SLHC用P型シリコン飛跡検出器の レーザーを用いた性能評価 ーバルク部損傷の評価ー

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SLHC用P型シリコン飛跡検出器の レーザーを用いた性能評価 ーバルク部損傷の評価ー 筑波大学 三井真吾 金 信弘,原和彦,秦野博光,山田美帆(筑波大) 池上陽一,海野義信,高力孝,寺田進(KEK) 中野逸夫(岡山大) 高嶋隆一(京都教育大),花垣和則(阪大) 他アトラスSCTグループ

目的 P型バルク・シリコンセンサーの放射線損傷によるバルク部特性の変化を評価する。赤外レーザーを用いて電荷収集効率の劣化・全空乏化電圧の変化を測定し、他の測定法による結果と比較する。 目次 サンプルと放射線照射 レーザーによる放射線損傷の評価   ・収集電荷測定方法   ・電荷収集効率   ・全空乏化電圧 他の測定結果との比較 結論

サンプルと放射線照射 サンプルは、FZ法によるP型ウェハーを用いた浜松ホトニクス社製 サンプルはPCBに接着し、ワイヤーボンドにより測定に必要な配線を施す。 サイズ 1cm×1cm  厚み 320μm ・proton照射: 東北大CYRICにおいて、70-MeVの陽子線を照射 Fluence: 2.3, 6.0, 13 x1014 1-MeV neq/cm2 (2008年3月) Fluence: 2.0, 5.0, 10 x1014 1-MeV neq/cm2 (2008年11月) ・neutron照射: スロベニアのLjubljana原子炉において、1-MeVの中性子を照射 Fluence: 2.0, 5.0, 10 x1014 1-MeV neq/cm2 (2008年4月) 以降、放射線量は、すべて1MeVのneutron換算値を用いる

レーザーによる収集電荷測定・C-V測定 A ストリップ間にコリメート(約3x3mm)した、パルス(15nsベース幅)赤外レーザー(波長1064nm)を入射 Siの内部まで侵入するので、通過荷電粒子に対する応答に近い信号を得られる N+ P-bulk P-stop Al A 1.5MΩ VBias 0~-1000V 電荷収集効率測定 Infrared laser SiO2 LCR meter C-V測定 収集電荷は、アンプ(5mV/fC)を通して、オシロスコープで読み出す(隣接2ch) 照射後サンプルは、60℃80分のアニーリングを行ってから、温度:-10℃で測定

収集電荷測定セットアップ ストリップ間に入射 サンプルとレファレンスを交互に測定し、レーザーの安定性をモニターした。 Gamp=5mV/fC laser head XY-stage amps collimators focusing lens aluminum P-stop ストリップ間に入射 Gamp=5mV/fC 照射後 照射前 波高 [V] 10ns/div Bias=1000V 陽子 13x1014 n/cm2照射後の応答 リファレンス(固定)とサンプルを冷却 サンプルとレファレンスを交互に測定し、レーザーの安定性をモニターした。

収集電荷量のバイアス依存性 (proton3月照射) 波高 照射量が増加するにつれ、電荷収集量が減少する。 照射により新たなエネルギー準位ができ、電子ホール対の捕獲や再結合が起こりやすくなった。

電荷収集効率(Charge Collection Efficiency) neutron照射 proton照射 CCE=照射後収集電荷量/照射前収集電荷量(全空乏化) 系統誤差 10% 10×1014 n/cm2(SLHCの設計照射量)において、500Vのバイアスで CCEは、陽子照射(約0.6)、中性子照射(約0.65) ⇒SLHCでは、ヒット占有率を下げるために、従来(12cm)より短い(2.4cm)ストリップ長のものを使うので、ノイズが減り、0.5程度のCCEの劣化ならば許容できる。

全空乏化電圧の評価 収集電荷測定 C-V測定 収集電荷量は空乏層の厚さdに比例。 波高の2乗 1/C2 [1/F2] 全空乏化電圧 全空乏化電圧 収集電荷量は空乏層の厚さdに比例。 d2∝VBiasから、収集電荷量の2乗はVBiasに比例し全空乏化後は一定になる。 1/C2はバイアス電圧に比例し、全空乏化後は一定になる。 (NA=アクセプタ密度 ND=ドナー密度 ε=シリコン誘電率 V=バイアス電圧 e=素電荷 d=空乏層の厚さ)

収集電荷測定による全空乏化電圧の評価 neutron proton 3月 proton 11月 zone2 5 10 Dose (×1014 n/cm^2) neutron 10×1014 n/cm2において、陽子照射700V程度、中性子照射950V程度となった。 ⇒500V以上であるが、部分空乏化でも読み出しができるため、問題はない。 Dose (×1014 n/cm^2)

