面温度の影響が同一になり、 Z5層では表面温度の影響が小さくなりました。また、 風速による大きな変化はみられなかった。 Z1層は表面温度の影響を強く受ける
各壁面温度の日変化(9月24日) 北東壁面 南西壁面 南東壁面 北西壁面 高温 南西は層全体が同時に表面温度の上昇がおきる 高さ(m) 北東壁面 南西壁面 南東壁面 北西壁面 1.5 高温 北東・南東・北西は上層から壁面温度の上昇がおきる 1.5 南西は層全体が同時に表面温度の上昇がおきる 1.5 各壁面の表面温度の日変化を見ていくと、 等値線が斜めに引かれ、上層が高温になっていることから北東、南東、北西面は上層から表面温度の上昇がおきているといえます。南西面は、 等値腺が垂直方向に引かれていることから表面温度の上昇が壁面全体からおきているといえます。 1.5 低温 時 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23
壁面温度が壁近傍の気温分布に及ぼす影響(SE面、NW面) Z1層 Z2層 Z3層 Z4層 Z5層 1H 0.2H 高さ別 風向別 に考察 0.2H SE面 NW面 壁近傍の気温差 0.2H 向かい合う壁面で壁面温度差と壁近傍の気温差の相関を高さ別、風向別にグラフを作成します。 相関 0.2H 0.2H 表面温度差
壁面温度が壁近傍の気温分布に及ぼす影響(SE面、NW面) このグラフから壁面温度差と、壁近傍の気温差の決定係数を求めます SE-NW壁面温度差(℃)
風速1m/s未満の上層以外で相関が強くなる 風速1m/s未満のとき中央高さで 相関が強くなる 風向による大きな変化はみられない 0° ≦WD< 90° N E S W SE面 NW面 270°≦WD<360° 90° ≦WD< 180° 風速1m/s未満の上層以外で相関が強くなる 風速1m/s未満のとき中央高さで 相関が強くなる 風向による大きな変化はみられない 180° ≦WD< 270° 1m/s>U 1m/s≦U Z5層 Z5層 Z4層 Z4層 決定係数をまとめると(*) 、風向0°以上90°未満(*) 、90°以上180°未満(*) 、180°以上270°未満(*) 、270°以上360°未満はこのようになります。このグラフから、 (*)風速1m未満のときの上層以外で壁面と壁近傍の気温の相関が強くなりました。また、風速1m未満のときZ3層で他層よりも相関が強くなりました。 (*)風向による大きな相関の変化はなかった。 (*) Z3層 Z3層 Z2層 Z2層 Z1層 Z1層
結論 ・キャノピー層の鉛直気温分布 表面温度の影響 上層で小 下層で大 風速による差異 小 ・壁面温度の日変化 表面温度の影響 上層で小 下層で大 風速による差異 小 ・壁面温度の日変化 北東、南東、北西面 上層から温度上昇 南西面 全層同時に温度上昇 ・壁面温度と壁近傍の温度分布に及ぼす影響 風速1m/s未満の上層以外で 相関:強 風速1m/s未満のとき中央高さで 相関:強 風向による差異 小 キャノピー層の鉛直気温分布では、表面温度の影響が上層は小さく、下層は大きくなり、風向による差異は小さくなりました。壁面温度の日変化は、北東、南東、北西面で、上層より表面温度の上昇がおき、南西面では、全層が均等に表面温度の上昇が起きました。壁面温度と壁近傍の温度分布に及ぼす影響は、風速1M未満の上層以外で相関が強くなり、風速1M未満のとき他層よりZ3層の相関が強くなりました。風向による差異は小さくなりました。 ・結論は以上のようになります。 (*)