神山天文台における 2色同時撮像装置ADLERを用いた矮新星観測

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Presentation transcript:

神山天文台における 2色同時撮像装置ADLERを用いた矮新星観測 ○磯貝瑞希、新井 彰、 米原厚憲(京都産業大学) 2011年度 連星・変光星・低温度星研究会

ADLERとは ・2色同時撮像装置(Araki telescope DuaL-band imagER) ・大学専有望遠鏡であることを生かして   ・銀河系内マイクロレンズ現象(17日の米原さんの招待講演)   ・系外惑星トランジット   ・各種突発天体(アウトバースト天体含む)   ・彗星  の即時観測を目的とする。 ・ファーストライト:2010年4月、 観測運用開始: 2010年9月

ADLERとは カセグレン穴 短波長側カメラ (380-700nm) 長波長側カメラ (500-900nm) ダイクロイックミラー (2枚搭載可能、手動切り替え) 480nm分割、670nm分割 短波長側カメラ (380-700nm) 制御PC(WinXP) 電源ユニット 長波長側カメラ (500-900nm)

ADLERとは カセグレン穴 短波長側カメラ (380-700nm) 長波長側カメラ (500-900nm) 縮小光学系: F/10 ⇒ F/6 に 1チップCCD(2048x2048, 13.5μ)で 視野12’x12’ (0.357”/pix)を実現 制御PC(WinXP) 電源ユニット 長波長側カメラ (500-900nm)

ADLERとは カセグレン穴 短波長側カメラ (380-700nm) 長波長側カメラ (500-900nm) フィルターホイール(6穴2層、 1ビームにつき、最大10枚搭載可能) 実装済み:g’, r', i', z ' + Stromgren-y + コメット分子輝線用狭帯域4枚 制御PC(WinXP) 電源ユニット 長波長側カメラ (500-900nm) 2012年3月より、B,V,Rc,Icが追加される予定

CCDカメラ 市販の水冷式CCDカメラの採用でメンテナンスフリーな状況を実現 CCDカメラ: Spectral Instruments社 850シリーズ 冷却方法: 電子冷却+水冷 冷却温度: -90℃ (外気30℃) CCDチップ: e2v CCD42-40 (13.5μm x 13.5μm, 2048x2048 pixels) B.I.(短波長側)+ F.I.(長波長側) デジタル階調: 16bit 飽和電荷量: 100,000 e- (Single pixel) 読み出し速度: 100, 200, 500, 830 kHz 読み出しノイズ[e-]: 2.7(B.I.), 2.1(F.I.) @100kHz, ATTN=0 ― 23.9(B.I.), 22.6(F.I.) @830kHz   ゲイン[e-/ADU]: 最小0.63(B.I.), 0.64(F.I.) ― 18.2(B.I.), 17.6(F.I.) @830kHz 暗電流 (@-90℃): 0.00012(B.I.), 0.00006(F.I.) [e-/pix/sec] 最速読み出し速度: 5.1sec (1-port, 1x1bin, 830kHz) http://www.specinst.com/Products.html 市販の水冷式CCDカメラの採用でメンテナンスフリーな状況を実現

スカイの明るさ @ Koyama g' スカイ等級[mag/□"] airmass

スカイの明るさ @ Koyama i' スカイ等級[mag/□"] airmass

限界等級 条件: airmass=1.2 i.e. ZD ~ 34°, seeing=10pix=3.6" ※1 CCD読み出し速度:500kHz(~8sec), gain~ 5 e/ADU, σ_ro ~ 9e 積分時間 S/N 限界等級 ※2 g' i' 10s 100 15.5 14.7 60s 20 18.4 17.8 180s 10 19.8 19.2 300s 10 20.0 19.5 ※1 seeing=3.6": 神山天文台での冬の典型的なseeing値 ※2 空の条件が悪い場合には、限界等級が約1mag浅くなる。

ADLERによる矮新星の観測 ADLERの利点を生かせる観測対象: 短時間で変光し、なおかつ変光の振幅が波長によって 異なる天体 → 矮新星   異なる天体      → 矮新星 2色同時観測 → (放射が黒体放射である場合には) 放射領域のサイズ・温度変化の情報が 得られる。 ★WZ Sge型矮新星の早期スーパーハンプの起源の研究 ★SU UMa型矮新星のスーパーハンプの色変化の 多様性の研究

ADLERによる矮新星の観測 WZ Sge型矮新星の早期スーパーハンプの2色同時測光観測 WZ Sge型 OT J012059.6+325545 円盤の厚み(h/r)再構成マップ Uemura et al. (2012) g’ g’-i' 82min Nakagawa et al. (2012) 伴星の方向

ADLERによる矮新星の観測 SU UMa型矮新星のスーパーハンプの色変化の多様性についての研究 WZ Sge型 SDSS J080434.20+510349.2 SU UMa型 SDSS J081207.63+131824.4 g’ g’ i’ i’ g'-i' 115min g'-i' 時間(ユリウス日) 時間(ユリウス日)

まとめ ★2色同時撮像装置ADLERの詳細: ・視野: 12' x 12' ・サンプリング: 0.357"/pix   ・フィルター: g',r',i',z', Stromgren-y, B,V,Rc,Ic ・限界等級: g': 15.5 - 20.0 i': 14.7 - 19.5   (seeing=3.6”, Texp=10s, S/N=100 ~ Texp=300s, S/N=10) ★ADLERによる矮新星の観測:  ・WZ Sge型矮新星、早期スーパーハンプの起源の研究   ・SU UMa型矮新星、スーパーハンプ時の色の多様性の研究 → 観測を継続してサンプル数を増やす。