C-V測定による全空乏化電圧の評価 LCRメータ (f=1kHz) を用いたバルク容量の測定 spray+stop stop 2×1012 /cm2 stop 4×1012 /cm2 spray proton 11月 proton 3月 zone2 5 10 15 Dose (×1014 n/cm2) ■spray_z3 ●stop_z3 ■spray_z5 ●stop_z5 neutron 10×1014 n/cm2において、陽子照射500V程度、中性子照射1100V程度となった。 ⇒500V以上であるが、部分空乏化でも読み出しができるため、問題はない。

-rayを用いたCCEと全空乏化電圧の評価 0.5mm absorber センサー Sr90 Scinti スリット0.5mm 2mm 10mm 3.4mm 3mm 5mm Charge [fC] No. Events HV=100 V HV=580 V Collected Charge 90SrからのβはほぼMIPとみなせる。 トリガーシンチ: 5 mm x 5 mm Trigger rate ~20 Hz 隣接4chをADCで読みだす。 Peaking time ~20 ns

電荷収集効率のβ線測定との比較 中性子照射 陽子照射 レーザー(実線)の絶対値は、β(点)の未照射の値に合わせた。 [1-MeV neq/cm2 ] 黒:未照射 赤: 2.3 ×1014 青: 6.0 ×1014 緑: 13×1014 [1-MeV neq/cm2 ] 黒:未照射 赤: 2.0 ×1014 青: 5.0 ×1014 緑: 10×1014 レーザー(実線)の絶対値は、β(点)の未照射の値に合わせた。 レーザーの絶対値の不定性(約10%)を考慮すれば、全体的な傾向は合っている。 βの低電荷量での見積もり(ピークの分離)の不確かさが未考慮。 中性子照射でのCCEの劣化は、陽子よりも小さい(損傷の質の違い)。

全空乏化電圧の他の測定との比較 誤差の範囲内で一致している。 中性子照射では、系統的に空乏化電圧の変化が大きい  中性子照射と陽子照射で、損傷の質に違いがある  照射条件の違いからアニール特性が異なる可能性

結論   SLHC用に開発している、P型バルクを用いたシリコンセンサーのバルク部放射線耐性を、中性子と陽子を照射し評価した。赤外レーザーを用いた測定は、CVやβ線を用いた測定と比較した。 電荷収集効率:レーザー測定の不定性のために、βでの測定と絶対値が異なるが、両者はほぼ一致している。10×1014 n/cm2、500Vにおいて、proton照射 0.62(β) 約0.6(laser)、neutron照射 0.41(β) 約0.65(laser)となり、充分な電荷収集が見込まれる。 全空乏化電圧:レーザー、β線、CVの結果は矛盾しない。10×1014 n/cm2において、proton照射で約500V、neutron照射で約900V。充分な電荷収集があるので問題ないが、部分空乏化の場合は、Hall角の効果などの評価が重要となる。 14

Back up

センサータイプ P型センサー開発の問題点: 電子層がシリコン表面に蓄積しやすく電極分離劣化  電子層がシリコン表面に蓄積しやすく電極分離劣化  (電極分離構造P-STOPやP-SPRAYが必要?) proton照射 サンプル neutron照射 サンプル pstop,pspray: 酸化膜SiO2に正電荷が蓄積し、Pバルク部表面に引き寄せられた電子のために、ストリップ間が電気的に繋がるのを防ぐ

p型サンプル(ウェハー製造法) ウェハー製造法:2タイプ Float Zone (FZ法) Magnetic Czochralski (MCZ法) 比抵抗 4-8 k W・cm 低不純物密度 格子欠陥密度の異なる2種類を用いた。  (FZ_pure、FZ_std) 比抵抗 ~1 k W・cm 酸素密度豊富 (放射線耐性を向上させる効果がある) 今回照射テストをしたp型サンプルの説明をします。 ウェハー製造法について2タイプのものを調べました。 1つはFZ法です。 これは、シリコン多結晶を高周波コイルで熱しながら、単結晶化していくものです。 CZ法における石英るつぼ等他の物質に触れないため、不純物濃度が低く、高抵抗のウェハーを製造できます。 現n型ウェハーSCTはこのFZ法を採用しています。 もう1つは、MCZ法です。 これは、多結晶シリコンを石英るつぼの中に融解し、種結晶を接触させ、引き上げながら単結晶を成長させていく方法です。 MCZ法の特徴としては酸素濃度が豊富であることです。これは放射線耐性に優れた効果が期待されています。 17

電荷収集効率all(11月) 18

電荷収集効率 CCE proton 3月 proton 11月 Bias (V) neutron zone全ての平均を取っている。 19

電荷収集効率(11月) r:sprayのみ p2:stop 2×1014 p4: stop 4×1014 pr:stop+spray CCE Bias (V) r:sprayのみ p2:stop 2×1014 p4: stop 4×1014 pr:stop+spray 最後の数字はdose(×1014 neq/cm2) 照射後収集電荷量/照射前収集電荷量 を電荷収集効率と定義した。 20

電荷収集効率 照射量依存性 (3月) (3月) 21

電荷収集効率 照射量依存性 proton 11月 22