梅雨前線に伴う沖縄島を通過した 線状降水システムの構造の変化 野村真奈美・上田博・坪木和久・篠田太郎・大東忠保・佐野哲也・服部美紀・ 清水慎吾・内藤大輔・坂下佳一郎・民田晴也・檜山哲也・中村健治(名大HyARC) 中川勝広(通信総研) はじめに ・東シナ海における梅雨前線に伴う降水システムの構造と 発達・維持機構を明らかにするために、名古屋大学と通総研 の共同研究、及びCREST/LAPS沖縄観測を2003年5月13日 ~6月6日に沖縄で行った。 ・顕著な線状降水システム : 5月15日・5月24日~25日 5月24日から25日にかけて発生した東シナ海における梅雨前線に伴う線状降水システムの沖縄島通過時の構造の変化について調べる。 目的
観測範囲 使用データ GOES JMAレーダー ドップラーレーダー ・勝連:X-bandradar ・名護:C-bandradar 勝連 (HyARC) 観測領域は図のようになっています。使用したデータはごーず、JMAレーダー、勝連に設置した名大のX-bandドップラーレーダー、名護に設置した通総研のC-bandドップラーレーダーCOBRAです。 名護 (COBRA)
GOES 赤外画像 5月25日0300JST JMAレーダー画像 (高度2km) まず、5月25日午前3時のごーずの赤外画像をみると、 この線状降水帯は、このように走向を変化しながら南下し、沖縄島を通過していきました。 次にこの線状降水帯がどのように時間変化したかをJMAレーダーを用いて示します。
この図は右上のように水色の四角の領域で、各時間ごとに、X軸方向に降水強度を平均した図です。横軸が時間、縦軸が右上のY軸になります。 (km) この図は右上のように水色の四角の領域で、各時間ごとに、X軸方向に降水強度を平均した図です。横軸が時間、縦軸が右上のY軸になります。 降水システムは24日19時から25日19時までこのように南東方向へ進んでいきました。 点線部分はは沖縄島に対して南西側にあたり、この部分は線状を維持しながら通過していきました。 24MAY TIME( JST ) 25MAY
この図は同じように右上の四角領域をX-軸方向に平均したものの時間変化を示しています。 (km) この図は同じように右上の四角領域をX-軸方向に平均したものの時間変化を示しています。 横軸は時間、縦軸は右上の図のY軸になります。 点線部分は降水システムが沖縄島を通過した部分になります。 島を通る部分は降水強度が弱まって線状を維持できなくなり、通過後、降水領域が広がっていることがわかります。 次にシステムが沖縄島を通過前、通過中、通過後の3つの部分についての鉛直方向の変化をCOBRAの反射強度のデータを用いて示します。 24MAY TIME( JST ) 25MAY
SW NE NE 0448JST SW 鉛直方向についてですが、線状降水帯の後方にある対流性エコーについて注目してみていきます。 400 0448JST 0736JST 0448JST SW (km) 鉛直方向についてですが、線状降水帯の後方にある対流性エコーについて注目してみていきます。 対流性エコーシステム全体に対して四角の領域をとって、走向に直交する、この方向に平均した反射強度の鉛直分布です。 横軸はシステムの南西端からの距離を、縦軸は高度を示しています。 南西側は島を通過する際、エコー頂が高くなっているのに対して、島を通過した部分についてみると、 通過する前の4時38分は強い反射強度が見られたのに対して、島を通過している7時36分には反射強度が弱くなっていることがわかります。 そして島を通過した9時18分には再び強いエコー域が見られることがわかります。 0918JST 40km 0736JST (km) SW NE 0918JST (km)
島を通過する際、このように降水システムの反射強度が弱まった原因について考察をしてみました。 03JST 25MAY NAHA (21JST 24MAY) 通過後の下層風 NAHA 通過前の下層風 島を通過する際、このように降水システムの反射強度が弱まった原因について考察をしてみました。 これは那覇の24日21時のゾンデのデータです。 島を通過する際の下層の風向は南東で、850hPa付近まで湿っていることがわかります。 このように、下層の水蒸気が流入するのを島によって阻害されたためにシステムが弱くなったという事が考えられます。
まとめ 梅雨前線に伴う線状降水システムが沖縄島を通過 する時の構造の変化について調べた。 ・島に対してシステムの南西側 その後 ・線状を維持 梅雨前線に伴う線状降水システムが沖縄島を通過 する時の構造の変化について調べた。 ・島に対してシステムの南西側 その後 ・線状を維持 ・エコー頂が高くなる → 線状を維持 ・島にかかる部分 → 再び線状化 ・線状維持できず (層状域が広がる) ・反射強度が弱まる 陸によって下層の水蒸気流入が 阻害されると考えられる。 今後は線状降水システムの三次元気流構造や発達・ 維持過程について調べる。