タンパク質-リガンド複合体への共溶媒効果の系統的解析

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タンパク質-リガンド複合体への共溶媒効果の系統的解析 EX17307 (東京大学情報基盤センター推薦課題) 山守 優 (阪大基礎工) タンパク質-リガンド複合体への共溶媒効果の系統的解析 Background & Strategy 相関解析によるメカニズム解析 様々な種類・濃度において共溶媒が、タンパク質-リガンド複合体に及ぼす構造安定性への影響を調べたい。 自由エネルギーと各種相互作用成分 などとの相関を調べる タンパク質-リガンド相互作用 タンパク質-リガンド複合体 (真空) タンパク質 (真空) リガンド (真空) + Ep-l({r}) ストラテジー タンパク質の 溶媒和自由エネルギー Dmp({r}) uele タンパク質-リガンドの結合自由エネルギーを、 様々な種類・濃度での共溶媒-水混合溶媒中で計算する。 タンパク質 (溶液) リガンド (溶液) タンパク質-リガンド複合体の 溶媒和自由エネルギー Dmp-l({r}) ⭕️ or❌ + 構造変化を伴う現象 (揺らぎ、変性、…) Dm uvdw ⭕️ or❌ リガンドの 溶媒和自由エネルギー Dml({r}) ⭕️ or❌ 結合自由エネルギーと構造に関する因子 (SASA, # of salt bridges, etc…)との相関解析を行う。 結合自由エネルギー タンパク質-リガンド複合体 (溶液) Dmexcl タンパク質 (溶液) リガンド (溶液) DGbinding({r}) 自由エネルギー計算 + 共溶媒条件と構造安定性への影響の知見の蓄積が、 タンパク質構造のファインチューニング手法の第一歩に。 強い相関をもつ因子が 発見されれば、現象の支配的な因子であると判断される 無相関の因子が 発見されれば、現象と 関わらないと判断される Method 高精度の計算 エネルギー表示法 vs.自由エネルギー摂動法 (アミノ酸アナログ) エネルギー表示法の枠組み 平均誤差 実験値 溶媒分子を露わに考慮した全原子モデルでの精密な自由エネルギー計算 構造情報を明示的に取り扱わず、エネルギー軸に溶質-溶媒配置の情報を射影 新タイプの密度汎関数理論 (古典溶液 DFT) ・・・ エネルギー密度による定式化 現実問題への適用可能性 0.7 kcal/mol free energy Dm of hydration (kcal/mol) 0.7 kcal/mol エネルギー表示法 (近似計算、短時間) e(=v(x)) の統計情報を使って Dm を構築 力場(ポテンシャル関数)の性能 i: 溶媒種、X: 溶媒座標、vi (x):溶質-溶媒相互作用 0.5 kcal/mol r(e): 溶液系での e の分布 近似(汎関数)の性能 溶媒和自由エネルギー r0(e): 参照溶媒系での e の分布 自由エネルギー摂動法 (厳密計算、長時間) 近似 (溶質挿入による溶媒-溶媒相関の変化の寄与) 厳密(溶質-溶媒の 2 体相関) 高効率の計算 溶質および溶媒分子を、 全体で1つのものとして扱う どのようなポテンシャル関数 に対しても 1次元の座標 e = (van der Waals 相互作用)+(静電相互作用) 排除体積効果の評価 (溶質挿入による空孔生成の自由エネルギーペナルティ =疎溶媒効果の主要部分) 原子座標などの 細かい空間構造情報は捨象 r(e)=0, (e > ecutoff) Results & Future works Glutamine Binding Protein(GBP) 静電相互作用成分 純水 溶媒条件 A 溶媒条件 B 結合自由エネルギー(kcal/mol) 排除体積成分 cytochrome c 104 残基, 1674 原子 heme (75 原子) 溶質-溶媒相互作用エネルギー(kcal/mol) 溶質-溶媒相互作用成分 傾き: 2.13 in 8 M 尿素/水混合溶液 相関係数: 0.96 移行自由エネルギーは、 静電相互作用成分と相関が弱い vdW相互作用成分 排除体積成分と無相関 傾き: 1.60 相関係数: 0.89 vdW 相互作用成分と強い相関 水: TIP3P, 尿素: AMBER+Karino(2013) 変性は、 vdW 相互作用成分が支配 変性 移行自由エネルギー(kcal/mol) タンパク質: parm99SB,リガンド: Horn(2014)